February 13, 2008

電子メールと自転車の使い方

迷惑メール対策が強化されるそうです。


海外からの送信も対象とし、罰金を三千万円に引き上げるなどの法改正目指すと報道されています。罰金の引き上げはいいとしても、今までに迷惑メールの送信で摘発出来たのは、わずか3件と言います。実際に迷惑メールの減少に、どれほど実効性があるのか疑問ではあります。

迷惑メールは、犯罪性の高い詐欺メールも多く、手口も巧妙かつ悪質化しています。果たして無差別に送りつける業者を取り締まれるのでしょうか。私たちが毎日削除するためにとられる時間を累計すると、膨大な時間が奪われていることになります。世界中の人の時間をトータルすれば莫大な被害金額になるのは間違いありません。

インターネットのトラフィックも多く消費されますし、犯罪被害以外でも、社会に莫大な損害を与えています。未承諾広告も、中には有用な情報が含まれていて得することがあるかも知れませんが、承諾なしで勝手に、あるいは無差別に送りつけてくるメールは、社会全体の大迷惑となっています。

NYファッションウィークDKNYDKNY

ところで、メールだけでなく、広告にはさまざまな手段が使われます。今月1日から8日までニューヨークで開かれていた、08/09年秋冬ニューヨークコレクション、いわゆるファッションウィークに合わせ、ニューヨークの街に変わった広告が登場しました。市内各所に駐輪された、オレンジ色に塗装された自転車が、それです。

世界的に有名なアメリカのファッションブランドで、日本でもファンの多いダナ・キャランが、オレンジ色に着色した派手な自転車を「クルマの排出ガスを減らし、健康的な輸送手段として自転車を見直そう」とのメッセージを込めたオブジェとして、全部で75台置きました。

photo by Seth Wphoto by stan

蛍光色のようなオレンジ一色の自転車は、街にあると非常に目を引きます。おそらく多くのニューヨーカーの目に止まったでしょうし、注意を集めたはずです。ダナキャランは、以前から、自転車の活用の推進に賛同し、自転車マップの作製などに財政的な援助をしてきました。そのことをアピールする意味合いも小さくないようです。

オレンジ色の車体には、ダナキャランのブランド“DKNY.COM”とだけ描かれています。マスメディアや従来からあるような方法を利用するのではなく、いわゆるゲリラマーケティングと呼ばれる手法です。自転車に色を塗ってニューヨーク市内に置くだけですが、注目を集めれば、その効果は馬鹿になりません。

photo by alq666photo by NYCArthur

街かどに映えるオレンジの自転車を目にして、その新鮮さに感心する人もあれば、取り立てて関心がない人もあるでしょう。しかし、反感を感じる人も少なくありません。その派手な色が目障りに感じたり、そもそも公共のスペースに勝手に広告物を放置することに疑問を感じる人も多いようです。

もともとのDKNYの主張に賛同する人もいれば、その手法に反発する人もいて、ちょっとした論争になっています。各所のオレンジバイクも壊されたものもあれば、他の色に塗りなおされたりしたものもあります。Youtubeなどにも、Orange Bikeに関連する動画が投稿されています。



ペイントが剥がれて街を汚しているものもあり、何より、警察には違法な道路占有物として撤去されています。まさにゲリラ的な手法というわけですが、世界的にも有名なブランドが、人々の反感を招きかねないこうした手法をとる勇気に、むしろ感心しないでもありません。

マスメディアなどを使った宣伝広告も充分に出来るメジャーブランドが、わざわざ、こうしたゲリラ的手法をとるからには、おそらくマーケティング戦略として十分練られたものなのでしょう。多少反感を買うぐらいでないと話題にならず、効果的な宣伝とは言えないのかも知れません。



ニューヨークの街は、雑然と見える場所もありますが、街路樹などの保護のため、立木に自転車を固定してはいけないとか、通りに面した窓からの上演行為は禁止など、意外と細かい規制もあります。当然、広告なら何でも許されるわけではありませんが、日本のように街に放置自転車が溢れていない分、効果的な手法とも言えそうです。

しかし、今回自転車に色を塗って広告にしたことで、結構な反発を受けているのも事実です。せっかく都市交通としての自転車の有益性を理解し、そのサポートをしてきたにもかかわらず、サイクリストの中には、それらは、自社がいかに環境に配慮しているように見せるか、売名行為に過ぎなかったのだと感じた人も少なくないでしょう。

photo by Matt Carmanphoto by rollingrck

同社のモデルやスタッフが自転車を使っているわけでもないし、自転車のオブジェで訴えたいものも、“DYNY.COM”だけだというわけです。同社にはマイナスのような気がしますが、そもそも自転車に乗る層と、同社のブランドを愛用する層は大きく重ならないとするなら、構わないのかも知れません。

