February 21, 2007

なぜ疑惑が解消出来ないのか

自転車の車道走行を禁止にする法案のその後と、最近の動きについて書いてみようと思います。


先々月に何回か、警察による道路交通法改正への動きについて書きました。この改正は、自転車の歩道走行を拡大しようとするものですが、今、改正する必然性に乏しく、警察の真意は、自転車を歩道に押し込め、車道走行出来なくすることにあるのではないか、というものです。その後、マスコミでも取りあげられました。

この問題は、私も非常に関心のある事柄ですので、個人的に、その後の経緯をずっと注目してきました。同時に、自分の出来る範囲の行動もして来たのですが、その中で感じるのは、一般的な、特に自転車に興味がない人は、当然のことながら、あまり問題だと思っていないということです。既に歩道が当たり前でもあります。

それどころか、ある程度関心のある人の中でも、問題点がよく解からないという人も多かったのではないでしょうか。どこにも車道走行禁止と書いてないし、逆に車道走行が原則で、子どもや車道走行が危険な場合に限って歩道走行を認めるのが、なぜマズイのか、と言われると、説明が大変な部分があります。

確かに、自転車対策検討懇談会がまとめた提言にしても、その後の警察の法案化へ向けてのアナウンスにしても正論に聞こえます。ただ、歩道の自転車走行を認める範囲を広げ、歩行者との事故多発を加速させると言われれば、その点については、なるほど問題だという認識が一般的だと思います。

自転車レーン自転車の車道原則を知らなかった人も多いでしょう。歩道を暴走する自転車の脅威は多くの人が感じ、これ以上、歩道を自由に通行させることもないが、全ての人に車道を走れと言うのも無理があるというのが、一般の多くの人の率直な感想ではなかったでしょうか。

サイクリストが懸念する点、法案は正論に見えるが、一部恣意的に運用され、自転車が車道を走れなくする意図があるとしか思えないという主張は、一般の人には説得力が乏しかったのも事実でしょう。まだ殴ってもいないのに、殴ろうとしているとしか思えないと指摘するのに似ているかも知れません。

法制化されたとしても、その意図は見えにくく、恣意的な運用が始まらない限り問題だとわからないような進め方です。法案を通すための常套手段として、警察官僚が、自分達の持って行きたい方向を上手くカモフラージュしているように感じます。

確かに、サイクリストの中でも、あまりに杞憂であるとか、重箱の隅をつつくような議論だと感じた人もいたはずです。実際に言っていますが、警察に、それは考えすぎ、誤解だと言われれば、それ以上追及するのは困難な部分もあります。

しかし、よく見ると矛盾や不審な点も多く、実際に多くのサイクリストは問題だと感じたわけです。過去30年に渡って自転車を歩道に追いやってきた交通行政は紛れもない事実ですし、自転車を車道から排除する意図がなければ、現行法でも歩道を自転車通行可に指定すればいいだけの話で、改正の必要は認められません。

長くなるので割愛しますが、様々な点を勘案して判断しても、問題を含む法案なのは明らかだと思います。ジワジワとその反応は広がり、ネット上でもあちこちで様々な議論が交わされ、NHKをはじめとするテレビや全国紙などでも報道され、社説(毎日新聞・朝日新聞ほか)にも取り上げられ始めています。

こうした警察の動きに呼応して、全歩連や自活研などのNPO法人の方を中心とした活動も行われ、警察庁へ多くのパブリックコメントが寄せられました。その詳しい経緯は疋田さんのメルマガなどを見ていただくとして、警察の担当者が、そのような意図はないことを明言するに至ったことをご存知の方も多いと思います。


道路交通法改正案の説明(警察庁横山交通企画課長)
中央の再生ボタンをクリック(又は2度クリック)すると再生します。音が出ます


道路交通法改正案の説明続き、同上

自転車議員連盟の総会での、その場面の動画がアップされていますが、幹線道路の車道通行禁止などということはしない、それを推進する政策はとらないと警察庁の担当者がはっきり発言しています。計画的に自転車通行環境を整備することや、原則車道を徹底することまで述べています。

