February 19, 2008

万一事故に遭った時のために

本文とは直接関係ありません。自転車の女性が重過失致死で書類送検されました。


報道によれば、自転車に乗って下り坂を走行してきた女性が、信号が赤に変わる直前に交差点に入り、歩行者用信号が青になって横断歩道を歩き出した歩行者と衝突したと言います。衝突された歩行者は転倒し、頭を強く打って死亡、女性も鎖骨を折る重傷を負いました。

事故を処理した警視庁渋谷署は安全を十分確認しないまま、時速30〜40キロというスピードで交差点に進入したと認定し、これを悪質と判断して重過失致死容疑を適用しました。当然のことながら、刑事責任ばかりでなく、民事上の賠償責任も問われることになるでしょう。

過失の程度はともかく、相手を死亡させるという重大な結果は、自転車に乗っている人なら誰にでも起こりえます。自転車とは言え、スピードが出れば相当な衝撃力を持つわけで、場合によっては重大な結果を招きかねないことは、あらためて強く肝に銘じておくべきでしょう。

ママチャリで普通に走行するぶんには、せいぜい時速15キロ程度かも知れません。しかし、緩やかな坂であってもスピードが乗れば、時速30〜40キロというスピードは充分に出るはずです。スポーツバイクなら、下り坂でなくても相当なスピードが出せることは言うまでもありません。

もちろん、相手が歩行者でなくクルマだったら、こちらが相当のダメージを受けるでしょう。衝突の仕方によっては、当然死亡することもありえます。スピードが出ていれば、例えまともに衝突することは免れたとしても、転倒したり大きく飛ばされるなどして身体に重大な損傷を受けることは想像に難くありません。

考えてみれば、自転車も時にオートバイやクルマにも匹敵するような速度で走行するにも関わらず、生身にせいぜいヘルメットを被っている程度です。最近、自転車が加害者になる事例がクローズアップされますが、自転車が被害者となる事故も圧倒的に多いわけで、しかも各地で増加していると言います。

事故に遭わないよう気をつけていても、誰にも事故の可能性はあるわけですが、その場合の備えと言えば、お寒い限りです。風の抵抗や発汗などの理由で、自転車用のジャージやパンツは身体にフィットした薄い生地である場合が多く、事故のダメージを軽減する役割は期待できません。

それはオートバイでも似たような状況ですが、最近オートバイにはエアバッグを備える人が出てきています。オートバイに搭載されているのではなく、言わばエアバッグを着るスタイルです。エアバッグが仕込まれたジャケットを着て、そのジャケットとオートバイをワイヤーで連結しておくのです。

hit-air
ヒットエアー


事故にあって、オートバイと身体が離れた瞬間、ワイヤーに大きな力が加わります。するとジャケットが瞬間的に膨張し、首や背骨など、衝撃を受けると生死に直結するような箇所を保護するようになっているのです。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、hit-airという商品です。

このヒットエアー、先月テレビでその開発秘話が放送され、一部で反響を呼んだようです。フジテレビ系列の、「奇跡体験!アンビリバボー」という番組ですが、オートバイの愛好者以外でも、この番組で初めて知って感心した人もあったようです。

不屈の発明家このエアバッグ内蔵ジャケット、私はたまたま、それ以前にニュースか何かで見て、その存在は知っていました。私も今は乗っていませんが、自動二輪の免許を持っているので興味もあり、記憶に残っていました。その開発のいきさつまでは知りませんでしたが、偶然家人がこの番組を録画していたことがわかり、早速見てみました。

このヒットエアーを開発したのは、愛知県にある無限電光という会社(現在)の社長、竹内健詞さんです。自らのアイディアを商品化する発明家でもあった竹内さんが思いついたのが、オートバイで事故が起こった瞬間にウェアが膨らみ体を保護するという方法です。悲惨な事故に心を痛めていた竹内さんは開発に取り組みます。

技術的な壁で紆余曲折があってものの、ようやく製品を完成させ、大手バイクショップから契約料2億円で扱いたいという提案が来るまでになりました。ところが、開発のため大きな借金を抱えていたにも関わらず、竹内さんはこのオファーを断ってしまいます。なぜなら、オートバイの購入特典にしたいという話だったからです。

hit-air竹内さんは、このエアバッグで金儲けがしたいのではなく、広く普及させ、一人でも多くの命を救いたいと考えていたのです。知名度が上がらず、量産して低価格化も出来ずに販売が振るわない中、そんな信念で努力を続け、周囲の応援や協力者も得て、ついに大幅なコストダウンと軽量化に成功し、現在のヒットエアーが完成しました。

世界中で反響を呼び、さまざまな表彰を受けたこのhit-air、世界各国でOEM生産されています。日本でも11都県の警察が採用するなど、広く知られるようになり、この製品によって命を救われた人も増えています。詳しいストーリーは番組のサイトを見ていただくとして、その使命感と信念に頭が下がります。

さて、このhit-air、オートバイ用として開発されたわけですが、サイトには乗馬にも使われ、モーターサイクル以外でも利用される多目的タイプもあると書かれています。自転車とは書いてありませんが、少なくともオートバイと共通するような状況の事故もあるはずで、自転車用としても機能するはずです。

メッシュタイプ
ベスト型

もちろん、左折巻き込みなど自転車に多いタイプの事故に全て有効とは限らないでしょう。自転車ごと飛ばされ、ワイヤーにテンションがかからなかったら、作動しないこともあるかも知れません。その点は、クルマのエアバッグとは違って、オートバイにしても自転車にしても、構造上仕方ない部分があります。

自転車でどれだけ有効かは、人によって評価が分かれるかも知れません。オートバイでも、まだ多くの人が使っているわけではなく、ましてや使っているサイクリストは聞いたことがありません。しかし、自転車事故でも、このhit-airで命が救われる可能性があることは間違いないでしょう。

ヒットエアージャケット

外見は、オートバイ用に開発されただけあって、やはりオートバイ用です。特に夏場汗をかく自転車向きとは言えません。サイクルジャージと比べれば、重量もありますし、ごついぶん風の抵抗も大きそうです。ただ、ベストの形をしたタイプや、夏用のメッシュタイプなら使えないこともなさそうです。

実際には、自転車で重大な事故に遭う可能性があることは間違いないとしても、そのリスクについて、あまり考えていない人が大部分でしょう。日本では、自転車用のヘルメットの普及率ですら高くありません。仮に自転車向けhit-airが開発されたとしても、使う人がどれほどいるか疑問です。

しかし、現状ヘルメットくらいしか、救命用のアイテムがない自転車にとっても、一つの可能性を示唆する製品ではあります。日本で開発された製品ですが、海外のサイクリストに採用されるようになる可能性もありそうです。現状では厳しいとしても、自転車用として全く普及の可能性がないとは言えません。

hit-airヒットエアー

考えてみれば、クルマにだって昔はエアバッグも無かったわけですし、シートベルトの着用義務もありませんでした。オートパイのヘルメットにしてもしかりです。最初は違和感があっても、普及したり、それが義務付けられれば、当たり前のように使うようになるのも間違いないところです。

事故は起きないに越したことはありません。道路の構造や交通ルールによって事故が防げれば理想です。しかし、依然として死傷事故の絶えない現状を鑑みるなら、ヘルメットと同じように、このhit-airのような安全装置は充分検討に値する選択肢なのかも知れません。



この番組、放映当日に読者のnoriさんにコメント欄で教えていただきました。noriさん、ありがとうございます。放映直後に取り上げようかとも思ったのですが、無限電光さんのサイトがダウンかリニューアル中かで表示されなかったようなので、ずらしました。

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