September 04, 2008

バイクステーションの代名詞

マクドナルドと言えば、ハンバーガーの代名詞のようになっています。


世界121もの国々で3万1千の店舗を展開する巨大ハンバーガーチェーンです。あまりにも有名で世界各国にあるため、その主力商品がビックマック指数として国際的な購買力平価の指標として用いられたりするほどです。そのぶん、アメリカ資本主義の象徴のように見られることもあります。

ただ意外なことに、本国アメリカでのシェアは1位ではありません。他のファーストフードチェーンとの競争が激しいわけですが、シェア全米1位は、健康的なイメージが売り物であるサンドイッチチェーン「サブウェイ」です。このことが象徴するように、「不健康」と見られがちなのも苦戦の理由かも知れません。

2004年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画、「スーパーサイズ・ミー」は、同社のファーストフードだけを30日間食べ続けたらどうなるかというものでしたが、米国社会の急速な肥満原因のシンボルのように扱われ、実際に肥満の原因として訴訟まで起こされているのを見ても、イメージダウンは否定できないでしょう。

この訴訟は、肥満になった2人の少女がマクドナルド社に対して起こしたものですが、もちろん却下されました。訴訟大国アメリカとは言え、さすがに肥満は個人の責任というわけです。しかし、主に子供をターゲットに大量の宣伝をし、青少年の食生活を乱し、結果として肥満を増やしていると感じている人は少なくないようです。

ほかにも、現在は改善されているそうですが、作り置きして10分程度で廃棄される商品とか、大量に捨てられる包装材に対する批判もあります。このあたりも、環境への負荷を増やしているという点でイメージを悪くする要因となっているのかも知れません。

Photo by Massimo Catarinella,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.ただ、好き嫌いは別として、ファーストフードのニーズはあるわけですし、同社だけの問題ではないのに、名指しで非難されているものもあります。そのあたりは巨大チェーンであり、ファーストフードの代名詞となるくらい抜群の知名度だからこそ批難の矢面に立たされる面があるのでしょう。

同社はこうした批判に対し、作り置きによる廃棄を極力少なくしたり、発泡スチロールの容器を減らすなど、さまざまな改善を行っています。また、どうしてもファーストフードということからくる不健康なイメージに対しても、スポーツイベントを積極的に後援したりするなどして、イメージアップに努めているようです。

全米第2の経済金融都市、シカゴにあるマクドナルド・サイクルセンター(McDonald's Cycle Center)も、そうしたイメージアップの一環なのかも知れません。もともとは市のつくった自転車施設ですが、現在はマクドナルドがスポンサーとなって、その名を冠しています。

出来た当初は、“Millennium Park Bike Station”と呼ばれており、その名の通り、市内のMillennium Parkにあります。公園来訪者や、市内を観光する人向けに自転車を貸したり、ガイド付きのバイクツアーを行ったりしています。その一方で、市内へ自転車通勤して来る人のためのバイクステーションでもあるのです。

会員になると、市内で勤務する間、自転車を預けておくことが出来ます。盗難から守られるわけですが、それだけではありません。ロッカーやシャワーも完備しており、自転車通勤者を悩ます汗の問題も解決します。自転車の修理ショップも併設されており、割引価格でメンテナンスもしてもらえます。

Photo by Torsodog,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Torsodog,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

市内で勤務している間だけでなく24時間預かってもらえるので、雨天や飲酒した時など、自転車を置いて帰りたい時にも便利です。そのほか、自転車を共有して自由に使えるプログラムなどもあり、自転車通勤をしている人や自転車を活用したい人にとっては、かなり有意義な施設と言えるでしょう。

これで月額20ドル、年間なら149ドルというのは破格の値段です。日本なら、郊外の屋根のない駅前駐輪場でももっとしそうです。利用者は、マクドナルドがスポンサーとなっていることを有難く思うに違いありません。職場が多少ミレニアムパークから遠かったとしても、充分メリットがあるのではないでしょうか。

ソーラーパネルなどを採用して環境に配慮し、シカゴ警察の自転車警ら隊(Bike Patrol Group)にもスペースを提供しているというこの施設、シカゴ市が推進する“Bike 2010 Plan”という計画の下に整備されました。シカゴ市を「自転車で通勤できる都市」にしようという、さまざまな努力のうちの一つです。