法案が成立して法律の条文となり、その後の警察行政の実際の動きを見ていかなければ、最終的には判断できませんが、サイクリストとしては、ひとまず納得のいく回答のように見えます。しかし、それでもなお懐疑的に見る人は多く、懸念があると主張する人は少なくありません。

主な懸念としては、歩道をペイントするなどして自転車走行部分を設けて、歩行者と分離する政策が進められるだろうという予測に基づきます。歩行者と分離するとの大義名分のもと、歩道の色分けが進み、この歩道の自転車ゾーンを走らされるのではないかと心配するわけです。

現在も歩道に色分けをして、自転車通行部分が設置されている歩道がありますが、これはあくまで、自転車が歩道を通行する際に、車道側を通りなさいよ、という印です。車輌である自転車の走行するレーンは、当然車道に設けるべきであって、歩道上に色を塗ったものは自転車レーンとは言えません。

今は、自転車通行可の歩道を通らなくてもいいわけですが、歩道に自転車走行部分を設けたのだから、そこを通れば歩行者ともクルマとも事故になりにくいとの理由から、将来、この法案によってその場所の車道走行が禁止されることも充分考えられます。

それは話が違うと言っても後の祭りです。法制化してしまえば、将来何か問題が起きても役所の担当者の発言など、何の役にも立たない事も考えられます。担当者も替わっているでしょうし、今まで刑事告訴された例を除けば、過去の役所の担当者がその発言や決定、または不作為の責任を取ったという話も聞きません。

そうした懸念から、この警察担当者の発言後も懐疑的に見る向きがあるわけですが、一昨日から昨日にかけて各メディアに流れたニュースを見ると、まさにそれを連想させる部分があります。朝日新聞の記事から引用します。


歩道走る自転車、全国調査へ 事故増加受け警察庁 /2007年02月20日

 警察庁は19日、自転車が歩道を走行する際の危険性について点検するよう全国の警察本部に指示した。対象は「自転車通行可」となっている歩道の全5万区間(計約7万キロ)と、駅、商業施設、学校施設から半径約500メートル以内にある歩道。歩道上に自転車走行部分を設けるなどして、歩行者と自転車の分離を進める考えだ。

 道路交通法上、自転車は車道通行を義務づけられ、歩道は「通行可」に指定されている場合しか走れないが、実際には、歩道を走行しているケースが多い。交通事故全体が減少する一方で自転車が関係する事故は増加傾向にあり、対歩行者の事故は10年前の4.6倍に上っている。

 「通行可」に指定されている歩道で、今回の点検で歩行者が危険にさらされていると判断されれば、歩道上に自転車通行部分を設けることや、指定の解除も検討する。また、指定されていない歩道については、車道走行や降車を求める看板を設置して指導を強める。

 4月末までには点検を終えたい考えで、自転車が車道走行した場合に危険な場所もあわせて調査を実施。危険な場所については、国土交通省など道路管理者の協力を得ながら、車道上に自転車道などの自転車走行空間を確保する方法を検討する。


新聞紙上などでの扱いは、決して大きくありませんが、このこと自体は、やっと警察が歩道を暴走する自転車への対策を始めたか、と歓迎する人も多いことでしょう。ある意味当然の対応であり、むしろ遅きに失した感があります。しかし、事はそう単純ではありません。

記事の最後の部分、「車道上に自転車道などの自転車走行空間を確保する方法を検討する。」のは大いに歓迎すべき動きですが、最初の段落の部分、「歩道上に自転車走行部分を設けるなどして、歩行者と自転車の分離を進める考えだ。 」という部分は、まさに懸念のままです。

歩道上の自転車通行ゾーン歩道上に区切られた通行帯は全くと言っていいほど機能していない現実があります。本来、歩道に自転車通行部分を作れるのであれば、その部分を削って車道とし、あくまで車道部分に自転車レーンを設置するべきだと思います。

