September 20, 2009

高速無料にすべきでないのか

鳩山新政権がスタートしました。


歴史的な政権交代劇で誕生した、民主党を中心とする連立内閣です。民主党にとっては未知の領域ですし、その政権運営に不安視される部分があるのは確かでしょう。しかし、世論調査によれば、おおむね75%前後と高い支持率となっており、国民の間には期待が広がっています。

新内閣の始動と同時に、マニフェストの実現に向けた、各大臣の意欲的な発言が報道されています。民主党の掲げている政策には、多くの人が期待する一方で、その実現を疑問視するむきも少なくありません。これまでの自民党と同じように、選挙の時だけの打ち上げ花火ではないかと懐疑的に見ている人が多いのかも知れません。

ためしに前回、郵政選挙の時の自民党のマニフェストを見てみると、政策は抽象的な表現でしか書かれていません。具体的な時期や数字はほとんど入っていないですし、郵政民営化を除けば、どこが実現したのか判断出来ないような表現ばかりです。確かに、これでは、選挙向けのアドパルーンと見られても仕方ありません。

鳩山内閣発足 高速無料化に賛否両論当時の小泉首相は、実際に「公約を守らなかったことはたいしたことではない」とハッキリ言い切りましたし、自民党は最初から真剣に守る気はなかったのでしょう。今回の選挙の自民党のマニフェストは、さらに観念的な表現が並んでいました。後から公約違反を追及されないように配慮したとしか思えません。

日本では、まだマニフェスト選挙が完全に浸透したとは言えない状況でしたから、仕方がないのかも知れません。しかし、民主党のマニフェストの方は、少なくとも自民党よりは具体的です。必要な金額や政策実施の具体的スケジュールまで書いてあります。内容には賛否両論あるとしても、明快さについては自民党より勝っています。

もちろん、今回の選挙がマニフェストの優劣で決まったとは思いません。ただ、民主党の具体的な政策に対して自民党のほうがバラマキだとか、財源の裏付けがないなどとケチをつけるばかりで、既に野党のようだったのは、多くの識者も指摘しているところです。結果は言うまでもありません。

前回の衆院選では、当時の小泉首相を圧倒的に支持する結果が出ましたが、「公約を守らなかったことはたいしたことではない」と言われてしまった上に、その小泉首相は1年で辞めてしまいました。その後は選挙もないのに1年ずつの首相が登場する始末です。

高速道無料化に賛否麻生前首相に至っては、前回の選挙結果を受けた政権であるにも関わらず、国民の意思を否定するような発言もしました。選挙にさえ勝ってしまえば、後は公約など関係ないという政治だったわけです。これに比べて、今回の民主党政権は明確なマニフェストを掲げ、それは国民との契約であるというスタンスに立っています。

来年の参院選をにらんだ、ある意味「点数稼ぎ」的な部分も無いとは言いません。実際に実現するかは、まだこれからの話です。ただ、マニフェスト重視、マニフェストありきの立場を鮮明にしてスタートしたことは、国民の意思、選挙での選択が反映するという意味で、評価できるのではないでしょうか。

さて、その民主党のマニフェストには、税金の無駄遣いや天下りの根絶、世襲や企業団体献金の禁止、子供手当てや高校無償化、年金制度や医療と介護の改革、地域主権の確立、農家の個別所得補償、高速道路の無料化、郵政事業の見直し、中小企業の法人税率引き下げ、地球温暖化対策の推進と新産業の育成などがうたわれています。

具体的な数字と時期も示されていますが、財源の確保などの問題もありますから、果たして本当に実現出来るのだろうかと訝る人も少なくないでしょう。でも国民の多くは注意して見ています。誰も100%完璧にいくとは思っていないとしても、大きく裏切られる結果となったとしたら、次の選挙の結果は明らかです。

新大臣たちは当然そのことがわかっているはずです。真剣な面持ちで就任の記者会見に臨んでいましたが、マニフェスト実現へ向けての重圧、責任の重さを感じていたのでしょう。政権交代という画期的な出来事により、今までの政治がどう変わるのかだけでなく、今後マニフェストがどう実現されていくのかが問われているわけです。

高速無料化に期待と困惑税金の無駄遣いや天下りの根絶などは、この政権の目玉として是非とも実現してもらわなければなりませんが、必ずしも全ての政策に支持が集まっているわけではありません。各種の世論調査などを見ていますと、このマニフェストの中でも、一番不人気と思われるのが高速道路の無料化のようです。

