April 19, 2007

実際問題としてどこを通るか

今国会では、道路交通法の改正案も成立する見込みです。


この法案のうち、自転車の歩道通行を一部容認する改正については、サイクリストにとっても少なからず影響を与える可能性があるので、私も何度か取り上げてきました。一部のサイクリストを中心に、ネット上などでも話題となった法案でしたが、ついに法律となるわけです。

法案の最終的な条文は警察庁のサイトでも確認できますが、いずれにしても法律は大枠を定めるわけですから、ある意味の曖昧さはどうしても残ります。その後の政令や条例、施行細則や通達などによって左右される部分も多く、警察による現場での運用によって変わってくる部分もあるでしょう。

先日の産経新聞に、今回の改正の自転車に関連する部分についての記事が載りました。早晩記事が削除され、リンク切れになることも予想されるので下記にも引用しておきます。


自転車の歩道通行 「降りて押す」徹底 人を優先、軽車両の意識もって

春風を受けながら自転車で出かける家族連れが増えている。国会では自転車の歩道通行を一部容認する道路交通法の改正案が審議中だ。一部に全面容認という誤解もあるようだが、まったくの逆。歩行者をかき分け自転車が走る無秩序状態を是正し、歩行者が多いときは降りて押すという原則を徹底するものだ。大人は子供たちの手本となるよう、今からこの原則を実践したい。(八並朋昌)

道交法改正へ審議

歩道での並走「自転車は乗っていれば軽車両ですが、降りて押していれば歩行者になる。軽車両としての自転車は、車道を走るのが原則であることをまず再確認してほしい」と話すのは、改正案を担当する警察庁交通企画課の課長補佐、井沢和生さん。

現行法では、通行可能標識がある歩道だけは自転車通行が認められているが、改正案では「標識がなくても小学生以下と、車道通行が危険と政令で認める人は、歩道通行が可能になる。さらに、路上駐車があったり自動車通行量が多かったりで安全に通行できない場合は、誰でも歩道通行が可能になる」という。

「ただし」と井沢さんは語気を強める。「現行の通行可能な歩道も、改正案で通行可能になる場合も、歩行者がいる場合は徐行しなければならず、歩行者の妨げになる場合は一時停止して避けなければいけない」。つまり、「歩行者が多い歩道では、自転車は一時停止の連続となり、乗ったままでは前に進むことはできない」のだ。

ならば、狭い車道を大型ダンプが行き交って危険な場合でも自転車は、人が多い歩道は走れない。どうすればいいのか…。「最初に言ったことを思いだして」と井沢さん。「自転車を降りて押し、歩行者として歩道を通ればいい」のだ。

この原則は道交法で定められ、国家公安委員会告示の「交通の方法に関する教則」にも示されており、違反すれば「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」となる。だが、「法令を一概に当てはめて取り締まることは現実には不可能」という。

“走る凶器”

そもそも、標識で歩道通行を可能にしたのは昭和53年から。自動車対自転車の事故が急増したためだ。前提には、車道の自転車レーン整備推進があった。実際には整備は進まず、「自転車は歩道を走っていい」という誤解だけが広まった。

この結果、自転車も“走る凶器”となった。平成18年には自転車が絡んだ交通事故は17万4262件で、うち対歩行者は2767件と、10年前の5倍近くに急増。巻き込まれた歩行者のうち6人が死亡している。「改正法案は自転車を車道に戻し、“歩行者で込んだ歩道では自転車を降りて押す”という原則を徹底することが目的」と井沢さんは強調する。

自転車を車道に戻す方針を打ち出せたのは、民間監視員導入など取り締まり強化で、自転車の車道通行を妨げる違法駐車が減ったことも大きい。さらに、「車道の自転車レーン設置の可能性も調査しており、この結果に基づいてレーン指定などを道路管理者と検討することになる」とも。

改正法案は、今国会で可決されれば来春にも施行される見込みだ。警察庁は自転車業界や自治体の交通安全教室などを通じ、自転車利用者に周知を図る方針だが、「10年20年と無秩序状態が続いたので、法改正ですぐに正せるとは思わない。それでも、できることを一つ一つ積み重ね、前に進んでいくしかない」(井沢さん)。

レーン実験始まる

東京都世田谷区は、自転車レーンを設置する社会実験を10月に1週間から1カ月程度行う。同区は狭い道路が多く、歩行者、自転車、自動車それぞれの安全確保や、自転車のルール順守が進むかどうかを見る。両側の歩道にレーンを設け、それぞれ一方通行にする場合と、歩道の車道側と車道の路側部にレーンを設け、それぞれ一方通行にする場合を想定する。

大分市は昨年1月、中心部で朝夕の通勤・通学時間帯に車道両側に一方通行の自転車レーンを設ける実験を行い、通行した市民から、おおむね肯定的な評価を得ている。(2007/04/17)


