September 05, 2009

知らぬうちに進んでいる何か

自転車で、川沿いを通ることがよくあります。


大きな川にあるような河川敷のサイクリングロードはもちろんですが、川沿いの道だと比較的交差点が少なく、あまり信号で止まらずにすむことがあります。小さな川や運河沿いなど交通量が少なく、細くても走りやすい場所が少なくありません。どこかへ向かう時、多少遠回りでも川沿いを通ることがあります。

先日も、郊外のそんな川ぞいを通っていました。道端で水分を補給しながら休憩していると、川では子供たちが魚とりをして遊んでいます。ふと興味がわいたので河原に降り、どんな魚がとれているのか、バケツの中をのぞかせてもらいました。小さなエビや水生昆虫に小魚など、種類は少ないですが、意外に多くの生物がとれていました。

一時期、都市部の川は工業排水や家庭からの生活排水などで汚れ、生き物が全く棲まない川が増えました。それが最近はかなり改善され、東京の多摩川でもアユが遡上するまでになっていると言います。さすがに護岸は人工的だったりするものの、昔のように子供たちが魚とりをして遊べるくらいに回復している川も多いようです。

いかにも夏休みらしい光景に出合い、子供の頃を思い出して懐かしくなってしまったので、私もその川や付近の田んぼの用水路など、あちこちのぞいてみました。確かにきれいにはなっていますが、私の子供の頃の川とは、やはり少し様子が違います。なんと表現すればいいのか、生息する生き物の濃さが違うような感じです。

生物多様性私の子供の頃と言っても、すでに高度経済成長していた時代でしたから、都市部の川はきれいではありませんでした。でも、郊外の小川や田んぼの用水路などに行けば、メダカやドジョウ、ヤゴにゲンゴロウ、フナやモロコなど、もっといろいろな生き物がいた気がします。今も生物は戻ってきていますが、その種類が圧倒的に少ない気がします。

まさに、最近言われる「生物多様性」が縮小している感じです。私の記憶の中との比較ですので、多分に気のせいの部分もあると思いますが、実際に身近な生き物の種類が減っているのは確かでしょう。童謡・メダカの学校に歌われているように、きわめて身近な魚だったメダカが、今や絶滅危惧種です。

先日も、サメやエイの中にも絶滅の危機に瀕しているものがあると報道されていましたし、動植物の激減や、逆に大発生などのニュースを頻繁に耳にするようになりました。生息数が減って、食生活にも大きく影響しているものや、国際的に保護が叫ばれている生物種も少なくありません。

中でも最近気になるのは、ミツバチの大量失踪です。米国などでミツバチが突然いなくなる「蜂群崩壊症候群(CCD)」が発生しています。日本でも農作物の受粉に必要なミツバチが不足する事態が報道されています。まだ原因はよくわかっていませんが、何か自然に異常が起きつつあるのではないでしょうか。

かのアルバート・アインシュタイン博士が言ったとされる言葉も不気味です。すなわち、「もし地球上からミツバチがいなくなったら、人類は4年と生存できないであろう。」というものです。これは、何かで言葉が独り歩きしてしまったもののようで、出典は明らかでないらしいですが、あながち嘘とも言い切れません。

自然、命テーマに写真展実際、地球上の植物の多くは受粉をミツバチに頼っているとされ、もしミツバチが絶滅したら、植物全体の半数以上が種子をつくれなくなる可能性があると言います。当然ミツバチを必要とする農作物は壊滅的な状態となり、自然界でも多くの植物が消滅するなどして、食料生産に深刻な影響が及ぶ可能性があります。

世界は危機的な食糧不足に陥り、飢餓状態の大幅拡大は避けられないでしょう。現在でも10億の人が飢餓状態にあるとされますが、そうなれば恐ろしい数の餓死者が出るのは必至です。世界中で紛争が勃発するのも不可避とするならば、誰にも止められなくなって人類が滅亡に向かうのは、決してあり得ないシナリオではありません。

