March 20, 2008

3人乗り自転車が生む副産物

3人乗り自転車が話題になっています。


ここのところ一般のメディアでも、子供を乗せても安定して走れる3人乗り自転車の開発の話題が取り上げられています。あのドクター中松氏も、安定して乗れる自転車「ドクター・中松SAFEOUR(セーフォア)」を発表しています。先日、偶然テレビでこの自転車をドクター中松氏本人が紹介しているのを見ました。

ドクター・中松SAFEOUR(セーフォア)どんな自転車かと思えば、愛・地球博でもベロタクシーとして使われた、ヤマハ発動機製の3輪自転車です。中松氏の発明は、電動アシスト装置の電力を供給する、CO2を排出しないという発電装置の部分だけで、車体は発明でも何でもありません。もともと発表する予定だった自身の発明、発電装置の宣伝に利用しただけのようです。

このあたりが、中松氏の抜け目のなさ(笑)だと思いますが、全長280僉∈蚤臧115僉⊇杜163kgもある3輪アシスト自転車なら安定しているに決まっています。こんな大きな車体を玄関先に駐輪できる家庭はそう多くないでしょう。ドクター中松のマスコミ利用の巧さはともかく、実用性から言えば全く解決策になっていません(笑)。

中松氏の発明は別としても、メーカーは3人乗り子供乗せ自転車の開発に取り組み始めているようです。下の右の写真、丸石サイクルは現在ある子供乗せ自転車の、前乗せタイプと後ろ乗せタイプを組み合わせて前後に乗せる形を想定しています。どれだけ安定するかが問題ですが、既存のオーソドックスな形を踏襲するようです。

ランドウォーカー丸石サイクル

前2輪の3輪自転車で知られるランドウォーカー社は、上の左の写真のように補助輪を装着し、後ろに2人乗せるタイプを構想しているようです。確かに2輪よりは3輪や4輪のほうが安定することは間違いありません。ただ、法令上は普通自転車とならず、歩道を走行出来なくなるなどの問題も出てきそうです。

デンマーク・ニポラ社製の子供乗せ自転車また、NPO法人「自転車活用推進研究会」が、ヨーロッパで販売されているデンマーク・ニポラ社製の子供乗せ自転車を輸入する予定と報じられています。私も以前取り上げたことがありますが、この自転車も幅85センチ、長さは203センチあります。やはり普通自転車にはあてはまらず、車道を走ることになります。

他にもありますが、既に海外にある安定して3人乗れる自転車を輸入するのも有効な選択肢だと思います。しかし、安価なママチャリの溢れる日本の市場に、価格的に受け入れられるか不明な場合もあるでしょう。大多数の人が歩道を走行するという特殊性もありますから、そのまま持ってきて使い勝手がいいかという問題もありそうです。

それ以外に考えられるとしたら、チャイルド・トレーラー(キッズ・トレイラー)の接続でしょうか。安定していますし、必要な時だけ接続出来ます。基本的に自転車本体を新たに購入する必要はありません。子供が大きくなったら荷物の搬送にも使えます。しかし、運転しにくさや歩道を通れないという問題は残ります。

FreeRadical Hitchless Trailer Kitヒッチレストレーラー

私は、この“Xtracycle”も面白いのではないかと思います。FreeRadical Hitchless Trailer Kitと呼ばれるこのシステムは、通常のトレーラーとは違い、自転車の後輪を外してキットを装着します。これによって前輪と後輪の距離、すなわちホイールベースを広げることで荷物を載せるスペースを確保するわけです。

後輪を後ろへずらす今まで後輪が取り付けられていた部分を利用し、そこから数十センチ後ろに後輪のハブが来る形になります。この延長フレーム部分に荷物積載用のパーツが取り付けられます。つまりトレーラーを牽引するというより、荷台をつけ、その分、後輪を後ろに移動した形なのです。

ですから荷台と車体は一体化しています。軸間距離は長くなっているものの、トレーラーを牽引しているのとは違うので運転しやすく、取り回しも楽なわけです。ホイールベースが長くなったぶん直進安定性は増します。荷物が前輪と後輪の間に来るので、サーフボードなどの長尺のものや重量物でも安定して運べます。

