November 04, 2009

呼吸をしているロードパイク

最近はカーボンフレームのロードバイクに乗る人も増えています。


市販のロードバイクのフレームにも、一般的なアルミやクロモリ(クロムモリブデン鋼)のほかに、カーボンやチタンといった新しい素材を使ったものも増えてきました。このうちカーボンは、まだ一般的に価格が高いのが難点ですが、軽くて高機能、振動吸収性も高く人気があります。

そのカーボンのロードバイクに近所の人が乗っているのを見て、金属だけでなく、樹脂系の素材であるカーボンでも自転車のフレームがつくれるなら、「木」でもつくれるだろうと考えた人がいます。3年前から木でロードバイクを作り始めた、佐野末四郎さんという方です。

過去にもいくつか、木の自転車を取り上げたことがありますが、一般に知られたものではありません。カーボンも木も、元素記号的には同じかも知れませんが、普通の人なら、木で自転車をつくろうとは考えないでしょう。それもそのはず、この佐野さん、ヨットなどの木造艇をつくる職人さんなのです。

マホガニーバイク独特の風合い

それも、江戸時代の和船の伝統を受け継ぎ、200年続く船大工の9代目という木工技術の専門家です。ヨットやカヌーなどをつくる技術を使い、手作りで木のロードバイクを製作しています。完成度の高い、曲線の美しいフォルムが印象的ですが、フレームやハンドル、サドルだけでなく、リムまで木です。

素人だとフレームの形に木をくり抜いて作るものと思いがちですが、それでは木の繊維を切断してしまうことになり、強度が出ません。材料は高級家具などにも使われるマホガニーという堅い木材ですが、それでもただ組み立てたのでは出来ないと言います。

材木そのままでは、曲線にも出来ません。そこで、薄く切られたマホガニーの木材を何層にも貼り合わせ、水分と熱を加えながら曲げて成型しているのです。シートポストのサドルとの接合部など、ほとんど90度の角度に曲げられています。なるほど、この形のほうが振動を吸収すると思いますが、そう簡単なことではないでしょう。

リムまで木製1台製作するのに、約3カ月かかります。マホガニーと言うと、堅いぶん重い木材のようなイメージがありますが、中をくり抜くなどして軽量化し、7キロ台の重さを実現しているというから驚きます。しかも、独自の技術で金属に負けない強度を達成しているのです。

金属とは違う、木材ならではの木目と暖かみのある風合いが特徴ですが、それだけではありません。弾力のあるフレームがペダリングを助けてくれる独特の乗り心地だと言います。私は乗ったことがないのでわかりませんが、当然ながら振動吸収性も高く、疲れにくいバイクだろうことは容易に想像がつきます。

金属の場合、どうしても金属疲労が起きますが、木材は言わば呼吸をしており、空気中の湿気を吸うことでフレームにかかるストレスを回復するような性質があるのだそうです。しかも寸法に狂いの少ないマホガニーです。家具などもそうですが、長く使えるというわけです。色も、年を経るごとに濃くなって風合いを増すと言います。

佐野さんは、木という素材の良さをもっと多くの人に知ってもらいたくて、自転車をつくることにしたそうです。木で、こんなことが出来るということを見せるのに、自転車は格好のアイテムだとも語っています。確かに、見た目にもインパクトがありますし、その実用性や完成度の高さに驚かされます。

今後は、更なる軽量化を追求し、レースに出られるロードバイクを目指すとしています。また、この木製自転車で培った軽量化の技術を、今度は逆に木造船の製作にフィードバックし、水中翼のついた、軽量で高速な木造ヨットの製作も考えているのだそうです。



今年9月には、ドイツで行われた世界最大の自転車ショーと言われるユーロバイクショー2009にも招待されました。このマホガニーバイクには、招待した企業から2万ユーロ、約260万円の値がつけられ、3台の注文があったと言います。本場でも、その技術力と完成度の高さが認められたということでしょう。

なにしろ、フレームの素材まで手作りです。成型された木を更に削って仕上げますが、最終的には1/10の分量になるほど削ると言います。イタリアなどで、職人が一台一台手作りするロードバイクの値段を知っている人なら、その手間や技術力と考え合わせて、ある程度うなづける金額かも知れません。

木のロードバイクでも、自転車イコール、ママチャリだと思っている人が圧倒的に多い日本では、普通の人が聞けば驚く金額だと思います。街では1万円もしないママチャリが氾濫する国ですから無理もありません。自転車のフレーム素材とか、それによる乗り心地の違いにこだわる人は、全体からみればごく僅かです。

一部のスポーツバイクに乗る人を除けば、おそらく、自転車を手作りするものとは思っていない人が大多数なのも間違いありません。それに比べ、イタリアなどに行くと、日本でも有名なビアンキやピナレロ、デローザといったブランド以外にも、手作りで職人が自転車をつくっている小さなメーカー、工房がたくさんあります。

自転車ロードレースがサッカーと二分するほどの人気を誇り、広く自転車文化が根付き、美しいロードバイクをこよなく愛する人々が多く住む国と同じことを望むのは無理があるかも知れません。しかし、さすがに木製は特別ですが、日本にも、こだわりの自転車を製作する職人や、工房が増えていくことを期待したいものです。


