May 06, 2006

送迎より伴走というスタイル

昨日は子供の日でした。子どもの幸福を考える日とされています。


しかし最近は、幸福どころか子ども受難の時代です。まだ犯人が逮捕されていない栃木の女児殺害事件や、川崎の男児投げ落とし事件、グループ送迎の園児が2人、同級生の母親に刺殺された事件もありました。こうした事件によって、登下校の際の安全確保がクローズアップされ、スクールバスの導入や地域のボランティアによるパトロールなど、各地で様々な議論や試みが始まっているようです。

Are you a champion ?世界を見渡すと、日本のように子供だけで登下校することは考えられず、親が送迎するのが当たり前という国も少なくないようです。日本の感覚で、なぜ毎日送迎しているのかなどと聞けば、逆に誰がほかに送迎するのかと不思議そうに聞き返されたりします。今まで、日本の治安が良かったこともあるでしょう。また、国によって考え方や習慣の違い、親の意識や社会的コンセンサスの違いも大きいようです。

Are you a champion ?頻発する事件を受けて、日本の場合は地域で見守るという考え方が見直されたりもしているわけですが、子供の安全を考えたら、バスやマイカーによる送迎がベストと考える親も増えています。もちろん、身の安全が第一ということに異論をはさむつもりはありません。しかし共働き世帯などもありますし、一般的に親が送迎出来る社会環境が整っているとは限らないのも事実です。

Are you a champion ?状況が違うので単純に比較は出来ませんが、イギリスでの「通学路安全プロジェクト」(The Safe Routes to Schools Project)は、少し考え方が違います。45%を越える児童が自転車で通学したいと考えているにもかかわらず、実際にはその4%しか出来ていない、また全体では2%しか自転車で通学しておらず、自転車通勤する人より少ないという状況を変える為に、学校への安全な自転車道を整備しようという取組みです。ヨーロッパでは自転車通学が6割を超える国もあり、イギリスではこの現状を恥ずべき状況と捉えているようです。

このプロジェクトでは、自転車または徒歩で通学することには大きなメリットがあるとアピールします。イギリスでは、2割の男児と3割の女児が肥満と判定され、3割の男児と4割の女児は、1日1時間すら運動をしていません。子供たちの9割は自転車を所有しているのに、通学でそれを使っておらず、クルマで送迎される生徒が1985年に比べて倍増していると言います。

Are you a champion ?つまり子供の健康に対する危機感が大きいわけです。様々な統計データから、若者の心臓疾患、脳卒中や糖尿病のリスクが増大しているのは、身体を動かすことに無気力で座りっきりのライフスタイルが影響しいるのは明らかで、自転車通学によって、その打破を狙っているのです。またクルマによる大気汚染もあって、肥満だけでなく喘息の若者も急増し、合わせてその主要な死因と障害の原因になっていると警告しています。

このプロジェクトを進めているのは、イギリスのNPOである、サストランス(サストラン)/SUSTRANSです。SUSTRANSは、イギリス全国の自転車道ネットワークの整備を促進するための団体で、イギリス全土に支部組織を持ち、活発な活動を展開しています。全てが自転車専用道ではなく、交通量の少ない道路やクルマとうまく共存するように図られたレーンを含め1万6千キロにも及ぶネットワークが作られています。

Safe routes to schools

持続可能な交通輸送手段(Sustainable Transport)を意味するSUSTRANSは、真剣にイギリスにサイクリングの復権をもたらそうとしています。そのために安全な全英自転車道ネットワーク(National Cycle Network)を整備し、また自転車という交通によって人々の健康の問題、気候変動の問題、大気汚染の問題、エネルギーの問題、地域の活性化などの解決を目指しているのです。

Safe routes to schools

自転車道を整備することが、実は社会に多くの非常に有益な結果をもたらす、というのは、まさにこのブログでも主張し続けている考えですが、イギリスでは既に現実のものとなり、形が出来てきているわけです。その意味で見習いたい活動ですし、日本でも是非、実現することを願いたいところです。が、実は日本でも、持続可能な交通を考える市民ネットワーク、SUSTRAN Japanとして2000年に有志が情報の共有や議論を始めたものの、今では全くの活動停止状態になっているようです。

