February 13, 2009

忙しくても巻き込まれぬよう

忙しい現代人は、無意識のうちに僅かな時間でも節約しようとする習性がしみついています。


横断歩道で信号が変わりそうになれば走って渡るでしょうし、エスカレーターも歩いて登ります。駆け込み乗車で電車に間に合えばラッキーだと感じますし、人ごみでも、歩きながらメールをチェックします。みな、少しでも時間を有効に使いたいという無意識の行動でしょう。現代人はどんどん「せっかち」になっていくようです。

自転車に乗っていても、タイミングよく前方の信号が青に変われば、ちょっと嬉しかったりする人も多いのではないでしょうか。もちろん、街中なら通過する信号も相当の数になりますから、いちいち喜んではいられませんが、止まらずにすめば時間が節約出来るのは確かです。

交差点で信号待ちを余儀なくされるより、止まらず進めるほうがいいのは、クルマを運転している時でも同じですが、自転車の場合は、なおさらそうでしょう。スピードを落とさないですめば、再加速するのに必要な労力も節約できるというメリットがあります。つまりラクなわけですが、ここに落とし穴があります。

自転車で走って来て、前方の信号が青なら、そのまま減速せずに横断する人が多いのは間違いないでしょう。これが、大型車による左折巻き込み事故の原因になる場合が少なくありません。信号が青なだけに、交差する方向からクルマがくるとは思わず、安全を確認しないのも一因です。

実際に、相変わらずかなりの数の左折巻き込み事故が起きています。さして珍しい事故ではないので、ほとんどニュースにもならず、新聞で扱われたとしても小さな記事になるだけです。逆に言えば、いつどこで起きてもおかしくないわけで、誰もがその被害者になっても不思議はありません。

特に歩道を走行している自転車は危険です。そう聞くと驚かれる方もあると思いますが、統計的にも証明されている事実です。車道の左端を走行している自転車はクルマから見えていますが、歩道を走行している自転車はクルマからは死角になることが多いのが理由です。

自分がクルマを運転している時のことを考えれば理解できると思いますが、運転時に歩道上の自転車までは、ほとんど目に入らないでしょう。歩道と車道の間にガードレールや植え込み、看板や電柱、街路樹に様々な構築物など、視界を遮るものが多数あることも影響しています。

信号が変わって歩行者が横断し始める当初は、クルマも横断歩道の手前で一旦停止して待っていますが、横断者が途切れれば左折を開始します。横断者がいないと見れば、一旦停止せずに左折するクルマも多いはずです。クルマにしてみれば、そこへいきなり自転車が突っ込んでくるように見えるでしょう。

決してクルマ側を擁護するつもりはありませんが、事故の起きるメカニズムを知っておいて損はありません。信号が青だからと言って、そのまま横断歩道へ飛び出せば、タイミング悪くクルマが左折してきて巻き込まれる可能性もあるわけです。歩行者よりスピードが速いぶん、クルマも自転車も止まりきれないこともあるでしょう。

クルマから見えている車道走行の場合と違って、この点で自転車の歩道走行には危険が隠れています。しかし、車道走行しているからと言って安全とは限らないのは言うまでもありません。自転車が止まるだろうと思うのか、追い越して急に左折するようなドライバーがいるのも確かです。

Bike Boxまた、赤信号で止まった時に、何気なく大型車の左側の死角に停止してしまうこともあるでしょう。大型車の運転席からは、左側の近くに止まられると見えにくいので、自転車が後ろから追いついたことに気づかず、青信号で発進して左折した時に、自転車を巻き込んでしまうわけです。

アメリカ・オレゴン州のポートランドで設置が始まった“Bike Box”の取り組みは、そんな事故を防ぐ手段として高く評価出来ます。さすが、自転車雑誌に「全米ベストサイクリングシティ」として表彰されたこともあり、自転車利用の先進都市として知られるだけのことはあります。

アメリカですから、当然バイクレーン(自転車レーン)は車道に設置されていますが、さらに交差点の部分に、自転車専用のボックス状のスペースを設けているのです。この自転車ボックスは、クルマの停止線より前にあり、はっきりと色分けされています。このバイクボックスの中で自転車は信号待ちするようになっているのです。

Photo by BikePortland.org,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by BikePortland.org,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

