August 07, 2006

まだまだ道のりは長そうだが

駅前駐輪場昨日の日本経済新聞に、個人的には興味深い記事が載っていました。


「駅の放置自転車なぜ減る?」と題され、最近駅前の放置自転車が減っているという記事です。今までは増加の一途とか、対応に苦慮という報道ばかりでしたが、東京都の昨年10月の調査で、一昨年より15%も減ったそうです。自転車が目の敵にされる一因でもあり、大いに歓迎すべき状況です。

内閣府の調査でも、全国的に駅前の放置台数は減少傾向にあるそうです。永遠に増え続けるはずもないわけですし、問題がクローズアップされてからも久しく、自治体の取り組みも強化される傾向であったわけですから、ようやく頭打ちになったというのが実際のところかも知れません。

日経の記事では、江戸川区の例が紹介されており、「引き出した民間の工夫」という大きな見出しが掲げられています。駐輪場の運営から啓発活動、撤去作業に至るまで、一括して民間企業に委託し、区内7駅の放置台数を4分の1に減らしたそうです。

放置自転車対策

これは、それまで単純にシルバー人材センターから派遣される人員を配置して管理していた方法を改め、駅ごとにコンペに勝った企業と契約する方法だそうです。しかも、駐輪場収入が目標を上回った場合に、その5割を報奨金とするインセンティブ方式を取り入れていると言います。

民間の係員が駐輪場を利用するよう、ソフトに誘導して成果をあげているそうです。行政をスリム化し、民間の創意と活力を有効に生かす意味でも注目すべき手法と言えます。ただ実際に駐輪場収入は伸びたようですが、まだ1年目です。必ずしも、今後もインセンティブが続く構造ではありません。

継続的に効果を発揮するかは、今後の動向を見極める必要もありそうです。また、これは江戸川区だけの限られた取り組みに過ぎず、放置自転車の減った理由のごく一部の例でしかありません。都や内閣府の見解では、やはり市区町村の撤去作業が徹底されたこと、駐輪場の整備が進んだことの2点に尽きるようです。

立体駐輪場

豊島区の放置自転車税なども話題になりましたが、鉄道会社の取り組みも進んだようです。踏切の渋滞対策として、鉄道の線路を高架や地下化する連続立体交差事業がすすみ、そのぶん駐輪場用地が増え、機械式立体駐輪機などの開発も進んで収容台数も増えてきたことが、ようやく数字に表れてきた面もあるのでしょう。

私も川崎の例を過去に記事にしたことがありますが、駐輪場の値下げや一部無料化の動きも注目されます。駐輪場が増えても、利用されなければ意味がありません。以前も取り上げた福岡の天神地区では、市営駐輪場を3時間以内無料にしたところ、利用率が急上昇したようです。

利用者にとって、路上に止めればタダなのに、わざわざ料金を払って面倒な駐輪場に止めるのもバカらしいと思うのは自然です。実際、「タダなら、多少面倒でも撤去されるよりマシ。」と駐輪場を利用するようになったという声が聞かれるようです。

駐輪場無料化こうした動きは他の自治体にも広がりつつあるので、駐輪場はタダが当たり前になることを期待したいです。個人的には料金を払ってでも止めますが、やはり全体的に考えれば、無料にしなければ路上放置はなくならないでしょう。有料駐輪場が路上放置を誘発し、そのため撤去費用がかさむ、という悪循環は避けたいものです。

そうした意味からも、もう一つの理由、「撤去作業が徹底されたこと」には問題があります。要するに、撤去されるのに懲りた、撤去されないような場所に止める人が増えたということです。中には、有料でも駐輪場を利用することにした人がいるでしょう。自転車に乗るのをやめた人もいるかもしれません。

しかし、駅から少し離れた場所に止めることにした人もいるはずです。東京都の調査などを見ても、駅周辺について調査しているだけです。調査範囲のすぐ外側へ移動していても、現状では把握不可能です。商業施設が駅前商店街から減ったことも相まって、周辺地域へと分散しているだけかも知れません。

放置自転車については地域差も大きく、地区によっては駐輪場の確保状況にも差があります。また今後も順調に減り続けるのか、どの程度まで減るかは予断を許しません。更に今後の撤去作業の徹底いかんでは、また増加する可能性も否定しきれないわけです。

駅前に関しては減少傾向に転じたとしても、周辺地域へとドーナツ状に広げた可能性もあります。事実、普通の街路への放置は目立つ傾向にあると言います。そう考えると、放置自転車問題が、今後順調に沈静化の方向へ向かうと考えるのは、やや楽観的と言えそうです。

やはり、駐輪スペースは重要な都市のインフラであることが、より広く認知されると共に、今後も駅前の駐輪場無料化がより多くの地区に波及し、駐輪場利用が促進されるよう願いたいです。そして、そのことが駅前以外にも、当たり前のように駐輪スペースが充実することへつながっていくことを期待したいところです。



大阪でも、最近大きな通りに面した歩道などに、ちょっとの間にずい分駐輪機が増えたような気がするんですが、気のせいでしょうか。迷惑駐輪が減ったと言っても、住んでる地域によっても、だいぶ印象は違うでしょうね。

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この記事へのコメント
出張で年に1度は英国に行きますが、ご存知のように英国全国に伸びるモーターウエイと呼ばれる高速道路網はすべて無料です。
田舎道はまだまだですが、日本の国道にあたるパブリックウエイの自転車通行帯は、ほぼ完全に整備されています。
ロンドン市内も車道の左端には大きな表示で、BICYCLEと書いて専用レーンを設けているところも少なくありません。うらやましい限りですね。また、朝の都会はヘルメットを被ったチャリ勤のサラリーマンをたくさん見かけます。チャリはTREKが多いですね。しかし、不思議とあまり放置自転車を見かけないのです。なぜなんでしょうか?身近な人に聞いてみたのですが、「盗難が激しいから」と言う人もいれば、「高価なものを放置する人なんていないよ!」という人やいろいろです。
機械式駐輪場や市営駐輪場などは見かけたこともありません。自転車普及率の違いなのか?市民の意識の違いなのか?未だに理解できません。
Posted by Taka at August 08, 2006 12:19
Takaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私もイギリスの道を運転して旅した経験がありますが、イギリスの田舎は本当に魅力的ですよね。自転車レーンについても、おっしゃる通りうらやましい限りです。
全英自転車道ネットワーク(National Cycle Network)については、私も過去に取り上げたことがありますが、(この下の、cycleroadの文字ににリンクしてあります。)住民の自治やボランティア、NPO、そしてその基盤となる市民社会の成熟を感じますね。
放置自転車については、私も確かなことはわかりませんが、自転車の値段や使用頻度、どこでも止める習慣と盗難の可能性、市街と住宅地、ドイツやオランダ、日本とは倍ぐらい違う普及率など、様々な要因があるようです。いずれも日本とはだいぶ違います。レーンが整備されていることもあって、職場まで乗って行くと、駐輪が分散するのもあるのでしょうね。
Posted by cycleroad at August 09, 2006 00:11
 
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