April 10, 2008

手段そのものが目的となる時

相模原市は、神奈川県北部に位置し、東京町田市や八王子市などと接しています。


神奈川県では横浜市、川崎市に次ぐ3番目の70万人を超える人が住む中核市であり、全国でも19位、政令指定都市を除くと日本で一番人口の多い市です。東京都心への鉄道の便もよく、いわゆる東京のベッドタウンとなっています。その相模原市に神奈川県警から感謝状が贈られました。


感謝状:県警が相模原市に 放置自転車の返還迅速化で /神奈川

放置自転車を持ち主に早く返還できるシステムを構築したとして田畑智明県警本部長から相模原市に8日、感謝状が贈られた。放置自転車の持ち主確認では、自治体が車体番号と防犯登録番号を記した書類を警察署に持ち込まなければならない。署が県警照会センターのシステムにアクセスして番号などを入力しなければならず、所有者確認に約1カ月もかかっていた。

同市では県警のシステムに直接アクセスできる照会業務の電子システムを導入した。入力ミスを防げるうえ、持ち主の確認作業がわずか1日で終わり、早期返還が可能になった。システムは2月から試験的に運用され、今月から本格稼働している。この日は小石良治・県警地域部長が相模原市を訪問。「所有者確認が格段に早くなり、早期返還を可能にした」と話し、田所直久・都市建設局長に感謝状を手渡した。(毎日新聞神奈川版 2008年4月9日)


今まで1ヶ月もかかっていた事務処理がたった1日に短縮されたわけですから、県警が喜んで感謝状を贈りたくなる気持ちもわかります。行政にとっても仕事の効率を大幅にアップさせ、住民サービスの向上に寄与したことは評価されてしかるべきでしょう。

自転車の撤去事業は無い方が良いしかし、そもそも1ヶ月もかかっていたことに驚きます。放置自転車の返還すべてに1ヶ月かかっていたのかどうか定かではありませんが、常識的には考えられない遅さです。通勤や通学などに毎日自転車を利用している人でなくても、1ヶ月も自転車が帰って来なければ、その間の不便さは想像に難くありません。

多くの人があきらめて、あるいは必要に迫られて仕方なく、新たに自転車を購入したとしても不思議ではないでしょう。その間、また撤去されたとしたら、更に購入せざるを得ない人が出てくるかも知れません。いくら自転車が安くなっているとは言え、費用負担も小さくありません。

新規に購入すれば、ちょうど古くなったからと返還を請求しない人や、1ヶ月後に返還されて2台になっても置く場所がないと放棄する人も出てくるでしょう。自転車が使い捨てのように消費され、自転車の撤去費用や処分費用だけがかさみます。行政の経費だけでなく資源の無駄でもあります。

いたちごっこを避けるため自転車対策は今後も熟考するべきもちろん、一義的には、放置禁止区域への自転車放置が責められるべきなのは言うまでもありません。決して迷惑駐輪をする人を擁護するつもりもありません。しかし、これだけ大きな課題になるくらい放置自転車の台数が多い背景には、駐輪場の不足や不備など、根本的な問題もあるはずです。

私は遠くても必ず駐輪場を利用するようにしています。自転車を撤去・移動された経験もないので知らなかったのですが、まさか返還にこれほど時間がかかるものとは思いもよりませんでした。果たして他の自治体でも同じかどうかわかりませんが、程度の差こそあれ、推して知るべしなのかも知れません。

地域差はあるにせよ、自転車を撤去されても取りに行かない人がかなりの割合になるという話はよく聞きます。今まで、自転車が安くなったこともあって消耗品感覚の人が増えたことが原因とばかり考えていました。特にママチャリはタイヤ交換しにくいことなどもあって、ある程度乗ったら取りに行かず買い替えるのかと思っていました。

放置自転車を利用したレンタサイクル事業でも、こんなに日数がかかるのであれば、返還を待てない人が多いのも不思議ではありません。1ヶ月というのもひどい話ですが、利用者も迷惑駐輪の負い目があって文句を言えないのでしょうか。でも、行政サービスと言いながら融通がきかず、市民に大きな時間的、金銭的、あるいは精神的負担を強いるような例は珍しくありません。

この建設局長が構築した電子システムが、それまでと比較してどれほど優れたものなのかはともかく、おそらく民間ならば、ごく当たり前の話なのでしょう。むしろ、こんな利用者無視の非効率が存在することが問題なのであって、民間企業ではありえないと言えるのかも知れません。

各地の自治体で放置自転車対策は問題になっています。そのままにしておけば、通行の邪魔や周辺商店の営業妨害、緊急自動車の運行の妨げ、そして放置を黙認することになります。きちんと駐輪場を利用する人が不利益を蒙り、モラルハザードをもたらさないためにも撤去が不可欠なのは間違いないでしょう。

