September 22, 2005

新しいアプローチとスタイル

カナダのある都市の中心部に、建物が老朽化しスラム化した地区がありました。


治安が悪化し、影響で商業施設も衰退、企業が撤退し、失業が増えるなど様々な悪循環も起きていました。住宅の市場価格は下落し、採算が合わないため再開発も出来ません。住民も敬遠して減少し始め、税収も激減、八方ふさがりの状態です。

日本なら署名活動が起きたり、役所への陳情や地元代議士への働きかけが行われたりするかもしれません。活動の核となる、地元商店街とか自治会などの組織が弱いと、そうしたことも起きないでしょう。なんとかならないか、うまく解消すればと誰もが思いますが、解決は絶望的です。実際に、そうしてさびれていく地域は日本にも多いのです。

このカナダの例では、普通の市民が、自らの生業などとは全く関係なく市民団体を組織しました。自分達で専門家も交えて解決策をリサーチし、計画実施のためのNPOを設立。そのNPOが、立ち退きから、再開発、住宅などの建設、販売まで行い、街の再生を成し遂げました。

趣旨に賛同した様々な専門家が参加し、NPOが非営利のため、格安での住宅販売も可能となりました。また、住民の声を背景に議会に働きかけ、規制も緩和させ、浮いた費用を立ち退きや再開発の資金にまわしたのです。直接間接に地元への波及効果も高いため、行政の全面的な支援や優遇、援助や融資も取り付け、コストダウンにもつながりました。

自治体にすれば、治安対策や住民サービスの向上になり、税収も増えます。さらに自治体が手がけるのとは比べものにならないくらい効率的なので、予算も有効に使えます。市民生活もより豊かになり、関係者みんなのコンセンサスが得られる形です。通常難しい法改正や規制緩和などの手続きも格段に速く進み、こうして民間による再開発、都市計画の推進が実現したのです。

街づくりNPOの経営学これは、私が本で読んだ事例です。要約してしまうとあっけないのですが、詳しく個々の手法を見ていくと実に興味深いものがあります。もちろん、どこでもこのように上手く行くわけではありませんが、個人の自由とか住民の権利、市民の主権と自治の意識が強い欧米人の感覚は、日本人とは違う発想、アプローチをとります。

自立した個人として行動し、団体を組織し、あるいは実際に活動します。それらが自治組織として機能し、市民の利益と公共の福祉を自ら実現しているのです。再開発を手がけるNPOが非営利と言うと勘違いされる方がいますが、そこで働くスタッフは有給です。能力に応じた報酬が用意されることにより、優れた専門家も集まります。

また、事業収支がプラスになっても非営利団体にかわりありません。NPOに余剰な収益が出ても、それを出資者へ配当しさえしなければ問題ないのです。むしろ寄付や補助金に頼らずに必要な経費をまかなう為、活動の趣旨の範囲で収益をあげてもよいのです。ちなみに、これは日本でも同じです。

日本人は、伝統的に、どうしても「お上」に解決してもらうという意識が出てしまいます。でも、こうした欧米型の、NPOや市民団体などが民意を反映した活動をするスタイルも起こりつつあります。NPOというと、どうしてもボランティアや無料奉仕のイメージがありますが、今までにない新しい分野、課題に取り組むNPOも増えています。

そういった面からも、昨日取り上げたような、自転車版JAFや全国自転車ネットワークという民間の取組みや、それを進めようという気運は楽しみです。この取組みが実際にどうなるかは別として、確かに今までは、こうした民間の活動が必ずしも有効に機能するとは限りませんでした。しかし、それも過去の話です。

NPOに関する法律や優遇措置も変わりました。企業や市民の意識もかわりつつあります。自治体も、欧米の先進的な仕組みを試すところも現れています。納める市民税の例えば1%を市民がそれぞれ選んだ、自分が支持したいと思うNPOや団体に寄付できるという制度です。日本では、伝統的に寄付の習慣になじみが薄いので、こうした団体の立ち上げや、財政基盤を支援する仕組みとして注目されます。

日本では緒についたばかりですが、こうした今までと違う、新しい社会の仕組みが積極的に取り入れられつつあるのが先進国での趨勢でしょう。確かに、現在は議会制民主主義による立法、首長選挙による自治体と行政という地方自治が中心です。しかし、普遍と思われたそれらのシステムも変わっていく可能性があります。

欧米では、大学を出てNPOのスタッフを希望する若者も増えているそうです。大企業の重役から転進する例もあるなど、人々の価値観も大きくシフトしつつあります。世の中、科学技術だけが発展していくのではありません。もちろんネットなどの発達が大いに寄与していますが、社会を動かす仕組みや考え方も、今大きく変わりつつあるのです。

これからの時代、NPOという選択は増えていくと思います。冒頭の本は、難しいと言われていた分野でNPOの事業化に見事成功し、地元北海道だけでなく全国にまで拡大し、その経済効果220億円と言われるまでになった、街づくりNPOの話です。興味のある方には、おもしろいと思います。


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続いてますねー、今度はワニですか(笑)。捕まってませんが、徳島では体長1メートルのガイアナカイマントカゲだそうです。さすがに環境省などが規制を検討し始めました。ペットにICチップなどを埋め込んで、所在を管理するシステムもすでにあるそうです。将来は、サイクルコンピュータにも、この先ワニに注意!とか表示されるようになるのかなー(笑)。


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