October 11, 2009

分割すると得られるメリット

現存する日本最古の国産自転車、三元車です。


今、発明者の生誕地の福島県桑折町で公開されていると報じられています。3輪車だから三元車と呼ぶわけではなく、これを開発したのが鈴木三元さんという方だったので、その名前から取って三元車です。読売新聞の記事から引用します。


三元車「三元車」福島で展示…最古の国産三輪自転車

現存する日本最古の国産自転車「三元車(さんげんしゃ)」の展示が26日、製作者・鈴木三元(みつもと)(1815〜90)の生誕地の福島県桑折町にある旧伊達郡役所で始まった。町民有志で結成した三元車を復元させるプロジェクトチームなどが、歴史的価値に触れてもらおうと企画した。

三元車は、鈴木三元が4年の開発期間を経て1876年(明治9年)に完成させた。現存する唯一のものは名古屋市のトヨタテクノミュージアム産業技術記念館に保存され、一般公開されていなかった。前輪が二つ、後輪が一つの三輪車で、左右のペダルを交互に踏むことで後輪を回して進む。ブレーキはなく、前輪についている取っ手のようなハンドルで操作する。主な部品は木製で、地面と接する車輪の縁には鉄が打ち付けてある。

プロジェクトチームは、町の歴史的資源を生かしてまちおこしをしようと昨年8月に結成。三元の子孫で、5代目鈴木三元さん(84)がリーダーとなって活動している。実物を採寸して設計図を作ったり、車輪の部品を作ったりするなどして、11月の完成を目指している。鈴木さんは「先祖の不屈の精神を見習って完成させ、当時の夢とロマンを伝えたい」と話している。

展示は、10月25日までの午前9時〜午後4時30分。問い合わせは、三元車展実行委員会(024・582・2126)へ。(2009年9月27日 読売新聞)


写真だと全て鉄製のように見えますが、木の部分が黒っぽく塗られており、材質は鉄と木です。フレーム部分などに鉄が用いられていますが、車輪などは木で出来ています。樫やケヤキ、栗といった堅い木で作られており、おそらく、防腐作用のある柿渋などの塗料で着色されていると見られます。

明治の初めに、人力で走る交通手段が必要と考えた初代の鈴木三元さんが、私財を投じて完成させたものだそうです。何度失敗してもあきらめなかったと言う、その鈴木三元さんが自転車を製作しようと思い立ったのは57歳の時です。今よりずっと平均寿命の短い時代ですから、まさに不屈の精神でしょう。

こうした歴史上の古い自転車を、過去の遺物、今は使われなくなったモデルとして片付けるのは簡単ですが、論語にも温故知新とあります。過去の事例から、新しいアィディアや未来の自転車のヒントが得られることもあるでしょう。その意味では、こうした昔の自転車の形状や仕組みを見てみるのも一興です。

次世代のクルマと見られている電気自動車も、実はガソリン車などの内燃機関によるクルマより古い歴史を持つと言います。当時はバッテリーの性能などの壁があり、ガソリン車にかなわず廃れてしまったわけですが、ここへきて大いに注目を集める存在となっているわけです。古いスタイルが、いつ新しくならないとも限りません。

三元車この三元車、二輪あるほうが前です。ハンドルは座席の脇にあるレバーを操作して方向を変えます。その点で、リカンベントに似たスタイルと言えなくもありません。今の自転車のようなブレーキはついていませんが、当時の交通事情では、さほど必要もなかったのでしょう。

チェーンはなく、ペダルと後輪がクランクで直結されているので、ブレーキがなくても、こぐのをやめれば止まります。ペダルは回転運動というより上下運動させて進むのですが、ちょうど蒸気機関車が、ピストンの往復運動を回転運動に変えて動輪を動かすのと同じような感じで、車輪を回転させて進む構造になっています。

タイヤの直径は前の二輪が70センチほど、後輪の直径は1メートルほどもあります。鉄が打ちつけられているものの、タイヤは木で出来ています。大きな板材から車輪を円盤状に型抜きしているのではなく、円弧状の短い棒材をクサビを打って、つなげて円にしています。

木材は木目の方向がありますから、円盤状にくり抜いたのでは強度的にも問題が出るのでしょう。おそらく、当時の馬車とか荷車、大八車などの車輪もそうだったのではないかと思います。今の自転車のタイヤと違って、当然ながら、かなり堅そうな気がしますが、乗り心地はどんなものなのでしょうか。

ところで、話は変わりますが、フォールディングバイク、折りたたみ自転車を小さくたたむ上で、最大の課題はタイヤです。タイヤを小径にすれば小さくすることが出来ますが、どう頑張ってもタイヤの径より小さくたたむことは出来ません。でも、もしタイヤまでたためれば、タイヤの径より小さく折りたたむことも可能になります。

