July 09, 2008

自転車のマイナス面を減らす

ここのところ、値上げが相次いでいます。


世界的に高騰している穀物、それを原材料とする食品や飼料としている畜産物に乳製品、物価の優等生と言われ続けてきた鶏卵まで値上がりしています。また原油価格高騰は、石油製品をはじめとする多くの製品の原材料費、燃料、パッケージ、輸送費などの上昇を通して価格を押し上げています。

原油や穀物価格の高騰に目を奪われがちですが、金属などの原材料価格も大幅に上昇しています。昨年、北京オリンピックの建設ラッシュの影響もあって市況が高騰し、日本で銅製品などの盗難が相次いだのが記憶に新しいところですが、最近の傾向は、一時的な不足によるものではありません。

レアメタルはもちろん、銅やアルミ、鉄鋼の価格まで世界的に上がっています。中国やインドをはじめとする新興国の経済成長により、原材料の需給が世界的に逼迫しています。今後も、長期的には価格が下落するトレンドにはならないと予想されています。

エコもアシスト 電動自転車、ビジネスに活躍 ガソリン高騰で需要莫大な人口を抱える中国やインドの生活水準が上がっていけば、世界の資源価格はますます高くなっていくのは必至です。容易に入手できないものも出てくるに違いありません。もはや、豊富な資源を大量に使い、工業製品を大量生産して大量消費するという時代ではないということを、市況が教えてくれているのかも知れません。

地球温暖化対策の観点から省エネルギーに関心が高まっていますが、同時に省資源も進めていく必要があります。いかに有効に資源を使い、また再利用するかという視点が必要です。我々の生活の中にも、もっとモノを大事にする姿勢が求められていくことになりそうです。

さて、原油価格の高騰や温暖化ガスの削減、省エネルギーの面から、最近世界でも関心が高まる自転車の活用ですが、省資源という面ではどうでしょう。クルマに比べれば、製造に要する金属材料は圧倒的に少なくて済むのは間違いありませんが、資源の無駄遣いも起きています。

環境への負荷が低く、燃料も消費しない自転車は、乗って楽しいだけでなく、乗る人の健康にも貢献します。いいことずくめですが、社会にとってはマイナスの面もないわけではありません。日本における自転車の問題点、その最たるものが、いわゆる放置自転車の問題ではないでしょうか。

クルマ中心の都市構造、道路整備が優先されてきた結果、駐輪場の整備が足りない面はありますが、自転車を路上に放置し、迷惑駐輪する人の存在は否定できません。昨今、ママチャリが大幅に低価格化した結果、使い捨てのように使われ、廃棄する代わりに置き去りにされることも少なくないようです。つまり資源の無駄使いです。

自転車でCO2削減加速 街中に休憩所放置した自転車を撤去・移送され、通知を受けたのに取りに行かない人も少なくないと言います。引き取り料も高いし、ある程度乗ったから新しいのを買おうということなのでしょう。もしくは通知が来るまでが長く、その間に新しい自転車を買ってしまう場合も多いのかも知れません。

路上に放置、もしくは投棄される結果、その撤去回収費用も馬鹿になりません。保管費用や多額の対策費もかかっています。川などにも不法投棄され、自転車盗を誘発して青少年の非行の原因となり、美観を損ね、緊急自動車の邪魔になるなど悪影響は少なくありません。

街は迷惑駐輪で溢れています。おそらく事実上所有権が放棄された自転車も相当数あるでしょう。回収され、途上国などに向けて輸出されたり、廃棄物となる自転車も全国ではかなりの量になるはずです。やはり相当の資源の無駄になっていることは間違いないでしょう。

当然ながら、その背景には、近年、ママチャリの価格が非常に安くなったことが大きく影響していると思われます。安いので、少し古くなって調子が悪くなったり、パンクするなどトラブルがあったら、わざわざ修理するより新品を買った方がラク、安い、または大して変わらないというのがあるのでしょう。

自転車を使い捨てのように使う人は、価格が安いので、例え盗まれてもそれほど困らないと考えるようです。鍵すらかけないなど、盗難防止に無頓着な人も少なくありません。警察などがいくらキャンペーンをしても、無施錠は無くなりません。それが自転車盗を誘発し、乗り捨てられて放置自転車を増やします。

