September 08, 2009

向い風になるべく逆らわない

振り返ると、今年は比較的暑くない夏でした。


昨年と比べると、猛暑日などの日数が各地で大幅に減ったことでも、それは裏づけられています。日照時間が短かったので、農作物の生育に影響が出ているほどです。今年は太平洋高気圧の張り出しが少なく、なかなか典型的な夏の気圧配置にならなかったのが原因だと言われています。

例年と違う気圧配置のせいで、湿った空気が流れ込んで豪雨になったりもしたようです。地域によっても違うのでしょうが、今年の夏は、やはり気圧配置の関係なのか、風の強い日が多かったような印象もあります。自転車に乗っている人はだれでもそうだと思いますが、強向かい風はイヤなものです。

風を遮るもののない河川敷とか、海沿いなどを走っていると、さらに風の強さは身にしみます。スポーツバイクの場合、もともと前傾姿勢ですが、さらに体を縮め、風の抵抗を最小限にして走っている人も多いかも知れません。自転車にとって、強い風が難敵であることは間違いないでしょう。

風が吹くのは、いかんともし難いですが、なんとか風の抵抗だけでも減らしたいと思うのが人情です。それは日本人に限らないでしょう。ひどい風に悩まされ、あるアィディアが浮かんだ人がフランスにもいます。出来たのが、見た目はなんともユニーク、まるで空中を泳ぐような姿勢でペダルをこぐ自転車、“H-Zontal bike”です。

H-Zontal bikeH-Zontal bike

日本でこの自転車を見たら、おそらく多くの人が笑いそうですが、確かに身体に受ける風の抵抗は最小限となりそうです。実はこの“H-Zontal bike”のような自転車、一般的にProno Bikeと呼ばれる、れっきとした自転車のカテゴリーの一つです。私も以前に取り上げたことがありますが、この作者の全くの独創というわけではありません。



逆に仰向けに近い状態で乗る、リカンベントという自転車があります。普通の自転車に比べて空気抵抗が圧倒的に少なく、またペダルに力を伝える点においても優れています。実際、普通のロードバイクよりスピードが出るため、レースなどでは使用が禁止されてしまったという歴史を持つ自転車です。

マイナーなため、一般の人には馴染みがなく、初めて見た人なら、その変わった乗車姿勢に驚くに違いありません。でも、ある程度自転車のことを知っている人なら、聞いたこと、見たことがあると思います。大きな自転車店で売っていたり、日本で実際に乗っている人を見かける機会も、少ないですがあります。(下の真ん中のタイプ)

ロードバイクリカンベントH-Zontal bike

そのリカンベントを知っている人でも、Prono Bikeは知らなかったと言う人が多いのではないでしょうか。しかし、仰向けがあるなら、うつ伏せがあっても不思議ではありません。リカンベントと同じで、最近発明されたわけではなく、かなり昔から自転車の一形態として存在していました。

フェアリングをつけて、最高速にチャレンジするなど、特殊な自転車に用いられたりもします。ただ、マイナー中のマイナーの自転車なので、市販モデルとして存在するという話は聞いたことがありません。一部のマニアなどによる自作、あるいは注文制作でしか作られていないのが実際のところだと思います。



Prono Bikeも、うつ伏せという共通項はあるものの、ペダルの位置など形状はまちまちです。中には、ホイールペースを長くして、タイヤとタイヤの間に人間が乗るような、究極の空気抵抗の少なさを目指したモデルなどもあります。乗りやすさ、乗り心地はともかく、どれも空気抵抗が減らせるのは間違いありません。

前方視界そう考えると、むしろ理にかなったスタイルにも見えてきます。例えば水の中のことを考えてみると、水中を歩けば抵抗が大きいのは当然です。水平になって泳いだほうが、大幅に抵抗が少なく、スピードも出ます。ペダリングする力も、後ろに蹴るほうが、より大きな力が出せて効率的と言えそうです。

もともと誕生した当時、自転車は、「またがる」乗り物でした。現在の自転車も、その伝統や設計思想を受け継いでいるわけです。つまり、ペダルにまたがる形で、サドルの鉛直方向に位置するペダルをこぐスタイルが当たり前です。リカンベントなどを除けば、誰もそのスタイルに違和感を持ちません。

足つき性しかし、空気抵抗やペダルへの力の伝わり方に優れ、より楽に速いスピードを出せるのなら、もっとこうした「うつ伏せ自転車」が出てきてもいいのかも知れません。今までの固定観念を捨て、ペダルの位置を後ろに持っていくことで、うつ伏せに寝そべるような格好、乗車姿勢がもっと普及してもいいはずです。

クルマからの視認性の低下は否めませんが、リカンベントと違って上り坂に弱いということもなさそうです。足つき性が悪いので、走り始めは若干乗りにくいと思いますが、腰痛も起こりにくそうですし、何より風の抵抗が少なく、リカンベントのように前にペダルを持っていくわけではないので、長いチェーンも必要ありません。

