August 11, 2008

少しずつでも前進することで

福田改造内閣が発足して10日が経ちました。


国土交通大臣には谷垣禎一氏が就任しましたが、同氏は趣味のサイクリストでもあることが知られていますので、個人的に、ちょっと期待するところがないでもありません。しかし国土交通行政には、道路特定財源やら航空行政やら多くの重要な課題が山積していますので、優先度から言っても自転車関連に多くは期待出来ません。

そんな中、タイミング的に同氏が直接関与したわけではないと思いますが、国土交通省から自転車専用道を集中整備する方針が発表されました。日本経済新聞から引用します。


自転車専用道を集中整備 国交省方針、10年度から20都市程度

国土交通省は2010年度から、自転車専用道路を集中的に整備する方針だ。全国の主要都市を20カ所程度選び、1都市当たり50キロメートル前後の自転車専用道路を整備することを検討する。ガソリンの値上がりで自転車を利用する人が増えているため、歩行者との接触事故などを避ける安全対策が必要と判断した。環境対策としての意味合いもある。

同省は6日にも有識者の会合を立ち上げ、候補都市の選定基準などを協議する。自転車を利用する人の割合、都市の大きさなどを勘案し、09年度中には具体的な都市名を決める見通しだ。警察庁とも協力する。(日本経済新聞)


谷垣禎一国交相私は、かねがね自転車の走行環境の整備が必要だと書いてきましたが、少し前まで自転車専用道なんて話題にも上らなかったことを思えば、自転車をとりまく環境が大きく変わりつつあることを実感します。自転車利用者としては歓迎すべき方向ですが、まだまだ不満もあります。

この方針にしても、全国のうち20箇所の都市、1箇所あたり50キロメートルと極めて限定的であり、中途半端な印象は拭えません。例えば、これが鉄道網の整備ならば、距離で限定されることはないはずです。必要な場所を結んで計画されるでしょうし、ネットワークとして機能するよう配慮されるはずです。

もちろん予算が限られているのは理解できます。しかし、肉の量り売りではないんですから、各都市50キロずつ、はないでしょう。レクリエーション用のサイクリングロードならそれでもいいでしょうが、都市のインフラとしての自転車レーン、自転車専用道を、たった50キロずつ分配してどうしようと言うのでしょう。

ガソリンの値上がりで利用者が増えているからと言って「泥縄式」で整備するものでもないでしょうし、安全対策ならば、50キロだけ整備したから効果があるというものでもありません。環境対策としても、50キロだけでクルマから乗り換える人が続出するとは思えません。

どうせ整備するならば、都市全体をある程度網羅するネットワークとして利用出来なければ、渋滞緩和など都市交通政策、交通安全対策、原油高対策、地球温暖化対策、いずれにしても意味がありません。あるいは第一弾ということなのかも知れませんが、それならば全体の構想を示すべきでしょう。

趣味のサイクリストにとっては、必ずしも自転車レーンが必要とは言いません。でも、普通の人が誰でも安全・快適、かつ速く実用的な交通手段として利用するためには、自転車レーンは欠かせないでしょう。安全面だけでなく、歩道で歩行者と混在しているようでは、遅くて有効な交通手段とならず、人々の活用も期待できません。

同じニュース、J-CASTニュースでは次のような記事になっています。


国土交通省が自転車専用道構想 10年度から20都市で


国土交通省は自転車専用道路(自転車道)を2010年度から本格的に整備する方針を明らかにした。主要都市を20か所程度選び、自転車道を整備するが、10年はかかるという大規模なプロジェクトだ。自転車と歩行者が接触する人身事故が増え、専用道の拡大整備に踏み切った。

東京都渋谷区幡ヶ谷に設置された自転車道 自転車と歩行者が接触する人身事故は、ここ10年間で約4.8倍に増えている。携帯電話を使用しながら運転したり、スピードを出しすぎたりといった利用者のマナー違反が原因だ。また、歩行者や自動車と道路を共有していることも事故につながっている。自転車が走れる道路のうち、専用道は全国で2500kmとわずか3%程度だ。

自転車専用道構想こうした状況を受けて自転車道の整備に乗り出すことになった。道路局道路交通安全対策室によると、候補都市はまだ決まっていない。有識者を集めた会合を開いて検討を進め、09年度中には決まる予定だ。その先駆けとして、北海道から沖縄まで全国98地区のモデル地区で、歩行者・自転車・自動車の道路を分離するという試みが08年1月から始まっている。