積載量が大きいわりには、その重量の大半が車輪の中心から下に集中するので高い安定性も発揮し、三輪や四輪より転がり抵抗が少なく、総重量も小さいので軽快に走れます。基本的に、今まで使っていた自分の自転車に取り付けられ、不要な場合は取り外せるのも利点と言えるでしょう。

このキットに、子供二人分のシートを取り付けて3人乗り自転車とするわけです。子供もかなりの重量があるので、ハンドル上や、どちらかの車輪上にあるよりは前輪と後輪の間にきたほうが安定するのは間違いありません。3輪にしない選択肢としては有力なのではないでしょうか。

通常の700Cや26インチの自転車に取り付けると、車体が長くなって、日本の普通自転車の枠内に入らなくなる点は他の自転車と同様問題ですが、このスタイルの示唆するものは小さくないような気がします。日本でも人気があるSURLYのフレームと組み合わせたBig Dummyというフレームセットも発売されています。

子供を乗せても安定世界で使われている

Big DummyXtracycle

子供が成長した後でも、Sport Utility Bicycle (S.U.B.) と言うだけあって、このトレーラーキットは使えそうです。買い物や大きな荷物の運搬にクルマが不要になる場面も増えるでしょう。泊りがけの旅行の荷物だって運べますし、仕事にも使えれば、キャンプやサーフィンなどの趣味にも活躍します。

Sport Utility Bicycleクルマには、スポーツユーティリティビークル(SUV)と呼ばれるカテゴリーがありますが、今まで日本の自転車に、スポーツユーティリティバイシクルという分野が意識されることは、ほとんどありませんでした。今回の3人乗り自転車への関心の高まりで、新しいスタイルとして注目されるかも知れません。

当初の目的は子供を二人乗せることであっても、荷物の運搬にも大きな威力を発揮するはずです。子供の成長後にも使えるばかりか、従来のママチャリなどより多くの荷物を運べる事で、クルマの代替として使える場面が広がります。温暖化対策としても注目を集める可能性があります。

警察庁お墨付きの安定して安全な3人乗り自転車が、どんな形に落ち着くかまだわかりません。どのような形になるにせよ、現状を見る限り一長一短がありそうです。業界としての基準の形成や他社の動向などを様子見のメーカーもあり、これからまだ新しい提案が出てくるかも知れません。

もちろん、一つの形に絞る必要もないわけで、いろいろな選択肢があってもいいでしょう。今回、警察庁の限定的3人乗り許可の方針が、従来と違う自転車の普及を促す形になるわけですが、新しいタイプの自転車の普及と共に、自転車の活用にも新しい局面をもたらすかも知れません。メーカー各社の創意工夫を期待したいところです。



円高に一連のサブプライム関連、日銀総裁空席に暫定税率期限切れと、年度末を控えて、なんだか慌ただしいことになってきています。チベットも気になりますね。

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同じデンマークの自転車だが、こちらも非常に優れていると思う。

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警察庁の、子供乗せ3人乗り自転車禁止についての前回の記事。