どの調査でも6割前後の人が、高速道路の無料化に反対、または支持出来ないと答えています。個々の政策については、さまざまな意見があるのは当然です。立場によっても利害が絡んでくるでしょう。積極的に反対でなくても、多くの人が無料にしなくてもいいのではないかと思っているようです。

その理由はいくつかあると思います。まず地球温暖化対策に逆行するという意見です。確かに交通量の増加を招き、一見、逆行するように見えなくもありません。しかし、必ずしもそうとは限らないようです。直嶋経済産業相が次のように発言したと報じられています。


高速道無料化「温暖化対策を妨げない」直嶋経産相

直嶋正行経済産業相は19日、NHKの番組に出演し、高速道路の無料化が地球温暖化対策に逆行するとの批判があることに対し「必ずしもそうは思わない。二酸化炭素の排出はエンジンをかけたままの停止と、発進の時が最も多く、要するに渋滞を起こさないということ(が重要)だ」と述べ、温暖化対策の妨げにはならないとの考えを示した。

経産相は「無料化すると、特に地方は一般国道の混雑はほとんど解消する」と指摘。ただ「都心部、特に東京をどうするかが頭が痛い。そこはすぐにはできないだろう」と語り、地方を優先して無料化が進むとの見通しを示した。(後略)(2009.9.19 産経新聞)


政権交代 どうなる経済私は専門家ではないので、実際のところどうなのか判断がつきかねますが、高速道路を無料化したからと言って、二酸化炭素の排出量が増えるという単純な図式ではないようです。温暖化の抑止が必要ないのではなく、それを高速料金で行うのは合理的とは言えないのなら、地球温暖化に逆行するという理由はあたらないことになります。

感覚的に交通量が増えそうだと感じている人も多いのではないでしょうか。つまり、「高速が無料になれば、みんながクルマに乗り、より遠くへ出かける。比例して温暖化ガスの排出が増える。」という考え方です。実際に、今の高速乗り放題千円でも交通量は増えており、これが無料になれば、もっと拡大しそうな気がします。

しかし、現在の「高速一回千円乗り放題」は土日祝日限定で、2年間だけの時限措置です。これによってETCの装置取り付けに人々が殺到し、機械が品薄になったのは記憶に新しいところです。せっかくだし、千円でお得なうちに出かけよう、装置を取り付けたのだから使わなきゃ損という心理も働いているに違いありません。

しかし、いつでも無料なら、特にお得だからと出かける必要はないですし、遠くへ行くほどお得ということもありません。燃料代がかさむだけです。高速が無料になったからと言って、それだけで皆が出かけるというのは最初のうちだけのような気がします。無料なのが当たり前で普通になったら、特に出かける動機にならない気がします。

鉄道・バス業界から懸念の声中には高速無料になったので、高速を使って通勤するようなる人などはあるでしょう。その意味で交通量が増えないとは言いませんが、直島経産大臣の言うように、一般道の渋滞が減ることによる効果もあるのであれば、決して悪い政策とは限らないような気がします。一般道での事故が減り、歩行者や自転車にも恩恵があるかも知れません。

高速をタダにして、維持費に税金を使うのは、受益者負担の原則に反するという意見もあるでしょう。しかし、これまでさんざん通行料を払ってきたわけですし、無料になれば国道と同じです。社会のインフラとして、その維持費が、いわゆる道路特定財源から出されているのと同じになるだけです。

重量税などから拠出されるのであれば、免許を持っていない人にまで負担させるわけではありません。物流という点では、運転しない人も間接的にその恩恵を被っているわけですし、物流コストが減ることによるメリットも期待できます。ストロー効果も考えられますが、地域活性化に寄与する部分も当然あるはずです。

高速無料化もともと、建設費が償還されたら無料になるということで高速道路の建設が始まりました。それが、とっくに償還されている路線でも、新しい路線を建設するという名目で料金を取られ続けてきたわけです。欧米でも原則として高速道路は無料が当たり前ですし、その意味では当たり前のことという気もします。

私は、高速料金をとって、際限なく高速道路を造り続ける仕組みが残るほうが問題だと思います。もちろん潜在需要の高い路線もあるでしょうが、地元の人が急いでいても通らない道路、クマしか通らないと揶揄されるような道路、政治的に無理やり通しただけで、閑散としているような道路は存在します。

少子高齢化が進み、クルマの所有率も減り、これから道路の需要は減っていきます。すでに欧米と比べても道路整備の充実度は高くなっているのに、これ以上無駄な道路を造り、土建屋と道路族議員と関係官庁の天下り役人だけが得するような仕組みを残すことのほうが問題ではないでしょうか。