もう一点、この手法のスタイルが、“ Ghost bikes ( Ghost cycle )"に似ていることも指摘されています。このゴーストバイク・プロジェクトは、クルマにはねられるなどして亡くなったサイクリストへの追悼と、危険な道路と交通に対する、社会への警鐘として路上に置かれる白く塗られた自転車のことです。

Ghost bikesGhost cycle

日本でも、交通死亡事故発生現場に花や故人を偲ぶ品が置かれることがありますが、追悼という意味では似た形なのかも知れません。同時に、"SHARE THE ROAD"、すなわちクルマだけでなく、自転車や歩行者と道路を安全に共有し、共存出来る交通を訴えるものでもあるのです。

白とオレンジで色は違いますが、実際に家族や友人のサイクリストを交通事故で亡くした人にとってみれば、あまりいい気はしないのは確かなようです。たかがオレンジの放置自転車に、そんなに目くじらを立てることもないと考える人がいる一方で、確実に不快感を感じ、同社を最低だと痛烈に非難している人もいます。

コーストバイク白い自転車がメモリアル

日本でも、一定の時期だけ屋外に許可なく掲示される違法な「捨て看板」を見ることがあります。最近は、期間が終了したら速やかに撤去しますなどと書かれていたりします。ダナキャランも、ファッションウィーク期間だけの宣伝のつもりが、目立ったために、思わぬ反感を買ってしまった部分があるのかも知れません。

このオレンジの自転車、ファッションブランドの宣伝ということもあって、あるいは格好いいとか、センスがいいと感じる人もあるでしょう。蛍光の橙色については好き嫌いがあるとしても、シンプルだし、他にも自転車は駐輪されているのだからいいのではないかという意見もあるに違いありません。

photo by Adam_T4photo by Noah Sussman

しかし、これが風俗産業などの宣伝だったらどうでしょう。日本で、実際に起きている事例があります。昨年末のニュースですが、毎日新聞から引用します。


放置自転車広告:条例盲点つき「出会い喫茶」看板 名古屋

児童買春の温床とも指摘される「出会い喫茶」の看板を載せた放置自転車が、名古屋・栄などの繁華街の路上に増え始めている。同じ広告内容でも、立て看板なら条例に基づき撤去できるが、自転車は違反広告物とみなされず適用できない。取り締まりを進めたい名古屋市や愛知県警は、条例の盲点をついた看板に頭を抱えている。

放置自転車広告問題の自転車はいずれも買い物用の3輪式。約1年前から増え始め、現在は十数台に達している。「男性1時間1000円」「女性無料」などの文字が書かれた高さ約1.5メートルの看板を荷台に載せ、施錠したまま交差点などに昼夜問わず放置されている。

市屋外広告物条例は、許可なく広告物を屋外に掲示することを禁じている。しかし、自転車は条例の対象外のため撤去できず、市都市景観室の川口泰男室長は「実質は屋外広告だが、市や警察が手出しできないところを突いた巧妙な手口」と困惑する。

県警は10月、出会い喫茶の立て看板を歩道に設置した男(40)らを同条例違反容疑で書類送検するなど、違反広告の取り締まりに力を入れている。自転車広告についても警告しているが、効き目はなく、県警中署幹部は「条例の壁があり苦慮しているが、(道路交通法の適用検討など)努力したい」と話している。

出会い喫茶は名古屋市に02年ごろ出店。男性は有料だが女性は飲食も無料のシステムで、男性客が店員に依頼して女性客を指名し、合意すれば店外でのデートに連れ出すことができる。県警は今年、同じ16歳の少女を買春した同県吉良町主査の男(43)ら数人を逮捕。4月には15歳の少女にわいせつ行為をし、覚せい剤を注射した建設作業員の男(30)を逮捕した。いずれも出会い喫茶で少女と知り合っていた。(毎日新聞 2007年12月30日)



こちらの場合は、多くの人が眉をひそめるに違いありません。この条例の盲点をついた放置自転車看板と、オレンジ自転車、両者は大きく違うようでいて、本質的には近いものがあるのではないでしょうか。昔からあるような蕎麦屋の出前用自転車に店名が入った、「自転車の看板」と「看板用の自転車」とは、似て非なるのも確かです。

photo by atmasphere

電子メールも自転車も、どちらも便利なツールです。一方はネット空間、他方は現実の公共空間で用いられますが、他の人に不快な思いをさせるような広告手段として使うべきではないことにおいては共通です。どちらも、今後も便利なツールとしての利便性を損なわないためにも、その使われ方に注意したいものです。



立春を過ぎたというのに寒い日が続いていますね。でも、この寒さなら、もらったチョコレートが持って帰る途中に溶けたりする心配はなさそうです(笑)。

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同じニューヨークでは、自転車に看板をつけて街を走り回る手法も。

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市民はあまり自転車に乗るな
自転車本体でなく、駐輪機に広告を入れて収入にしようという手も。


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