April 08, 2009

2度目の収穫で困窮を減らす

先週末は花見に出かけた方も多かったのではないでしょうか。


東京の上野公園などの桜の名所でも、この週末大勢の花見客でにぎわったようです。テレビのニュースなどで見ていると、不況とは言え、いつもの年と変わらぬ光景が繰り広げられていました。ただ、大勢集まったのは花見客だけではなかったようです。例年にも増して集まった人たちがいると言います。

それは、いわゆるホームレスの人たちです。花見の季節の上野公園などでは、花見客が捨てる大量のビールなどの空き缶が出ます。路上生活者にとって貴重な現金収入である空き缶が大量に回収出来る機会なわけです。花見の場所取りのアルバイトをする人もいるそうです。

ホームレスの人への手紙中には酔っ払った花見客に料理をもらったり、お酒まで飲ませてもらうこともあるそうですが、多くは大量に捨てられる余った料理も目当てで集まってくるわけです。私が見たニュース番組でも、実際に大勢の人が花見で盛り上がる傍らで、ゴミ箱から食料を拾って食べるホームレスの人の姿が映し出されていました。

こうした路上生活者の姿に、眉をひそめる人もいます。働かない怠け者と非難する人もいるでしょう。しかし、誰も望んで路上で生活をしているわけではないと言います。路上生活をするようになった経緯はいろいろあるにしても、やむを得ず路上で生活しているのは間違いありません。

世間ではいわゆる派遣切りが増えていますが、例年にも増してホームレスの人が多いと言うのも、この不景気と無関係ではないでしょう。これまでも派遣労働者が雇用期間途中で切られることはあったものの、すぐ次の派遣先が見つかりました。それが、この急激な景気の落ち込みで消えてしまったのも大きく影響していると思われます。

失業と同時に住む場所まで失い、再就職もままならないうちに貯えが尽きる人もあるでしょう。つい去年までは、大企業の工場などで働き、同じように花見をしていた人かもしれません。いわゆるセイフティネットの不備が指摘されていますが、あっと言う間に路上生活になりかねない事実に呆然とする人も多いはずです。

一度住所を失うと、再就職の為の面接すら困難になると言います。満足に食べたり、睡眠をとって身体を休めることが出来なければ、働く体力や気力も奪われるに違いありません。中には闇金融などの被害者で身を潜めるしかない人もあるらしいですが、再起したくても、それが極めて困難な状況に陥る悪循環です。

特に食べなくては生きていけません。本当の空腹の前にはプライドも何も無くなるでしょう。場合によってはゴミ箱を漁るという人間としての尊厳を損なうような行動を取らざるを得ないのが現実です。同じ人間、同じ日本人が、花見客の横でゴミ箱を漁る光景に複雑な思いがする人は少なくないでしょう。

もちろん、これは今に始まったことではありませんが、冬には凍死者まで出る状態は、なんとかならないものかと思います。行政の支援などもあるのでしょうが、一向に改善している様子はありません。この状況に、宗教団体やボランティア、NPO法人など民間団体の炊き出しなどの支援も行われています。

セカンド・ハーベスト・ジャパンフードバンク

こうした炊き出しを行っている団体のひとつに、フードパンクがあります。食べ物の銀行とは聞き慣れない言葉ですが、企業や個人から寄付された食べ物を、必要としている人に届ける活動をしている団体です。野外生活者だけではありませんが、生活困窮者に食べ物を提供しているのです。

よく、期限の切れたコンビニの弁当が、裏口から路上生活者に渡されるという話を聞きますが(本当かどうかは知りません)、そうした食糧とは違います。あくまで未開封で賞味期限内の食糧に限られ、品質には問題のない食品を企業などに提供してもらっているのです。

賞味期限が近づいて陳列できなくなった商品とか、ラベルや包装などが破損しただけで問題のない商品でも、売り物にならない場合は多いと言います。季節限定の商品で売れ残ったものとか、ちょっとへこんでしまった缶入り飲料などもあるでしょう。印字の僅かなカスレなどで売り物にならなくなるものは多数発生しているのです。

こうした食品を製造する企業や流通企業から寄贈を受けるわけです。企業側にとっては社会貢献であるとともに、今まで廃棄にかかっていた費用が節約出来ます。ゴミを減らすという意味でもメリットがあります。もちろん、趣旨に賛同した個人からの寄付もあります。



このフードバンク活動の日本での草分け的存在が、NPO法人、「セカンドハーベストジャパン」です。発祥の地アメリカでは、フードパンクに対する国や州の保護もあり、社会に浸透した活動となっていますが、日本ではまだまだ知名度が低く、協力してくれる企業も外資系の企業が多いそうです。


全ての人に、食べ物を

食べきれずに食料を捨てる人がいる陰で、その日の食事にも事欠く人々がいる。ホームレスやDV(家庭内暴力)から逃れた被害者、移住労働者、そして困弱者しているお年寄りなど。Second Harvest Japanは、生活に困っている人々と彼らの支援団体を食を通じてサポートしている特定非営利活動法人(NPO)です。飽食の国日本で、想像を絶する数の人々が飢えと無禄ではない毎日を送っている、という事実に少しでも心動かされるなら、私たちと一緒に、食の不均衡をいま一度考え直してみませんか。

2HJセカンドハーベストジャパンとは?

