September 16, 2008

未来の自転車の一つの可能性

天高く馬肥ゆる秋、などと言います。


どうしても食欲の秋を連想してしまいますが、元になった古い中国の故事成語の本来の意味は違って、秋になると充分に馬が肥えた北方の騎馬民族が襲来して来るので、それに備えよという意味なのだそうです。まあ、馬はともかくとして、空気が澄んで空が高く感じられる季節、自転車で出かけるにもいい季節なのには間違いありません。

ところで、その青い空、大空に人類は常に憧れをいだき、空を飛ぶことを夢見て来ました。それは飛行機やグライダーなど、さまざまな形で実現してきたわけですが、また違ったスタイルで空に挑戦している人たちがいます。その中の一人がフランス人のStephane Roussonさんです。

Stephane Rousson


Roussonさんは、人力で航行する飛行船で英仏海峡を横断しようとしています。空を飛ぶ手段は、足こぎ式の人力飛行船、言い方を変えれば、空飛ぶ自転車です。ペダルを漕ぐとプロペラが回り、そのプロペラで推進力と方向転換が出来るようになっています。



Reportage M6 : Stéphane Rousson


空飛ぶ自転車と言えば、つい昨日も、テレビで恒例の「鳥人間コンテスト」が放映されていたようです。私はここのところ何年も番組は見ていませんが、このコンテストに出てくる人力プロペラ機も、ペダルをこぐことによって推進力を得て滑空する、言わば空飛ぶ自転車です。

しかし、Roussonさんの機体は、この滑空する機体とは違って飛行船ですので漕ぎ続けなくても空中に浮かんでいます。スピードは遅いですが、ふわりと浮かんで空中でペダリングする、まさに空飛ぶ自転車という言い方がピッタリくるような乗り物です。何の動力も使わず、自分の力だけで空を飛べるというのも実に魅力的です。





なんとも優雅で、気持ちの良さそうな乗り物ですが、英仏海峡を横断するのは、そう簡単なことではありません。英仏海峡特有の強い風が吹くと、飛行船は回転してしまって進めなくなります。陸上ならば60キロほどの距離は楽勝ですが、プロペラの推進力だけでその距離を移動するのは容易なことではないわけです。

飛行船と言えば、1937年に起きた有名なドイツの飛行船ヒンデンブルク号の爆発・炎上事故が思い浮かびます。この事故により飛行船の安全性に疑問が呈され、その建造が行われなくなったいわくつきの事故です。この飛行船は今と違って水素ガスを用いており、そのガスに引火して爆発してしまいました。

人力飛行船ヘリウムガスは化学的に安定した不燃性の気体ですから、水素のように激しく燃焼することがないぶんは安全だと思いますが、太陽の熱でヘリウムが熱せられ、風船部分が膨張して破裂してしまう恐れもあると言います。炎上しなかったとしても、破裂すれば落下は免れません。見た目ほど優雅でのんびりとした旅ではなさそうです。

しかし、こんな乗り物が実用化されたとしたら是非欲しいと思うのは私だけではないでしょう。陸上を走行するのも悪くありませんが、自由に空中を散歩出来たら、こんな素晴らしいことはありません。実用的に言っても、例えば東京湾を横断出来たりしたら便利になりそうです。

近年、空を飛ぶクルマなども開発中だと言います。映画などにも、空飛ぶクルマが行き交う未来の都市が描かれたりしますが、果たして現実のものとなるのでしょうか。少なくとも、今実用化されているようなエンジンでは、相当の量の燃料が必要な乗り物になるでしょう。

空飛ぶ自転車もちろん、空飛ぶクルマ自体は夢のある話ですが、クルマを浮かせるだけでも、相当のエネルギーが必要になるはずです。この原油高騰の時代に、それだけで実用的ではない気がします。地球環境や省エネルギーの観点からも、個人がジェットエンジンで飛行するのは無理がありそうです。

当然、車体も重くなるでしょうし、それが頭上を飛び交えば事故も心配です。でも、自転車飛行船くらいなら軽くてスピードも遅いですし、化石燃料も使いません。空を行き交うようになっても悪くないのではないでしょうか。むしろ、我々の頭上を行き交うのなら、人力飛行船くらいにしておいてほしい気がします。

必ずしも高い高度を飛ぶ必要はないわけで、高いビルを下に見れば爽快かも知れませんが、上昇や下降も大変です。せいぜい数メートルの高さでも、空中散歩ができたら楽しいでしょう。それこそ、クルマは車道、歩行者は歩道、自転車は空中、でもいいかも知れません(笑)。クルマや歩行者との事故もなくなります。

そんなことを考えていると空想は尽きません。この時期、視界の開けた場所で空を見上げると、青く澄んでいて気持ちがいいですが、うっかりそんな空想を膨らませながら、上を向いてペダルをこいでいたら事故になりかねません。でも、未利用の大きな空間が頭上に広がっているのは紛れもない事実と言えそうです。



リーマンブラザーズが破たんするとは驚きました。世界経済の行方にも、ますます目が離せませんね。

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