November 15, 2008

一度リセットしたほうがいい

少し前、ある温泉旅館に泊まりました。


わりと有名で規模の大きな老舗温泉ホテルです。長い歴史があるらしいのですが、建て増しに次ぐ建て増しによって客室数を増やしてきたらしく、建物はかなり複雑な構造になっていました。内部は改装されてきれいになっているのですが、本館、新館に別館に離れと、全体の造りは、まるで迷路のようです。

建物の立つ敷地や地形の問題もあるのでしょうが、うかつに館内を歩き回ろうものなら、戻って来られなくなりそうです。建物や調度品も歴史を感じさせ、決して悪い感じではないのですが、緊急時の避難がチラリと頭をよぎりますし、従業員にとっても使い勝手は悪そうでした。

老舗旅館にとっては、歴史や伝統も大切な資産ですから、必ずしも悪いとは思いません。長く残って来た建物を安易に立て替えてしまうのも残念です。ただ、増築に次ぐ増築を加えていくと、全体としては使い勝手が悪くなることもあるでしょう。実は、先日サイクルモードに展示されていた自転車を見て、ふとこの旅館を思い出しました。

子供乗せ3人乗り自転車その自転車とは、前回も掲載した新開発の子供乗せ3人乗り自転車です。老舗旅館と自転車を比較するつもりはないのですが、この自転車も改良に改良を重ねた感があります。つまり、元々のママチャリの荷台を子供用シートに改良し、2人目を乗せるため前にも座席を増やし、そして今回、走行を安定させるため補助輪をつけています。

それぞれの改良には目的があって、その意図はよく理解できます。しかし、今まで子供を二人乗せるために、仕方なくママチャリの前後に座席をつけていたわけですが、その形を変えることなく、単に補助輪をつけただけというのでは、何か弥縫策と言うか、応急手当のような気がしてしまうのは私だけでしょうか。

もちろん、自転車メーカーの専門家がつくったわけですし、実際に乗るお母さん達には乗りやすい形なのかも知れません。部品の調達しやすさとか、開発コスト、マーケティングなど各方面の理由もあるのだと思います。メーカーとしては自信の商品なのでしょう。

ただ、あまり洗練されたスタイルと言えないのは確かです。私は自転車設計には「ど素人」ですし、プロの製品にケチをつけるつもりもないのですが、あまりいいデザインとは言えないばかりか、使い勝手が良いわけでもなさそうです。子供が2人いる家庭には必需品としても、わざわざ買いたくなるような魅力のある商品にも見えません。

おそらくデザインより実用性、格好良さより安定感、革新より保守ということでしょうか。子供を乗せるお母さん達に支持されればいいわけで、必要に迫られた人には結構売れるのでしょう。しかし、意外にいい値段がするわけですし、素人の意見を言わせてもらうなら、もう少し商品としての魅力を高めてもいいような気がします。

Taga Bicycle今回の道交法の改正で、子供を二人乗せても安定して走行出来る自転車が新しく求められることになったわけですが、その開発にあたっては、今までの子供乗せママチャリの延長線上で改良を加えるのではなく、新しく設計し直してもいいのではないでしょうか。自転車先進国であるヨーロッパのスタイルを導入するのもいいと思います。

オランダと言えば、知る人ぞ知る自転車先進国です。国土が低地で平坦なため、自転車の利用率も高い国です。そのオランダの自転車メーカーで、今年の“Eurobike 2008 Award”の“City Bike”部門と、“Kind & Jugend Innovation Award 2008”の“World of Mobile Baby”カテゴリーの両方を受賞した自転車があります。

子供乗せ自転車の“Taga”です。賞をとるだけあって、さすがと思わせる商品です。子供乗せ用の自転車なので、必要としている人以外は普通、あまり興味を持たないことが多いと思うのですが、ヨーロッパのサイクリスト達もブログに取り上げるなど、話題となっています。

ヨーロッパに多い、子供を前に乗せるタイプです。最初から子供乗せ用にデザインされただけあって洗練されています。中でも秀逸なのは簡単にバギー(ストローラー、もしくはベビーカー)になることです。サドルを縮め、後輪を前方へ倒すと、全長は短くなり、子供を乗せて押して歩ける形に変化します。面白いシステムです。