放置自転車60台を使ったインスタレーション展自転車に使われている鋼材などの資源が、クルマなどに比べて圧倒的に少ないとしても、省資源やゴミ削減の観点から、こうした使い捨てのような傾向は是正されるべきです。せっかく自転車はエコな乗り物なのに、自転車自体は使い捨てにされているなら、威張れたものではありません。

対策として、マナーやモラルの向上を唱えても、それだけでは実際問題として空しいものがあります。迷惑駐輪をさせないための駐輪場の整備や無料化が望まれます。しかし、駐輪場があっても放置する人はいます。盗まれたり、放置自転車として撤去されるのも覚悟で放置するのでしょう。

結局のところ、一部のママチャリの価格があまりに安いのが元凶と言えますが、かと言ってその価格を上げろというのも無理があります。高関税をかけたり、放置自転車対策税のような形での課税という手もありますが、それは自転車離れにつながります。環境対策としての自転車利用も阻害するので得策ではありません。

せっかく安い値段を上げろというのも変です。自転車を安く提供する企業努力を責めるわけにもいきません。一方で、安い輸入ママチャリが席巻する今の日本市場の構造的な問題が放置自転車を助長しているのは確かです。でも、私が思うに、ママチャリが安いことより、ママチャリ自体の構造が問題のように思います。

ママチャリの修理をしようとしたり、部品交換を考えた人ならわかると思いますが、タイヤ1本外すにも、ママチャリの場合、相当やりにくく出来ています。最初から修理のしやすさは考えられておらず、修理しやすさを削ることによって低価格を実現している部分もあるでしょう。

“忍者”が自転車の施錠呼び掛け仮に、ママチャリをスポーツバイクと同じように、クィックリリースにしてタイヤの着脱をワンタッチにし、チェーンカバーやブレーキなどのパーツも外しやすくすることで、もっと簡単に、気軽に誰でも修理が出来るようにしたらどうでしょうか。

もともと自転車のパーツは安いものです。簡単に部品が交換できるようになれば、自転車ごと捨てずに、不具合の発生した部分だけ交換する人が増えるに違いありません。本来自転車はそういうものですし、当たり前のことです。ママチャリが安くなる過程で、修理しにくくなってしまったのが問題なのです。

法令で、こうした仕様を義務付ける手はあると思います。業界にとっては、自転車本体の売上が落ちるかも知れませんが、このご時勢に、いつまでも使い捨て仕様にしていては社会的な支持は得られません。むしろ業界が自主規制するくらいの姿勢があってもいいのではないでしょうか。

低価格な輸入ママチャリも、部品交換が自由になれば、パーツを選択する人も出てくるはずです。長持ちしたり、壊れにくい耐久性の高い部品、錆びにくいパーツなどを選ぶ人も出てくるはずです。あるいは走行性能をアップさせるような軽い部品とか、人と違うオシャレなパーツを選ぶかも知れません。

消耗する部品だけ交換しながら長く使うようになれば、より自分の自転車に愛着が沸き、同時に、フレームも含めたパーツによって、スピードや快適性が大いに違ってくることが理解されていくと思います。長く使うのであれば、もっといいパーツを使おうと考える人も出てくるばずで、業界にとってプラスになる部分もあると思います。

放置自転車に警告カード自分では修理しないとしても、部品の着脱がラクになるだけで、自転車屋さんの手間は多いに省けます。修理費も安く出来るでしょう。修理が安くなれば、買い替えより修理や部品交換を選ぶ人が増え、自転車の使い捨て傾向も今よりは改善していくはずです。放置自転車の減少にも確実につながっていくと思われます。

もちろん、市場を過度に規制すべきではありませんし、自転車をいくら買い替えようが消費者の自由です。修理しやすい仕様を義務化することで、今の安い輸入ママチャリの価格は多少上がるかもしれませんが、そんなに大きくは変わらず、許容出来る範囲だと思います。

地球環境への影響に関心が高まり、資源価格のより一層の高騰が見込まれる今なら、多くの人の理解も得られるでしょう。放置自転車の減少も見込まれるなら、人々の支持も期待できます。エコな自転車をエコに使うために、今こそ、こうした取り組みが求められるのではないでしょうか。



九州くらいまで梅雨明けしてきました。週末などに、なかなか走りに行けなくて、うずうずしている方も多いかも知れませんが、もう少し、という感じでしょうか。

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