ほかにも、市内いたるところに駐輪ラックを整備したり、市内を走るバスで自転車を運べるようにしたり、高架鉄道や地下鉄車内に持ち込めるようにしたり、もちろん、自転車レーンも整備されています。自転車のアクセシビリティを高める、これら総合的な施策の一部なのです。

自転車を利用しやすい街にすることは、環境に優しい街をつくることであり、同時に街の人々を健康にすることでもあります。市の財政に関して言えば、医療や福祉関係の予算の高騰を抑えることにもつながります。都市の渋滞を減らし、大気汚染を減らす効果も見逃せません。

Photo by Diego Ibarra Argelery ,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Brian Kusler,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

こうした考え方に賛同して後援することになったのが、シカゴ郊外に本拠を置くマクドナルドだったわけです。このサイクリングセンターのほかにも、同公園でビラティス、ヨガ、ダンスなどのフィットネスプログラムを無料で提供するなどしています。ちなみに、ここでは例の派手な赤地に黄色のMのマークは一切使われていません。

この“Bike 2010 Plan”を推進したシカゴのリチャード・デイリー市長は、過去にも市街地を再開発し、街の治安を改善し、賃金格差の是正などにも努め、市政を建て直す善政を行った名市長だそうです。日本においても、自治体における首長の権限は非常に大きいですから、地元に是非こんな首長が欲しいと思う人は少なくないでしょう。

自転車通勤者をサポートするバイクステーションについては、私も何度か取り上げています。日本にも出来ればいいと思っている人も多いと思いますが、都市の中心部の地価の高いところに設置するのは、なかなか難しいものがありそうです。しかし、この例のように自治体が公園に設置するなら可能性があるかも知れません。

例えば東京なら、都心のビジネス街の近くにも代々木公園、日比谷公園、北の丸公園、上野公園、新宿御苑、芝公園、神宮外苑など、大きな公園だけでも結構あります。現在でも貸自転車を置いているところがありますし、シカゴに倣って、バイクステーションを設置する余地もあるのではないでしょうか。

ビジネス街の街角や駅前などにあれば便利ですが、物理的なスペースも少ないでしょう。多少離れていても、シャワーやロッカー完備なら魅力的です。東京都心へ自転車通勤をする人は、全体から見ればごく一部でしょうが、23区だけでもこれだけの人口を擁しているわけですから、潜在需要は大いにありそうです。

Photo by Brian Kusler,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Brian Kusler,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

逆に、こうした施設をつくれば、自転車通勤する人を増やし、渋滞を減らし、空気をきれいにし、人々を健康にすることにつながっていくはずです。そのほかの、自転車が走ったり停めたりしやすい環境づくりと共に、是非推進してもらいたいものです。

場所は公園内に設置するとしても、運営は民間に委託するのがいいと思います。マクドナルド・サイクルセンターのようにネイミングライツ、命名権を含めてスポンサー企業を募集すれば、自治体の財政を圧迫せずに施設を運用できる可能性があります。

スポンサーとなる会社にとっても、環境にやさしく、人々の健康をサポートする企業としてイメージアップにつながりそうです。ネイミングライツの広告効果と合わせて、メリットは小さくないでしょう。例え、採算がとれなかったとしても、悪くない選択肢かも知れません。

シカゴの場合も、知らずに「マクドナルドのサイクルセンター」と聞くと最初は戸惑いますが、行政側、企業、そして利用者のいずれにもメリットがある、上手いやり方と言えるでしょう。日本でも、そんな意外な名前のサイクルセンターがあちこちに出現するくらいになってほしいものです。



前々回取り上げたリオデジャネイロもそうですが、東京にとってシカゴは2016年夏のオリンピック開催のライバル都市です。オリンピックとサイクルセンター、直接関係ありませんが、自転車にフレンドリーな街なら、イメージもいいはずです。最近は市民も環境に関心が高くなっています。“Bike 2010 Plan”ならぬ“Bike 2016 Plan”を打ち出せば、東京都民の期待度もアップし、オリンピック誘致支持率も高まるかも知れません。個人的には悪くないアイディアだと思うのですが..。

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