上目づかい不要ゴーグル前方の見にくさについては、この“H-Zontal bike”の作者は、特殊なメガネを製作することでカバーしようとしています。なるほど、これも工夫です。クルマからの視認性については、ペダリングがある程度役立つでしょう。一方、流体力学や人間工学、運動効率などから、そのパフォーマンスは、約17%向上すると結論付けています。

乗りやすさや、前方の見にくさなど、犠牲になる部分はあっても、固定観念を取り払ってしまえば、そんなに不思議な形状、意味のないスタイルとは見えなくなってきます。むしろ充分検討されてしかるべき、ある種の可能性、新しい自転車の方向性の一つを示唆しているように見えてきます。

ずっと、このスタイルで乗らなくても、例えば強風時のみ、乗車姿勢を変える自転車なんてどうでしょう。ふだんは、通常のペダル位置ですが、スピードを出したい場所、もしくは強風時にペダルの位置を後方に移動し、うつ伏せ姿勢で乗れるよう形状変更する自転車なんて出てきたら面白そうです。

うつ伏せ自転車、見慣れないと奇異にみえるのは確かです。でも、奇異にみえるということは、我々がそれだけ固定観念にとらわれている証拠とみることも出来ます。私たちが気づかないだけで、自転車には、まだまだ多くの固定観念があるに違いありません。つまり、その進化のタネは、まだあちこちに埋まっているのかも知れません。


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しかし、イチロー選手は相変わらず凄いですね。9×200も時間の問題、週内にもあっさりクリアしそうです。

関連記事

リカンベントと自転車の未来
うつ伏せとは逆に、仰向けに近い姿勢で乗る自転車がリカンベント。

うつむいた自転車という名前
Prono Bikeはうつ伏せの状態で乗る自転車だが、かなりマイナー。

いつでも姿勢をスイッチする
普通の自転車とリカンベントとスイッチする自転車は存在している。



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この記事へのコメント
興味深いですね。
今回紹介のタイプは流石に見たことがありませんでした。
リカンベントが苦手な私もこちらなら乗れるかも・・・
私だけかもしれませんが仰向けよりうつ伏せの方が安心感が大きいところがポイントです。

いよいよ暑さも和らぎ自転車乗りにはいい季節到来ですね。
こんな面白いタイプの自転車をレンタルできる場所が沢山出来たら自転車界ももっと熱くなるんだろうなあ、
と他力本願な思いを抱きつつ、今秋もいつもどおり愛車を車に積んで出掛ける事になりそうです。
Posted by 大阪のオバチャン at September 08, 2009 14:10
実用性はともかくも、やる気満々の姿勢ですね。
Posted by クラウド at September 08, 2009 21:21
とある集まりに参加したのをきっかけに、去年からプローンを造っています。
http://picasaweb.google.co.jp/capronissimo/TasukeIProject#5338983698269466258
仰向けで寝るリカンベントと違い、うつ伏せのプローンは胸を圧迫すると呼吸が苦しくなる為、身体を支える「櫓」をどうするかで随分悩みました。
(競技向け)プローンは視界が狭く、被視認性が低い為、街乗りにはあまり向いていませんが、コーナリング時に頭から曲がる独特な感覚は、モータースポーツ経験者向きではないかと考えています。
Posted by 西宮 敦 at September 09, 2009 14:40
向かい風の時に寝ながら走れたら楽だろうな〜って思ったことは誰でもあると思いますが実際に作っちゃうとは・・・

観光地のレンタルで乗れたら楽しいだろうな〜


この前、無灯火の自転車とぶつかりそうになったんですが相手に「ライト点けた方がいいですよ〜」ってやんわりと注意したら素直にライト点けてくれました。
てっきり無視されるかと思ったけど意外と話せばわかる人もいるんですね〜
Posted by 職人気取り at September 09, 2009 16:36
大阪のオバチャンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かにリカンベントは慣れないと乗りにくいですよね。3輪ならいいですが、特に2輪の場合、最初は戸惑う人が多いのではないでしょうか。
いえいえ、普通のロードバイクの乗車姿勢に、より態勢が近いという理由から、多くの人は、仰向けスタイルよりうつ伏せのほうが乗りやすいのではないかと思いますよ。
いい陽気になってきましたね。私も、こんなバイクに乗れる場所があるなら、多少遠くても乗りに行きたいです。
4+2輪(+2輪)スタイルですね。お気をつけてお出かけください。
Posted by cycleroad at September 09, 2009 22:56
クラウドさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、確かに、「前のめり」の感じが出ていますね(笑)。
Posted by cycleroad at September 09, 2009 22:59
西宮 敦さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おお、プローンバイクを造ってらっしゃるんですか。日本にも、プローンに乗ってる方がいらっしゃるんですね。
写真も拝見しました。本格的ですね。
なるほど、胸の圧迫ですか。想像はつく気がします。確かに、同じ場所がずっと圧迫されると苦しそうです。
モータースポーツ経験者向きと言うのもわかります。私も自動二輪に乗っていた時代がありますので、おっしゃっている感覚は理解できます。足を後ろに伸ばして乗ろうと思えば乗れますしね。
乗ってらっしゃる方からコメントいただくとは思いませんでした。ありがとうございました。
Posted by cycleroad at September 09, 2009 23:16
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
海外には、その「作っちゃう人」が結構いるようですね。日曜大工とかも当たり前だったり、生活スタイルや伝統的な慣習など、国民性や土壌の違いもあるような気がしますが..。
それは、いい体験をされましたね。中には逆切れされて喧嘩になるような場合もあると思いますが、言い方なんかにもよるんでしょうね。
Posted by cycleroad at September 09, 2009 23:26
ご無沙汰です。なかなkら社会復帰ができないでいますが、おもしろい自転車(?)を見つけたので紹介しときます。ここまでモーフすると自転車と言っていいのかどうかわかりませんが,都市交通の手段として、これまでの自動車に変わるひとつの形態になるかもしれません。何でもかんでも内燃機関の四輪頼りな頭は既に時代遅れなことがわかります。

