November 25, 2009

身近な素材を何に利用するか

街の木々も色づく季節になってきました。


街路樹の葉も落ちて、道路の隅に溜まっていたりしますが、落ち葉を掃くのに使うものと言えば「竹ぼうき」です。普通の箒(ほうき)では土や小石まで集めてしまってうまくありませんが、目の粗い竹ぼうきだと、枯れ葉だけを効率的に掃くことが出来ます。改めて考えると、よく出来ています。

この竹ぼうき、単に小さな竹の枝を束ねて、竹の柄をつけただけのように見えますが、実はそうではありません。竹の小枝を、いくつかの特定の形状に裁断した上で分類し、それらを職人の経験と熟練の技で巧みに組み合わせて束ねてあります。そのおかげで、先がうまい具合に広がった形状が保たれ、掃きやすくなるのだそうです。

竹という、どこでもある素材を上手く利用した道具ですが、竹林は適度に伐採して密度を減らしてやらないと、生存本能で周囲に向かって根を伸ばし、民家の床を突き破ったりすると言います。一方、伐採した竹は処分に困る廃棄物なわけですが、そんな素材を実用的な道具として、上手く利用している例と言えるでしょう。

日本人は、貴重な資源であると同時に、しばしば厄介な廃棄物になりかねない竹を、いろいろな形で活用してきました。竹垣や竹の柵、簾(すだれ)、床材や塗り壁の芯など、日本の家屋にも様々な形で取り入れて来ましたし、木の冬囲いや支柱などにも使っています。もちろん、竹ざおとして広い用途に使って来ました。

竹串や楊枝、竹箸、竹かご、ざるなど、竹細工製品は食卓まわりにも多いですし、竹トンボに竹馬、釣り竿や竹刀(しない)など、子供に馴染みの深いものもあります。提灯や和傘、団扇、筆、杖、笛など、竹が部品として使われている製品も多数あります。竹が豊富なアジアの国ですから、ごく自然なことなのかも知れません。

ところが、竹がほとんど分布していない、北米大陸のアメリカでも竹を上手く利用しようとしている人がいます。その利用法は、なんと自転車のフレーム材料です。ニューヨークのブルックリン地区に、“Bamboo Bike Studio”という工房を開いている、Marty Odlinさんと、そのグループです。

Bamboo Bike
Bamboo Bike Studio


機械工学やデザイン、植物学などそれぞれ得意な分野を生かし、友人と手作りの竹製フレームの自転車を製作しています。既に60台ほど製作していますが、今年7月からは、一般の人向けに自分用の自転車を竹で作るという教室を開催し、部品代と合わせて10万円ほどの参加料にも関わらず、300人もの申し込みがあったそうです。

ヨーロッパや北米には竹林がほとんどないと言いますが、全く無いわけではありません。材料となる竹は、隣のニュージャージー州の住宅地の中にある竹林に自ら伐採に行き、無償で分けてもらっています。竹の表面を加熱処理し、水分を蒸発させ乾燥させるなどの行程を経て、必要な強度や防水性能などを実現しています。

接着にはエポキシ樹脂やカーボンファイバーのテープを使うなど、施行錯誤を重ねた製造方法は、全くのオリジナルなのだそうです。基本的にはオーターメードで、乗る人の寸法に合わせてフレームの形状を図面に起こし、それを元に竹と金属パーツなどを組み合わせて完成させます。独自に基準をつくって安全性にも配慮しています。

おりしもニューヨーク市では、8億円の予算を投じて400キロに及ぶ自転車レーンや6千カ所にのぼる駐輪場を設けるなど、自転車利用推進策が進められて来ました。自転車通勤をする人は、以前の1.5倍に増えたとされています。クルマ社会アメリカでも、自転車に関する関心が高まっている背景があるのは間違いありません。

自転車がエコとして注目される上に、さらに環境に優しい竹製というところが、一部の人にアピールしています。竹なので振動吸収性に優れて乗り心地がいいなどの特徴もあるはずです。でも、それだけではありません。実は、この竹自転車製作教室の参加費のうち部品代を除いたおよそ半分は、途上国支援に充てられるのです。



もともと自転車を自作したいと考えていたOdlinさんは、金属加工の難しさから竹で自転車をつくることを思いつき、施行錯誤を始めたのは2年ほど前だと言います。ちょうどその頃、ニューヨークのマンハッタンにあるコロンビア大学に“Bamboo Bike Project”というプロジェクトがあることを知ります。

