December 15, 2007

昔からの自転車が活躍する街

「横付け自転車」って何だと思いますか。


目的地のすぐ前まで自転車で乗り付けることかと思えば、そうではありません。今どきは、めっきり見なくなりましたが、リヤカーが横に取り付けられた自転車、サイドカーのついた自転車のことを言うそうです。この呼び方がどれくらい一般的だったのかは知りませんが、少なくとも最近は、あまり聞かない表現だと思います。

昭和の中頃までは、氷屋だとか豆腐屋、さお竹屋などが、この「横付け自転車」で売りに来たり、配達に使われていたことを、懐かしく思い出す方もおられるでしょう。さすがに最近は軽トラックなどに置き換わっていますし、こうした商売のスタイル自体がなくなってきて、横付け自転車を見ることも滅多になくなりました。

いただきさん今では、この呼び方を知らない人も多いと思いますが、香川県や徳島県の一部には、サイドカー、もしくはリヤカー付きの自転車を、今でも横付け自転車と呼ぶ人が少なくないようです。高松でもこのタイプの自転車が大きく減ったのは間違いありませんが、未だに町のあちこちで、現役の横付け自転車を多く見かけるからです。

高松では、ここ独特の「いただきさん」が横付け自転車を使っているのです。「いただきさん」とは鮮魚の行商をする人のことです。昔、漁師の奥さんが魚を入れた「はんぼ」と呼ばれる蓋付きの桶を頭に載せて(いただいて、)市中を売り歩いたのが始まりとされ、ピーク時には四百人以上いたと言います。

横付け自転車をとめて数十年前からは横付け自転車を使うようになった「いただきさん」ですが、今は数十人に減ってしまいました。それでも、相変わらず自転車をこぎながら、市内を売り歩いています。新鮮な魚を、その場でさばいて売ってくれるので、スーパーでは魚を買わないという地元の人も少なくないそうです。

最近は、日本人の魚を食べる量が減ると共に、魚の上手な調理方法を知らない主婦も増えていると言います。いただきさんは、旬の魚を高松漁港から直送で新鮮なうちに安く売ってくれるだけでなく、おいしい食べ方やさばき方なども含めてアドバイスしてくれるので、若い奥さんにも人気なのだそうです。

早朝から軽快に水は行く先々の馴染みの民家から調達するそうですが、売り物の鮮魚に保存用の氷、調理具やはかりなど、かなりの荷物になるはずです。それでも、いただきさんたちは軽快にペダルをこいでいます。実はこの横付け自転車、いただきさん専用に改造されたもので、開発したのは高松市扇町の自転車店「B&Cまえだ」の前田正文さんです。

元になったのは氷屋の自転車ですが、大きくて重く、女性がこぐのはあまりに大変だったことから、前田さんは軽量化しつつ、荷物を満載できるよう強度を増すなどの工夫をこらしました。この前田さんの改造サイドカーこそ、高松で横付け自転車と呼ばれ、今のいただきさんの行商スタイルを確立させたものなのだそうです。

横付け自転車のいただきさん製造だけでなく修理も一手に引き受け、パンクすれば現場に行ってタイヤ交換までします。もはや港町の誇りとも言える「いただきさん」達に、いつまでも自転車に乗って魚を売ってもらうため、二代目の泰文さん共々、今もいただきさんの仕事を支えているのです。

さばいてくれる市民が自転車を日常の足として使うのは、どこでも珍しくありません。でも高松では、昔から生活に密着して、荷物などを運ぶのに利用されてきた「働く自転車」も、依然として現役で活躍する街なのです。いただきさんのような、昔ながらの対面販売、コミュニケーションのある行商が残っていることもうらやましい気がします。

私も高松は何度も訪れたことがあります。屋島や市南部などには高台もありますが、わりあい平坦で市街地もコンパクトにまとまっていることから、自転車を利用する人が多い印象があります。県や市としても「サイクルタウン」を標榜し自転車行政に力を入れており、市内に自転車店も多いような気がします。

常連さんも多い以前取り上げましたが、「自転車ワールドフェスタ」などのイベントにも力を入れていますし、自転車と歩行者を分離する社会実験が行われるなど、自転車行政に関連する報道もよく目にします。自転車の活用と利用環境の整備にも前向きに取り組んでいる街という印象があります。

最近では官民一体となって、「自転車を利用した新しい都市づくりを進める協議会」を立ち上げ、「自転車の楽園・さぬき」を目指すと明確なスローガンを掲げています。クルマから自転車への転換を促すという目標も表明し、環境や健康にも大きく貢献する、住民の自転車利用を推進しています。

荷物も多い自転車の活用と言っても、生活の中に溶け込んでいるぶん、なかなか思いつかなかったり、政策として打ち出しにくい部分があります。うわべだけ、掛け声だけで自転車の利用を訴える自治体が多い中、「自転車の楽園」とまで言い切る香川県には本気さが感じられます。単なる観光振興や、名物にしたいだけとも違うようです。

自転車を活用することは、時代に沿って環境問題に貢献し、市民の健康を増進するだけではありません。住民の安全や生活の利便性を直接向上させることになります。住みやすい街は、都市の魅力や活力を高めることも事実でしょう。昔からの「横付け自転車」の活躍する香川県は、そんなこと百も承知というところでしょうか。



先ほどまで年賀状の印刷をしてました。パソコンを使うようになってからは、ずいぶん楽になりましたが、手書きのメッセージを書いたりするのが、なかなか進まないんですよね..(笑)。10日もあれば少しずつ書けるでしょう。

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