June 03, 2007

最初の三十分で何ができるか

駐車違反の取り締まりが強化されて1年が経ちました。


取締りの民間委託や放置違反金制度が導入された道路交通法の改正は2006年の6月1日施行でしたから、ほぼ1年前のことです。当初、違法駐車車両が劇的に減少して、見違えるほどになった場所も多かったと思います。車道を走行する自転車乗りにとっても歓迎すべき状況でした。

違法駐車で走りにくいそれから1年が経過し、駐車違反の検挙数は確実に増えたようですが、実際の道路上を見る限り、取締り強化の効果が薄れてきたところも少なくないようです。助手席などに人が乗っていたり、エンジンをかけたまま停車しているクルマも増えた気がしますし、以前より悪化しているのではと思える場所もあります。

地域によって差があると思うので一概には言えませんが、改正前の状態に戻った感じがする場所も多いのではないでしょうか。当然、駐車場の数が激増したわけでもありませんし、民間委託したとは言え、取り締まれる数には限度があります。この程度のものかと、取り締まりに慣れたこともあるのかも知れません。

せっかく駐車車両が減っても、一台でも残っていればクルマの流れを阻害します。比較的交通量の少ない場所なら、内側の車線をクルマが通るようになって、かえって自転車で走りやすい場合もありますが、都心部では駐車車両のある車線にだって、どんどんクルマが入ってきます。

そして、駐車車両があるたびに合流を繰り返すので、下手をすると自転車でも渋滞に巻き込まれることになります。例えば2車線の道路に3台のクルマが並んだりするので、自転車でもすり抜けられず、原付バイクやオートバイも合流してきますので、危険度も増します。

駐車監視員自転車で走りにくいから違法駐車を追放しろとは言いませんが、たった一台の迷惑なクルマのために渋滞や事故が誘発され、燃料や時間の無駄で社会的にも大きな経済損失が発生することになります。駐車違反の取り締まりの強化も中途半端では、その意味は小さいと言わざるを得ません。

クルマ至上主義とでも言うべき人の中には、いまだに「都市部であってもドアツードアで移動できてこそクルマの意味がある、目的地の前の路上に駐車できないような道路を造るのが悪い。」と考えるような人が少なくありません。モータリゼーション華やかなりし頃の話かと見紛う主張ですが、だから迷惑駐車が減らない面もあるのでしょう。

しかし、そもそもアメリカのような国土も道路も広い国での話です。アメリカ映画の影響か、路上に止めてさっと降りるのが当たり前だと考える人もいますが、実際にはアメリカだって、どこでも駐車できるわけではありません。日本の都市部での実現は困難ですし、むしろ今は如何に自家用車の使用を抑えるか考える時代です。

時代の趨勢から言えば、環境面からも都市中心部へのクルマの流入は制限すべきと考える都市は確実に増えています。パーク&ライドなどによって、公共交通の利用を拡大すべきなのも間違いありません。少なくともそうした都市構造と交通政策のポリシーを打ち出すべき時期に来ています。

もちろん現実的には、すぐに実現できるものではありませんが、せめてクルマは決められた駐車場所までの交通手段であり、きちんと駐車場に駐車して、後は歩くというコンセンサスを広げていく必要もあるのではないでしょうか。そのためにも路上の違法駐車は排除し、駐車場の利用を促進していかなければなりません。

短時間でも駐車場へところで、その意味からも注目すべき動きがあります。東京都道路整備保全公社は、都有地を有効活用するなどして駐車対策を推進する公益法人ですが、運営する駐車場のうち都内39箇所で、30分未満は駐車料金を無料にするサービスを展開しています。

民間でも、駐車場経営を手がける(株)駐車場綜合研究所では、東京や大阪などの一部の駐車場で最初30分を無料にするサービスを行っています。よく、「お買い上げいくらで何時間無料」などというサービスがありますが、そうした商業施設の無料サービスとは別です。駐車場だけで、誰が止めても最初の30分は無料です。

