August 23, 2008

必要な時だけ貸してくれれば

北欧と言うと家具やインテリアをイメージする方も多いと思います。


それも高級な家具というイメージがありますが、一昨年日本に上陸したスウェーデンの大手家具メーカー、IKEA(イケア)は、格安の組み立て家具を大量販売する点で、従来の北欧家具のイメージとは少し違うかも知れません。北欧のデザインをアジアの価格で売るということで人気を博しています。

正確に言うと、過去に一度日本に進出して撤退しているので、再進出ということになります。再上陸まで日本での知名度は高くありませんでしたが、全世界での売上高は2兆円を超える世界最大級の家具販売チェーンです。顧客のニーズに合った格安家具を提供して、ヨーロッパなどでも人気になっています。



カタログ通販やネット販売も行っていますが、主として郊外にイケアストアと呼ばれる大規模な店舗を構え、徹底的にコストを削減して格安大量販売するのが特徴です。日本の店は頼めば配送もしてくれますが、お客が家具を自ら持ち帰って組み立てるのが前提なので、価格には配送や設置料などが一切含まれていません。

そのため商品はフラットパックと呼ばれる形、すなわち分解されたパーツが出来るだけ小さく薄くなるよう梱包され、クルマのトランクに積んで簡単に持ち帰ることが可能になっています。これは競合するホームセンターや格安家具店も同じかも知れませんが、配送や組み立て設置料金を含まない分、安く提供できるわけです。

上陸当時、話題になっていたので、私も一度行ってみたことがあります。特徴的なのは、巨大な店舗内を決められた一方通行の順路に沿って歩くようになっていることです。部屋状のスペースがいくつもあり、それぞれにタイプの違う家具が展示され、この部屋の家具全部で何万円、というような表示もあります。



もちろん単品でも買えますが、なにしろ価格が安いので、部屋の家具をそっくり入れ替えたくなる人も多いのでしょう。単品を買いに来た人も、予定外のものまで買ってしまいそうです。デザインも洒落ています。もちろん好みはあると思いますが、うまい展示方法と言えるでしょう。

ほとんどの商品はその場に在庫されておらず、リストにチェックして先に進むことになります。順路の最後に巨大な倉庫のような場所に出て、ここでお客は、自分で商品をピックアップするわけです。商品のピックアップやレジに運ぶのまでセルフサービスにして、人件費を削減しています。

また、地球環境保護に取り組む姿勢も強調し、フラットパックは輸送による温暖化ガスの低減にも有効と主張しています。実際、ヨーロッパでは貨物列車の運行会社を傘下に持ち、既存の路線を借りて列車輸送しています。輸送コストを削減すると共に、トラック輸送を減らして温暖化対策に貢献していることもアピール出来るわけです。



このイケア、販売する家具の好き嫌いは別として、その事業手法はなかなか興味深い企業だと思いますが、先々月、また新しい試みを始めています。デンマークのイケアストアで、自転車に連結するトレイラーを貸し出すというものです。自転車で来店するお客にも、家具を持って帰れるようにしようというわけです。

同社が顧客動向を調査したところ、デンマークでは約2割のお客が自転車で来店していることが明らかになったのが理由と言います。買う気なく自転車で来店しても、気に入った商品を見つけたら、買って持ち帰ってもらえるわけで、販売促進の面も見逃せません。預託保証金や若干の保険料は別として、利用料無料で貸し出されます。

クルマを持たない顧客やあまり積載能力の高くないクルマの所有者など、今までイケアへ行く際クルマを借りたりする必要があった顧客にとっても、新しい選択肢となります。周辺の渋滞などの理由で敬遠していたお客にとってもアピールするかも知れません。もちろん環境対策としても好印象を持たれるでしょう。

IKEAオランダやドイツと並び、ヨーロッパの中でも自転車の利用率の高いデンマークですので、出だしは好調のようです。他の国のイケアストアからの視察も始まっており、今後、自転車に親しむ人の多い国のイケアストアでは同様のサービスが導入される可能性があると言います。

このトレイラーの貸し出し、実はデンマークにすでにある、“Freetrailer”というサービスを利用することで実現しています。このFreetrailer、広告を入れたトレーラーを利用者には無料で貸し出すというサービスを展開しています。広告主が広告料を払うので、利用者は無料で使えるわけです。