日本には、社会生活の中で安全で十分な栄養含む食べ物を手に入れることのできない、「フードセキュリティ=食糧確保」が欠けている状況に暮らしている人々が65万人以上います。 同時に、東京では毎日6000トン(=600万キログラム)もの食料が廃棄されています。もし、私たちがこの食料の廃棄を防ぐことができ、この600万キログラムの食料のうちのほんの一部を配布することができれば、何十万人もの人が食べ物を手に入れることができるかもしれません。

セカンドハーベストジャパンは「新品の食べ物」を買うのではなく、すでにある、余っている食品を収集し、利用しています。日本でセカンドハーベストジャパンは特定非営利活動法人(NPO)として登録しています。さらに、私たちは食品会社の過剰在庫を卸し先としての代替的役割も担っています。

フード・バンキングは市場に出すことはできなくとも、人々が消費するのに十分な安全性をもった食品を処理する代替案です。食品の小売店、製造業者、輸入業者は販売することのできない食品の処理に関する問題に直面しています。フード・バンキングではそういった企業の支出を減らし、さらに社会にプラスの影響を及ぼす活動の手伝いをしています。

日本では1キロの食べ物を処分するのに100円の費用がかかります。そこでセカンド・ハーベスト・ジャパンは時間と労働力を節約し、十分に栄養のある食品を無料で調達しています。セカンドハーベストジャパンはすべての食品が安全でプロフェッショナルな方法によって取り扱われることを保証しています。安全な貯蔵庫、運搬、調理・消費方法はもとより、再度食品が市場に出回らないことを確実に保証しています。 (2HJのホームページより)


セカンドハーベストジャパンは、炊出しのために食材を集める活動から始まったと言います。セカンドハーベストとは、「2度目の収穫」という意味で、通常の市場からもれてしまったものの、まだ充分に安全に食べられる食品をもう一度収穫し、活用しようと名付けられたフードパンクです。

Second Harvest Japanセカンド・ハーベスト・ジャパン

食品を提供してくれる先には農家もあるそうです。たまに、豊作で価格が暴落し、畑に植わったままトラクターで潰される野菜の映像を見ることがあります。こうした野菜もフードパンクでなら活用出来ます。市場に流通させるわけではないので価格の暴落にも寄与しません。輸送手段さえあれば、寄付してもいいと考える人もあるでしょう。

特に食品企業と関係ないし、農家でもないという普通の個人でも活動に参加することが出来ます。もちろんお金を寄付してもいいですが、自分の時間や労働力を提供することも出来ます。つまり、食料の集配や積み下ろし、倉庫での仕分け、調理、炊き出し、といった作業を手伝うわけです。

個人で食品そのものを寄付することも出来ますし、学校や職場などで食品を集める活動をすることも考えられます。備品や器材の寄付を通じて貢献することも出来るでしょう。ちなみに現在、セカンドハーベストジャパンが寄付を募集している器具類のリストの中には自転車もあります。

2000年に始まったセカンドハーベストジャパンは、2007年に350トンもの食品を無償で届けるまでになりました。野宿生活者などの困窮者への支援、食品を廃棄するもったいなさ、ゴミの減量、企業の社会貢献とボランティアをつなぐ仕組みなど、どの点をとっても有意義な活動であることは誰もが認めるところではないでしょうか。





ところで、こうした路上生活者の支援を行う人がいる一方で、ホームレスの人を襲撃する事件も後を絶ちません。青少年が加害者になる場合が多く、殺害にまで至るケースもあります。加害少年たちが「街の掃除」などと称し、罪悪感を持たないことにも戦慄を覚えます。

反貧困こうした未成年たちの殺人にまで至る行為は論外ですが、一部の少年が弱い者いじめをする背景には、社会の意識も反映している気がしないでもありません。つまり、大人たちが野外生活者を見る視線の冷たさです。軽蔑のまなざしを向け、人を人とも思わないような発言をする人もいます。

もちろん、誰もがいつ自分の身に起きるかも知れないとの危機感を持てと言うつもりはありません。勤勉な民族と言われる日本人には、伝統的に怠惰(に見えること、)に対する嫌悪感があるのも事実でしょう。でも失業や倒産のほか、本人の責によらない不幸、やむにやまれぬ事情もあるはずです。困窮に至るプロセスに対する想像力の欠如があるのかも知れません。

考え方は人それぞれとしても、他人の痛みを感じることの出来る心を失う人が増えているようにも思います。勝ち組と負け組に分け、すべて自己責任とする市場原理主義的な考え方が日本の社会を壊したという議論もありますが、他人の不幸を見てせせら笑い、困っている人を排除したり襲撃するような社会はゾッとします。

人と人とのつながりが希薄になり、社会の連帯が失われつつある面も否めないのでしょう。ただ、慈善活動の伝統はともかく、もともと日本の社会には、「困ったときはお互いさま」という文化があったはずです。せめて、そうした他人に対する優しい気持ちは忘れたくないものです。



フードパンクの挑戦と題された2つの動画は、サイトとは別にYouTubeで見つけたのですが、元はテレビの番組だったようです。少し長いですが、興味のある方は是非。

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