June 02, 2006

将来の為と言うより自分の為

子育てバリアフリーもう下げ止まるかという淡い期待は、もろくも崩れ去りました。


厚生労働省が昨日発表した出生率の話です。03年、04年と1.29で横ばいでしたが、05年は1.25と大幅に低下しました。いろいろな見方はあるかも知れませんが、将来的には社会保障制度の基盤が揺らぎ、経済にも悪影響が出るのは必至でしょう。第2次ベビーブーム世代が出産期を過ぎていくため、ここ5年が勝負と話す専門家もいますし、猶予の無い状況と言われて久しいわけです。

少子化対策については、子育て世代の経済的支援や、出産・育児しながらも働き続けられるような環境の整備、晩婚化や晩産化、あるいは非婚化への対策など幅広く指摘されていますが、なかなか効果のある施策は打てていません。国の根幹に関わる問題ですが、社会構造の根本に由来する部分も多く、一朝一夕にはいかない難しい問題です。しかし最近発生した問題ではありませんし、一刻も早い対策が求められるところです。

こども未来財団数字を聞いて実感が沸くわけでもなく、いずれにせよ、個人レベルの問題ではありません。ただ漠然と不安を感じている人は少なくないと思いますが、かと言って簡単に、じゃあもう一人という訳にもいきません。世帯当たり、0.1ずつ増やすといった問題ではないので、個人には手の打ちようがありませんが、だからと言って政治に対して期待して待つしかないのでしょうか。

ベビー用品メーカーの調査によれば、3歳以下の子をもつ母親の9割以上が、「外出」に不便を感じているそうです。授乳場所や階段や段差に苦労することもありますが、周囲の冷たい視線に外出しづらさを感じている人も多いようです。泣き声に気を使ったり、子供が小さいのに混雑した電車に乗るなというような視線を感じたりすることもあるでしょう。しかし当然のことながら、育児中でも必要な外出はありますし、育児の苦労の上に行動まで縛られるのでは、二人目以降の出産を躊躇するのも無理はありません。

電車に乗っても、最近でこそベビーカーの持ち込みが可能になりましたが、混雑時に子供を抱えた上に、荷物とベビーカーを折りたたんで持つのは容易なことではありません。空いている場合でも、危険防止のためバスなどでは、子供を乗せたままの状態での乗車を拒否されたり、安全の為とは言え、駅のエスカレーターも子供を乗せたままでは利用出来ず、階段を担いで登らざるを得なかったりします。

自転車からの幼児の落下事故が相次いだせいで、子供を自転車に乗せてヘルメットをかぶせていなかったりすると、非難の目で見られることもあるようです。障害のある人、お年寄り、妊婦にはシルバーシートが用意されていますが、子連れの母親は疲れていても、席を譲ってもらえるとは限りません。他にもいろいろありますが、まるで幼児の母親は外出するなと言わんばかりの状況に思える人も少なくないはずです。

エレベーターやスロープを増やすなどの要望もありますが、子育て中の母親が世間に望むのは、断トツで暖かく見守って欲しい、迷惑がらないで欲しいということだそうです。最近は、他人の子供を叱る大人は少なくなりましたし、下手をしたら誘拐などと間違えられかねません。昔のように、子供は社会の宝と、町ぐるみで育てるという意識は希薄になっています。

子育て応援証必ずしも昔のような価値観を是とするものではありませんが、例え見ず知らずの他人であっても、もう少し周囲の人間が、子育て中の母親に対して配慮すべきではないでしょうか。せめて、もう少し寛容になるべきでしょう。中には、周囲の迷惑を一顧だにせず、傍若無人に振舞う母親だっているかもしれません。せっかくの親切に対しても当然のことのように振舞ったり、周囲の許容を強要するような態度を見せる人もいると思います。

子育て中であろうと守るべき公共の場でのマナーはあります。人間ですから、マナー違反をしても平気な顔をしている人がいれば、親切にする気が失せることだってあるでしょう。腹立たしく思うこともあるかもしれません。それでも育児に疲れているのだろうと赤の他人を思いやることは、なかなか出来るものでもありません。

出生率が低下しているから他人の子供でも大切にせよとか、日本の将来の社会保障を支えてくれるからという打算的な理由で、子供がかける迷惑に目をつぶれと言うつもりもありません。最近では、かえって変な目で見られる可能性がありますから、駅や電車内で見知らぬ母親に親切にするのも勇気がいることかもしれません。

