February 25, 2008

まだ足りないとは言うけれど

今国会では、道路特定財源が大きな争点になっています。


そんな中、河北新報に興味深い記事が載っていました。


道路特定財源ルポ/未完の自転車道/遠野―花巻

未完の自転車道バブルの夢想分断 再開めど立たず

「冬場は除雪しないので、まず走ることはできない。もっとも、夏場でも利用者はあんまり…」。岩手県遠野市の50代主婦が、雪で埋まった「県道」を前に説明してくれた。遠野市中心部と花巻市東和町の田瀬湖を結ぶ全長約30キロの「自転車県道遠野東和線」。幅4メートルの細道は、歩行者と自転車の専用道として、バブル崩壊後の1993年から整備が進められた。

48億円に上る事業費のうち、国が負担した20億7000万円はすべて、道路特定財源から投入された。並行する国道283号を車で走ってみた。自転車道は田瀬湖の手前、花巻市境に近い遠野市宮守の林で、途切れた。岩手県によると、2001年に県の公共事業評価委員会が「利用促進の努力が必要」と、事業継続に当たって意見を付けた。県は田瀬湖までの3.3キロを残し、05年に事業を完了させた。

県道路環境課は「担当者が入れ替わり、完了した経緯は分からない。未着工区間は地形の厳しさから工事費が膨らむと見送られたのではないか」と歯切れが悪い。「状況を見て事業の再検討も」とは言うが、利用が少ない以上、再開の可能性はほとんどない。

自転車県道遠野東和線地元は、中学校や自治会によるサイクリング会を開き、利用促進に努めてきた。遠野市陸連幹部(44)はマラソン大会を提案したこともあったと明かし、「救急車が入れないので、結局、断念したけどね」とあきらめ顔だ。県に全線開通の要望を続けている遠野市の本田敏秋市長は、道路特定財源暫定税率の存廃議論の行方を気にしながら、「必要なのは命を救う救急医療搬送のための道路整備。(自転車道の)優先順位は低い」と語る。

民話の里遠野を代表するカッパ淵(ぶち)や紅葉の美しい猿ケ石川の景観を眺めながらペダルをこぐ。バラ色の「観光サイクリングロード」が着工当時のうたい文句だった。途切れた道路の周辺には柏木平レイクリゾートの観光施設がある。支配人の男性(51)に自転車道の感想を尋ねると、「20キロ以上も離れた遠野の中心部から、観光客が自転車でやってくると思いますか」。バブル時代の机上の空論を突き放すような答えが返ってきた。(2008年02月23日)


道路特定財源で、こんな自転車道まで造られていたわけです。個人的には自転車道を無駄とは言いたくありませんが、あまりに利用者が少ないのであれば、その整備の正当性が問われるのは当然です。少なくとも、専用のトンネルを掘ってまで高コストの自転車道を造る必要性があるのか疑われてしかるべきです。

県道遠野東和自転車道線観光サイクリングロード

自転車道を造るにしても、その地元の人にすら理解が得られないほど利用者が少ないのであれば、税金の無駄遣いと非難されても仕方ありません。そんな予算があるなら、事故が多発している道路の改修であるとか、通学路の整備とか、優先度の高い整備がいくらでもあるでしょう。

衆参のねじれ現象で、この3月でガソリン税の暫定税率が期限切れとなる可能性が出たことによって、道路特定財源の行方に大きな関心が集まっています。道路建設の中期計画や道路特定財源の一般財源化の問題、地方自治体の財源問題も加わって議論が白熱しています。

神戸新聞の記事地方議員や首長からは、暫定税率の維持を求める声があがっています。地方にはまだまだ道路が必要なので、道路整備の財源を確保すべきとの主張です。確かに、道路整備は企業の誘致にも欠かせないインフラですし、地域経済にとって死活的問題だとする考え方はよく理解できます。

ただ一方で、完成した道路が閑散として地域の活性化に役立っているとは思えない例もありますし、地元の人にすら利用されていない例も少なくありません。逆に買い物客が他県へ流出したり、観光客などの素通りにつながったり、整備の妥当性に地元の人ですら首をかしげる例も多く報道されています。

