October 01, 2007

どれだけ効果が見込めるのか

先週ワシントンで開かれていた、地球温暖化対策の主要排出国会議が終わりました。


ブッシュ政権が京都議定書を離脱したことで、6年半のあいだ空転していた温暖化対策の国際交渉ですが、この会議によって、その出口が見えたことに対する祝福ムードで終わったようです。アメリカにもいろいろな思惑があるにせよ、世界の8割の温室効果ガス排出国を集めた会議が米国主催で開かれたことは評価されます。

同時に最大排出国であるアメリカの変身ぶりを印象付けたとも言えるでしょう。米欧の対立や途上国との間の議論は予断を許しませんが、ひとまず一定の成果を収めました。具体的な内容についての評価は別としても、ポスト京都への道が開かれた会議と位置付けられそうです。

地球温暖化防止のための主要排出国会議

ところで、ここのところ何度か地球温暖化対策としての自転車レーンの話題を取り上げました。前回は、ウォールストリートジャーナルにも自転車レーンの話題が掲載されていると書きましたし、その前は“sharrow”という言葉がアメリカの流行語大賞にノミネートされた話も書きました。

しかし、日本人の感覚としては、自転車レーンが有効な温暖化対策の一つと言われても、あまりピンとこない人も多いかも知れません。すでに日本には8千万台もの自転車があり、身近な交通手段として使われているので、自転車レーンが交通安全には貢献しても、温暖化対策にどれほど役に立つのか疑問だと考える人もいるでしょう。

例えば、今までより冷房の設定温度を1度高く、暖房を1度低くしたとします。標準的な家庭1世帯あたり、1年間の温暖化ガス削減効果は31kgです。シャワーを1分間、家族3人で1年間減らしたとしたら、年間65kgの温室効果ガスを削減できると言われています。

一方、仮に今までクルマで子供の送り迎えをしていた人が、朝晩片道5キロの道のりを自転車で送迎することにしたと想定します。年間250日送迎したとすれば、1,150kgも削減出来ることになります。1.15トンです。年間31kgや65kgに比べ、圧倒的に大きな数字です。

めざせ!1人、1日、1kg CO2削減片道5キロなら、自転車でも15分か20分くらいのものでしょう。運動不足解消を兼ねて自転車で行っても、無理のある距離ではありません。ちなみに環境省の呼び掛ける削減量は1人1日1kgです。1世帯3人分の削減量がこれだけでまかなえてしまいます。かたや、31kgとか65kgとかを積み上げて1,150kgにするのは大変なことです。

クルマで移動する分を自転車にすると、いかに温暖化ガス削減効果が大きいか思い知らされる数字と言えるのではないでしょうか。ところが、環境省のサイトなどを見ても、クルマに乗らないようにしましょうとは書いてありません。さすがに、自動車産業に気兼ねして、そこまでは書けないのかも知れません。

クルマに乗らないようにすると言うと語弊があるのでしょうが、少しクルマに乗るのを減らすだけでも相当大きな削減量になるわけです。本当なら、これを呼びかけない手はないはずです。確かにエコな運転をすることも大切です。急発進をしないとか、空気圧を適正にしたりするのも大事だと思います。

エコドライブをしよう一回の急発進は、0.03kgほどCO2の排出を増やすようです。小さな数字でもチリが積もれば山となりますが、元々急発進なんて、あまりしない人も多いでしょう。1日5分のアイドリングをやめると、年間240日として39kg削減できますが、今どき毎日5分間アイドリングしてから出かける人ばかりとは限りません。

仮に、平均的な家庭で使われているクルマを5%省エネ型のクルマに買い換えたとします。そのCO2削減効果は、年間で104kgに過ぎません。しかも、クルマを買い換えたことによるCO2の増加は、6,487kgにも達します。もちろん、買い替えの時期なら省エネ車のほうがいいですが、一台余計に生産したと考えるとそうなります。

クルマに10kgの使わない荷物を積んだままだと、1年間で、6.3kgほど二酸化炭素の排出が増えます。もちろん、無駄な荷物はこまめに降ろすべきですが、それだけを積み上げて排出削減することはできません。もっと根本的かつ、直接的な対策として、自家用車の利用を少しでも減らそうと考えるのが当たり前なはずです。

こうして具体的な数字にして考えると、運転の仕方も大切ですが、我々が普段の移動を少しクルマから自転車に変えることで、温暖化ガスの削減に大きく貢献できることは納得できるでしょう。しかし、クルマの機動力も必要でしょうし、すべて自転車にしろとは言いません。

車道に自転車レーンはまだ少ない自転車好きの人ばかりではないでしょうから、無理じいするものでもありません。でも、渋滞が激しい都市部などで、自転車を使った方が速いとか、自転車レーンのお陰で安心して行けるとなれば、自然と自転車にする人も増えるはずです。そのために、自転車レーンの整備という政策が有効になってくるわけです。

特に日本のように、自転車で歩行者の間を縫いながら歩道を走るのでは、なかなか速く、快適には移動できません。かと言って車道では危険と感じる人が少なくありません。自転車レーンによって、「誰でも」安全でラクに移動できることが大切です。