元に戻りつつある東京や大阪に限らず、各地の自治体が運営する公共駐車場などでも、こうした動きは徐々に広がりつつあります。民間であっても、最初を無料にすることで有料利用も促進されるとの狙いがあるのでしょう。こうしたサービスは、2006年の改正道路交通法の施行がきっかけとなって増えつつあるようです。

場所によって、最初は無料という点を前面に打ち出しているとは限らないので、自分のよく行く場所の近くなどを探せば、意外にこうした駐車場が見つかるかも知れません。私の経験でも、都心の駐車場に駐車して、たまたま用事が早く済んで30分以内に出庫したら、料金を取られなかったことがあります。

駐車取締り強化以前の話で、昔からある大きな駐車場だったのですが、30分以内は無料とはどこにも書いてありません。どうやら料金システム的に30分未満はカウントしないようです。60分未満は無料だったところもあります。試さないと分かりませんし、積極的にPRするつもりもないようですが、こうした駐車場も探せばあるのでしょう。

最初は無料の駐車場が増えれば、ちょっと用事があるだけなのに駐車料金を支払いたくない、との理由での違法駐車は減ることが期待できます。いっそのこと都市部全ての駐車場に義務付けることが出来たら、いちいち探す必要もなくなることから、かなりの迷惑駐車の減少と、駐車場利用習慣の定着が期待できるかも知れません。

30分未満無料最初を無料にする分の民間駐車場の負担という問題は残りますが、有料利用の増加も見込め、結果的に駐車場利用が定着し、長期的にも元がとれる可能性があります。駐車違反取締り強化の効果が一時的で、稼動率の下がっている駐車場もあるようですし、駐車場同士のサービスを競う意味からも採用する駐車場に増えてほしいところです。

前述の公社の調査では、道路交通法改正前の調査でも、銀座や新宿など都内の繁華街での路上駐車は30分未満が平日で75%、休日でも68%だったそうです。改正後は更に短いでしょう。これらのデータから見ても、30分未満無料を広げていく効果は、予想外に大きい可能性があります。

こんなちょっとした工夫で、街中の渋滞が減って、空気がきれいになって、ついでに自転車でも走りやすくなるなら言うことありません。ただ、道交法改正から1年経っても認知度は低く、まだまだ拡大の動きは鈍いようです。なんとか駐車場の最初無料化の流れが加速することを願いたいものです。



九州南部まで梅雨入りですか。晴れの休みは有効利用したいですね。

関連記事

街に溢れる手書きの文字看板
違法な迷惑駐車によって商売などに迷惑している人もあるわけで..。

スリムにすれば多いメリット
いっそのこと路上駐車の出来るスペースをなくしてしまう手もある。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 デル株式会社


Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。



 楽天トラベル






この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
こんにちは。私も丁度、路上駐車が再び目に余るようになってきたと感じておりました。最近は大阪市中心部ですら、監視員の姿自体あまり目にしませんし、我々にとっては通行しにくい状況が戻りつつあるようです。最近は二輪車も取締りの対象になっているのでしょうか、歩道上の、特に大型のオートバイは次々とチェックされた上で違反章を取り付けられているのを見かけますね。
Posted by nori at June 04, 2007 12:32
noriさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
監視員が減っているのか、あるいは中心部での取り締まりを減らしているのか、もしかしたら目立たないように工夫して取り締まりの効率を上げているのかも知れませんね。
路上の状況としては、やはり当初取り締まりを警戒して退避していたクルマが戻ってきているのは間違いないでしょう。オートバイも取り締まっていますね。クルマ以上に駐車場所が少なく、歩道上や警察の取り締まれない公園の中などへ迷惑駐車が広がっているという話も聞きます。やはり一朝一夕には解決しない問題がありますね。
Posted by cycleroad at June 04, 2007 22:16
 
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)