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自転車に乗るパフォーマンスも見せた谷垣総裁自民党の谷垣総裁が全国行脚を始め、昨日は競輪場をロードバイクで周回するという趣味の自転車を使ったパフォーマンスでアピールしたそうです。
読売新聞に、

スーツ姿の谷垣総裁、競技用自転車で全国行脚発進

と取り上げられています。
しかし谷垣さん、かなりの通なのに、わざわざ競輪場に行ってスーツはないんじゃないかと思うんですけどね(笑)。

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この記事へのコメント
木造艇の職人さんすごいですね。

漕艇の造船会社の社長さんは琵琶湖を毎日漕いで出社してるとどこかで聞いた事があります。

漕艇も、木造からFRP?グラスファイバー?にかわりとても軽く、オールもカーボンはとても軽く、またしなって驚いたものですが、

現在でも木造艇の職人さんがいるのですね。
こういう職人さんがずっと生きていける社会になるよう
谷垣総裁もママチャリではなく日本のビルダーさんのロードバイクなんかで行脚してほしいですね。
Posted by よっしー at November 05, 2009 21:52
街中で走っていても木で出来てるとは気づかないかもしれません。それくらい動画を見ても違和感がない!

谷垣さんは「庶民派アピール」「環境問題」と理由を付けてそうですが結局のところ忙しくて乗る暇がないから乗る口実が欲しかっただけだったりして(笑)
とはいえ政治家がロードに乗るのは心強いです!
Posted by 職人気取り at November 06, 2009 09:34
よっしーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かにすごい技術だと思いますね。でも、おっしゃる通り、なんの分野でもそうですが、昔ながらの伝統の職人の技術は、工業製品にとって代わられ、失われていきつつあるのも事実なのでしょう。
伝統技術の保護や継承も大切ですが、職人さんの中には、新しい時代にあった製品や分野に進出することで、また新たな展開を見出そうとしている方もいるわけで、そうした努力も応援したいものです。
谷垣さんがママチャリで地方回りしている映像も出ていましたね。そう、どうせなら、ロードパイクなどでアピールしてもらいたいものです。
Posted by cycleroad at November 07, 2009 22:59
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、その完成度の高さは目を見張ります。ただ、まだ世界で6台しかないので、ふだんはそう簡単にお目にかかることはないでしょうね(笑)。
競輪場でロードは、完全に趣味が入っているでしょう。一方で谷垣さん、ママチャリに乗って地方回りをしているのも出ていました。自転車好きもあるでしょうが、自転車のほうが有権者と近くで接することができて、声を聞きやすい、親しみやすい印象を与えるなどのメリットもあるのでしょう。
ただテレビで見ると、ずいぶんサドルが低い状態のママチャリでした。あれでは乗りにくいと思うんですけど..。
Posted by cycleroad at November 07, 2009 23:12
木の自転車いいですね

ところで谷垣総裁のお話ですが
この夏の衆院選は特に自転車行脚をする政治家が増えたようです
私も秘書として選挙に携わりましたが我が陣営もやはり自転車を使って選挙活動を展開しました
そこで候補が体力を温存できるようにとクロスバイクやロードレーサーなどの自転車を提案したところ
「庶民感がない」
と一蹴されてしまいました

地元名古屋市では市議会議員の先生でバリっとサイクルジャージに身を包んでロードレーサーやMTBで選挙活動を展開する先生もいらっしゃるのでそのうち国会議員=ロードレーサーのイメージが付く日も遠くないかと思われます
Posted by DGR at November 17, 2009 00:09
DGRさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今年の選挙は8月でしたから、暑くて大変だったでしょうね。にもかかわらず、確かに自転車で選挙運動をする候補は増えたような印象があります。
自転車のほうが、有権者と距離が近いし、細い道路や商店街の中まで効率的に回れるといったメリットがあるのだろうと推測しますが、「本人」というタスキや、ビールケースなんかのように、自転車遊説も流行りの部分があるのかも知れませんね。
名古屋市長の河村たかし氏も自転車で庶民派をアピールしていたようですが、庶民派を演出するならママチャリは外せないのでしょう。
イギリス保守党の党首あたりは、スポーツバイクで颯爽と登院するので人気になっていますが、日本では政治家がジャージでは遊びのように見られたり、有権者に失礼といった遠慮もあるのでしょう。自転車文化の違いも大きいと思います。
自転車好きで有名な谷垣さんですら遊説ではママチャリですし、個人的には、ロードバイクで選挙活動をする議員がでてくるとは、ちょっとイメージしにくいですね。
Posted by cycleroad at November 17, 2009 23:46
今日ラジオでこの木工の佐野さんの取材をしているのを聞き、興味を持ってくぐってここにたどり着きました。

木で自転車を作ると言うのは非常に難しいのがわかるだけにスゲーと思いました。
Posted by ひらひら at December 25, 2010 13:14
ひらひらさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ラジオでやっていましたか。木材加工のご経験がおありのようですね。
私は素人なので、ただ純粋にすごいなと感じるだけですが、やはり技術的にもすごいものがあるのでしょうね。
Posted by cycleroad at December 26, 2010 00:05
 
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