Safe routes to schools

SUSTRANS自体は単なるボランティア団体の枠を超え、イギリス政府や地方自治体、企業や多くの環境団体とも連携し、この「学校への安全な道」をはじめとする幾つかのプロジェクトを推進し、全欧の自転車道を結ぶEuroVelo、そして世界各地のSUSTRANSへと展開もしています。通学路の安全プロジェクトは、アメリカなどへも広がりを見せ、ヨーロッパでは国や都市によってもバラツキがあるものの、自転車による集団登校が普及している学校もあります。

Safe routes to schoolsSafe routes to schools

もちろん、冒頭で書いたような日本の現状、犯罪に巻き込まれる危険性というのは、交通事故からの安全とはまた違う問題です。徒歩と比べれば、あるいは犯罪被害の回避に有効な面もあるかも知れませんが、決定的な対策とは言えません。命の直接的な危険に晒されている時に、肥満の防止や地球温暖化と言ったのではピントがずれていますし、理解されないでしょう。

しかし一方で、必ずしも保護者が送迎できず、スクールバスの導入もままならない状況があります。地域のボランティアによるパトロールも、危機意識の高い最初はともかく、なかなかモチベーションが継続しないという問題もあるようです。そうした場合、子どもの身の危険と将来の健康に対するリスク、さらには子どもの未来のための地球環境まで含めて考えると、安全な自転車通学路の整備も意味がないわけではありません。

Safe routes to schools

日本では都市部を中心に、現状では自転車通学を禁止している学校も少なくないようですが、多くは交通事故の心配からだと思います。現在もスクールゾーンが設定されている地区も多いですが、より物理的に危険が排除された自転車ルートが整備されるならば、自転車通学、あるいは自転車集団登校も選択肢になりそうです。もしかしたら、少なくとも朝は親子で一緒に自転車で家を出て、子どもの学校を通って自転車通勤、なんてスタイルが普及するかも知れません。



あまり知られていませんが、5月5日は自転車の日でもありました。別に子どもとの関連を意図するものではなく、今月が自転車月間だから、その中の祝日にしただけで、5/5である必然性はないようです。もっとも、5/6がゴムの日、5/7が粉の日、5/8がゴーヤーの日、5/9が黒板の日、5/10がコットンの日と、語呂合わせだけでも、必然性があるとは言えませんけどね(笑)。

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この記事へのコメント
おはようございます。
ゴムの日・ゴーヤの日などに反応してしまいました。
(*^_^*)
しかし・・・
朝は親子で一緒に自転車で家を出て、子どもの学校を通って自転車通勤、なんてスタイルが普及
なんて、いいですネ!
Posted by kazupon at May 09, 2006 08:02
kazuponさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いろんな語呂合わせの日があるもんですよね(笑)。
そうですね。男親同士も顔見知りになったり、地域のつながりも増えそうです。たとえ時間的に伴走できなくても、地域の大人も子供も同じ自転車道を通るようになれば、自然と監視の目も行き届いて、子供が事件に巻き込まれる危険が減るかも知れませんね。
Posted by cycleroad at May 10, 2006 00:24
こんにちは。

子供達の安全を守る地域パトロールが盛んです。子を持つ親として当然参加しています。いつも思うのは、自転車を使ってのパトロール、が出来ないか?と。車では、行行しい。徒歩では行動範囲が狭い、大々的に組織化せねば広範囲の監視はままならぬ。でも、自転車パトロールなら・・・。少人数で機動力に勝る!まさにうってつけとみてます。
自転車はこれから、もっともっと人間に近づくと思ってます。
Posted by じゃっき at May 11, 2006 09:03
じゃっきさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね。たまにローカルなニュースで出ていますが、自転車でパトロールする地区も各地で増えているようです。また、パトロール中でなくても、ふだん利用される自転車のカゴにパトロール中と書いた札をつけ、通勤や買い物などの途中にも地域で子供を見守る動きも広がっているようです。
この話題については、私も去年の12月17日に、別に取り上げた記事があります。このすぐ下の" cycleroad "のところにリンクしてありますので、興味があればご覧になってください。
Posted by cycleroad at May 12, 2006 23:26
 
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