サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
February 07, 2008
経済成長の陰で消えゆくもの
ベトナムと言えばシクロが有名です。
前回はベトナムの自転車事情について書きましたが、今一度見直してみると、自転車事情と言いながら、なんと言ってもオートバイの多さに圧倒されたこともあって、オートバイの写真ばかりです。なので、もう少しホーチミンの自転車を載せておこうと思います。
ベトナムで自転車と言えば、シクロと呼ばれる3輪の自転車タクシーを外すわけにはいきません。すでに普通のクルマのタクシーが主流になっていますが、シクロもまだ健在です。以前より減っていますが、市街でもクルマやオートバイの中にしっかり混在して走行しているのを見ます。
最近、日本でもベロタクシーが走る街が増えています。なぜか、ドイツ製などの後ろ乗せタイプがほとんどのようです。それも悪くはありませんが、シクロのような前乗せタイプも、観光客が景色を楽しむには向いています。開放感もあるので、また違った人気が出るのではないでしょうか。
日差しを遮る日除けもついています。原則として一人乗りがほとんどですが、子供となら二人でも乗れそうです。
ホーチミンでもシクロはベトナム人だけでなく、観光客を乗せて走っています。私も乗ってみましたが、着座位置が高いので視点も高く、視界を遮るものがないので眺めは申し分ありません。当然クルマやオートバイに抜かれますが、交通量が多い中でも、さほど危ない感じはしませんでした。
こちらでは、他にも3輪の自転車がいろいろ走っているので、クルマやバイクも心得たもので、うまくかわして行きます。荷物を載せる3輪車は、まだクルマやトラックの普及度が高くないこともあってか、市民の手軽な運搬手段として活躍しているようです。
もちろん商売にも欠かせません。日本と同じように鐘を鳴らしながら、箱を取り付けた3輪車で街を流すのは、アイスクリーム屋でしょうか。果物や野菜などを載せて売り歩いている人もよく見ます。お客がいると見るや車道に止めて、露店に早変わりです。
こちらの3輪車、ほとんどが前2輪のタイプです。たまにリヤカーのようなトレイラーを自転車で牽引している人も見ますが、前に荷物を載せるのが普通のようです。かなり重量物と思えるものや、長尺のものでも平気で積んで走り回っています。
日本でも最近、駐車取締りや原油高などの影響で、宅配便が自転車で荷物を運んでいるのを見ますが、だいたい後ろに牽引しています。どちらでもいいのでしょうけど、牽引だと3車軸4輪ですが、ベトナムタイプは2車軸3輪で全長も短くて済みます。荷物が前だと車幅もわかりやすく、運びやすそうな気がします。
もちろん普通の自転車でも大荷物を平気で運んでいる人も見ますし、自転車の荷台やカゴに商品を載せて売っている人も見ます。
なぜかベトナムに懐かしさを感じる人が多いのは、街並みの感じや顔つきが日本人に似ているからだけではないでしょう。混沌の中でエネルギッシュに躍動する人々の姿が、かつての昭和の時代を彷彿とさせるからなのかも知れません。
南国だけあって、果物を売る人が多く目につきます。
右上はチマキのようなものをハンドルにぶら下げて売っています。
アイスキャンデー屋に、ハタキ屋さんでしょうか。長い毛バタキも前方に載せています。
籐の籠屋に、右は何かの修理屋さんのようです。ベトナム語なのでさっぱりわかりませんが、スピーカーでガンガンと口上を流しながら走っていました。
後ろに袋をつけている人は、商売の人に限らないようです。お手製の吊り下げ器具を荷台に固定し、左右に袋をぶら下げ、中に買った荷物を左右バランスよく入れていくわけです。なるほど、これなら自転車でもかなりの荷物を運ぶことが出来ます。
市民のアシは圧倒的にオートバイになったとは言え、いろいろな場面で自転車は活躍しています。自転車屋もよく見かけ、店頭にカラフルな子供車も目立ちます。さすがに表通りで走っているのは見ませんが、大人になるまでの自転車にせよ、将来オートバイに乗るにせよ、自転車の練習は欠かせないというわけでしょう。
さて、話はシクロに戻ります。風を感じながら、クルマでは目に止まらない街の表情を見て回るには持ってこいの乗り物なのですが、実は近頃、状況が変わってきているようです。最近の旅行ガイドを見ると、悪徳なシクロが増えてトラブルも多発しているので、気をつけるように書かれています。
かつて、そののんびりとした速度と情緒に人気があったのは間違いないとしても、最近は、あまりにオートバイが増えたことで、その真っ只中を走ることになるシクロは排気ガスで気持ち悪くなるなど、快適さは望めなくなりつつあります。結果、観光客の人気も凋落して、運転手の実入りも良くなくなっているようです。
事実、街中のシクロが客待ちで数多く並んでいます。外国人と見るや声をかけますが、日本の一般的な旅行ガイドにも気をつけるよう、あるいは乗らないように書かれていますから、観光客に敬遠されているのは間違いないでしょう。その結果、仕事が少なくなって詐欺や恐喝まがいの行為に走る運転手も増えているそうです。
最初に言った料金と違う金額を要求するようなトラブルから、乗車中に仲間のオートバイがひったくりをしたり、人通りのないところへ連れて行き、運転手同士で結託して身ぐるみ剥ぐような暴力的な例もあると聞きます。店と共同して物やサービスを買わせて法外な料金を要求するなど、手口はいろいろです。