高速料金は、広い意味で税金のようなものです。それを自動的に道路建設に使うのではなく、雇用や教育、社会保障に使うべきと考えるなら、高速料金は原則廃止にするのは理にかなっています。民主党の言う、「コンクリート」ではなく「ヒト」にお金を使うという考え方に沿うものでしょう。

ETC特需一転 高速無料化でどうなる?無駄な道路建設だけでなく、その周辺には利権も溢れています。例えばETCの関係だけでも、わけのわからない特殊法人やら団体がひしめいています。ETCの販売や料金決済などにも、数多くの天下り団体が群がっているのです。今のシステムが採用されたのも、さまざまな利権が絡むからだと聞いたことがあります。

海外には、日本のETCと同等のことが、フロントガラスに張る小さなチップ1枚で済んでしまう国もあります。つまり、ETCの高い機械や取り付け費、手数料などは、いわゆる天下り団体をつくるために採用されているわけです。そのほか道路付帯の設備や維持管理なども、利権と談合と随意契約、天下りとファミリー企業の巣窟です。

こうした部分を無くせるだけでも高速無料化には意味があります。我々は、世界一高い高速料金を払って、こうした利権に群がる人たちを養っているわけです。無駄で非効率なだけでなく、はっきり言って、ある意味日本をスポイルしています。つまり、ダニや寄生虫と同じです。

昔は道路などの公共事業に、一定の雇用吸収効果がありました。しかし、今はそうした効果も見込めません。ごく一部の人の懐を潤すだけです。高度成長の時代ならいざ知らず、もはや景気対策としても道路やハコモノの効果が薄いのは明らかです。その一方で、家計は苦しさを増し、しわ寄せが行っています。

高速無料化の公約以前から話題となってきた道路特定財源の問題とも共通する部分があります。暫定税率の廃止もマニフェストに書かれていますが同じことです。つまり、医療や福祉など、他に必要な財源が足りずに借金をしているのに、道路を造る財源だけはあり余っているという構図です。道路特定財源と同じで、高速料金は道路関係にしか使えません。

税金の使い道の優先順位を考え直す上で、こうしたシステムを残しておいては意味がありません。もちろん、今後必要な道路は造るとしても、高速料金を残す形では、非効率と随意契約で無駄に高い道路になってしまうのは間違いありません。利権の巣窟となった高速道路システムを、もはや存続すべきでないのは明らかではないでしょうか。

人によっていろいろな考え方があるので、高速料金無料にも賛否両論あるのは当然です。むしろ反対の意見が多いわけです。しかし、中には誤解や、単純に環境に悪そうという印象だけで、高速は無料にしなくてもいいのでは、と考えている人も多いのではないでしょうか。是非、一度考えてみてほしいところです。


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国土交通副大臣には、馬淵澄夫氏と辻元清美氏が就任しました。辻元氏は「ひとと環境にやさしいまちづくりをめざして、公共交通の充実などにとりくみます。」とコメントしています。自転車走行環境の整備も進めてくれないものでしょうか。

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この記事へのコメント
高速無料化による自転車へのメリットは大きいかもしれませんね。
cycleroadさんの言うように無料化になって最初のうちは利用する人達が大勢いて、年数が経てば利用する人も自然と減少すると私も思います。車が一般道から減少すれば(特にトラックが)自転車乗りにとってはかなりうれしいことだと思います。
自転車専用道が整備されても車は怖いものですから。特に最近は飲酒運転などによる事故が多いのでいつ巻き込まれるか心配で車道を安心して走れません。
Posted by moto at September 20, 2009 21:47
motoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
地域や個々の道にもよるでしょうけど、言われているように一般道の交通量が減り、渋滞が減少するのであれば、自転車にとっても走りやすくなるなどの恩恵を受ける可能性はあると思います。
トラックの排気ガスに悩まされることも少なくなれば嬉しいですね。事故も減れば言う事ありません。
クルマの流れが変わることで、願わくば、自転車の走行空間の整備が進むなんてことも期待したいところです。
Posted by cycleroad at September 21, 2009 21:24
彡ミミミ、
(; ゚ - ゚) < 今まで料金を比較して公共交通機関を利用していた人が自動車を利用するようになるので、
二酸化炭素排出は増えるんじゃないですかね。
Posted by あちょ@漂流者Lv.1 at September 22, 2009 18:36
あちょ@漂流者Lv.1さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、単純に考えるとそうなりそうです。実際に交通量は増える部分もあるでしょう。
ただ、二酸化炭素の排出は、渋滞していると、より多くなるので、皆が高速を利用して、一般道の渋滞が減れば、全体としては温暖化ガスが減るという試算もあるようです。
Posted by cycleroad at September 22, 2009 20:11
 
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