October 16, 2007

外国人の目にはどう映るのか

国際観光振興機構(JNTO)がアンケート調査の結果を発表しました。


それによれば、外国人観光客が日本を訪れる目的の1位が「買い物」になったそうです。前回の2005年−06年の調査での5位から急上昇して、「伝統文化・歴史施設」や「温泉・リラックス」「自然・景勝地」を抑えトップに躍り出ました。およそ3人に1人がショッピングを主な目的に訪日しているようです。

同機構は、円安の影響を指摘しています。また、韓国や台湾からの訪日に2005年からビザが不要になったことで、アジアからの観光客の増加も要因と考えられています。ただ、欧米などの観光客は6割近くが伝統文化や、日本人の生活への興味を挙げており、その傾向がはっきりと分かれています。

2006年の訪日外国人客は前年比で1割も増え、756万人に上ったそうですが、1千740万人の日本人海外旅行客数と比べれば半分以下です。この分野での国際収支は大幅な赤字なわけで、政府は観光立国推進基本計画を策定し、2010年の訪日客数1千万人を目指してビジット・ジャパン・キャンペーンなどを展開しています。

ビジット・ジャパン・キャンペーンVisit Japan Campaign

観光と言うと、どうしても遊びのイメージがあるので、政府が関与するような政策ではないと思われがちです。また、貿易立国とか知財立国ならともかく、何を今さらスイスとか南太平洋の国々みたいな「観光立国」を目指す必要があるのかと、いぶかる向きもあるでしょう。

しかし、このグローバル化が進む時代にあって、市民レベルで広く海外に日本を知ってもらうことには、大きな意味があります。今世界では日本ブームと言われ、和食からマンガまで、日本の文化は大きな注目を浴びています。訪日客を増やすことは、日本の魅力や情報を発信し、日本ブランドを確立する上での大きな力になります。

もちろん日本の製品が海外での売り上げを伸ばすことにもつながりますが、そればかりではありません。市民が行き来して民間レベルで交流し、お互いの国の理解を深めることは、例え、国と国とが外交的に冷たい関係に陥ったとしても、不測の事態を起こさないための予防措置にもなります。外交を補完し、安全保障上の役割も果たすのです。

伝統文化和食

外国人が来るのはいいが、あまり関係ないと考える人もいるでしょう。ところが、訪日客が増えることによる経済効果は、非常に大きなものがあります。訪日客の消費は、受け入れ施設や商業、運輸交通などだけでなく、広汎に波及し、雇用や設備投資も創出します。日本経済に与える影響という意味では誰でも無関係ではありません。

その意味では、日本へ来る目的がショッピングだけでは心許ない気もします。ブランド品とか工業製品は輸出もされるでしょうし、為替が円高に振れればモチベーションも下がってしまいます。やはり、実際に訪日してもらい、日本をよく知ってもらう為にも、もっと観光資源を強化して、訪日を魅力あるものにしなければなりません。

観光するのは、東京で言えば六本木や秋葉原もいいでしょう。近代的なビルや商業施設という、今のありのままの日本でもあります。しかし、やはり日本の伝統文化や名所・旧跡を期待する外国人も多いはずです。日本の歴史や日本人の考え方の根っこにあるようなものを理解してもらうことにもつながるでしょう。

観光名所?訪日目的?

そういった外国人の目線で考えた時、例えば東京の観光スポットは、果たして魅力的なのでしょうか。「日本的なもの」を見るためには、日光や鎌倉、あるいは京都まで行かなければならないという状況で良いのでしょうか。日本の首都であり、国際的な知名度も高い東京に来て、物足りないことはないのでしょうか。

例えば浅草雷門は、パリの凱旋門やベルリンのブランデンブルク門をイメージしてやって来たら、その小ささに驚くかも知れません。もちろん続く仲見世も歩けば、日本的な情緒が味わえるとは思います。大きければいいというものでもありませんが、いまいちインパクトが弱い気もします。

先日、本を読んでいて、ふと思いついたのですが、江戸城の天守閣や本丸を再建したらどうなのでしょう。外見もさることながら、時代劇に出てくるような、将軍が大勢の大名や旗本とまみえる大広間とか、なかなか無い空間です。外国人にも靴を脱いで畳の感触を味わってもらえ、日本文化の理解も助けるでしょう。

江戸城と将軍の暮らしよみがえる江戸城

そう思って調べてみたら、同じことを考えている人が、実は既に大勢いたことに驚かされました。NPOまで出来ています。江戸城再建なんて議論があるとは、私が全然聞いたことがなかっただけで、考える人は少なくなかったようです。もし再建されたら、日本人であっても一度は行ってみたくなります。

