April 30, 2006

自然に出る動作を身につける

江戸しぐさ最近、「江戸しぐさ」という言葉を見聞きすることがあります。


写真にあるような、公共広告機構のポスターを街角や電車の中吊りでも見かけることがあります。同サイトによれば、これは東京ローカルのキャンペーンのようですが、ほかにも最近メディア等で取り上げられたり、小中学校の教材や社員研修などに使われたり、講演なども全国に広がりつつあるそうなので、「江戸しぐさ」の知名度は徐々に上がっているようです。

「江戸しぐさ」は、江戸時代の公共マナーとして編み出されてきた庶民の知恵です。村じゅうの人と顔見知りであったような地域と違い、江戸は18世紀、すでに都市として世界最大の人口を抱えていましたから、見知らぬ住人同士が互いを尊重し、気持ちよく生活するためにも欠かせないものだったのでしょう。当たり前のことも多いですが、最近失われているモラルやエチケットをあらためて実感させられる部分も多く、人々の共感を生んでいるのだと思います。

江戸しぐさのポスター「傘かしげ」は、雨の日に往来ですれ違うとき、傘をお互い逆の向き、外側に傾けることです。「肩引き」は、狭い往来をすれ違う時など、ちょっと肩をひいてすれ違うことです。こうした「往来しぐさ」は、現代でも狭い道や混雑した場所では無意識にやっている人も多いでしょう。しかし、中には傘を前に傾けて、前から誰が来ようが見もせず、自分からは傘を傾けようとしない人もいます。相手の傘の雫を避けるために相手方に傾ける人までいます。

お互い、譲り合いの精神が必要なのは、傘や肩の傾け方に限りません。自転車でもそうです。歩道を通る自転車が、歩行者優先にもかかわらず我が物顔、猛スピードで走りぬけ、歩行者のほうを避けさせている場面も少なくありません。自転車同士でも、狭い道ですれ違う時には互いに接触しないよう、なるべく外側へ寄るべきでしょう。でも、よそ見をしていたり、ケータイを見ながら顔すら上げない人もいます。

ほかにもあります。「うかつあやまり」は、例えば足を踏まれたら、踏まれたほうもボンヤリ、うっかりしていましたと謝りなさいということです。お互い謝ることにより、未然にトラブルを防ぐ知恵です。もちろん歩行者と自転車では、下手すると大怪我になってしまいます。事実、歩行者に激突して死亡事故まで起きているわけですから、江戸しぐさなんて悠長なことを言っていられません。

しかし、自転車同士のちょっとした接触事故や出会い頭の衝突等なら当てはまるかも知れません。実際かなりの件数起きているようですし、それをきっかけにトラブルになる例もあります。自転車に限らず、ちょっとした言い合いから傷害致死事件にまで発展する時代ですから、例え自分が悪くなくても、「うかつあやまり」をしておけば、死なないですむこともありえます。場合にもよりますが、こっちが謝ってしまえば相手も謝まらざるを得なくなり、結果として丸く収まることも少なくありません。

「片目だし」は、狭い通りから大通りに出るなど、見通しの悪い交差点などで、目だけ出して左右を確認することです。当たり前のことですが、そそっかしく飛び出す人も多かったのでしょう。時代劇でもよく見るシーンです。自転車でも、車道へ飛び出す人はともかく、歩道や自転車レーンだと平気で飛び出してくる人がいます。ブラインドコーナーの先に他の自転車や歩行者がいるかも知れないのに、スピードを落とさない人も多いです。うっかりということもあるでしょうが、「片目だし」を心がけたいものです。

江戸しぐさのポスター「こぶし腰浮かせ」は、当時の乗合船などで後から乗る人のため、こぶし一つ分腰を浮かせて席を作ることですが、今の電車マナーにも、そのまま当てはまります。椅子を詰めて座るだけでなく、譲り合い、思いやる場面は多いでしょう。例えば駐輪場でも、きちんと詰めて駐輪すれば後から来る人も駐輪できるのに、なんてこともありそうです。

こうした「しぐさ」は、考えたりせず、自然に体が動かなければ「粋(いき)」ではありませんでした。その為、「お初しぐさ」「稚児しぐさ」などと言われ、子どものうちに習得するものとされていました。また、「三つ心、六つ躾、九つ言葉、十二文、十五理で末決まる」と言い、素直な性格やしつけ、言葉遣い、文章、道理をそれぞれの年齢までに教育すべきと言われていたそうです。

こうした「江戸しぐさ」を取り入れた道徳教育は、現在の小中学生にも好評で、「これをしてはダメ」「こうしなければいけない」と言うより、「こうすると格好いいよ(粋だよ)」と言うと納得すると言います。小中学生のマナーに対する地域の苦情も減り、逆に挨拶をする子供が増えたなどと、よい評判が増えているそうです。

江戸商人の世界では、部下が「おはようございます」と挨拶したときに、上司が「おはよう」と答えたら失格だったそうです。目下の人に対しても、「おはようございます」と同格に応じるのが正しいとされていました。仏の前ではみな平等という考え方から来ているそうですが、上司であっても謙虚さを忘れてはいけないという戒めでしょう。

ほかにも「繁盛しぐさ」と呼ばれるものがあり、繁盛出来た人は謙虚に、あるいは地位の高い人は徳をもって人に接するべしと教えられていたようです。上に立つ人こそ、決して偉ぶってはいけないと言うのは、江戸しぐさに限らず世界中の金言、格言などとしても残っています。



これとは少し違いますが、たまにサイクリングロードなどですれ違う見知らぬサイクリストに挨拶されたり、手を挙げたりされることがあります。自分から積極的に挨拶しましょうとは言いませんが、挨拶されたら返すようにしたいものです。サイクリスト同士ですし、そのあとも、お互い気分よくサイクリングを続けられるでしょう。もちろん、道を譲られたりしたならば、少なくとも「感謝の目つき」で微笑んだり会釈したりすべきでしょう。

江戸しぐさは、ほかにも多数(一説には何千)あります。公共の場でのマナーに限らず、公徳心を養ったり、生活の知恵としても有効です。これがもっと見直され、広く浸透していけば、昨今の社会のモラルの低下にも歯止めがかけられるでしょう。「お心肥やし(おしんこやし)」と言って、教養や人格を磨くことにもつながり、お互い機気持ちよく生活できます。自転車生活にも「江戸しぐさ」、取れ入れたいものです。



今日は休みで出かけていたので更新が遅い時間になりました。今月は、だいたい中2日の更新ペースになってます。

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この記事へのコメント
おはようございます。
いろいろな面でまったく同感です。
譲り合いの心&お互いを拝みあう心>皆が丸い心でありたいですネ。
Posted by kazupon at May 01, 2006 09:50
kazuponさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
日本は原則として単一民族ですし、アメリカやヨーロッパなどで問題になるように、言葉や風習が違ったり、民族や宗教などの対立があるわけでもありません。
おっしゃるように、もう少し皆が丸い心でもいいような気がしますが、江戸時代より後退しているのでしょうね。
Posted by cycleroad at May 02, 2006 23:01
 
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