ちなみに、ママチャリは日本向けに、歩道を通ることを想定して作られているぶん、遅くて長い距離を走行しにくい自転車です。安定していて歩道を走行する分には向いていますが、自転車本来の姿で車道を走るには不向きです。もちろんママチャリのままでも構いませんが、もう少しタイヤの幅の狭い自転車にすれば、更に違います。

今のママチャリでは、せいぜい最寄り駅までと考える人が多いですが、自転車の走行空間が確保されて、少しスポーティーな自転車にするなら、スピードも出ますし、長い距離も走行できます。ふだん電車を使うような距離でも、実は自転車が現実的な交通手段として役に立つことを実感する人が増えるに違いありません。

温暖化ガス排出の全体を見れば、日本の2004年度のCO2総排出量は12億8600万トンです。その中には産業によるもの、発電やエネルギー生産によるもの、家庭や事業所から出るものもあります。自転車レーンは輸送や移動の運輸関連での対策というだけで、全体から見れば一部でしかないことは間違いありません。

「自転車走行指導帯」を本格導入全てのクルマの移動の中には、なかなか自転車で置き換えることの出来ない部分も多いと思います。しかし、都市部での人の移動なら、自転車レーンの整備などにより、自転車に置き換えられる余地は大きいでしょう。仮に、全てのクルマでの移動距離のうち、5%を自転車での移動に変えることが出来たとします。

すると、CO2の削減効果はおよそ1千3百万トンに上ります。日本の年間排出量から京都議定書の達成のため必要な排出削減量は、6%減らすべきところが8%増えているので14%とすると約1億8千万トンです。つまり、クルマでの移動の5%を自転車での移動に変えるだけで、必要排出削減量の1割近くを削減できる計算になります。

これは相当に大きな数字と言えるのではないでしょうか。しかも同時にガソリンを480万キロリットルも節約できることになります。20万トン級の大型タンカーで30隻分の量です。リッター140円で計算すれば、6千7百億円の節約です。

クルマの台数を5%減らせと言ってもなかなか減らないでしょう。乗るのを減らせと言うのでも、実効は上がらないと思います。でも自転車レーンを整備し、渋滞する都市部では、自転車の方が速くて便利な状況を作り出せば自ずと違ってきます。しかも効果が高いので、世界の都市で自転車レーンの整備が注目されているわけです。

「国民に急発進や空ぶかしをやめるよう呼びかけています。」と言うより、自転車レーンの設置推進の方が、他の国に対しても目に見える分、説得力を持つでしょう。エコ運転も大事ですが、日本でも、本気で温暖化ガスの排出削減に取り組むなら、この直接的で効果も高い方法を使わないのは、むしろ不思議なのではないでしょうか。



本文中の数字は、環境省、経済産業省資源エネルギー庁、日本自動車工業会などの発表している統計資料からの引用と、自転車に関する分は、それらを元に独自に計算しました。嘘になってはいけないので、何度も検算しました(笑)ので間違っていないはずです。

ところで、以前記事に書いた、「世界中を自転車で旅するサーカス集団、“cyclowncircus”」が来日している件ですが、先日も告知しました大阪での公演の情報が入りましたのでお知らせします。大阪方面の皆さん、よろしければ。(サイクラウンサーカスについての記事はこちら。)


秋の夜長、現在来日中の小さな小さなサーカス団の素敵なショーが、大阪ロータスルーツにやってきます!
米国ニューオリンズをベースに、ロシア、ヨーロッパ諸国、中国を経て日本に辿り着いた「サイクラウンサーカス」は、大陸を主に自転車で移動しながら各地でパフォーマンスやワークショップを展開。移動手段を出来るだけ車に頼らないエコなサーカス団なので、大掛かりな器具や動物によるパフォーマンスはありませんが、ニューオリンズの香りたっぷりのジャジーな歌や演奏、東ヨーロッパのジプシースイング、アナロジカルなパフォーマンスは要必見です!

<ショーインフォ>
◎日時/10月5日(金曜日) 19:30スタート
◎場所/Gallery Lotusroots (ギャラリーロータスルーツ)
 住所/大阪市北区西天満3ー3ー4> ◎チャージ/1500円(ワンドリンクつき)
◎マップなどはwww.lotusroots.orgまでアクセス

<メインアクト>
cyclown circus/サイクラウンサーカス
世界中を自転車で旅するサーカス集団。ジャジーな演奏やパフォーマンスが楽しめる彼ら。 今回はその中から3名が来日しています。
http://www.myspace.com/cyclowns
http://www.spaz.org/~cyclown/

<特別ゲスト>
Mary Go Round /メリーゴーランド
米国ニューオリンズをベースに活動するサーカススター。 全米ベストフラフーパーであり、アコーディオン&シンガーソングライターとしても活躍しています。
http://www.myspace.com/merryground



関連記事

どの新聞のどこの面に載るか
前回、ウォールストリートジャーナルに自転車レーンの話題がと書いた記事。

広がりつつある気づきの記号
以前書いた、“sharrow”という言葉が米国の流行語大賞にノミネートされた話。

本当の意味で優しいのは誰か
地球温暖化ガスの削減というフレーズだけでなく、実際の効果を考えるべき。



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