Bamboo Bike Project“Bamboo Bike Project”は、以前このブログでも取り上げたことがあるのですが、竹の自転車をアフリカで普及させることで、途上国を支援しようという計画です。なぜ自転車が途上国支援になるのか疑問に感じる人も多いと思いますが、途上国では、交通手段がないために、貧困状態から抜け出せない人が大勢いるのです。

自分たちの村に無い場所、それは市場だったり、鉱山だったり、工場だったり、学校だったり、病院だったりしますが、そこへ行くための手段がないことが、貧困状態脱出の大きな障害となっています。せっかく作った農作物を出荷したり、鉱山や工場へ働きに行ったり、学校へ通ったり、病院に治療に行くことが出来ないのが原因です。

飲料水や生活用水を得るために、往復何時間もかかって徒歩で水を運ぶ必要がある人たちもいます。生存のための基本的なことに大きな時間をとられるなら、それだけでも貧困状態を脱するのは困難です。そうした途上国の人々にとって、安くて燃料費のかからない自転車は、移動手段、運搬手段として大きな力となるのです(下の関連記事も参照)。

Bamboo Bike Project竹という素材を使い、値段を下げることが人々に大きな恩恵となるだけでなく、竹自転車の製造や販売が産業として雇用や所得を生みます。竹の自転車を手作りする工場なら大きな初期投資は必要ありません。手工業として、かえって先進国に対する競争力もあります。さまざまな観点から、途上国支援にうってつけなのです。

このプロジェクトを知ったOdlinさんは、さっそく創始者の教授と連絡を取り、ボランティアとして参加します。その1年後には同大学に助手の職を見つけて働き始め、“Bamboo Bike”によって、少しでも多くの途上国の人を助け、そのことによって「世界を変える」という夢に向かって走り続けているのです。

“Bamboo Bike Studio”の竹自転車教室は、そのための資金調達手段でもあります。この趣旨に賛同して参加しくれた人々に竹自転車の作り方を指導しながら、一方で更に優れた竹自転車や、その製造方法を改良するため試行錯誤を繰り返しています。竹の自転車を製作する人は他にもいますが、あくまで途上国支援のツールなのです。

Bamboo Bike Projectこの秋には西アフリカのガーナで工場が立ち上がり、一台5千円ほどで年間2万台の竹製自転車を供給する計画になっています。ガーナではインドや中国で製造される普通の自転車も売られていますが、一台1万円ほどと、現地の人にとっては高い値段です。半額になれば、普及も進むと期待されています。

ちなみに、竹というと、アジア独特のオリエンタルな素材のような気がしますが、サハラ以南のアフリカ中部でも竹は豊富なのです。この安く大量に手に入る竹を有意義に使わない手はありません。Odlinさんは、技術部門の責任者として実際にガーナへも行き、現地の人に製造方法をレクチャーしています。

竹製自転車はガーナの人たちにも好評を得ているそうです。このプロジェクトを考えたのが、竹が身近な日本人ではなくアメリカ人だったことは、少し残念な気がしないでもないですが、日本の竹製品にも劣らないような、うまい竹の利用法として、まっすぐに伸びていってほしいものです。


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日本では、竹からバイオエタノールを生産してクルマの燃料などに使おうという研究も始まっています。コストをはじめ技術的課題も多いようですが、竹で自転車をつくってしまうほうが手っ取り早く、結果として、より温暖化対策に貢献する部分もありそうな気がします。

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この記事へのコメント
昔知っていた畜産農家の主人が、ついに竹箒を作るコツを見つけたと言っていました。何本か自作して市販品のような形には出来なかったけれど、とうとう竹を束ねていく時のある法則を発見してうまく作れるようになったそうです。

「過熱」じゃなくて「加熱」ですね。竹製品で曲げる目的以外に加熱するのはあんまり無いですね。もともとある程度硬いからかな。竹槍は切っ先を硬くするために油を塗って焙るといいますね。
Posted by 前カゴランドナー at November 26, 2009 12:55
前カゴランドナーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今は激減してしまったそうですが、竹ぼうき職人ならではの技があるみたいですね。昔から、農閑期に作られてきたのだと思いますが、長い間に独特の工夫が積み重ねられてきたのでしょう。
誤字というか変換間違いでした。ご指摘ありがとうございます。
青味の残る竹が茶色くなるまでガスバーナーで熱すると、甘い香りが漂うのだそうです。竹の糖分が抜けるのでしょう。これによって殺菌や防腐になり、防水性や強度が増すということのようです。
Posted by cycleroad at November 27, 2009 22:24
 
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