子供乗せ自転車がバギー(ベビーカー)に

自転車に子供を乗せて出かけ、駅やショッピングセンターに着いたら、バギーに変形させて押して歩けるわけです。そのまま電車に乗せたり、ショップで買い物したりも出来ます。ほかにも混雑した場所を通り抜けたりする時など、何かと重宝しそうです。(変形の仕方を含め、サイトの動画を見ると一目瞭然です。)

自転車で出かけたたんでも使える

以前取り上げた、デンマークの“TrioBike”と似たコンセプトですが、こちらはよりシンプルで、前輪を外す必要がないので変形もラクです。さすが、子供乗せ用に考えられた自転車という感じがします。子供1人乗せ用ですが、今後発売予定のオプションには、子供2人乗せ用のシートもあります。

2人乗せ用シートバスケットにも交換できる

子供の安全と、走行の安定性、そして親にとっての使いやすさにも配慮されています。何より、子供乗せ自転車とバギー(ベビーカー)が一台で済みます。子供を乗せる部分をオプションと交換すれば、荷物運搬用としても使えます。子供が大きくなっても使える点も重要です。小径車なので、子ども用の自転車にする手もあります。

左はゆりかご型シートこちらも2人乗せ用

子供が小さい間は、どうしても専用の自転車が必要としても、子供が成長した途端に普通の用途には使いにくい自転車が残るのでは経済的とは言えません。日本の子供乗せ自転車も決して安い価格ではありません。仕方なく買うより、買いたいと思わせる自転車で、かつ長く使えそうなら言うことありません。

トランクにも入る小径車なので、いざという時クルマのトランクにも入ります。いっそ日本に輸入する手もあるかも知れません。日本の道、特に歩道走行するにはトライク(3輪タイプの自転車)は幅を取るので不利かとも思いますが、補助輪をつけるのであれば、3輪でも同じでしょう。

もちろん日本では、場所や使い方によっては、必ずしもこのTaga Bikeのほうが便利とは限りません。人によっては、従来型に補助輪のほうが使いやすいかも知れません。しかし、従来型の延長で、なんとなく前後乗せタイプばかりになってしまいそうですが、いろいろな選択肢があってもいいような気がします。

建て増しに次ぐ建て増し、改良に次ぐ改良、修正に次ぐ修正などで、いつの間にか使いにくくなってしまう例は、身近にもいろいろあると思います。例えば、仕事のやり方などにもあるでしょう。先人たちの知恵と工夫で改善が重ねられてきたものの、中には、いつの間にか合理的ではなくなっている例もあるに違いありません。

ずっと続けてきた内部の人間は慣れてしまって気づきませんが、新しく来た人には複雑怪奇に思えたりします。ただ、なかなか新米には、仕事も出来ないうちから「従来のしきたり」を批判出来ません。そのうち変だとは思わなくなってしまうこともあるでしょう。

やはり、どこかのタイミングで一旦白紙に戻し、一から設計し直したり、最初から作り直すといった作業も必要です。日本の官僚システムから台所の調理器具の配置まで、そんな例は、おそらく無数にあるに違いありません。一度リセットすべきなのに、それになかなか気付かないものも、たくさんあるのではないでしょうか。



定額給付金が話題になっていますね。選挙対策のバラマキ以外の何物でもないでしょう。市町村に判断を委ねたのも一律支給の批判をかわすためで、これが地方分権だなんて、見当違いも甚だしいです。支給のコストもバカになりませんし、1度だけ1万2千円やるから消費税増税と言われてもねえ..。

関連記事

子供というお客を運ぶカタチ
以前取り上げた、デンマーク製のtrioBikeと設計思想が似ている。

3輪にすると広がる使いみち
やはりデンマークのniholaは子供2人どころか大人だって運べる。

3人乗り自転車が生む副産物
こちらは後ろに2人乗せる形だが、Xtracycleにするという手もある。




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この記事へのコメント
子供乗せ自転車、日本の改良の3輪のものといいヨーロッパのものといい、興味深く見ましたぁ♪

(*´∀`*) ポチ☆
Posted by poo at November 16, 2008 19:20
tagaのアイディアは,村山コーポレーションのカートになるMC−1に通じるところがあると思いました。