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東京都で「傘差し、ケータイ使用での自転車運転」禁止に 7月〜【コトハノオト】at June 13, 2009 11:51
この記事へのコメント
CYCLER OADさんこんにちは。3人乗りの見解楽しみに待ってました。xtracycleと来ましたか!サーリービッグダミーで見た事はありましたが、こういった使い方もあるのですね。おっしゃるように、新しい自転車を購入しなくてはならないよりこのようなオプションでできるようにする事が現実的だと私も思います。
私はこの際、大人の2人乗りも実現してほしいと思っています。県条例で現在でも3輪以上で座席があれば大人でも複数人数乗るのことができるはずなので3輪の電動アシストシティサイクルを購入して後ろに座席をつけて2人乗りを堂々としてみたいと考えています(笑)。
Posted by ベロモ at March 21, 2008 12:33
ベロモさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
お待ちいただいていたとは光栄です(笑)。いろいろな方法論や選択肢があっていいと思いますし、人によって何がベストかは違うと思うのですが、日本では目新しいスタイルかなと思って取り上げてみました。
ビッグダミー、ご存じでしたか。ユニークな自転車だと思いますが、何か特別に荷物を運びたいとか、それこそ3人で安定して乗りたいといった理由がないと、なかなか買う機会はないでしょうね。
タンデムの3輪自転車は、展示会などで私も何度か目にしています。実際に販売もされていますが、長さも長く、買う人は少ないようです。私もあれば乗りたいですが、なかなか手が出せません。4輪のタンデムも制作されていて、これだと公道走行できない都道府県は4県しかないそうです。
(参考記事をこの右下のcycleroadにリンクしてあります)
Posted by cycleroad at March 22, 2008 21:37
CYCLER OADさんこんにちは,記事のお知らせありがとうございます。日本でこのような自転車を製作されている事を知りませんでした。とても興味深く読ませて頂きました。素晴らしい取り組みだとは思いますが、現実は厳しいのですね。勉強になりました。
Posted by ベロモ at March 23, 2008 07:00
ベロモさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
どういたしまして。ちょっと古い記事なので若干かわっている部分があります。私もこのメーカーの方がわざわざコメントを書き込んで下さったので知りました。その後、展示会などの際、同社のブースで何度か実物も見ています。
愛好家の方も少数存在するようですが、なかなか日常的に利用する人が増えるには至っていないようです。
Posted by cycleroad at March 24, 2008 12:40
このページだけを見て感想を書いていますが、
子供二人乗せ自転車より、老人用の二人乗り自転車のほうが、需要が多いのでは、
アシストが2倍から3倍に改正され、一人こぎでもそこそこ走るのではないでしょうか、
小さいタイヤを使えば一般自転車も作れるのでは?。
シルバーカーより安く、早く!!。
技術的より、法律の壁のほうが高そうですね。
Posted by 足跡 at August 30, 2010 19:01
足跡さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、高齢者向けタンデムですか。高齢化社会を迎えて市場もこれから拡大する一方でしょうし、需要はあるかもしれませんね。
安定させるために三輪にするとか技術的には、いろいろ考えられるでしょう。
ただ、歩道走行の問題とか、おっしゃるように、法的な面がネックになるかも知れないですね。
Posted by cycleroad at September 01, 2010 17:41
はじめまして。記事、大変参考になりました。
3人乗り自転車の開発をしておりますが、そもそも自転車業界とは関係がないため、当初、業界があまりにも保守的なのに驚きました。
3人乗り自転車解禁の際も、もっと革新的な自転車が各メーカーから登場するものと思っていましたが、ふたを開けてみれば、既存製品の手直しをしたものばかりでちょっとあきれてしまいました。
一部メーカーさんは革新的な機能で、意欲的なものも見られますが、あきらかに手抜きのものも見受けられるのは残念です。
とはいえ、業界の体質だけが原因ではなく、日本の自転車インフラに起因する部分もあるので、むずかしいところですね。
Posted by 3人乗り自転車マリールゥ開発部 at May 12, 2011 14:29
3人乗り自転車マリールゥ開発部さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
単なる個人のプログなのですが、ときどき設計者の方とか、開発者の方からもコメントやメールをいただきます。
そうした方々にも見ていただいているようなので光栄ですし、何か参考になるような部分があったのであれば幸いです。
私も業界関係者ではないので、よく知りませんが、保守的というのは、そうなのかも知れませんね。成熟した商品、飽和した市場と見る人が多いだろうというのは想像がつきます。
おっしゃる通り、インフラなどによる制約もあるでしょうし、あまり開発費をかけても、それに見合うような売り上げが見込めないということもあるのでしょう。
しかし、ここで挙げた以外にも、海外の製品、子供を乗せるために開発された自転車の中には、デザインや機能的にも意欲的で先進的だったり、ベンチャースピリットに溢れたものも多いと思います。
このプログでも、過去にいろいろと取り上げていますので、よろしければご覧になってみてください。
Posted by cycleroad at May 12, 2011 23:21
 
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