その1つである東京都江東区亀戸では、亀戸一丁目交差点から水神森交差点までの約0.4kmの区間に幅2mの自転車道を設けた。自転車道と車道の境界には柵や縁石を置いた。08年度中にさらに0.8km延長する。東京都渋谷区幡ヶ谷では、幡ヶ谷不動尊入口交差点から幡ヶ谷二丁目交差点までの約1.2kmの区間に設置した。幅1.5mで自動車道との間に柵はないが、道路を青色に着色して目立つようにした。

ただ、スムーズに整備できた地区ばかりでないようだ。国土交通省道路局道路交通安全対策室の担当者が自治体に経過を聞いたところ、いくつかの問題点が浮かび上がってきた。

「家の前に作ってほしくない」「商店街の中や、店の前は困る」

自転車道の整備に欠かせないのが地域住民の理解だ。専用道にした方が安全だという意見は多く、総論的には賛成が得られるという。しかし具体的に話を詰めようとすると、「家の前に作ってほしくない」「商店街の中や、店の前は困る」といった声が上がる。路上駐車の取締りが厳しくなったとはいえ、客が店の前にとめるのは事実上黙認されている。仮に自転車道が設置されれば駐車できなくなり、地域住民の目もあって利用者が減る。そうなれば客足にも悪影響しかねないというのが反対の理由だ。

また、設置後にはこんな問題もあるようだ。新しくできた自転車道には、ゴミ袋が置かれるという嫌がらせが発生している。堂々と自転車をとめる人もいる。また、携帯電話で通話しながら運転したり、なかにはメールを打ちながら乗ったりする人もいる。さらに、自転車道なのに歩行者が使っていることもあった。せっかく専用道を作ってもこれでは意味がなく、国土交通省では「道路を作るだけではだめなようだ。もはやモラルの問題だが、自転車マナー向上の啓発活動などを自治体と協力して行う必要がある」としている。こうした問題をどう解決するのかが、ネットワーク建設の成功の鍵を握っているとも言えそうだ。(J-CAST ニュース 2008/8/5)


こちらは50キロとなっていませんが、市民の理解はまだまだのようです。確かに現状から見て、自転車専用道がそれほど有効とは思えない人が多いのも仕方ないところでしょう。ただ、自転車専用道も道路の一部なのですから、「家の前に作ってほしくない」とか「商店街の中や、店の前は困る」というモノではないはずです。

クルマ中心の道路に慣れてしまった結果、自転車道が造られると邪魔になると考えるのでしょう。確かにクルマにすれば、駐停車しにくくなり、お客が来なくなると心配もわからないではありません。しかし、都市の道路のカタチ全体を考えていく議論の中で、それはあまりに身勝手で視野狭窄です。

確かにクルマで移動するのはラクですし、便利です。でも、最近は慢性的に渋滞が発生し、必ずしも速くはありません。そして、クルマ中心の道路行政が進められてきた結果、クルマによる便利な移動や輸送を手に入れた一方で、失ったものも多いはずです。

クルマにより、日常的に街角で簡単に人が命を落としてしまうという都市は欠陥ではないのでしょうか。小さな頃から左右をキョロキョロ、人がクルマに怯えながら生活する街は異常ではないでしょうか。最近は少し改善したものの、街道沿いに住んでいるだけで喘息や肺の病気になるような大気汚染が当たり前でいいのでしょうか。

騒音に悩まされている人もいます。道路だけではありませんが、全てアスファルトで固めた街は、雨が浸透しないので水害も増えています。そもそもクルマは化石燃料を燃やす熱源でもあるのでヒートアイランド現象も加速させます。そして、CO2を排出し、地球温暖化の一因であるのも間違いありません。

クルマも必要ですし全て排除すべきとは言いませんが、少しの距離でもクルマを使うような、クルマの利用が過剰になっている部分は少なくないでしょう。環境や自身の健康のことも考えて、自転車でも充分な移動は、自転車にシフトすべきではないでしょうか。そして、シフトすべきとするなら、道路の構造も見直してしかるべきです。

仮に自転車専用道が整備されても、駐車車両にふさがれるなど、有効に利用できるか疑問もあります。また、自転車利用者が交通ルールが遵守しておらず、マナーが悪いといった問題もあります。確かにハードが整備されただけでは有効に活用されるとは言えません。