しかし、今までも歩道を拡幅し、その歩道に自転車を走らせる方向で、一貫して整備が進んできました。従来の方向を踏襲するほうが、新たな費用も発生せず合理的とされれば、歩道上に自転車通行空間の整備が進むのは不可避と思われます。

記事にあるように、もし、歩道上で歩行者と自転車が分離され、かつクルマとの事故を防ぐのであれば、歩道上の自転車走行空間を通るべきだと考える人が大多数でしょう。世の中の大半の自転車はママチャリであり、そのママチャリに乗る大多数の人は、なんの疑問もなく歩道を走っていることを考えれば必然です。

歩道通行でも歩行者との事故を防げ、しかもクルマから安全であれば、ほとんどの人が納得します。今回の歩道の危険箇所点検も、そうした流れの予兆ではないかと危惧されるわけです。結果として自転車を全て歩道へ上げてしまう方向に進むのではないか、と考えるのは、穿った見方でしょうか。

最終的には警察官僚の思う壺というのは充分にあり得るシナリオです。そう危惧するサイクリストの声も多く聞きます。警察にしてみれば、飲酒運転の厳罰化など、他の改正に紛れて問題なく通ると思っていたら、思いのほか摩擦があったものの、いずれ、思う通りに持っていけると考えているかも知れません。

結局のところ、日本では自転車が歩道を通るのが当たり前となり、その中でいかに秩序を形成し、歩行者との事故を防ぐかという議論に収束していく可能性があります。ごく少数のサイクリストの意見はあくまで少数意見として、我々も歩道を走らざるを得ない日がやってくるのでしょうか。

現時点では不確定な要素が多く、憶測に過ぎないことは否定しません。過去の経緯からして、疑心暗鬼になっているサイクリストも少なくないと言えるでしょう。しかし一方で、そうした不安や懸念を完全に払拭出来ない材料があるのも事実なのです。



あまり知らない方もおられると思うので、関心を持ってらした方なら先刻ご承知のことにも触れた関係もあり、長くなってしまいました。でも、もはや歩道なんて走りたくないという一部のサイクリスト以外には、どうでもいい話なのかも知れません。

関連記事

再び現れた悪夢へのシナリオ
先々月の2日、この問題について最初に書いた記事。

自転車を歩道に封じ込めるな
同じく5日、続いてこの問題について書いた2番目の記事。

何故それでも横車を押すのか
続いて11日、懲りずにこの問題を扱った3番目の記事。



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この記事へのコメント
 自転車は、いつまでも自由を感じさせる乗り物であってほしいと思ってます。
 最近、自転車は骨盤の動きを練習するために、ますますいい働きをしてくれています。棒術を習い始めたのですが、骨盤で押し出すみたいなイメージの動きで、これがまた、自転車の”ある乗り方”によって抜群のトレーニングを提供してくれています。

 いつも、自転車の話題、拝読しています。
 今後ともよろしくお願いいたします。

 しなやかな技術研究会 つねとうとうじ
Posted by t_t at February 22, 2007 10:49
つねとうとうじさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、歩道だけを徐行する乗り物になってしまったら、その効用や快適性は半減どころではないでしょう。楽しさも失われて、魅力のない乗り物になってしまうでしょうね。
棒術について、私は門外漢なので、「ある乗り方」がどのようなものか想像つきませんが、武術のトレーニングにも有効なのですか。自転車には腸腰筋などの、いわゆるインナーマッスルを鍛える効果があって、様々なメリットがあるのは知られています。腰椎を支える筋肉の強化によって腰痛が大幅に改善したという話も聞いたことがありますし、陸上競技のトレーニングにも有効だと言います。骨盤ということですが、周囲のインナーマッスルとの関係もあるのかも知れませんね。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。
Posted by cycleroad at February 22, 2007 21:24
 
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