June 17, 2006

決して軽視すべきでない問題

世界最高峰の自転車レース「ツール・ド・フランス」にチームの監督として挑戦する新しいゲームがフランスで開発されているそうです。


日本では、あまり人気の高くない自転車競技ですが、ヨーロッパではサッカーに次いで人気の高い国もあります。日本で、こうしたゲームがどれ程売れるものなのか知りませんが、フランスのみならず、ヨーロッパでは売れるのでしょう。ところで、そんな自転車競技が不名誉な一位になったと報道されています。世界アンチドーピング機構によれば、昨年の薬物使用検査で陽性になったのは、自転車競技が最も多かったそうです。


世界反ドーピング機関:薬物ワーストは自転車 報告書

世界反ドーピング機関(WADA)がまとめた最新の報告書によると、昨年実施されたドーピング(薬物使用)検査で五輪実施競技の中では、陽性反応が最も多かったのが自転車で482件だったことが14日、分かった。2位は野球で390件、3位はサッカーで343件、4位は陸上で342件だった。自転車は検査に対する違反の比率も最も高く3.78%。陸上は2万464件と検査数が最多で違反率は1.67%。検出された違反薬物では筋肉増強作用のあるステロイド系が全体の48%を占めたという。検査は一昨年より1万4150件増え、違反も2909件から3909件に増加。ドンゼ広報部長は「ドーピングとの戦いは続くし、これからも違反者をどんどん摘発する」とコメントした。(AP共同)


以前から自転車競技では、たびたびドーピングが問題になり、薬物使用の蔓延が言われてきたのも事実です。しかし、今さらここで薬物使用の危険性や弊害は述べるまでもないでしょう。自転車競技に限らず、過去に選手の死亡に直結した例もあります。オリンピック競技でも、旧東側諸国などでドーピングが蔓延していたのは周知の事実であり、あまり表面には出ないものの、今も深刻な後遺障害に悩んでいる選手は少なくないと言います。

プロスポーツの世界なら、競技の結果が莫大な報酬に直結するのは明らかですが、オリンピックなどアマチュアの世界でも、記録や勝利を欲してやまない選手の闘争心が薬物使用につながる場合もあり、そこには一般の人の想像を超えるものがあります。競技の世界で、勝利への強烈な執着や記録への執念がなかったら、そもそも勝負になりません。ある意味構造的な原因と言えるのでしょう。しかし、薬物使用を阻止しなければ、競技が成り立たなくなることも確かです。

最近では単純な薬物使用に限りません。検査では判定しにくい血液ドーピングなどもあります。高地トレーニングや減圧室などを使う科学的なトレーニングとの判別も難しくなっていくでしょう。今後は、遺伝子操作による遺伝子ドーピングも心配されています。また脳科学の進歩も目覚しいものがありますから、脳の特定部位に刺激を与えて、体内のホルモンなどの分泌を促したりするような、言わば脳ドーピングが開発されても不思議ではありません。いずれにせよ、これからもイタチごっこは続くでしょう。

日本アンチドーピング機構ドーピングが発覚すれば、その選手のフェアネスが疑われ、出場停止など選手生命の危機になるばかりか、その競技全体もダーティなイメージに染まるのは避けられません。プロスポーツの世界なら、観客の減少やスポンサー離れ、テレビ視聴率の低下など、長期的には競技自体がダメージを受けるでしょう。ドーピングは結局、選手にも競技団体にもファンにも利益をもたらさないことになります。

しかし、一般の人の中にも、ドーピングが大した問題ではないと考える人がいます。ひいきの選手への盲信や、勝つためには仕方ない、必要悪、皆がやっているなどと考える人もあるでしょう。手口が巧妙化したせいで検査も厳密になり、少しの不注意、例えば風邪薬の成分でも陽性になったりするので、選手に対する同情論もあります。抜き打ちなどの方法や、検査自体の公正さの確保も問題です。日本ではあまり報道されないせいもあるかも知れませんが、それでもドーピング問題を軽視すべきではありません。

アメリカ大リーグでも、薬物疑惑が取り沙汰されています。先日、サンフランシスコ・ジャイアンツのバリーボンズ選手がベーブルースのホームラン記録を超えましたが、筋肉増強剤の使用疑惑の渦中にいるため、手放しでは賞賛されていません。むしろ野球ファンの反発は強く、アメリカのメディアも厳しい論調になっています。本人は否定していますし、まだ裁定も下っていませんので真偽の程は分かりませんが、せっかくの記録なのに残念なことです。