トレイラーを借りた人が街を牽引して走行することで、トレイラーの車体に入った広告が人々の目に入るわけですが、臨時に借りたトレイラーに広告が入っていても気にする人は少ないでしょう。ネット上からも場所を指定して予約できるようになっています。

なかなか面白いサービスです。いくらデンマークと言っても、大きな家具を載せられるトレイラーを所有している人は多くないでしょう。使いたい時だけ借りられたら便利です。しかも無料なら言うことありません。イケアのような企業にとっても、まさに持ってこいのサービスと言えそうです。

FreetrailerFreetrailer

日本も自転車の利用者は多いですが、果たして日本のイケアストアに導入されるかはわかりません。自転車で重量のあるものを運ぶというのは、大多数の日本人にとって常識外のことでしょうし、イケアストアの近くに住む人を除く、おそらくほとんどのお客にとって、現実的な選択肢とは受け取られない可能性が高そうです。

Freetrailerのようなサービスも、デンマークとは違って、日本ではなかなか理解されないかも知れません。日本ではトレイラーに対する人々の認識が低いのは否定できません。自転車で引っ張るリヤカーのような荷車に、わざわざ広告料を払って看板を出そうという企業は少ないのが現実でしょう。

しかし、日本でも、例えばスーパーマーケットに無料のトレイラーが備え付けられていたら便利ではないでしょうか。スーパーにママチャリで来るお客も多いと思いますが、基本的に前カゴと荷台に積める分しか売れません。少し大きな商品でも自転車で持ち帰ってもらえるならば、店にとっては大きな販売促進になるはずです。

クルマの代替になる選択肢を提供することは温暖化対策としても有意義ですから、その点をアピールすれば、エコなお店としてイメージアップにつながります。原油高で客足の遠のいた郊外立地の店なら有力な対策になるかも知れません。しかも、お客が看板を引っ張って商圏を走り回ってくれます。

FreetrailerFreetrailer利用者にとっても、前カゴに荷物満載で帰るより安定して走行出来ますし、まとめ買いや、かさばる品物を買った時に重宝します。荷物が多いという理由でクルマで行く必要もなくなり、ガソリン代の節約にもなります。周辺の地形や道路事情にもよりますが、無料なら利用しない手はないでしょう。

日本では、自転車で牽引するトレイラーにまだ馴染みがありません。大きな荷物を載せて引っ張るなんて重くて大変だと思っている人は少なくないでしょう。(もし、そう思う方は、下の関連記事の「大多数の人が過小に評価する」を読んでみてください。)でも、利用する機会があれば、見方も変わるに違いありません。

日本でトレイラーを所有する人は稀ですし、あれば便利と考える人でも保管場所やら使用頻度を考えたら、なかなか購入には踏み切れません。でも、使いたい時だけ無料で貸してくれるなら理想的です。使うかもしれないと、普段から連結して走る必要もありません。これが普及すれば、自転車利用者にとってずいぶん便利になるでしょう。

原油高の折りでもあり、今ならトレイラーを使うというスタイルが一般に受け入れられる余地もありそうです。クルマと比較して荷物の積める量が少ないという自転車の短所が軽減され、人々の自転車の活用範囲も広がります。その分クルマの利用が減れば、温暖化ガス削減にも大きく貢献するでしょう。

これを読んでいる方の中に、もし何かを販売する店舗かそれを展開する企業に勤める方がいらっしゃったら、ぜひ検討してほしいものです。もしくは、上司に提案するか、この記事を読むよう勧めてほしいものです。友人に勤めている人の心当たりがある場合は、この記事のアドレスをメールで送ってみてはいかがでしょう。

今なら話題性もありますから、テレビなどでも取り上げられ、宣伝効果も期待できるかも知れません。どこかの企業が、試験的にでも始めれば、それを契機に全国の同様の施設に広がっていく可能性もないとは言えません。日本でも普及するとは断言できませんが、少なくとも試してみる価値はあるのではないでしょうか。



自転車トレイラーの話題が続いてしまいましたが、互いに関連する話題なので、三連続にしました。よろしければ、下のリンクから、前回と前々回の記事もどうぞ。

関連記事

大多数の人が過小に評価する
荷物を運搬するトレイラーは、もっと増えていい。(前々回の記事)

流行するモノなじみがない物
個人で使うようなトレイラーも、もっと増えてもいい。(前回の記事)



このエントリーをはてなブックマークに追加




Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。

にほんブログ村自転車ブログへ
 自転車・サイクリングの人気ブログが見られます。













この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/cycleroad/51345920
 
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)