ビデオを見ると,ちょいと乗ってみたくなるような気もしますが,値段が高くて無理かなあ(でも,下手なクルマに比べたらずっと安いぞ)。
個人的にはぼちぼち,四輪内燃機関をお釈迦にして,ラマを交通手段に考え始めた今日この頃です。
お元気です。

http://www.yikebike.com/site/home
Posted by rita at September 10, 2009 09:43
ritaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
お久しぶりです。電動自転車のカテゴリーでしょうか。ユニークなスタイルですね。情報ありがとうございます。
一時期話題になったセグウェイより、縦に二輪のほうが、幅をとらずにクルマの脇をすり抜けられるぶん、実用性は高いかも知れませんね。日本では、公道を走れるかどうか、かなり危ぶまれる感じがしますが..。
都市交通へのアンチテーゼと見ても面白いというのは、その通りですね。0.5トンとか1トンものクルマが1人しか運んでない場合も多いですから。
人によって見方が違うでしょうが、1人につき縦に2輪、このくらいの大きさでも充分というアピールとして感じ取る人も増えているような気がします。
ラマ、ですか。でも、たまに海外など、曳き馬でなく馬に乗って野山を駆けられるような場所で乗馬をすると、つくづく思いますが、馬だと、悪路でも自分で坂を下ったり、川を渡ったりしてくれますし、実にラクですね。都会では無理ですが、場所が許すなら、乗用の動物を飼ってみたいものです。
Posted by cycleroad at September 10, 2009 21:49
価格やスペックが出てます。
Posted by hikasa at September 11, 2009 10:31
hikasaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
これは、ご親切にありがとうございます。参考になります。
Posted by cycleroad at September 12, 2009 22:45
 フルフェアリングの2輪のうつ伏せ型の平地の速度記録は70年代末時点
で時速80キロを越えていたと思います。それをまねて私も友人と共同製作
しました。前20インチ、後27インチで数台の古い自転車をバラしてロウ
付けしたものです。胸が圧迫されるので、短距離しか乗れません。ペダルを
漕ぐと体が前方に動いてしまい、そうはさせまいと腕に力が掛かります。
そうなるとハンドルが微妙にふれてしまい、ただでさえ重心が低くて動的に
不安定なのに、いっそうフラつきました。結局車体後ろから幅広ベルトを肩
にまわして、体が前方に動かないようにしたら、改善されました。前方はたまに見る程度、大半は斜め下方の前輪を見ていました。ですから、実際の速
度以上に早く感じます。前方を見ると首が疲れますね。足付き性は普通の自
転車よりも良好でした。動力伝達系を普通の自転車そのままにしたので、比
較的簡単に自作できました。フルフェアリングもつくりました。記録ですか
? 聞かないでください!
Posted by ベーチャンカ at September 28, 2010 01:15
ベーチャンカさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
実際に製作したことがおありですか。見た目にはラクそうな姿勢にも見えますが、実際には、いろいろと大変なんですね。
なるほど、ペダルをこぐと、身体が前に出てしまうとは思いませんでしたが、言われてみれば、そうですね。普通のロードバイクならば、自分の体重でバランスがとれますが、そうもいかないですし..。
素人の想像だと、トライアスロンなどで使われているような、肘を載せられるハンドルバーなら、少しは安定しそうな気もしますが、実際に乗れば、そんなものではないのでしょうね。
確かに、視界を確保するには首が疲れそうですし、まだまだ発展途上と言うか、解決すべき課題の多い自転車ということなのでしょう。
記録は聞きませんが(笑)、フルフェアリングまで製作されるほどの技術や器用さをお持ちとは、うらやましいですね。
Posted by cycleroad at September 28, 2010 22:56
 
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