大多数の人は、せいぜいママチャリで最寄り駅まで行くくらいなので、自転車レーンの持つ真の意味あいが十分に理解されていないというのもあります。ただ、最近は自転車ブームという背景もあって、本来の自転車の能力に気づく人も増えています。同じJ-CASTニュースには、次のようなニュースも載っています。


自転車通勤手当導入環境と健康に効く「自転車通勤手当」 導入する会社や自治体出始める

環境にやさしい自転車を通勤に使うと「手当て」を支払う会社や自治体がボツボツ出てきた。健康にいいのに加えて、月に数千円もらえる。「エコ通勤」がこれから増えそうだ。

大口酒造(鹿児島県大口市)は車の代わりに自転車で通勤する社員に、1kmあたり10円を支給する「エコ通勤手当」を2008年8月1日から導入した。環境保護活動の一環として取締役専務の男性が提案したものだ。また、社員の肥満防止の効果も期待できそうだ。自転車を使用した場合は出勤時に自己申告するというもので、1回単位で申告できるので、天候や体調に応じて気軽に利用できる。手当ては半年分まとめて、年2回の賞与時に支給される。

同社の担当者によると、平均通勤距離は片道5km。導入前は車利用がほとんどだったのが、7月からテストで始めたところ、全社員70人のうち約3割が自転車に切り替えた。往復10kmを毎日続ければ、支給額は1カ月あたり数千円になる。また、会社の近辺は平坦で、キツイ坂道も特にないのも大きい。5kmを自転車で走るのにかかる時間はおよそ20分程度で、健康維持にはちょうどいい距離のようだ。

名古屋市では月額4000―8200円を支給

シマノ社員の通勤風景。本格的な装備の人も多い 行政が音頭を取って広げようとしているのが愛知県名古屋市だ。市の職員が自転車通勤をすると、通勤距離に応じて毎月手当てが支給される。支給額は2km以上5km未満が4000円、5km以上10km未満が8200円だ。一方、車の場合は2km以上5km未満で1000円、5km以上10km未満で4100円。自転車の優遇ぶりは明らかだ。

名古屋市役所の担当者は、「制度を開始した01年当時は環境問題への意識があまり高くなく、全職員2万人のうち支給者は825人だった。今では3倍近く増えた」と明かす。最近では国土交通省が定める自転車のモデル地区としても登録されて、市内に自転車利用者を増やそうと積極的に取り組んでいる。

早くからエコ通勤が導入されているのは自転車関連の業界。シマノ(大阪府堺市)では、自転車通勤者に1カ月あたり5000円を支給している(ヘルメット着用の場合)。駐輪場には電動空気入れや自転車工具を配備し、更衣室、風呂も完備した。20年前から導入していて、今では社員の約3割が自転車通勤をしている。ヤマハ発動機(静岡県磐田市)では、4輪から2輪に、2輪から自転車や徒歩にと、環境にやさしい通勤手段に代えると手当てが支給される、という仕組みだ。エコブームも手伝って、今後はこうした「自転車通勤手当て」が増えそうだ。(J-CAST ニュース 2008/8/10)


安全・渋滞・公害・原油高・温暖化等々を考え、また世界の潮流から言っても自転車専用道の整備は必要になるでしょう。しかし、現状では、駐停車の問題や交通ルールの徹底やマナーの問題もありますし、人々の理解も含め、まだまだ社会のコンセンサスが醸成されるには至っていません。

ただ、企業や自治体、そして市民の意識も徐々に変わりつつあります。一朝一夕にはいかないでしょうが、今回の「50キロ」も含めて少しずつでも自転車道が整備され、それがまた人々の利用を促進し、理解を深め、更なる整備が進むといった、「いいスパイラル」が進んでいくことを期待したいものです。



最近、どうも周囲の人に元気がない、なんて感じている方もあるのでは..。時差は1時間ですが、録画やハイライトで、結局寝不足になっている人も多いかも知れませんね(笑)。

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この記事へのコメント
主要道路だけでも作って欲しいですよね
道交法も変わりましたし・・
Posted by 105 at August 14, 2008 18:28
105さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですよね。当たり前のように整備されている国もあるわけですし、8千万台超も自転車がある日本で、あまりり自転車の通行空間が曖昧すぎると思います。
そろそろ考えるべき時に来ていると思いますね。
Posted by cycleroad at August 14, 2008 23:58
 
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