バギーが変形して子のせ自転車になるなら,2つ買うより経済的にも省スペースにも有利ですよね。

こういったアイデアにはとても惹かれるものがあります。

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Posted by nekki5149 at November 16, 2008 21:24
こんにちは。うちも子供が2人おりまして、3人乗り自転車には興味があります。上の写真にある補助輪つき3人乗り自転車のメーカー(ランドウォーカー社)のサイトを見てみると、「後荷台に2人並んで乗れるチルドレンシート(国内の規格基準に適合次第販売を開始)」というものがありました。荷台スペースの前後長を55.5cm取ったロングタイプの車種があり、そこに取付けるもののようです。
ちなみにこの会社、走行安定性と積載力の増大を目的として、もともと補助輪付き自転車のみを販売しているようです。
Posted by fu_r at November 16, 2008 23:17
pooさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ふだん、関係がないと、子供乗せ自転車をあまり意識しないと思いますが、見てみると面白いですよね。
応援ありがとうございます。
Posted by cycleroad at November 17, 2008 21:44
nekki5149さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
村山コーポレーションのMC−1ですか。確かに考え方が似ていますね。
バギーか子供乗せ自転車、一度にはどちらかしか使わないでしょうから、兼用でも十分でしょう。おっしゃるように、スペース的にも助かりますね。
こうしたアイディアは見ていても面白いですね。私も興味を惹かれます。
応援ありがとうございます。こちらからも応援させてもらいます。
Posted by cycleroad at November 17, 2008 22:00
fu_rさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ランドウォーカー社が子供乗せ自転車に補助輪をつけたのではなく、元々補助輪付きの自転車を子供乗せ用に流用したのは知りませんでした。私の書いた内容は一部正確さを欠いていたわけですね。
個人的に、あまり格好がいいと思えないのは事実ですが、本文にも書いたように、同社の自転車にケチをつけたいわけではなく、子供乗せ自転車一般論について言いたかったのです。ただ、前回の写真を流用したのが、たまたま同社の自転車だったので、同社の商品について言っているようになってしまいました。
最近多い、子供前後乗せタイプを補助輪付きに改造した自転車もいいですが、Tagaのように子供乗せ専用に一から設計してみてもいいのでは、と言いたかったわけです。
後ろ並んで乗れるシートも販売予定ですか。補助輪付き自転車自体も高齢者用などに有用だと思いますし、これはこれで優れているのだと思います。
情報ありがとうございました。
Posted by cycleroad at November 17, 2008 22:12
はじめまして、ブログ村からとんできました。
この手の自転車、用途と目的には合致していますが、決定的に利用のシチュエーションをはずしていると感じました。歩道の真ん中にど〜んと建っている電柱、狭い駐輪スペース、高価且つ利用期間が限られ、つぶしが利かない等々。
使える環境の整備も平行して進めなければ、せっかくの自転車もパフォーマンスを発揮できないんじゃないかな〜と思いました。

時事問題にも切り込んだ記事、楽しく読ませていただいています。
ぽちっ
Posted by SIG at November 17, 2008 22:48
SIGさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、実際のどのように利用されているかや、利用者がどんな部分に不満を持っていたり、苦労しているか、何を求めているかという視点も重要ですね。
法改正とは言え、今も載っている人が補助輪だけの違いで買い替えるかも疑問ではあります。
走行環境についても全くその通りだと思いますね。
応援ありがとうございます。
Posted by cycleroad at November 17, 2008 23:30
初めまして?・・・・
Tagaの動画見ました!
感動してしまいました(汗)
何故?日本では、ああいう発想が無いのでしょうか??

そんな気持ちになりました。

あのスタイルだと、子供だけでなく、アウトドアでも使えそうですが?、

おいらの発想も貧困ですかね?(笑)

これからも時々お邪魔しますので・・・・・


Posted by 棟梁 at December 11, 2008 20:38
棟梁さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、その見事な発想、スマートな機能性に感動すら覚えますね。
いい悪いは別として、日本の自転車はママチャリが圧倒的多数の、言わばママチャリ文化です。ヨーロッパの自転車文化とは大いに違うということでしょう。自転車の使い方、価格などもずいぶん違うと思います。
クルマが入って行けない場所では、子供以外にも荷物を積んで走行したり、カートのように使ったりといろいろ活躍するでしょう。案外手放せなくなるかも知れませんね。
またお越しください。
Posted by cycleroad at December 11, 2008 23:28
 
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