March 08, 2007

子供の元気がエネルギーの源

ここのところ、毎日のように金属の盗難が報じられています。


電線や建設資材に車止め、火の見櫓の半鐘、公園の滑り台、線香立てからガードレールまで、屋外にある金属が盗まれる事件の頻発は、もはやニュースにもならないほどです。最近は比較的単価の高い銅やステンレスだけでなく、鉄製のものまで狙われていますので、まだ被害は拡大しそうな勢いです。

今は見なくなった回転遊具人目につく場所でもクルマ止めなどが盗まれています。すべり台などは目撃者もいる中、白昼堂々と盗まれたと言います。目撃者は役所の仕事だと思ったそうですが、子どもが屋外で遊ばなくなって久しい昨今、公園は、もはや人目につきにくい場所なのかも知れません。

公園の遊具は、こうした被害が発生する前から撤去される傾向が強まっていましたが、盗まれても復旧されないなど、撤去の流れを更に加速させそうです。すべり台やブランコ、鉄棒に雲梯、ジャングルジムに回転遊具など懐かしく思う方は多いと思いますが、これも時代の流れ、仕方のないことなのでしょうか。

確かに遊具が老朽化したり、新しくても子どもが事故で怪我をすれば、その安全性や管理責任が問われます。公園での球技禁止もそうですが、管理者には遊具を設置しても厄介なだけならば、撤去され消えて行く流れは変わりそうにありません。

日本では減少する公園の遊具ですが、なんとアフリカでは新しいタイプの子どもの回転遊具が次々と設置されています。その名もPlayPump、ポンプの機能をもった回転遊具です。いや、遊具の形をしたポンプと言うべきでしょうか。ただでさえ遊び道具の少ないアフリカの子ども達は、この遊具に大喜びです。

PlayPump
PlayPump

喜んで、ぐるぐる回して遊びます。すると、ポンプが地下水を汲み上げる仕組みになっているのです。言わば、子供の遊ぶ力をエネルギー源として利用したポンプなのです。きわめてシンプルな話ですが、人口爆発と貧困と衛生状態の悪化に悩む発展途上国では、その意味するところは決して小さくありません。

サハラ以南のアフリカで安全な飲料水が得られない人々は数億人に上ります。そして世界では、子どもを中心に年間数百万人の人が水に関連する病気で死んでいるのも事実です。このプレイポンプは原始的に思えますが、井戸を掘っても汲み上げるポンプの電源が得られない場所では実に合理的で現実的な手段なのです。

PlayPump

NGOや企業・個人の寄付、国際機関などの資金拠出によって、南アフリカやモザンビーク、スワジランドといった国々に既に数百基設置され、今後も設置されて行く予定になっています。意外に能力は高く、100メートルの地下からも水を汲み上げられるそうです。

集落や学校などの近くに設置されるPlayPumpですが、汲み上げた水を貯蔵するタンクは、設置された地区に数少ない広告の手段として活用され、その収益はポンプのメンテナンスに使われるというユニークなビジネスモデルも稼動しています。エネルギー源だけでなく、実態に即してよく考えられています。

PlayPumpPlayPump

人々は、このPlayPumpによって安全な水が得られて、病気や死の危険が減るだけではありません。水を汲みに行くだけに長い時間と労力をとられていた女性や、そのため学校へも通えなかった多くの子ども達を救ってもいるのです。


(注:中央の再生ボタンをクリック(又は2度クリック)で再生します。音が出ますのでボリュームに注意。)

飲料水だけでなく、作物を育てるなど、自立と貧困からの脱出にも貢献しています。子どもたちにすれば、きれいな水が飲めて、つらい労働から救われ、学校へ通える時間が出来て、その上遊び道具まで得られるわけです。子どもたちの笑顔が眩しく見えます。

ひるがえって日本では、子どもを狙った犯罪も続いて、うっかり公園で子どもを遊ばせられないとする親も増え、治安に対する不安は高まっています。子どものほうも、最近は友達と公園に集まっても、各自別々にテレビケームをしていると言います。遊具があっても、今どき見向きもしないのかも知れません。

遊具と共に、日本で子どもが元気に屋外を駆けまわる光景は、消えて行く運命にあるのでしょうか。アフリカの途上国と日本、その豊かさは比べようもないはずですが、子どもたちの笑顔に限っては、必ずしも比例していないようにも思えるのです。

PlayPump



最初の写真の日本の回転遊具の名前、グローブジャングルって言うんですね。知りませんでした。ところで、鉄くずとしては処分しにくいのでしょうか、駅前の自転車が一夜にして持ち去られたという話は聞きませんね。

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