西日本新聞の記事道路整備が遅れている、地方にはまだまだ道路が必要と言いながら、その路線の必要性が全く理解できないような道路、必要以上に高規格高コストの道路、莫大な予算を費やしておきながら、開通の見通しがたたずに無駄となった道路などがあちこちに見られる状況では、国民の理解は得られないのではないでしょうか。

地方の首長などが声高に訴えるのは、その地域に必要というより、その地域の建設業従事者にとってのみ必要だと訴えているように聞こえている有権者も少なくないはずです。議員や首長の意見は、マスコミで大きく取り上げられるので、それが地方の意見のように聞こえますが、必ずしもそうとは限りません。

道路博物館公共交通の発達していない地方では、クルマが必須の交通手段です。もちろん道路工事関係者以外でも、道路工事による地元への経済効果は見逃せない部分でしょうから、異論を唱えるまでには至らないとしても、むしろ暫定税率が廃止され、ガソリンや燃料が安くなった方がありがたいと思っている人も多いのではないでしょうか。

国民は、今までいかに道路予算が浪費され、政治力にのみ左右された無駄な道路、橋、トンネルなどがつくられてきたかを知っています。談合や政官財の癒着構造が出来上がり、国や県の予算を消化するため、黙っていても土建業者が潤い、そこからの献金が政治家に流れ、いわゆる既得権益が出来ていることもわかっています。

それが莫大な国の借金につながっていること、あるいは日本の国際競争力をそぎ、経済成長を阻害する要因であることも感じています。そうした無駄な公共工事を削減し、道路公団を民営化し、改革を進めた点で小泉首相が国民の大きな支持を得たのは紛れもない事実です。

地下道・駐車場地方に道路を造るなと言うつもりはありません。必要な道路は整備すべきでしょう。ただ、無駄な道路は造らせない仕組みが必要なのではないでしょうか。厳密な優先順位によって、重要な道路から整備し、誰もが納得するような道路整備であれば、こんなに問題とならないでしょう。もちろん財源の流用などはもっての外です。

都市だ地方だと争っていても、国の財政が破たんしては元も子もありません。国の借金が838兆を超えるという危機的な国家財政を立て直すのも急務です。少子高齢化が進んでいくのに、これから59兆も道路を造れと総額が先でも到底理解は得られないでしょう。

政治家も、その力を誇示するかのような予算の分捕り合戦と、その結果として誰が見ても無駄としか思えない公共事業が積み上がっていくような状況は恥だと思うべきです。国会議員にも、地元の利益ばかりで、日本全体のことを考えているとは思えない人が多すぎるように感じます。

自転車県道遠野東和線日本の国債が再び大きく格付けを下げる危険性もあるでしょうし、日本の改革への意志が疑われれば資金も逃げていくでしょう。低迷する株式市況を見ても、すでに日本は魅力的な投資先として見られなくなってきています。小さな池の中の争いをしている場合ではありません。

個人的には自転車道も整備してほしいですが、必ずしも大多数の市民の理解を得られるとは限りません。やはり本当に必要な道路、生活に密着する道路を優先すべきでしょう。せっかくの自転車道も、冒頭の例ように誰も利用しないのなら、住民に白い目で見られるだけです。自転車の活用への理解もかえって阻害されます。

自転車道を整備する場合でも、多くの人が利用する場所、多くの人の利便性や安全性が向上する場所、地元の人の生活や、観光資源などとして地域経済の活性化に寄与する道路から整備すべきです。市民の納得の得られるようなコストと優先順位を考えながら整備していく必要もあります。

例え自転車道であっても、単に予算を消化するため、まず工事ありきで使えない場所につくられるのなら勿体ない話ですし、せっかく造るなら利用者本位の整備も望みたいところです。自転車道も含めて、無駄な道路を造らせない仕組みが必要なのかも知れません。



一昨日の春一番に続けて、昨日の冬の嵐、どちらも凄い風でした。大変な思いをされた方も多かったのではないでしょうか。春のうららかな陽気が待ち遠しいです。今年は春・夏とも暖かい見通しだそうです。

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