この記事の全体的な論調はともかく、警察庁の改正案の担当者は、車道通行の原則を強調し、三十年もの間「歩道」通行が当たり前のようになっていた自転車を改正法案では「車道に戻す」と説明しています。少なくとも車道走行が禁止される方向ではないので、サイクリストにとっては、ひとまず納得出来る姿勢と言えそうです。

同時に、標識がなくても路上駐車があったり自動車通行量が多かったりなど、安全に通行できない場合は、誰でも歩道通行が可能になるとしています。これについては現状の追認とも言えるわけですが、一方で歩行者で混雑する歩道では「自転車を降りて押すという原則を徹底することが目的」ともしています。

自転車用地図自転車が加害者となって歩行者が死傷する事故が増加している以上、警察としては歩道上の無秩序な現状に目をつぶるわけにはいかないでしょう。狭い車道で自転車の走行が危険な場合、自転車は歩道を通れるものの、自転車を降りて押し、歩行者として歩道を通るべきと、記事中でも警察の担当者が強調しています。

このあたりに警察の本音が見え隠れすると指摘する人もいます。自転車は車道通行が原則と言うものの、車道をシェアする考え方が無く、実質的な車道通行禁止で、自転車を排除する道路の容認だとする意見もあるようですが、ある程度は仕方ないのではないでしょうか。

サイクリストにすれば、狭くて危ない道路は一方通行にするなり、大型車両の通行を制限するなりして、車道の安全を確保すべきと考えます。私も心情的には全く同感です。そもそもクルマ優先の道路行政に問題があり、人の行き交う都市部を物流のトラックが通過する都市の構造がおかしいと言えばその通りでしょう。

しかし、誰しも流通などの恩恵を受けているのも間違いありません。例え正論でも、渋滞を加速し物流を滞らせる、経済合理性に反する規制で自転車を優先させろというのは勝手な論理として、現状では世論の支持も得られないでしょう。かと言って車道は危険だからと歩行者を押しのけての歩道走行を認めれば事故は減りません。

シティサイクリングマップル危険でも車道を通るか、歩道を徐行したり、押して歩くかの選択は現状では仕方のないところです。ただ可能であれば、車道が狭くても歩道の一部を車道に編入して自転車用レーンにするなど、歩行者と自転車とクルマの分離を進めるべきです。歩行者との事故を防ぐ上でも、歩道走行の検挙より有効なのは言うまでもありません。

中にはそのスペースもない道路もあるでしょう。その場合は、「迂回」という手もあるのではないでしょうか。狭くて自転車の通るべきスペースの確保が難しい場所は、一本裏の道路へ誘導するとか、多少遠回りでも迂回する道に自転車レーンを設置し、そちらの通行を促していくのが現実的な選択肢だと思います。

レーンとしては整備されていないが通りやすい裏道なども含め、車道通行の容易な大通りや整備された自転車レーンなどと接続して使える道であることが重要です。そうした「お勧め」の道路がネットワーク化されれば自転車の通行に便利です。自然と利用され、歩行者との分離も進むのではないでしょうか。

折しも、最近の自転車ブームを反映してか、昭文社からは自転車用のシティマップも発売されました。地形の起伏や坂道の度合、路肩の情報やお勧めサイクリングコースも載っているそうです。スポーツ車に乗る人などは、必ずしも坂を避けるとは限りませんが、自転車向けの情報を集めた地図は便利そうです。

車道の走行がしにくい場所、歩行者が多くて歩道を通りにくい場所などと共に、その道を迂回するコースや自転車で通りやすい道路など、実際の走行情報が加わって欲しいものです。その中から事実上の自転車通行路のネットワークが形成されていけば、歩行者との事故を防ぎ、安全走行や自転車の更なる活用を促す上でも有効です。

自転車で体型管理脚力がある人や、私も含めスポーツ系の速い自転車に乗っているサイクリストにすれば、歩道も通らないし、あまり関係のない問題かも知れません。しかし、世間一般に本当の自転車の姿が認知されず、その有用性が理解されない状態のままでは、この法案問題ではありませんが、将来的に自らの首を絞める状況へとつながりかねません。

せっかく自転車がブームとなって、多くの人の耳目を集める今こそ、自転車の通行空間整備の推進を求める声も注目されるチャンスだと思います。一部のスポーツ系のサイクリストだけの問題でなく、全国に8千万台以上という自転車の存在を無視して、このまま道路行政を進めていいはずもありません。

駅までの足としてしか使っていなかった人でも、ブームで自転車を見直しはじめています。スポーツ車に乗り換える人も増え、環境への負荷を考える人が増えていることもあって自転車に乗る距離も増えているようです。今後のため、利用者の立場からも通行環境について考えるべき時かも知れません。

余談ですが、日本でも活動していた韓国の女性歌手、チェヨンさんが自身の体形管理の秘訣は「自転車に乗ること」だと告白したと報じられています。健康だけでなく、ダイエットやシェイプアップの効果の話題などをきっかけに、もう少し女性の関心が高まってくれば、更に道路行政の見直し議論に勢いがつく気もします。