しかし、それでも親切にすれば、きっと喜んでくれるでしょうし、良いことをすれば、こちらまで気分が良くなることも間違いありません。今どき、一日一善なんて言葉を持ち出すのは気が引けますが、ちょっと良いことをしただけで、一日中気分よく過ごせたりすることも多いです。なかなか手は貸せなくても、寛容の気持ちを持って暖かく見守るのは、すぐにでも出来ます。子供に対して微笑むだけでも、母親へのプレッシャーは減るかもしれません。

こんなことで出生率が下げ止まるほど、甘いものだとは思っていませんが、少しずつでも、まず意識を変えていかなければ、社会も変わりません。とりあえず個人で出来ることは、たかが知れていますが、育児に対する理解と寛容と親切が広がっていけば、多くの人の意識が変わり、政治や企業の姿勢に変化を促すことだってないとは言えないと思います。



昨日から今日にかけて、サイトが表示されない状態が続いていたようです。サーバーに不具合が発生したとアナウンスがありました。この間、アクセスしていただいた方には、ご迷惑をおかけしましたが、再度アクセスしていただき、ありがとうございます。

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この記事へのコメント
15年ほど前、荷物を抱え子供を抱っこして山手線に乗っていましたら、後ろから肩をトントンと叩く中年男性がいました。
振り返ったら、男性は何も言わず、にっこり笑い、席を譲ってくれました。
今、私は、あの当時の男性と同じ様なことをしています。
子を持って、始めて子を持つ人の気持ちが解りますね。
それにしても、教育費の高いのは、どうにかならないものでしょうか・・・。
Posted by 3人の父親 at June 03, 2006 09:46
自転車に関しても、
2人まで(運転手?)以外一人だし
トレーラーは認知されていない(違法性は別として)ので
2人以上子供がいたらオチオチ買い物にもいけません。

まぁ、出生率低下(子育て環境が悪い)のは
そんなこと以前の問題なんでしょうけど・・・
Posted by ats_ats at June 03, 2006 11:11
こんにちは
先日も嫁さんと話していたのですが
結婚て二人でするものですよネ
1.25人なんて言われても>(@_@;)

二人で二人ならば現状維持
二人で一人しか生まないのであれば確実に減少

しかしながら、問題は結婚して何人生むなんて話より
一人で過ごす女と男(あえて女を先に書きました)の世情
に問題がありそうな感じがしています。
自活できる女性は良いことだといわれて久しいけども
自活(あるいは男性以上の収入)できる女性は
結婚しなくてもいいかぁ〜なんて・・・考えが芽生えても
結構自然な感じはしますよネ!
ただそれだけなんですが・・・・。
Posted by kazupon at June 05, 2006 15:20
3人の父親さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
親切を受けた人が、また他の人へ親切を広げていく。昔、ペイフォワードという映画がありましたが、小さな善意が少しずつでも世の中へ広がっていったら最高ですね。何を甘いことを、と言う人もいるでしょうけど..。
しかし、世の中の多くの人の意識が変わっていき、何とかしなければと考える人が増えてくれば、企業もわりと敏感に反応する可能性があります。働きながら子育てしたり、子育てする母親に優しい社会が徐々に整っていくかも知れませんね。
教育費の問題は、投票行動をとる有権者の割合をそのまま反映して、高齢者に手厚い現在の政治にも直結する構造的な問題ですが、最近の教育全般を見直す流れもあり、今後に期待したいところですね。
Posted by cycleroad at June 06, 2006 01:05
ats_atsさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、自転車の前後に子供を乗せている母親もたまに見ますが、3人となったら一人おぶって、前後に2人でしょうか。トレーナーを何台も連結するワケにもいかないですし、大変でしょうね。
確かに出生率と直結する問題ではないでしょうが、両親の留守中の子供だけの世帯で火事という痛ましい事件も時々起きますし、当事者にとっては深刻な場合もあるでしょうね。
Posted by cycleroad at June 06, 2006 01:15
kazuponさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
離婚や再婚もありますし、いわゆる未婚の母もいますから、出生率を論じる際には、一人の女性が生涯に生む子供の人数で、男は話の外になるようですね(笑)。
事故などで早世する場合もありますから、実際に人口を維持するためには合計特殊出生率で、2.07〜2.08が必要になるそうです。
おっしゃる通り、原則として出産は結婚が前提となるのが日本の現状ですから、晩婚化・非婚化が進むのが大きな要因となっていることは間違いありません。
結局、結婚や家族、あるいは老後など、ライフスタイルや人生観が変わってきていることが少子化を進めるわけで、先進国に共通する必然と言える部分も多いのでしょうね。
Posted by cycleroad at June 06, 2006 01:29
 
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