April 22, 2007

中速道とエコイノベーション

経済産業大臣の諮問機関に産業構造審議会という組織があります。


その産業構造審議会が、環境を重視した技術革新、「エコイノベーション」の推進を求める提言をまとめ、明日4月23日の審議会で発表される予定と報じられています。経済成長と環境保護を両立させるため、産業構造や社会基盤、人々の生活様式などを、いかに変えていくべきかのアイデアが盛り込まれているそうです。

これらのアイデアの実現によって、経済成長をなるべく阻害することなく温室効果ガスを大量に削減し、リサイクルの度合いを向上させて資源輸入量を低減するなどの効果が期待できると言います。産業や社会から生活まで、幅広い分野が対象となります。

エネルギー効率に優れた触媒の開発などによって、小さな部屋の中でもモノ作りが出来る「マイクロ化学プラント技術」、温暖化ガスの排出量や廃棄物処理費用などが分かりやすい国際標準の「環境管理会計」に基づく会計制度の導入といったアイデアが盛り込まれるようです。

クルマや家電などを、これまでのように所有するのではなくレンタルして使う仕組みを構築し、その拡大を図ることによって、省エネ型の製品への置き換えを促すことも考えられています。レンタル会社が保守管理することで、不法投棄などのゴミ問題にも貢献するでしょうし、確実なリサイクルにもつながります。

温暖化ガスの増加

私が個人的に一番興味深いのは、「中速道」の整備です。これは、自転車や高齢者向けの一人乗り自動車などが快適に走れる「専用道路」を整備するというものです。通常の道路とは分けることによって交通渋滞を緩和し、クルマの燃費向上にもつなげる方策のようです。

まだ発表前ですので、詳細については分かりません。しかし、車道と歩道しかなかった道路に「中速道」を設けるという考え方は、今までの道路行政には無かった発想と言ってもいいのではないでしょうか。法律的に車両であることを知らず、歩道を通る歩行者の延長と思っていた大多数の国民にとっても、新しい見方かもしれません。

ここからは私の推測ですが、「中速道」と言うからには、道路を通る人や乗り物を、高速・中速・低速で分けることを想定しているのでしょう。当然クルマが高速となり、低速は歩行者や車椅子、自転車に乗った子供などが該当すると思われます。中速車は、その間にあるスピードの乗り物というわけです。

中速車にどこまで含まれるか分かりませんが、全国に8千万台以上ある自転車と、それに近いスピードの乗り物を中速車とし、その専用道を設置するという考えは悪くないと思います。自転車だけの専用道を、と言ってもなかなか理解されない部分がありますが、安全の為にも速度の違う人や乗り物を分けるべきなのは間違いありません。

様々な車輌が混然一体となって流れる上海の言わば「中速道」。高齢者用の電動自動車や、もしかしたら原付バイクも含まれるかも知れません。ちょっと考えると違和感がある人も多いでしょう。でも、お隣り中国の都市では、まさにそういう光景が展開しています。私も最初は危なくないのだろうかと思いましたが、見慣れると案外合理的なのかもしれないと思えるようになりました。

力のある原付バイクや電動カーなどに無謀な運転をされたら困りますが、中速道の中でも速度制限を守ってなら、そう大きくスピードも違わないでしょう。もちろん中速道の中にも車線が設けられ、車線変更による追い越しが秩序をもって行われることを期待します。

私も、「自転車専用道を。」と再三書いてきましたが、クルマの中でも遅いものと合わせた「中速道」なら、クルマのドライバーにもメリットが多くなります。歩道暴走自転車の撲滅は歩行者にとっても朗報です。自転車だけの専用道より、多くの人の理解が得られて、実現性が高まるのではないでしょうか。

「でも、そんな中速道の中を走るなんて窮屈そうで嫌だなあ。」というサイクリストもいらっしゃるでしょう。正直言って、私も個人的には同感する部分があります。多少の危険はあっても、今まで通り車道を通ったほうが速いと思いますし、他の遅い自転車と一緒なのはちょっと..、というのも分らないではありません。

しかし、現状で車道を通行するサイクリストは全体から見れば極めて少数派ですし、例の車道禁止法案ではありませんが、「自転車は歩道を通行するのが当たり前」というのが国民のコンセンサスになっていかないとも限りません。「中速道」で駐車車両が排除されて走りやすくなったり、安全になるなどのメリットも出てくるはずです。

分離帯に植樹もされて涼しげな北京の言わば「中速道」。そう考えれば、少なくとも都市部では中速道を整備してもいいのではないでしょうか。現状では路肩や路側帯、左側の車線部分の幅が狭く、自転車が走りにくい道路は少なくありません。その割には、歩行者の通行量が少ない道路でも、歩道だけ広くとってあったりします。たまに広い路側帯だと駐車車両に占有されています。

車道と歩道の間には、これまで何も存在しなかったのが、人々の意識の中でも少しは変わっていくきっかけになり得ます。クルマは車道、人は歩道、自転車は中速道、あるいは相応の部分を走るものとして認知されれば、道路の構造にも反映されていくでしょう。

以前は、クルマの中に高速車・中速車・低速車という法的な区分が存在しました。今は見なくなりましたが、道路にも「50高中」といったペイントがされていたものです。現在は、250CC以下のバイクや大型貨物なども「中速車」の区分廃止によって高速車になっており、原付だけが30キロ制限の低速車です。

オートバイも、排気量によって区分がいろいろありますが、道路交通法と道路運送車両法によっても区分が違ってきます。第二種原動機付自転車、いわゆる原付二種などと呼ばれるものもあり、さらに甲と乙に分かれていたりします。その法定制限速度が何キロか答えられる人が、どれだけいるでしょうか。

人口減少下での「新しい成長」を目指す―「新経済成長戦略」を語るこうした、分かりにくい区分や速度制限をやめて、これを機会に実際の道路環境に合わせ、高中低3種類に分けなおすのもいいでしょう。中速道と言うと、歩道が低速道で車道が高速道のように思えて、本来の高速道路と紛らわしいとするなら、もっと別のネーミングにすべきかも知れません。

と、推測だけで話が膨らんでしまいますが(笑)、冷静に考えると実現は遠い道のりです。まだ審議会の答申がこれから出ようかという段階ですし、その審議会も国土交通省ではなく経済産業省の諮問機関です。管轄から言えば、限りなく絵にかいた餅かアドバルーンに近い気もしてきます。

ただ、今までなら望み薄ですが官邸主導の体制も強化されています。省益あって国益なしと言われた霞が関も、昨今の行政改革の流れによって変わりつつあることを期待するしかありません。環境に対する国民の関心も高まっており、また何より環境だけでなく経済成長との両立を目指すところも政策としてのアピール度は高いでしょう。

さすがに、すぐに実現への道筋が見えるとは私も思っていません。でも、この提言が注目を集め、今までの道路構造に対する人々の固定観念を打ち破るきっかけになって欲しいものです。少なくとも、ただ単純に歩道を拡幅すればいいわけではないと、これまでの道路行政に疑問を感じる人が増えることを期待したいです。



個人的に、政策提言の中に自転車道が出てくるようになるとは、感慨深いものがあります。しかし、中速道なんて語句、普通変換しませんよね。私のパソコンは、もう覚えましたけど(笑)。
環境と言えば、今日4月22日は地球を考える日、アースデーです。少しずつ知名度もあがっているようです。ちなみに道路を考える日「道の日」のほうは、さっぱりですが、8月の10日です。

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