そこで現代の自転車デザイナーの中には、タイヤを分割してしまおうという大胆な発想をする人がいます。ただし、普通に考えれば机上の空論であり、自転車を知らない、乗ることのない人の考えたデザインと言われても仕方ありません。百歩譲って、リムは分割出来たとしても、ゴムのチューブを分割するのは現実的とは言えないでしょう。

Compactable Urban BicycleWheel folding system

この自転車は、あくまでデザインモデルです。現代の都市での生活において、自転車の保管スペースを小さくするというコンセプトです。面白いと言えば面白いですが、実用性を考えると、現実味は薄いと言わざるを得ません。普通の自転車に使われているタイヤや空気チューブを考えれば、タイヤの分割はナンセンスです。

しかし、考えてみると、三元車の当時のタイヤは、言わば分割可能だったわけです。実際には分解しないまでも、今のような金属製のリムやゴム製のタイヤとチューブのように、最初からドーナツ状の部品ではなく、木材をつないで作っていました。つまり、もともとタイヤは、分割可能なものだったことになります。

三元車の昔に木だった車輪は、ゴムという素材の普及で、空気を注入したチューブを使ったタイヤの乗り心地に圧倒され、廃れてしまいました。でも、最初は木をつなげていたことを思えば、新しい素材が開発されるなどして、チューブを使わないタイヤ、場合によっては分割可能なタイヤが出てきても、おかしくはありません。

Bike Structure SystemCompactable Urban Bicycle

台車のキャスターのような空気のチューブを使わない車輪ならば、あるいは分割可能かも知れません。分割した、リムそれぞれに棒状のゴムを貼り付ければ、必ずしも空気を注入して使うタイヤでなくていいとも考えられます。問題は、強度や耐久性、ころがり抵抗の大きさ、そして乗り心地ということになりそうです。

今でも釘が刺さってもパンクしないタイヤ、空気を注入しないタイヤが実際にあります。災害用などには活躍するかも知れませんが、通常用に広く普及しないのは、やはり乗り心地や、いわゆるバネ下重量の増加などの点で、空気を注入するタイプにかなわないという事情があるものと思われます。

この写真の自転車、実際問題として、分解や組み立てにも、意外と時間がかかりそうな気がします。実用的な強度を得るためには、タイヤだけでなくホイール部分の素材や構造も問題になってきそうです。また写真を見る限り、構造が複雑になるわりには、劇的に体積が減少するわけでもないので、そんなにメリットもなさそうです。

ほかにも、盗難防止の観点からタイヤを分割するというアィディアを提案する人もあります。写真は、タイヤをずらすように分割して、重ねられる自転車です。半分の大きさのタイヤが2つ重なる格好です。車輪のハブにロック機構が備わっており、この形のままでは走行できませんから盗難を防げるという考え方です。

rimlockrimlock

ユニークな発想ではありますが、盗難防止のために、わざわざ乗り心地を犠牲にしてまで分割する必要があるのかという疑問も湧いてきます。ハブのロックでタイヤを回転出来ないならば、わさわざ分割しなくても走行は出来ません。どのみち、担いで持っていかれれば盗まれてしまうので、あまり意味がない気がしないでもありません。

タイヤの構造から連想が広がって、いろいろ勝手な考察をしてみましたが、三元車の時代は、仕方なく木材をつないで車輪にしていたわけです。分割出来るタイヤがあったら面白いとは思いますが、新素材が開発されても、わざわざタイヤを分割して得られるメリットは、そう多くないというのが実際のところかも知れません。


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扇子のように広げれば円盤状になってタイヤになる、なんてのは、どうでしょうかね。やっぱりダメかな(笑)。

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この記事へのコメント
 毎回、楽しく、悩みながら読ませて頂いております。
福島県桑折町にそのような人物がいらしたとは、存じませんでした。東北に四半世紀も住んでいたのに!
 日本で、なかなか機械産業が発展しなかったのは、高速回転での軸受に関する治験がなかった。つまり、牛車の速度では、軸受は木製で油をさせば摩耗も少なく問題が発生しなかった。しかし、現在我が国のものつくりレベルは、世界トップレベルであったが、生産産業の海外移転を考えると日本に残るのはなんであるのか心配になります。
 三元自転車開発に続く人材が沢山出てくることを期待します。
Posted by おいさん at October 12, 2009 11:58
おいさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
お近くでしたか。こうしたものは、歴史の狭間に埋もれて忘れ去られることが多いのでしょうね。三元車も、ご子孫や地元有志の方がプロジェクトを起こさなければ、こうして世に知られるようにはならなかったでしょう。
なるほど、江戸時代までの日本は、その国土の狭さや流通の実態、高速な交通手段の必要性の低さ、あるいは幕藩体制の維持のための政策などが、機械産業の停滞を招いたということなのでしょう。もちろん島国で鎖国していたということもあるでしょうけど。
確かに、今後の日本のものづくりがどうなっていくのかは、予断を許しません。新興国の猛追に打ち勝つ「不屈の精神」を持った人材が求められているのかも知れませんね。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
Posted by cycleroad at October 13, 2009 22:47
 
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