December 16, 2005

自転車の所有の新しい可能性

駅リンくんJR西日本が展開している「駅リンくん」が地道に好調のようです。


駅リンくん」は、名前からイメージするとおり、駅レンタカーの自転車版、駅レンタサイクルです。一日300円、1ヶ月定期だと駅によって違いますが2000円前後です。ただし1ヶ月定期には、保証料が8000円ほどかかります。まだ展開している駅は、大阪府下で7駅、兵庫県下で3駅、滋賀県下2駅、奈良県下1駅と一部に限られていますが、利用者には、おおむね好評のようです。

ところで、以前に紹介した兵庫県洲本市の「ベンチャリ」と名づけられた、無料のレンタサイクルは、さんざんな結果に終わっています。たった一年で廃止になりました。何度か書いていますが、無料のレンタサイクルは、ごく限られた地域内のものを別とすれば、あまり上手くいった例は聞きません。同じ関西のこの2つの例、有料無料の違いもありますが、それだけではないようです。何が違うのでしょうか。

洲本市のように多くの自治体では、駅前の放置自転車に悩みつつも、それらをただ廃棄処分するのも「もったいない」ので、無料で市民に提供し、共用自転車として使ってもらえれば、と考えます。しかし、大量に捨てるのはもったいないから、という共用自転車が上手くいった例を聞いたことがありません。なぜ何度もあちこちの自治体で繰り返すのか、なぜ過去の事例を参照しないのか、自治体の担当者の学習能力の無さにあきれるばかりです。

無料の自転車があったら、ふだん自転車に乗ってない人が便利に利用して乗り捨てるだけです。いずれ拡散してなくなってしまうのも自明の理です。ふだん自分の自転車に乗っている人にしてみれば、用事の間に乗り去られるのも不便ですし、利用しないでしょう。

よって自転車台数の減少にも寄与しません。無料ですので、整備にもお金をかけられず、丁寧に扱われることも期待できません。利用者のモラルを期待するほうが無理があります。もともと放置されていた自転車です。実際、壊れて使えなくなる率も高いでしょう。いずれも、ちょっと考えれば、子供でも判ることです。便利で素晴らしいシステムと思うのは浅はかでしょう。自転車に乗らない人の言うことです。

要するに、資源の有効利用にも見えますが、対処療法にすらなっていないのです。そもそも、廃棄される放置自転車の利用より、その発生を減らすことを考えるべきです。簡単に廃棄してしまう背景の一つには、修理やメンテナンスが面倒というのがあるでしょう。

そこで有効なのがリースという考え方です。クルマでは買わずにリースの車輌を使う人もいます。クルマと違って自転車は安いので、その意味ではリースにする必然性は薄いですが、原則としてメンテナンスに煩わされない利点があります。

駅リンくん「駅リンくん」は、パンクや故障の修理の心配がいらないのが人気の理由ですが、レンタサイクルとしてだけでなく、1ヶ月単位のリースとして利用している人もいるようです。支持される背景として、この面は見逃せません。

もちろん一日単位で、出先での足として有効活用出来る点もあるでしょう。そういった利用者の好評もあると思います。しかし、自宅から駅まで定期的に使う人にとっては、1ヶ月単位での自転車リースとして使い、原則的にメンテナンスフリーで、修理に煩わされないというメリットがあるわけです。

もう一点、当然のことながら、利用駅の駐輪場代は不要になるわけです。自宅からの通勤通学に、駅前駐輪場を月単位で、しかも時には抽選で借りることを考えれば、これは魅力的です。駐輪場代との差額で済むわけですから、実質リース代も少なくなります。

1ヶ月2千円だと、1年で2万4千円。最近自転車が安いですし、買ってすぐは故障知らずでしょうから割高です。安い自転車を使い捨てる方が得と考える人もいるでしょう。でも駐輪場代との差額やパンクの可能性を考えると、ずっとリーズナブルになり、検討の余地が出てきます。

全体としては、修理して使われるぶん廃棄される無駄も減り、きちんと管理されるぶん廃棄自転車が放置されこともありません。一部の利用者にとっては、メンテナンスが行き届いて、快適かつ安全になるでしょう。また、細かい話ですが、一般の駐輪場とレンタサイクルの自転車のストックヤードでは、収納効率がまるで違います。

広い通路も不要ですし、立体的にも空間活用出来るでしょう。駅前の自転車収容能力的にも非常に有効な手段になるわけです。駅前に土地が確保できない駅も多いとは思われますが、自治体が探すより、駅の施設を融通できる鉄道会社なら、よりスペース確保の可能性も高いでしょう。

東京では豊島区が、鉄道会社に対して法定外目的税である放置自転車税の負担を求めて話題になっていましたが、JR東日本などでも参考になる事例なのではないでしょうか。駅ごとに、スペースの問題や、周囲の住宅地の分布や利用客の特性など、一概には言えません。そもそも駐輪場代を負担していない利用客も多いわけです。しかし、一つのヒントにはなるはずです。

意識の問題としては、自転車使い捨て感覚の人がいるのも事実です。しかし、かの松下幸之助氏が、いわゆる水道哲学として、

「産業人の使命は貧乏の克服である。そのためには物資の生産に次ぐ生産をもって富を増大しなければならない。水道の水は、通行人がこれを飲んでも、とがめられない。それは量が多く、価格があまりにも安いからである。産業人の使命も、水道の水のごとく物資を安価無尽蔵たらしめ、楽土を建設することである」

と述べられた時代とは、人々の意識も明らかに変わってきています。

省資源、省エネルギーで、地球環境を考え、リサイクルやリユースなども盛んになってきました。LOHASという言葉も聞かれるようになって来ました。実際、そうした意識の高い人も増えてきています。必ずしも値段の問題でなく、無駄に大量消費し、大量に廃棄するスタイルに抵抗感を感じる人も多いはずです。

リースと言えば、最近家具などでも、借りて済ませる人がいます。転居や買い替えより便利とかリーズナブルという理由もあるでしょうが、借りて済ますスタイルも出て来つつあるのでしょう。自転車リース、もっと注目されてもいいと思います。




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ブログの更新が遅れてしまいました。すみません。

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