別に「チョンマゲ」や「ハラキリ」を世界に知らしめたいわけではありません。しかし、明治維新で西洋化する前の姿ですし、その象徴として日本の城郭を見せても悪くないでしょう。大阪城や姫路城もいいですが、多くの人が訪れる東京の江戸城を天守閣がないままにしておく必要もありません。

1657年の明暦の大火で焼失した天守閣は、江戸の復興を優先したために再建されなかったと言います。天守閣がないことが善政の象徴であるとして、その再建に反対する意見もあるようですが、今ではその再建の意義が全く変わっているわけで、観光資源として国民の利益に資すると考えるなら、反対するのは単なる感傷でしかありません。

江戸城 >江戸城絵図

ベルサイユ宮殿やバッキンガム宮殿の例を見ずとも、強力な観光スポットになることは間違いありません。皇居である西の丸や吹上庭園には入れませんが、現在でも、東側の旧江戸城中心部、本丸や二の丸・三の丸は東御苑として開放されています。警備上の問題などがあるかも知れませんが、十分可能性があります。

費用の問題にしても、観光産業のためのインフラであり、道路や空港といったものと同じと考えれば、充分検討の余地はあるでしょう。経済振興策としての側面もありますし、長期的な投資として考えても、充分実現する可能性があるのではないでしょうか。

もちろん国民多数の賛同が必要ですし、実現へはいろいろなハードルがあるかも知れません。以前、「日本橋」の上を通る首都高速を移転させる計画が話題になったことがありますが、個人的には、江戸城の天守閣再建のほうが実現して欲しいです。

よみがえる日本の城将軍の城「江戸城」のすべて

最近では、観光資源の価値が見直され、各地で世界遺産への登録を目指す動きも増えています。また、国土交通省は観光庁創設の方針を打ち出しています。観光立国は、資源も産業もない国の苦肉の策ではなく、21世紀のリーディング産業の一つとして認識されているのです。

ヨーロッパなどの石の文化と違って、日本は木と紙の文化と言えます。歴史的な建造物が火事などで焼失することも多く、地震や津波などの自然災害も少なくありません。一般の建物にしても、スクラップ&ビルドで壊してしまうことが多く、古い街並みなどが残りにくいのも間違いありません。

今まで、破壊と創造が繰り返されてきたこともあって、江戸城だけでなく、日本人にとっては、わざわざ再建・再興するほどの価値を感じられないものは多いと思います。しかし、外国人から見れば魅力的に映る文物は少なくないと思われます。自分たちの歴史や伝統文化の遺物の生かし方やその価値を、外国人の目からも考えるべきでしょう。

ようこそ日本へ

話は違いますが、歩道を爆走する自転車もそうです。海外の先進国の都市では、歩道を走る自転車は非常識です。欧米人は日本に来ると驚くと言います。私も経験がありますが、海外にしばし滞在して、しばらく振りに日本に帰国すると、歩道上を走る自転車が、とても怖く感じたりします。

逆に海外へ行くと、歩道をのんびり安心して散策出来るのに気が付きます。日本の自転車事情が野蛮と思われるのは、先進国として恥ずかしいというのもありますが、訪日する外国人に対して非常に不親切です。特に、キョロキョロ見回しながら歩きたい観光客にとっては危険で、落ち着いて街も歩けないのではないでしょうか。

観光立国の観点からも、自転車の歩道走行はやめるべきです。自転車は原則車道を通らせるべきで、安全面を考えるなら自転車レーンの整備を勧めるべきでしょう。パリやニューヨークでも始まっているように、外国人観光客が自転車で観光して回れるようにすることも考えられます。

経済がグローバル化し、仕事の上でも世界からの視線を意識せざるを得ない人も多いでしょう。しかし、今まで自分たちの住む街については、日本人の感覚だけで決まってきた部分も多いように感じます。今後は、観光資源や道路も含め、訪日する外国客の視点も意識しながら、整備することが求められていくのかも知れません。



アルゼンチンで、体長34メートルという世界最大級の恐竜の化石が発掘されたそうです。各地でこれまでに出土した大型恐竜の化石は、いずれも全体の骨格のうち1割程度で、推定の大きさだったわけですが、今回は約7割です。本当に、そんな大きさ・重さで動きまわっていたんですね。

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夢を現実にする為のまわり道
おそらく日本橋の首都高撤去に比べれば、江戸城再建はずっと安いはず。

何に人が魅せられているのか
地域レベルで言えば、国内の観光客を集めるのも大きな経済効果を生む。



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