November 30, 2007

スピードを競うライバルは誰

少し前に話題になった動画です。


もし、見ていなかったら再生してみてください。



高速道路上を逃走する二輪車をパトロールカーが追跡していますが、よく見るとオートバイではなくペダルをこいでいます。最後には警察を振り切ってしまうのですが、この逃走する自転車の男、かなりのスピードです。すごい加速力も見せています。

実はこれ、コマーシャル用に作られた合成の動画です。アメリカでは、しばしば警察と逃走車両のカーチェイスがヘリコプターから中継されます。そんな実際のシーンを撮影したフィルムに、後から自転車で走行する人をコンピューターで合成したものだそうです。画質の粗さやノイズが逆に臨場感を引き立たせています。

ムンバイ道路が渋滞している都市部などでは、実質的な速度で自転車が有利になる場面は多々ありますが、高速道路上であるかはともかく、まともに速度でクルマと競争しようというサイクリストはいないでしょう。ロードバイクやリカンベントなどなら、瞬間的にはかなりのスピードが出せますが、その速度を維持するのは困難です。

自転車に取り付けたサイクルコンピューター(速度計)にも最高速の表示が出ますが、必ずしも意味のある数字ではありません。ロードレースなどに興味がある人でも、動力付きの乗り物と競争しようとは思いませんし、そもそも競争が成り立つとは思っていないでしょう。

ところがインドには、自転車同士で競うのではなく、最高時速120キロの特急列車と勝負して、しかも勝つ人がいます。インドのムンバイに住む宝石商、ビノド・プンミヤさんです。この話題、新聞にも載っていたので、ご存じの方も多いかも知れません。

デカンクィーンネットで調べてみると、いくつかの記事が見つかりました。なんと、この方現在50歳です。以前は国際大会にも出場した経験のあるアマチュアレーサーだったようですが、競技から引退して17年経った今でも、早朝トレーニングで鍛えあげていると言います。驚くのはその記録です。

プンミヤさんが、インドでは最も速い特急列車の一つ、「デカン・クィーン」と競争したのは、マハラシュトラ州プネ駅から、ムンバイ郊外のドムビブリ駅まで、線路とほぼ並行して走る道路、約140キロです。なんとデカンクィーンより、20分早い、2時間14分14秒でゴールしたそうです。計算すると、平均時速約63キロになります。

ツール・ド・フランスなどのプロのロードレースの平坦なステージでも、せいぜい平均時速は50キロ程度でしょうか。選手同士の駆け引きもあるので、もちろん全区間全速力ではありませんが、仲間の選手を風避けに利用するなどの好条件があって、この程度です。ちょっとにわかには信じられないようなスピードです。

ビノド・プンミヤさんどんな道路だったのか状況はわかりませんが、十数台のテレビ中継車を従えて爆走したそうです。不可能な数字ではないのでしょうが、驚異的な速さです。ましてや何度も書きますが、50歳です。もちろん素人がマネの出来る速さではありません。

聞けば、毎日午前2時に起床して、交通量の少ない夜明けまでにトレーニングするそうです。警察から、高速道路で自転車に乗ることのできる特別な許可証までもらっており、ペースメーカーのバンを風避けにして、毎日200キロ近く練習走行していると言いますから本格的です。

インドでは、少し金がたまるとオートバイやクルマを買い、自転車に乗る人を見下す風潮があると言います。このビノド・プンミヤさん、空気も汚さず、燃料も使わず、人を健康にする素晴らしい乗り物、自転車をもっと普及させたいとの思いからチャレンジを続けているのだと語っています。

特急列車より速い男ちなみに、次のターゲットは、最高速140キロの観光バスと高速道路上で対決し、その勝負は全長400キロという長さになるそうです。おそらく、バスには停車駅も時刻表もあって、ある程度の勝算があるのでしょうけど、エンジンのついた乗り物と勝負しようという人は、そうはいないと思います。

実用的な意味では、自転車は近距離の交通手段です。長い距離を高速で移動するには不向きで、そうした移動にはクルマや列車、航空機が適していると誰もが考えます。しかし、信号がなく、他の交通や歩行者などを気にする必要もなく、風の影響を受けにくい環境であれば、意外に、遠くへもっと高速で移動出来るものなのかも知れません。

海外では、日本の高速道路にあたるフリーウェイが無料の所も多く、従って柵もないので自転車でも走れる場所があります。例えばカナダあたりのフリーウェイだと、日本のように高架になっていない場所も多く、走ろうと思えば誰でも路肩を自転車で走行することが出来ます。(もちろん必ずしも速く走る必要はありません。)

