December 06, 2007

上手く風をとらえて利用する

東京都江東区にある国内最大級の風力発電の風車です。


近頃は全国各地に建設され、太陽光発電などと共にクリーンで再生可能なエネルギーとして注目を集めています。昔から山から吹きおろす風や海風、フェーン現象なども含めた風害に悩まされてきた地域は多いわけですが、その風を発電に使おうというわけです。

何もしなくても風は吹くわけですから、一度発電施設を造ってしまえば無尽蔵の資源を利用できることになります。全くゼロではないものの、風力発電によって生じる地球温暖化ガスは、火力発電に比べれば数十分の一です。年中強い風が吹いているような地域なら、これを利用しない手はないでしょう。

青森県東通村愛媛県瀬戸町

ところで、風と言えば自転車にとっても悩みの種です。追い風ならいいですが、強い向かい風や横風に悩まされることは少なくありません。自転車に乗っていれば、風を恨めしく思う場面は誰にでもあるでしょう。しかし風に逆らうすべもなく、なるべく弱まるよう祈るしかありません。

自転車に乗っている時に、せめてそんな風を利用しようと言うのが、「Windy Flasher 2」です。インプレス社の家電ウォッチというサイトに記事がアップされていたので、ご覧になった方もあるかも知れません。家電と言うより、自転車用のアクセサリーに分類されるような商品です。

Windy Flasher 2こちらは、カゴ取り付けタイプのWindy Flasher

仕組みは簡単、自転車のハンドルバーなどに取り付けて走行すると、風車がまわって発電し、中心部のLEDが光ります。電池のいらないライトになるわけですが、実際には光量不足で、前照灯としては使えません。周囲からの視認性を高める安全グッズとして使うもので、白色と青色があります。

小さな扇風機にも見えるちょっと面白いグッズです。自家発電なので、うっかり電池切れという心配がありません。小さいので、空気抵抗もたいしたことはないでしょう。子供のころに誰もが(?)やったように、「かざぐるま」を自転車につけて走行するようなスタイルです。そう考えると何だか懐かしい気がしないでもありません(笑)。

元々、ママチャリなどの自転車には、タイヤの回転によって発電して点灯させるライトがついており、自家発電自体は珍しくありません。リムに押しつけて発電するタイプはペダルが重くなりますが、最近はタイヤの回転でも、磁気によって非接触で発電出来てペダルが重くならないタイプが増えてきています。

光量なども、そちらのほうが優れているので、風車によって発電するライトが必ずしも実用的とは言えません。ただ、無風の時であっても自転車で走行すれば、その分の風は受けるわけです。なるべく空気抵抗は小さくしたいですが、どうせ風を受けるのであれば、それを利用して発電すること自体は合理的な気もします。

しかし、よくよく考えると、こうした発電装置によって得られるエネルギーと、装置をつけることで空気抵抗によってロスするエネルギーを比較すれば、ロスのほうが大きいはずです。もし逆であれば、クルマメーカーが、こぞってボディに風車を取り付けてエネルギーを回収するに違いありません。

京都エコロタクシー実際には、風車をつけて走っているクルマはありません。正確には、私の知る限り、以前話題になった京都のタクシー会社が、ボディにつけた風力発電で携帯電話充電サービスをしているだけです。イメージアップや宣伝効果を含めて考えれば、プラスと言えなくもありませんが、他にほとんど見ないことを思えば、やはり意味がないのでしょう。

自ら動いて風を受けるのは、作り出すエネルギーより使うエネルギーが勝ってしまうわけです。やはり風車による風力発電のように、自然に吹く風を利用して発電するのでなれば、エネルギー効率的に意味がありません。しかしながら、その風力発電も決して優れているとばかりは言えないようです。

風力発電は、風がある時しか発電出来ない為、通常の電力として利用するには厄介です。電力会社は、不規則に変動する発電量を安定的な供給にするため、他の発電による電力を使って補完する必要があります。その点が電力会社には嫌われ、日本での風力発電の電力の買い取りは僅かな量に留まっています。

その弱点を克服するために蓄電しようとすると多大なコストがかかります。現状でも、風力発電施設を建てるためには、土地代や僻地の場合は送電線などの設備に大きなコストがかかっています。そのあたりも風力発電が伸び悩むネックになっているようです。

北海道苫前町日本野鳥の会・札幌支部より

また、エコなイメージはあるものの、地域の自然や景観を損なったり、風切り音による騒音などの問題もあります。最近は、野鳥が風車に激突して死ぬバードストライクも相次ぎ、問題となっています。絶滅危惧種のワシなどが被害に遭うことも多く、そのための反対運動も起きています。

鳥の激突を防ぐため、夜間照明をつけて危険を知らせる試みもありますが、照明を点灯させる分、コストがかかってしまい、なんとなく本末転倒の感も否めません。かえって虫が集まって、その虫を捕食する鳥が集まるという指摘もあります。

福島県郡山市湖南町一昨年、小型の風力発電機23基を設置したつくば市では、期待に反して風車がほとんど回らないという事態がおきました。2年間の累積でも発電量は、風車の待機電力にも満たなかったそうです。設計した早大に賠償を請求したり、市長が提訴される騒ぎになりました。必ずしも事業がうまくいくとは限らないようです。

風車の歴史は古いですが、古くからオランダにあるような伝統的な風車小屋の風車は、主として農業用水などをくみ上げるのに使われていました。もちろん発電するのではなく、風車の回転を、歯車などを使って揚水装置にそのまま伝え、風がある時に水を汲むという、ある意味のんびりとしたものでした。

近年、風力発電が改めて脚光を浴びているものの、うまく風を捉え、安定した電気エネルギーに変換して利用しようと思うと、まだ多くの課題があると言えそうです。次世代のエネルギーとして期待される一方で、開発の途上にあると言わざるを得ないでしょう。

上手く活用出来れば、こんなにいいことはありませんが、そう簡単ではないようです。自転車に乗る時もそうですが、やはり風は人間が思うように発生させたり、制御したり出来ないことも思い知らされます。まさに「風まかせ」ですが、人類の将来の為にも風力エネルギーの利用に、フォローの風が吹くよう願いたいものです。



今度は乳歯から幹細胞ですか。へその緒(臍帯血)もそうですが、今までは屋根裏か軒下に投げるしかなかったものが、貴重な再生医療の資源になるとは驚きですね。

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