December 09, 2007

敵と見るか味方につけるのか

この時期、太平洋側では晴れて乾燥した天候が続きます。


日本列島は、いわゆる冬型の気圧配置となって、北西からの季節風が日本海側に雪を降らせる一方で、太平洋側では、山を越えて乾燥した北風が吹きます。自転車に乗る人にとって、雨が少ないのは好都合ですが、これからの季節、強い北風に難儀することも多いのではないでしょうか。

前回は、風の力で発電して発光させる自転車用ライトの話題を取り上げました。でも自転車に乗っていて受ける風の力の利用方法は、風車による発電だけとは限りません。風の力を走行する力そのもの、あるいは走行をアシストする力にしようと考える人たちがいます。

The Pterosail KITヨット自転車

その一つ、Pterosail Trike Systems社の製品、The Pterosail KITです。三輪のリカンベントに、写真の「帆」のような組み立て式の部品をとりつけて、まさにヨットのように風を受けて走ろうというわけです。ちなみにPterosailという名前は、帆に描かれた翼竜、“pterodactyl”からきています。

Sail Buggy日本ではあまり馴染みのない乗り物ですが、左の写真のようなSail Buggyなどと呼ばれる帆のついた乗り物によく似ています。しかし、Sail Buggyに足を載せる場所はありますが、ペダルはついていません。つまり、風のみの力で疾走する乗り物、スポーツです。

これに対し、Pterosail KITを装着したトライク(三輪車)には、ペダルがついています。リカンベント・スタイルでこぐわけですが、れっきとした自転車であることは間違いありません。あくまで自転車ありきで、それに帆をつけようという発想なのです。

ユニークですが、サイトにある動画(下側)で見る限り、風の吹いていない場面では、重くて遅そうです(笑)。普通の自転車にどんどん抜かれていきます。もちろんキットなので、風の強い日にのみ装着すればいいことですが、思わず帆を装着するメリットとデメリットを考えてしまいます。

追い風を受けて疾走するさまは軽快そのものです。ただ風向きが変わった時の操作は難しそうです。横風や突風にも弱そうですし、向かい風だったら完全にお手上げで、帆を畳んでペダルをこぐしかなさそうです。その場合は、畳んだ帆の重さと空気抵抗のぶん、つらくなる気もします。



ただ考えてみると、セイルボートやディンギーなど、いわゆるヨットと呼ぶような船も、実は風上から風下へしか進めないわけではありません。ご存知の方も多いと思いますが、帆を操作することにより最大で風の方向から45度くらいの角度へは進むことが出来るそうです。

風の吹く方角から45度と言えば、ほとんど風に向かって進んでいるような感じです。45度の角度でジクザグに進めば、まさに風上の方角へ向かっても進めるわけです。このトライクでも同じ原理を利用すれば風上にも進めるかも知れませんが、大きく蛇行出来るような広い場所が必要になります。

つまり、広い平原のような場所なら進める可能性がありますが、舗装道路を進むぶんには風上に向かって走行するのは、極めて困難と推測されます。まあ、そもそも、これで風上に向かって進もうと考える人は、そう多くないのも確かでしょうけど..(笑)。

風力をアシスト機構として常に利用しようと言うより、風を受けて疾走する気持ちよさを味わう乗り物と考えた方が良さそうです。日本で言えば、大きな川沿いなど、吹きっさらしで風の強い道を、例えば海風に乗って疾駆することを想像すれば、それはそれで心地よさそうです。

追い風だけなら、自転車だけでも十分な気もしますし、風で走行するなら、自転車とは違う乗り物とも言えますが、風を受けてヨットを操るような感覚を陸上で味わえるというのも楽しいかも知れません。Pterosail KITのサイトにも、サイクリングとセーリングの融合と書かれてあります。

Wind BikeSail Bike

似たようなことを考える人は他にもいます。どのスタイルの格好がいいかは議論の余地がありそうですが、リカンベント以外の自転車にも帆をつけて走っています。セイルが後ろ、もしくは透明なセイルなら視野も遮られなくて具合がよさそうです。こちらは、ヨットと言うよりウィンドサーフィンを連想させます。

ウィンド自転車

サーフィンからウィンドサーフィンが生まれたように、新しいスポーツとして確立するかと言えば、首をかしげたくなる部分がないでもありません。中には、日本で選挙の時に見るような、候補者の名前の入ったノボリをつけたママチャリを連想させるものもあります(笑)。



もちろん、化石燃料を使わないエコな次世代型の乗り物、風だけで走るクリーンエネルギー二輪車となるには、相当の革新が必要なのは間違いありません。警察や消防が採用するかは別としても、いつでも都合のいいように風の力を利用して走行できれば画期的ですが、かなり難しい話と言わざるを得ません。

風力自転車帆自転車

ロードレースなどの例を挙げるまでもなく、自転車に乗る人なら走行時の空気抵抗を含め、風が自転車にとって大きな邪魔であることは、誰でも実感としてあります。向かい風は誰もが嫌ですが、自転車に乗る限りついて回るものと、諦めている部分でもあるでしょう。



ただ、風と今より上手く付き合えれば、それに越したことはありません。風防などによって風の抵抗を少なくするのか、あるいは帆などで風の力を生かすのか、いずれにせよ風を上手く制御したり、あわよくば利用しようという発想は、今後もいろいろな形で出てくるのかも知れません。



インフルエンザが異例の早い時期の流行になっています。こちらの「カゼ」も嫌なものです。自分は大丈夫と油断していると、忙しい時期に思わぬダウンを喫する可能性がありますね。

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この記事へのコメント
これいいかもしれない。
でも道交法違反じゃないでしょうか?
Posted by hono at December 11, 2007 17:40
honoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
法律上の区分である「普通自転車」に該当しなくなることは間違いないですね。でも、軽車両として通行が違反になるかと言うと、必ずしもそうとは言い切れない気がします。そもそも日本の道交法には想定されていないでしょう。
ただ、実際問題として、他の交通を妨害するなどと判定されれば、道交法の運用の範囲ということで危険を回避するためなどとして、規制されることになると思います。
Posted by cycleroad at December 12, 2007 12:56
 
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