飲み物をサービスするふりをして、睡眠薬を入れて乱暴する例まであるそうですから、全てが悪徳ではないにせよ、利用を躊躇する人は増えるはずです。こうした噂が広まって、さらに人気が凋落して客がいなくなり、いよいよ詐欺的、あるいは暴力的な手段で儲けざるを得なくなります。運転手も生活がかかっていますから必死です。
私も運転手と客が道端で口論しているのを3回ほど見ました。乗る前に値段交渉し、支払いの時に何か言いだしても相手にせず、金を渡してさっさと立ち去ったほうがいいでしょう。地図を見ながら、あまり変な方向へ行くようなら、さっさと降りることも必要です。自己責任で乗るしかありませんが、やはり避けた方が無難かも知れません。
ちなみに、オートバイの後ろに乗れと声をかけてくるバイクタクシーも多いです。つまりオートバイの白タクです。疑い出したらキリがありませんが、これもトラブルの可能性が高く、事故の危険性も小さくないので、避けた方が無難でしょう。普通のタクシーの中にも、きちんとしたメーターがついていない白タクもあると言います。
ベトナムも急成長によって格差が拡大する中、社会的な歪みが犯罪を助長していることは否めません。経済成長の一方、公共交通の整備の遅れでオートバイが急増し大気汚染をもたらしています。洪水が頻発するため下水道工事があちこちで行われていますが、インフラ整備の遅れは道路の舗装、すなわち乗り心地にも影響します。
シクロが実際に姿を消しつつある背景には、単に自転車からオートバイやクルマへの移行だけが理由ではないでしょう。成長の歪みがもたらすさまざまな状況がシクロの営業にマイナスに働き、客が減少する悪循環に陥っていることは間違いないようです。シクロの乗り入れ禁止地区も増えています。
せっかくの観光資源ですし、モータリゼーションの進行の中でも、充分残っていくだけの価値があるように思います。その情緒や風情を惜しむ声も少なくないでしょう。消滅には一抹の寂しさがあります。日本人が嘆いても仕方のないことかも知れませんが、残念なことです。
毎年発表されますが、サラリーマン川柳はいつも面白いですね。個人的にうまいと思ったのは、「国民の 年金、損なの 関係ねえ」 (官僚)という句ですかね。
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Posted by cycleroad at 23:30│
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この記事へのコメント
はじめまして。
taiと申します。
大変興味深い記事をお書きになりますね。
多サイトさんとは変わった視点で自転車を見ていらっしゃっていますね(^^
自転車タクシー、お客さhが気持ちよさそうです。
宅急便は確かにここ最近自転車で配達されている方をよく見かけますね。特に都内や集合住宅周辺などでは多いですよね。
自転車が増えるっていうのは本当に素晴らしい!
もっともっと自転車の良さが世の中に浸透するような社会になって欲しいですね。
もしよろしければ、当方のブログと相互リンクしていただけたらうれしいです。
Posted by
tai
at February 09, 2008 12:23
taiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おほめいただき光栄です。へそ曲がりなもので(笑)、他のブログとはなるべく違う内容について書こうと考えています。
見晴らしがいいだけでも気持ちいいですね。日本でもシクロのような前乗せの自転車タクシーが出てきてもいいと思うのですが、何か理由があるのかも知れません。
自転車宅急便、よく見かけられますか。都内でも地域的に多少偏りはあるみたいですね。
私も自転車の利用が進むと、社会にもいろいろなメリットがあると思います。もっと「本来の」自転車の良さが浸透していくとさらにいいですね。
リンクしていただいている方も多く、サイドに入りきらないので、リンク集を作ろうと思いつつ、なかなか時間がなくて果たせていません。そういうわけで申し訳ないですが、相互リンクはお約束は出来ません。悪しからずご容赦ください。
Posted by
cycleroad
at February 10, 2008 23:56
いえいえ^^
相互リンクの件、了承いたしまいた。
私の方からのリンクだけでもと思い、入れさせてもらいまいた。
このような素晴らしいサイトは、ぜひ自転車好きだけでなく、たくさんの方に見てもらいたいと思います。
これからも、ちょくちょくお邪魔させてもらいます(^^
Posted by
tai
at February 12, 2008 00:16
taiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
わざわざ恐縮です。さらにお褒めの言葉までいただき、重ねて汗顔の至りです。
お待ちしております。何かありましたら、遠慮なくツッコミを入れてやってください(笑)。
Posted by
cycleroad
at February 12, 2008 20:59
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