生物多様性の保全は、最近でこそ世界的に関心を呼ぶようになってきてはいるものの、まだまだ対策が進んでいる状態とは言えません。もしかしたら地球温暖化よりも、もっと切実に危機が迫っている可能性もありますが、地球で何が起こっているのかすら把握するのは困難な部分があります。

生物の種類は、命名され分類されているものだけで200万種に及びます。哺乳類など大きな動物ならともかく、カビだとか微生物、細菌まで考えれば、命名どころか存在すら知られていない種類のほうが圧倒的に多く、少なくとも10数倍以上、実際どれだけの種が存在するのかすらわかっていない状態です。

親子里山教室微生物とか細菌のレベルで何かの異変がおこり、その影響で結果としてハチが激減するような事態がひき起こされていても不思議ではありません。しかし異変どころか、何がどうなっているのか、ほとんどわかっていない状態です。人類が知らないところで何かが起こり、目に見える現象が少しずつ現れ始めているのかも知れません。

しかし、ハチの大量消滅のような、我々が知覚出来るレベルになってからでは遅すぎる可能性は充分あります。そもそも、何が危機的な状況につながるかすらわかっていません。一度失われた生態系を復元するのは至難の業ですし、絶滅した生物は永久に失われてしまうわけで、それこそ取り返しがつかないわけです。

全世界の生物学者の7割以上が、今、生物の大量絶滅がおこっていると考えています。地球上では、過去にも5回の大絶滅があったことが分かっています。直近は恐竜などが絶滅した6千5百万年前です。しかし、現在は過去にも例のないようなスピードで絶滅が起きていると考えられているのです。

過去の大絶滅は数十万年という単位でおきたことですが、今起きている種の減少のペースは、その数百倍とも数千倍とも言われています。実際多くの種が絶滅していますし、人類の知らないところでの絶滅も多いに違いありません。そして、おそらくその99パーセントは人間の行為によってもたらされていると見て間違いないでしょう。

地球温暖化については、多くの人が意識し始めていますが、生物多様性の喪失については、まだまだです。実は、第10回の生物多様性条約締約国会議、通称COP10が来年名古屋で開かれるのですが、そのことを知っている人は多くないでしょう。こうした状態に危機感を募らせている専門家も少なくないようです。

生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)環境破壊によって、その地域の生態系に変化がおこり、食物連鎖の頂点にたつ大型哺乳類や鳥類などが姿を消すというのは、よく聞く話です。直接捕食するわけではありませんが、人間も食物連鎖の最上位にいます。生態系が崩れ、生物の多様性が失われたら、人間の生存が危うくなるであろうことは想像に難くありません。

極端に言えば、トキとかジャイアントパンダが絶滅しても、直接人類は困らないかも知れません。しかし、私たちの知らない多くの微生物が生態系を支え、そのおかげで人類は畑を耕し、家畜を飼い、魚を育てて食料を調達出来ているわけです。メダカやドジョウが姿を消していくのに、安穏と構えていていいのでしょうか。

種の絶滅の99%が人間の仕業だとするならば、私たちに出来ることは少なくないはずです。身近で言えば、外来種のペットや外国産の昆虫などを野生に放つなんて言語道断です。むやみに開発を進め、里山や河川、原生林、干潟やサンゴ礁など貴重な自然を破壊することで、生態系のバランスを崩しているのも問題です。

それだけではありません。意図せずとも農産物に付着するなどして入ってきて、在来種を駆逐してしまうアリだとか、カエルを絶滅させるカビだとか、植物を枯らしたり病気を媒介する害虫なども少なくありません。我々の経済活動に伴って、世界中で脅威が顕在化しています。

世界野生生物基金タンカーや貨物船は、荷物を降ろした後、軽くて船体が安定しないので、帰りにバラスト水と呼ばれる海水を運びます。この中に混入する水生生物が世界を行き来し、地域の生態系を破壊する事例もあると言います。知らないうちに世界に広がった生命力の強い種が、地域の在来種を駆逐し、多様な種が均一化してしまうこともあるのです。