向こうは右側通行ですので、右折巻き込みになりますが、やはり日本と同じような巻き込み事故が多発しているのです。信号が青に変わった時に、右側にいる自転車に気づかず右折して巻き込む、右フック(引っかけ)事故を防ぐために市内の交差点への設置を進めているわけです。

日本でも、オートバイ用に似たゾーンの設けられた交差点を見ることがありますが、ポートランドではさらに交通弱者として優先すべき自転車が、その対象となっています。自転車に優しいと定評があるポートランドならではの政策です。人々が安心して自転車に乗れるのも、こうした細かい配慮の賜物でしょう。

Photo by BikePortland.org,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by BikePortland.org,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

最近、日本の自治体の中にも自転車の活用を宣言し、自転車に優しい街を標榜する都市があります。その実、やっていることは歩道を色分けして自転車レーンなどと称しているだけだったりします。本当に自転車の安全を考えているとは言えませんし、日頃自転車を利用していない人の考える政策と言われても仕方ないでしょう。

このポートランドの例に限らず、私は過去にもいろいろ世界の先進的な事例を取り上げていますが、どれも、日本の上っ面だけの無意味で実効性の乏しい「自転車政策」とは比べるべくもありません。こうした配慮と比べると、日本の自治体が自転車に優しい街などと名乗るのは、真におこがましい限りです。





ちなみに、ポートランドでは、幹線道路のバイクレーンやバイクボックスだけでなく、交通量の多い道路を避けて通れるような専用レーンも別途検討しています。それも人口50万程度の都市で、総延長は220キロにも及びます。日本の自治体の担当者は、少しはこうした事例を勉強して、彼我の差を大いに恥じてほしいものです。

いずれにせよ、自転車に対する配慮がまだまだ遅れている日本に住む私たちとしては、自衛するしかありません。交差点ではクルマより前方で停止するなど、死角には注意です。もちろん、安全のためには必要に応じてスピードを落とすべきです。安全確認の時間や手間だけは、うっかり省かないよう気をつけたいものです。



明日はバレンタインデーですね。土曜日ということで、渡しにくい人もあるでしょう。一方で、配らなくて済む人、もらえない人もあるわけで、悲喜こもごもでしょうか(笑)。

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この記事へのコメント
はじめまして

最近自転車がほしくていろいろと探していて
こちらにたどり着きました^^

とても参考になる記事だな〜と思って読んでいました。
また遊びに来てもいいですか?
Posted by 水虫治療プロジェクト at February 14, 2009 13:25
水虫治療プロジェクトさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
何か参考にしていただける部分があったとしたら、私としても光栄です。よく研究して、いい自転車を手に入れて下さい。
またのお越しをお待ちしています。
Posted by cycleroad at February 15, 2009 20:28
いろいろ経験しました 非常に頷ける ウン・うん。
私が一番怖かったのが 大型車に抜かれ並走 数秒ですが 大型バスと並走となり バスは停留所が 数十メートル先にあるため 左によって来ます 抜いていたのですから 私は確認出来ていると 思い 走行していましたが 実際は 見えてなかったようで 私はバスの側面を 手でたたき知らせようかと考えましたが 乗客に お年寄り・子供がいた場合急ブレーキ非常に危険 私の方が パニックブレーキで難を逃れましたが 今でも思い出すと 背中から汗が噴き出します。やはり自己防衛しかなさそうです。 
以前近所のコンビニに100m走るのも走行会で数百キロ走るのも 同じ と自転車屋さんに 注意されました いつも乗る時は 気持ち引き締めていかないと まずいと 再度確認しました。
PS:管理人様 改めて参考になりました ありがとうございます。  
Posted by h134 at February 16, 2009 02:01
h134さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
共感していただけたようで嬉しいです。
危ない思いをされましたね。ただ、多かれ少なかれ似たような経験や、何かしらクルマに怖い思いをしたことのある人は多いのではないかと思います。
ママチャリで歩道を走るならともかく、自転車で公道を通っている限り、どうしても怖い思いをする可能性は避けられないのでしょう。
ふだん何気なく走っていても、よく考えると危険と隣り合わせと言いますか、左折巻き込みだけに限らず、リスクはいろいろ隠れていると言えそうです。
慣れもありますから、おっしゃるように、気を引き締めて、引き締め過ぎということはないのでしょう。お互い気をつけたいですね。
Posted by cycleroad at February 17, 2009 00:10
 
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