日本とアメリカ、相次いでショッキングな銃撃事件が発生しました。真相はわかりませんが、被害者の無念は察するに余りあります。同じことはイラクの無差別爆弾テロの被害者にも言えることですが、その惨劇に麻痺している事実にも愕然とします。

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すでに警察の取り締まりにも変わってきているが利用者次第の部分も。



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この記事へのコメント
メインの街道で自動車の妨げになるよりは、景色をみながら裏道をのんびり楽しもう・・・というのは私も以前からずっと言いつづけてきたことです。

渋滞の列のわきを高速で通り抜けるなんて事は正直あってはならない事だとおもいますし、走る場所がないならクルマで遠征するなり、目的地までは徐行するなりすればいいわけですし。

行動範囲を広げようとすればそれだけ徐行する必要がありますし(最終的には降車もふくめ)、スピードを出したければそれだけ場所を選ぶ必要がある(最終的にはレース場)のにな、といつも思ったりしています。

車道か歩道か、という問題はあくまで「自転車の速度規制」の問題から派生するものだと思うので、後者の議論が深まれば自然と解決してくるのにな〜なんて思いもありますし。
Posted by 鉄下駄 at April 20, 2007 06:22
鉄下駄さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
自転車を楽しむという考え方ができる人、つまり趣味で自転車に乗っているような人の多くは、同じようなことを考えたり、実践しているかも知れませんね。道を選んで走り、迂回したり、のんびり走ることも苦にならないでしょうし、歩行者優先もわきまえていると思います。
ただ、自転車を単なる「足」としてしか利用していない人の中には、混雑した歩道であろうと最短距離を通り、爆走するなどの迷惑で危険な行為が見られるのも事実です。
そこで、そうした人にこそ、裏道や迂回路などを利用してもらうべく、わかりやすく表示し、お勧めの道をつなげて自転車道のネットワークにすべきだと思います。混雑した歩道を無理やり通るより結果的に速くて通りやすければ、急ぐ人でも利用するでしょうし、多くの人が利用し当たり前になれば、歩行者との分離がすすんで事故も防げると思うんですよね。
Posted by cycleroad at April 20, 2007 21:30
裏道をのんびり走ると「主観的時間」でいうと早く目的地にたどりつくよな、なんていつも思ったりしています。ついでに精神衛生上もプラスの効果が期待できるので、本当はいいことずくめなのにな、というのが本音です。

そうは言っても「客観的時間」が問題になるケースでは四の五の言っていられない・・・ということにもなるかと思うのですが、そうした心理の人が「速さ=客観的時間」のメリットを求めて裏道に入ってきた場合、今度は「裏道を爆走」して「さらなる時間の短縮」を求めないかちょっと不安です。

客観的にはマイナスでも主観的にはプラス、っていう場合と違って客観的にも主観的にもプラス、っていうケースにも固有の問題が出てくるかな、とは思います。具体的な解決策となるとちょっと難しいかと思うんですけど・・・。
Posted by 鉄下駄 at April 21, 2007 11:11
鉄下駄さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど。おっしゃるように、仮に歩行者との分離がすすんだとしても、また別の問題が起きてくる可能性も高いですね。最終的には利用者一人一人のモラルに依存する部分になってくるのかも知れません。
クルマの場合、周囲に対して危険な運転や迷惑な行為に対し、反則金制度など法の執行があることによって秩序が保たれている部分があるわけですが、自転車に対しても最終的には何らかの取り締まりの強化が必要という議論になっていく可能性もありますね。
今現在は、警告の次は赤切符しかありませんが、クルマのように免許制にして青切符を導入しろなんて言う人もいます。その実現性はともかく、モラルの向上が期待できないのであれば、なんとか道路の構造を使うとか、うまく誘導することによって解決できないものかと思ってしまうのですが..。
Posted by cycleroad at April 21, 2007 20:48
ふと思いついたんですが、昔は歩道は市電乗り場の「安全地帯」同様、歩道の車道に面するところは20センチくらいの段差で屹立していました。その時点では自転車に歩道を通行せよといっても市街地では無理だったはずです。
いつだったか「バリアフリー」のために歩道が交差する歩道無し道路や横断歩道と接するところは一面に平たく整形され、歩行者は前ほど安全でなくなり、車の歩道に乗り上げての駐停車が増え、そして歩道を通る自転車が増えました。当時滅多に見かけない障害者のためのこの処置をかなり不満に思っていた記憶があります。この工事と自転車の歩道走行を許す交通法規改正とどっちが先だったんでしょう?
Posted by 横着サイクリスト at July 02, 2013 15:55
横着サイクリストさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、どちらが先だったのかは知りませんが、バリアフリー化と自転車の歩道走行は相前後して進んできたのかも知れませんね。
バリアフリーのために歩道を改良しても、クルマが乗り上げたりすれば使えませんし、歩道を自転車が無秩序に通行するようになれば、かえって危険になることも考えられます。
そけでも行政にすれば、一石二鳥の整備ということだったのかも知れませんね。

Posted by cycleroad at July 03, 2013 23:32
 
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