例えば、我々が消費する紙が熱帯雨林の伐採を促進してしまうのも事実でしょう。私たちが食べる輸入食肉は、南米のアマゾンを切り開いてつくった農場で生産する飼料を食べて生育しているかも知れません。一説には生物種の8割が生存するという熱帯のジャングルが、恐ろしい勢いで消失しているのは間違いないのです。

私たちは、ふだん意識しないような場面でも、結果として生物の多様性を失わせるような行動をしているわけです。そのことが、思わぬ事態を発生させる可能性があります。例えばカエルなどの両生類が減少していますが、天敵の減少のおかげで大発生したハエや蚊が病気を蔓延させる可能性が指摘されています。

新型インフルエンザなど新しいウィルスも人類の脅威ですが、これにもウィルスの宿主である生物が、生態系の変化などの影響を受け、今までにない流通がおきてウィルスの変異を促す可能性も考えられます。先日のニュースでは、蜂群崩壊症候群のミツバチの細胞内に器官異常の恐れがあり、ウィルスの感染も確認されています。

生物多様性医薬品の中には、自然界の微生物や細菌などを原材料とするものもあるそうです。何かの治療薬が、突然生産できなくなるかも知れません。生物多様性の喪失は、食料の生産だけでなく、さまざまな形で人類の脅威となる事態を発生させる可能性があると言えるでしょう。

まだまだ専門家にもわからない部分は多いですが、現在起きている種の絶滅が、容易ならざる事態であるとの見方には異論が少ないようです。生物多様性の重要度には議論もあるところだと思いますが、大部分の人は、人類にとって生物多様性は不可欠と考えています。

自然はそんなにヤワじゃないという人もいます。あるいはそうかも知れません。専門家でない私には、なかなか判断がつきませんが、今まで何万年も人類は自然と共生してきたのに、ここへ来て急激にその自然を破壊しつつあるのは事実です。種がいったん失われると取り戻せないという事実にも重いものがあります。

おそらく地球には人類など必要ないでしょう。でも人類には地球が必要なのは間違いありません。温暖化もそうですが、その自然に対して、自分勝手な理由で負荷をかけ、改変しつづけていたら、いつか何らかの形でしっぺ返しを食いそうな気がするのは、私だけではないと思います。

人類も、かつては何種か存在していたそうですが、既に最後の一種となってしまっています。生物多様性を維持していくことは、残された人類の使命のようにも思えます。まず、私たちがどのようにして生物多様性を失わせているか、そして維持するために何をすべきか、そろそろ考えてみる必要があるのではないでしょうか。


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でも最近は、子供たちも塾通いで忙しく、遊びもテレビゲームなどになってしまって、川で遊ぶ子は少ないんでしょう。危ないということもありますが..。子供たちが生き物に接しなくなっていくのも問題なのでしょうね。

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この記事へのコメント
地球温暖化については「実際は温暖化なんかしてない説」もありますがでも何もしなかった結果本当に温暖化してたら困りますから出来ることはやっといた方がいいかもしれませんね。


僕が言ってた小学校では子供だけで河川敷に行くことは禁止でした。
街から離れてるから何かあっても助けを呼べないかららしいですが、かといって公園は幼児の遊び場だからボール遊びなんてできないから結局ゲームしかないんですよね・・・
Posted by 職人気取り at September 07, 2009 09:50
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、地球温暖化については、科学者の間でも議論があるようですし、マスコミも含めたいろいろな関係者が、利害なども絡んで、大げさに伝えている部分があるとの批判もあります。ゴア元副大統領の例の映画なんかにも誇張があるとか、自身の姿勢も含めて批判されたりしたようです。
我々は専門家の意見を聞いて判断するしかないわけで、その科学的な是非を判断するのは簡単ではありません。
しかし、歴史的に言っても急激にエネルギー消費を拡大させ、急速に環境に負荷を与えているのは誰の目にも明らかです。昨今の傾向も、さすがにこのままではマズイだろうというのが、多くの人の気持ちにあるのだと思います。
確かに、川遊びは安全の問題が絡みますから、難しい部分があるのは否めませんね。
Posted by cycleroad at September 07, 2009 12:42
 
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