September 07, 2007

広がりつつある気づきの記号

日本の「流行語大賞」に似た賞が、アメリカにもあります。


前年に全米で一番注目を浴びた言葉を“Words of the Year”として、言語学者や言葉の専門家などで構成するアメリカ方言学会(American Dialect Society)という組織が毎年選んでいます。一番最近の2006年の受賞ワードは、“to pluto、be plutoed”でした。

sharrow辞書を引いても、冥王星を表すplutoは名詞ですが、それを動詞のように使って、降格されたり、評価を下げることを意味する言葉として使われました。言うまでもなく去年、冥王星が惑星から外れたことに由来しています。唯一、アメリカ人が発見した冥王星への愛着が、他国とは違って強かったという背景もあります。

ほかにも時代を表す言葉がいろいろノミネートされた(→PDFファイル)わけですが、その中に“sharrow”という言葉がありました。こちらは辞書を引いても載っていません。「サイクリングルートをマークするために車道にペイントされた『矢』のようなデザインのこと(左図)」と説明されています。

「浅い」という形容詞、shallowとは別の単語です。“sharrow”のほうは造語ですが、その成り立ちは、道路の共有“Share”と矢印マーク“Arrow”を組み合わせたもの、もしくは、“Shared Roadway Markings Arrows”や“Shared Lane Pavement Arrows”を省略形にした新しい単語とも言われています。

アメリカにおける自転車レーンと言っても、場所によっていろいろな形態があるわけですが、シカゴの例で見てみましょう。まず、セパレートされた専用レーンがあります。自転車やインラインスケート用のレーンと歩道が、車道とは独立して整備されています。

自転車専用道

一般的な道路に設置されたバイクレーンは、下図のようになっているのがアメリカでは一般的かも知れません。他の都市でも見ます。外側から順に、歩道、駐車スペース、バイクレーン、車道と分けられています。日本の感覚だと、車道の端に自転車レーンがきそうですが、米国では駐車帯を除いた車道部分の端になるわけです。

自転車レーン

道路標識でも自転車はバイクレーンを通るように指定され、路面に引かれた白い二本の線の間を走行することになります。そこには自転車と矢印もマークされています。例え駐車車両がなくても道路の右端(アメリカは右側通行なので)を通る必要はありません。

駐停車するクルマがレーンを横切ることもありますが、原則として自転車レーン上には駐車するクルマはないことになっています。日本の多くの場合のように、道路の左端を走行していて、駐車車両があるたび中央方向へふくらんで走る必要はありません。日本人には違和感があるかも知れませんが、走行しやすく、危険も少なくなります。

ただ実際には、自転車レーン上にクルマを止めると違反とは言え、二重駐車のような形でレーン上にはみ出して停車していたり、右折車が道をふさいでいたりすることが、特に大都市などでは、よくあります。それでも、自転車はあくまでも車両と考えれば、慣れると合理的に思えてきます。

共有レーン

道幅が狭くて、こうした自転車レーンが確保出来ない道路が、Marked shared Lanesということになります。レーンをセパレートする白線を引くと車道も狭くなってしまうので、「へ」の字を二つ重ねたような矢印と自転車のマークだけを路面にペイントして、道路をシェアしなさいと促しているわけです。

ボリューム注意。)

狭義には、このマークのことを“sharrow”と呼んでいるようです。つまり、「車道を自転車も通るよ」とクルマのドライバーに注意を喚起すると共に、クルマ社会のアメリカとは言え、「道路は自転車のものでもある」ことを思い出させる役割を担っているマークと解釈されています。

同時に、自転車で通行する人に対しては、駐車車両よりも道路の中央寄りを走行するよう指示しています。道路の端を走行していて、駐車車両があるたびに中央方向へ寄るのは危険だからです。また、当然のことながら矢印の方向、自転車の右側通行厳守(米国の場合)の意味も含んでいます。

駐車帯部分を通ってはいけないもちろん歩道走行禁止右側(アメリカでは)通行厳守

アメリカでのクルマの多くは左ハンドルです。ドライバーが停車した車両の左側のドアを開けて出てきます。その開けたドアにサイクリストが衝突する事故が多いことから、ドアゾーンと呼んで、駐停車しているクルマのすぐ近くを通らないように注意を促す役割もあるようです。

ドアが開くドアソーン

こうした“sharrow”は、バイクレーンが設置出来ないという理由以外にも、交通安全をうながし、道路を管理する自治体にとって手軽で低コストであることも手伝って、近年増えつつあるようです。それが顕著でもあるので、ワードオブザイヤーにもノミネートされたのでしょう。

もちろん、ただ単に交通安全や道路関係予算の削減効果が注目されたわけではありません。ノミネートには、他にも気象変動に関連する語句がありますが、アメリカでも地球温暖化に目を向け、その延長線として自転車の活用に関心が高まっていることの証左と言えるでしょう。

by BikePortland.orgby BikePortland.org

以前から取り上げていますが、日本では自転車とクルマ、あるいは自転車と歩行者の事故が多発していることから、自転車の歩道走行や自転車レーンについて話題になることがあります。しかし、本当はもっと地球環境の面から自転車レーンが見直されてもいいはずです。

従来、温暖化対策に前向きでなかったと言われるアメリカでも、地球に負荷をかけないためのバイクレーンが注目されているのです。クルマ社会にどっぷり浸かってきた人々も自転車に乗り始め、自転車の通行環境を重視するようになっています。一方の日本では、車道をシェアしようという意識すら希薄です。

Fort CollinsAlexandria

日本では、ごく近距離しか自転車を利用しない傾向や、根本的な道路行政の逆行、道路幅の不足などから車道への自転車レーンの設置は進んでいません。歩道で人を縫って走行するのは論外ですが、車道では路側帯も狭く、場合によっては、歩道を縮小しないと難しいかも知れません。

San Franciscoでも、“sharrow”のスタイルなら比較的取り入れるのも容易でしょう。特に都市部では、大気汚染を引き起こし、渋滞で効率の悪いクルマの利用を制限したとしても、“sharrow”を導入する意義は小さくありません。車道や歩道のない道路での自転車の安全向上にも資するでしょう。

なかなか本来の自転車のポテンシャルが理解されず、自転車は歩道を通るものだと信じて疑わない人が多い日本の現状では、“share the road”、道路シェアの考え方が浸透しにくいのも事実です。しかし、欧米に大きく立ち遅れている現状や、その可能性に気づく人が増えて行けば、きっと変わっていくだろうと思います。



やー台風9号、関東地方直撃でした。交通が大混乱で大変だった方も多いでしょうね。近づいてはいませんが、テレビで見ると河川も増水で凄い状況でしたから、晴れてもしばらく通れない場所が多そうです。

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よく拝見している立松正宏さんのblog音楽は自転車に載せてに自転車マークという記
自転車マーク【fu_r Notizen】at September 10, 2007 00:32
 
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