電車に勝利した自転車男おそらく野生動物の飛び出しへの配慮だと思うのですが、路肩の幅が本線以上にかなり広大にとってあり、本線上のクルマとはだいぶ間隔をとった上で、自転車でも安全に高速で、長い区間走れる場所もあります。私もカナダへ旅行した際には、実際に走っている人を何度も見ました。

日本の高速道路では、たまに間違えて侵入した例が報じられますが、自転車で走ることは出来ません。いくら温暖化とは言え、自転車専用の高速道路が整備されるなんていうのも、夢のまた夢ですが、出来るのであれば、一度でいいから、思う存分スピードを出して、長時間ノンストップで高速道路を走行してみたいものです。

私も最初の動画のように、警察から逃走するような場面に陥りたいわけではありませんが、自転車で高速道路を走ってみたいなと思ったことのある人は、案外多いのかも知れません。信号もなく、飛び出す歩行者もなく、路面の状態なども申し分なく、好きなだけスピードが出せます。自分の脚力の限界も試せそうです。

実際に、思う存分スピードが出せる場所は、そうはありません。例えば正月とかお盆とか、クルマの交通量の少ない時期を選んで、年に一度など限定で構わないので、高速道路を自転車に開放してくれないものでしょうか。一日、いや数時間でもいいです。プンミヤさんではありませんが、思う存分爆走してみたい気もします。



ミシュランガイド東京2008が話題になっています。食べに行ってみたい気もしますけど、混んでるんでしょうね、当分は。

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この記事へのコメント
交差点を直進する時、後ろから来る車が追い越しざまに左折するんじゃないかと心配で、追い越せないように全力で漕ぎます。
Posted by 赤蝮銀次郎 at December 04, 2007 00:31
赤蝮銀次郎さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに街中では、思う存分スピードを出すと言うより、むしろ必要に応じ、意に反してスピードを出さざるを得なかったりしますね。私は午前2時起きは出来ないので(笑)、仕方ないですけど。
Posted by cycleroad at December 04, 2007 21:49
cycleroadさん、ご無沙汰してます。
ちょっと話がズレますが、コメントを残させて頂きます。

上記のように“本気”で競争しているヒトは問題ないんですが、街中で乗ってる“一般人”は『クルマと競ろう』と、車道を後方確認せず爆走していて、正直ウザイ時があります。

自分もガキの頃、チャリンコ遠出派だった時、愚かにもクルマに負けじと一生懸命漕いだことが有るので、その気持ちも解るんですが、クルマを運転する立場から見ると、邪魔と言うか“危険”です。

そして、最近そのようなヒトが、チャリ通・自転車人気の流行りもあってか、増えてるような気がします。


このサイトでは、自転車道路・インフラに関する問題提起記事が多く、それらに関心のある方が多く訪問されてると思いますので、敢えてコメントしてみました。
Posted by さぶ at December 05, 2007 11:03
日本には、「車道は自動車のための物」と勘違いしてる人がまだまだ多いんですよね。
Posted by 赤蝮銀次郎 at December 06, 2007 00:37
さぶさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
もちろん、そうですね。日本であれ、どこであれ、普通の公道で周囲の状況も考えずに暴走するのは問題外です。周囲の迷惑や自らの危険を省みない愚かな行為だと思います。
自転車でなくても暴走行為を繰り返す若者はいますが、怖いもの知らずと言うのか、若気の至りなのか、少なくとも公道では周囲に多大な迷惑や危険が及びます。当然厳しく取り締まるべきです。
逆に、公道では不可能だからこそ、このプンミヤさんみたいなチャレンジが注目され、日本でまで報道されるのだと思います。面白いとか、思いっきりスピードを出してみたいと感じる人はいるでしょうけど、当然、公道での暴走はNGです。
自転車も最近、特に歩道を暴走する自転車が増えていることが言われていますが、これも憂慮すべき事態ですね。
Posted by cycleroad at December 06, 2007 12:37
赤蝮銀次郎さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、車道はクルマの走る場所、自転車は邪魔、歩道を通れ、という考えのドライバーがとても多いのは事実で、ドライバーの意識調査などでも裏付けられています。
そうした意識の人が多いからこそ、後ろから来て追い越しざまに左折するようなクルマが減らず、左折巻き込み事故も絶えないのでしょう。(自転車は、もっと遅いものと思っている人も少なくないようですけど。)
Posted by cycleroad at December 06, 2007 12:41
 
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