住民たちが駐輪実態を調査しかし、延々と撤去・移動を繰り返しても「いたちごっこ」で、放置自転車が一向に減らないという場合も少なくありません。撤去するだけでは根本的な解決には至らず、撤去・移動作業そのものが日常的かつ永続的な行政サービスのようになり、受託業者の既得権益化していることもあるはずです。

もちろん自治体によって事情もあるでしょうし、駅前の一等地に駐輪場を確保するのも簡単ではないでしょう。駐輪場の不足といっても、その解決は容易なことではありません。しかし、一方で大きな成果をあげて迷惑駐輪を大幅に改善し、住民から好評を得ている自治体もあります。

例えば、駅前にビル型の機械式駐輪場を設置して大幅に収容を増やすと共に、駐輪する人の利便性を向上させ、利用率を高めているところもあります。撤去と並行して駐輪場を無料化することで利用率を高めて、大幅な減少につなげたところもあると聞きます。





東京二十三区などの自治体の中には、撤去移送経費を年間億単位で計上するところがあります。それが計上できるだけの財政規模があるのも人口が多いからで、そのぶん地価は高く都市化が進み、対策が難しいこともあるでしょう。しかし、何とかそれを駐輪場の整備に回し、撤去費用を減らしていく環境を構築できないものでしょうか。

放置自転車の返還期間を少しでも短縮するのは当然の努力としても、そもそも返還する自転車をなくすことこそが目指すべきゴールであることを忘れてはなりません。放置自転車を効果的かつ低コストで撤去・移動・返還することも大事ですが、手段の目的化は厳に戒めるべきです。

多かれ少なかれ、こうした行政の無為無策、無駄と非効率、あるいは利権と癒着の構造は全国に存在するのでしょう。放置自転車の問題など氷山の一角でしかないはずです。首長の交代や議会の与野党逆転によって、裏金や談合、公金の不適切な流用といった不祥事やあきれるような実態が明らかになる例も少なくありません。

駐輪場も何より安全が一番我々市民もマナー向上に努めるべきですが、行政の無駄や非効率、例えば漫然と撤去費用だけ計上するような無策を厳しく監視していく必要もあるでしょう。しかし、誰でも行政訴訟を起こしたり、市民オンブズマンのような活動が出来るわけではなく、投書や署名運動、メディアに訴えるような活動もなかなか続くものではありません。

結局、一般市民は迂遠なようであっても選挙を通じて政治に民意を反映させ、行政を適正かつ効率的にし、コスト削減の実現を求めていくしかないでしょう。地方の債務は膨れ上がり、一方で少子高齢化が進み、財政再建は急務です。財政再建団体に陥らずとも、座視すれば税金や保険料などの形で我々の負担が増えるのは間違いありません。

放置自転車のことは一部に過ぎませんが、ある面象徴していると思います。国政だけでなく地方の行政機構の改革も必要です。その為にはまず政治家を選ぶ、我々有権者が意識を高めていかなければなりません。私も地方議会や首長の選挙へ有効な一票を投じるため、ふだんから行政の姿勢や政治家の言動に注意しておきたいと思います。



相模原市は少なくとも改善したわけで、特に相模原を非難する意図はありませんので、関係者の方悪しからず。
しかし、大見えをきって殿様商売に乗り出し1000億も損して、金融危機を人質にとって更に400億、いつもでかい口を叩くくせに責任すら取らない某知事に比べれば、撤去移送なんて小さな話ですけどね..。

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市民はあまり自転車に乗るな
放置自転車対策の担当者にしてみれば、そう言いたくなるのだろう。

まだまだ道のりは長そうだが
思いきって全て民間に委託し、迷惑駐輪の解消を目指す手もあろう。

空へ伸ばすか地下に潜らすか
駐輪場整備に知恵を絞ったり、社会資本としての投資も必要だろう。

自転車先進都市に見習うこと
市民に駐輪場の利用を促す為、欧州の先進事例を見習うのもいい。



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この記事へのコメント
こんにちは。
おじゃましました。
またよらせてください。
Posted by ようじ at April 12, 2008 03:55
僕も自転車が大好きです♪
昨年は自転車を購入して毎日1時間乗っていたら
10キロ痩せました\(^o^)/
今年も温かくなってきたので、乗りまくります(^з^)-☆
Posted by 嶋村吉洋 at April 13, 2008 22:31
ようじさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ようこそ、いらっしゃいました。またお越しください。
Posted by cycleroad at April 13, 2008 23:34
嶋村吉洋さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
10キロですか。楽しくて乗っているだけでダイエットになるし、楽しいから続けられるという点で、優れたダイエット方法でもありますね、自転車は。
ダイエットは別としても、自転車に乗っているだけで健康になったという人は多いのではないでしょうか。乗りまくって下さい(笑)。
Posted by cycleroad at April 13, 2008 23:41
 
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