このボンズ選手の記録に対して、コメントを求められた日本のプロ野球のある監督が、「筋肉を増強したからと言ってホームランを打てるわけではない。素晴らしい記録だ。」と賞賛していました。確かにその通りでしょう。パワーだけでなく、技術やピッチャーとの駆け引きなどもあるはずです。ある意味で常識的な発言をされたのかも知れません。

日本アンチドーピング機構しかし、これは、この監督がステロイドや成長ホルモンなどを使ったことがないゆえに、単に知らないだけのようです。確かに筋肉も大きくなるのでしょうが、そのためにホームランが増えるのではないのです。本当のドーピングの効果は疲労が軽減し、あるいは回復が速くなることにあると言います。

どんな選手でも、長いシーズンの間には疲労が蓄積して、成績が落ちる時期があります。疲れでフォームを崩してスランプにも陥るでしょう。しかし、ドーピングのおかげで、そうした低迷期が無くなるか、極めて少なくなると言うのです。特に夏場の体力の消耗の厳しい時期など、その効果は絶大だそうです。このことが、シーズンを通算してホームランを量産する上で重要なのです。

ドーピングをしたからと言って、ホームランが増えるわけではないという趣旨の発言は、ドーピングは大したことではないという考えを導きかねない危険性があります。しかし、とんでもない誤りです。国民的な人気を誇るプロ野球の監督の発言は、青少年などへの教育的配慮も含めて、社会的な影響が大きいことは言うまでもありません。もちん悪意はないでしょうが、軽率の謗りは免れません。

日本人は、「卑怯」に対する反感も強いですし、そこまでしなくても、と考える人も多いようですが、日本のプロスポーツでも、意図はなくても、紙一重な状況にあります。当然、トレーニングや身体の管理に科学的な手法は取り入れられていますし、栄養の補給や足りない栄養素を効果的に摂取し、効果的な筋力アップを図るのは極めて合理的な考え方と言えます。しかし、ドーピングとは関係ないものであっても、中には禁止薬物が含まれている場合があり、不注意に検査にかからないよう慎重に対処するのが当たり前になっています。風邪薬もおちおち飲めません。

一方で、一般の人の間でも、筋肉を増強したいと考える人は増えています。筋肉増強効果をうたった製品も多数販売されています。スポーツのパフォーマンスを向上させるだけでなく、ダイエットを目的にする人もいます。筋肉を増強する製品を使用すれば、筋肉の増加の分だけ基礎代謝が上がってカロリーを消費するので、たいした運動をしなくても痩せるというワケです。

こうした製品を使うのは個人の自由です。合理的かつ効果的に足りない栄養素を補給することも悪いと言うつもりはありません。人工的な化合物ではなく、天然由来の成分とうたっている製品も多いです。しかし、リスクがあることも留意すべきです。最近は、インターネットで簡単に海外の製品なども手に入りますが、一部には問題もあり、中には健康被害や死亡に至った例も報道されています。

また植物性など天然由来の成分であっても、摂取過剰が問題視されているものもあります。もちろん影響が充分に解明されていないものも無数にあるわけで、そうした中で、長期的には高コレステロールになったり、内臓の機能に障害を与えたり、ホルモンのバランスや骨密度などに影響する場合もあるそうです。成分自体は悪いものではありませんが、結果として健康に対する副作用を及ぼす可能性があるわけです。

最近は、ドリンク剤からサプリメント、栄養補助食品からダイエット食品に至るまで、たくさんの製品が販売されています。爆発的に流行する成分もあれば、中にはガンに効くなどという詐欺的商品まで紛れています。身の周りには、商品ばかりか情報も氾濫していますし、感覚が麻痺してもおかしくない状況ですが、自分の身体のことを考えれば、慎重に判断する必要がありそうです。



今月の1日には、国際サッカー連盟(FIFA)の医師が、スイスで合宿しているブラジルチームに抜き打ちドーピング検査を行ったこともニュースになっていました。せっかくの素晴らしい大会が、ドーピングで台無しになることは、よもあるまいとは思いますが、選手の不注意などがないよう願いたいものです。

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