May 11, 2009

ペダルをまわして出来ること

ゴールデンウィークが終わりました。


名残惜しいですが大型連休、長い方でも昨日くらいまででしょう。今日からは、休みの間にたまってしまった仕事を片づけなくては、という人も多いかも知れません。旅行に出かけるなどして、たまってしまったのは、ほかにも未読の新聞とかドラマの録画、それに洗濯物なんかもあるかも知れません。

洗濯機の国産一号機:Photo by Dddeco,under the GNU Free License and the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.洗濯機を何回も回さなくてはと、うんざりしている方もあることでしょう。大量の衣類を洗濯するには時間もかかります。最近は乾燥まで全自動の洗濯機もありますが、外に干したり、アロインをかけたり、たたんでタンスにしまったりするまで含めると、ひと仕事です。

とは言っても、今どきなら、どこでも洗濯機があるでしょうから、洗うのは自動です。学生さんなどで洗濯機を持っていない場合でも、コインランドリーを利用出来ますから、手で洗う人はまずいないと思います。おそらく、洗濯板など見たこともない人が多いのではないでしょうか。

かく言う私も子供の頃、たまたま田舎の祖父母の家で見たことがある程度です。もちろん当時、既に使われていませんでしたが、子供心にも珍しかったので、何に使うのか聞き、実際に使ってみた覚えがあります。昔はこんな風に、一枚一枚手で洗っていたのかと驚いた記憶があります。

昭和30年代後半のローラー式絞り機付き洗濯機:This image is in the public domain.日本では、1950年代後半の戦後の高度経済成長が始まった頃、白黒テレビに冷蔵庫、そして洗濯機が、「三種の神器」と呼ばれ、庶民のあこがれの的となっていたそうです。電気炊飯器なども含め、いずれも日本の近代化を支えた家電製品と言っていいでしょう。

洗濯機や掃除機、冷蔵庫などが普及したお陰で、日本人は家事労働から徐々に解放されていきました。中でも洗濯機は、それまで、かなりの重労働だった洗濯を機械が肩代わりしてくれるわけですから、重労働から解放されたという点で画期的なことだったようです。

今となっては、洗濯に洗濯機を使うのは当たり前です。少なくとも洗う部分に関して、洗濯が重労働だとは誰も思っていないでしょう。一枚二枚ならともかく、基本的に洗濯物を手洗いすることもないので、その大変さなんて考えたこともない人がほとんどではないでしょうか。

しかし、世界に目を向けると、いまだに発展途上国において洗濯は重労働です。食べ物にも困ることがある貧困の中にあって、家電製品など持てるはずがない人は大勢います。もちろん電気が使えない、あるいは電気が通っていない、通っていても電力供給の信頼性が極めて低い地域も少なくありません。

ただ重労働というだけではありません。家事に時間と労力をとられるため、子供を学校へ行かせられなかったり、作物を育てたり、賃金を稼ぐ為の労働にあてる時間が減って、貧困からの脱出に対する大きな妨げになります。たかが洗濯と言うなかれ、途上国の貧困にも関わる問題なのです。

その意味で、この“spin cycle”は画期的です。マサチューセッツ工科大学の学生が開発した洗濯機で、2005年のMIT Ideas競技会で一位をとりました。自転車と洗濯機というスペイン語からの造語、“bicilavadora”と名付けられています。

Spin cycleA pedal-powered washing machine

MITの学生が考えたにしてはローテクな機械に思えますが、もちろん理由があります。材料はドラム缶など、どこでも安価に手に入るものを使い、途上国でも組み立てられる簡単な構造になっています。最初から途上国支援を目的に設計された人力洗濯機なのです。

パッと見た感じでは、よくイベントなどに出てくる、「自転車をこいで家電製品を動かしましょう。」というアトラクションのようにも見えますが、全く違います。この足こぎ式洗濯機を途上国に提供することで、長時間の労働から解放し、その結果として貧困の撲滅に貢献することを狙っているわけです。

ペダルをこぐ力で発電して、家電の洗濯機を動かすわけではなく、ペダルの力を直接洗濯槽を回すために使っています。まだ部分的に構造上の問題がいくつか残っているようですが、実際にペルーのリマ郊外の孤児院などで、既に活躍していると言います。



洗う時には力の強いローギヤで、脱水には高回転のギヤを使います。川などで洗濯するのと違い、水質汚濁も防げます。現地で組み立てられるので、産業として成立し雇用を創出する可能性もあります。先進国が行う食料支援なども大切ですが、途上国の人々の自立を間接的に支援する、こうした取組みも意義があります。

先進国の家電を配給しても、電力が供給されていない地域では意味がありません。電力のインフラを整備するには莫大な費用と時間がかかります。発電機やガソリンエンジンなどのエネルギーを利用するお金もありません。当面利用できるのは人力だけですから、その人力を最大限に引き出すためには自転車式が最適というわけです。

ところで、こうした洗濯機、考え付くのはマサチューセッツ工科大学の学生に限りません。実は同じような発想をする人は各地にいます。同じ人力で洗濯をするにしても、手で洗うのと、自転車型にして足でドラムを回して洗濯するのでは、その効率において大きく違うのは言うまでもないでしょう。





電気や水道、通信や道路など、社会的なインフラの整っていない途上国の貧しい地域では、二重三重にハンデを負っています。まず飲み水や生活に必要な水を川などで汲んでカメなどに入れ、長い距離を歩いて運ばなければならなかったりします。炊事にも洗濯にも長い時間と労働力が必要になります。

作物を市場に出荷するにも、出稼ぎのため工場や採掘現場へ行くにも、子供が学校に行くにも、交通手段は自分の足だけなので、とても時間がかかります。そこに自転車があるだけで大きな機動力のアップになります。クルマと違って、ガソリンなどの燃料費がかからないことも重要です。自転車は有力な途上国支援のツールなのです。

そして、自転車が使えるのは移動に限りません。人力で最大の力を出せるのは、やはり足です。持久力もあります。ペダルの力を使って家事などの労働が効率よく出来れば、空いた時間を、より稼いだり、勉強したり、生活の向上のために使えます。

ペダルを回して出来ることは、他にもいろいろあるはずです。自転車、もしくはペダルのパワーは、使っても環境に負荷をかけません。構造も簡単なのでメンテナンスも自分たちで出来ます。家事以外にも農作業や生産活動に使うなどすれば、途上国の人々にとって大きな福音となることでしょう。

ちなみに、途上国ばかりでなく、本当は先進国で使われる家庭用のエアロバイクにも洗濯機をつなげてしまえば、と思わないでもありません(笑)。運動をしなければ洗濯物も減らないというわけです。ダイエットが続けられて一石二鳥ですし、省エネ家電なんかより、よっぽどエコです。ただ、洗濯物がたまると、ちょっと辛い気もしますが..。



時差ぼけとか、休みボケで調子が出ない人も多そうです。早いとこペースを戻さなくてはなりませんね。

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