August 31, 2010

架空の自転車を作り出す動力

夏休みに、一緒に映画を見に行った親子も多かったのではないでしょうか。


今年の夏、ファミリー向けの映画では、借りぐらしのアリエッティが話題だったようです。ご存じスタジオ・ジブリの作品です。あの宮崎駿監督の作品ではないので、そのぶん注目度は劣るのかも知れませんが、さすがジブリ映画で、何週も興行収入一位に輝くなど人気は相変わらずです。

ジブリ映画については、私が今さらここで語るまでもないでしょう。宮崎駿監督は、スタジオジブリの映画について、良質の子供向けの映画をつくることを目指していると語っていますが、大人が見ても十分楽しめます。今や世界的にも評価が高い、日本を代表するアニメ作品であることは間違いありません。

私はまだ今回の作品を見ていないので何とも言えませんが、おそらく今年の夏は、床下が気になって仕方のない子供が大勢増えたはずです。ジブリの作品は、子供に夢を与える素晴らしい作品だと思います。大人でも、その作品の持つ世界観に引き込まれる人は多いのではないでしょうか。

Kiki's Delivery ServiceKiki's Delivery Service

宮崎駿監督が、世界的な評価を確立するに至ったのは、『魔女の宅急便』からだと言われています。ユーミンの歌うテーマソングと共に印象に残っている人も多いでしょう。当時の日本の劇場用アニメ映画の興行記録を更新した作品です。英語版では、“Kiki's Delivery Service”として翻訳され、世界中で親しまれています。

さて、この映画に出てくる乗り物と言えば、魔女の空飛ぶ箒ですが、実はユニークな自転車も登場しています。ペダルをこいで、ハンドルの前に取り付けられたプロペラを回転させて進む「プロペラ自転車」です。自転車の前に大きな風車をつけたような格好をしています。

Kiki's Delivery Service

物語に出てくる丸メガネの、「とんぼ」という愛称の少年が乗る自転車です。空に憧れて、飛行クラブに所属しており、空飛ぶ絨毯やら、人力飛行機作りなどを研究しています。たしか、翼はまだ製作中という設定でした。この自転車で2人が空を飛ぶシーンも出てきます。

なんとも夢のある自転車ですが、なんとこの自転車を実際に作ってしまった人たちがいます。その名も「プロペラ自転車同好会・Ghiblistone(ジブリストン)」のメンバーです。製作過程なども公開されていますが、それを見る限り、アニメの中の自転車を忠実に再現するのは、普通の自転車を作るより、かなり大変そうです。

プロペラ自転車同好会、ghiblistone.iinaa.netプロペラ自転車同好会、ghiblistone.iinaa.net

もちろん、人が乗っても大丈夫なように強度を出さなくてはなりませんし、細かい仕組みが不明な部分を解析しながら製造する必要もあります。素材加工の技術も欠かせません。アニメの自転車を忠実に再現しようという情熱もすごいですが、技術力も相当なものです。

実は、それもそのはず、この同好会は東京工業大学で鳥人間コンテスト用の機材を製作していた人たちなのです。しかも、2002年の大会で優勝したメンバーだと言います。なるほど、本当の空飛ぶ自転車に挑戦していた学生さんだったら、このくらいの製作は十分可能なのでしょう。



鳥人間コンテストに優勝してしまって、次はどうしようかという話になった時、このプロペラ自転車を再現することを思いついたと言います。熱烈なジブリファンもいたようです。考えてみれば、この魔女の宅急便も1989年の作品ですし、彼らは皆、言わばジブリで育った世代ということなのでしょう。

走行しているところを見ると、何でもないように見えますが、あくまでプロペラの起こした風の推進力で走っています。普通の自転車とは、だいぶ走行感覚が違うはずです。乗り手の前にプロペラがあって、自分に風が当たってしまうので、かなりパワーをロスするような気もしますが、意外に速度が出ています。



ペダルから伸びたチェーンは、プロペラにつながっているわけですが、原画では、途中でなぜかチェーンがクロスしています。おそらくアニメーターにしてみれば、深い意味はなかったのでしょうけど、そこまで忠実に再現されています。個人的には、三鷹の森ジブリ美術館に展示してもいいくらいの出来に見えます。

実用性という意味では、限りなく低い自転車です。たとえ翼をつけても飛ぶわけではありませんし、道路を普通に走行しているだけでも、こんな大きなプロペラが回っていたら、周囲には凶器になりかねません。それでも、架空の自転車を現実のものにするという夢を実現してしまった彼らの情熱には脱帽です。



無駄と言えば無駄かも知りません。しかし、そんな無駄が、あらたな発想や新しい価値の創造につながっていく可能性を秘めています。合理性とか効率といった言葉とは対極にあるのが、ジブリ映画の描く世界です。世の中には、無駄や遊び、余裕といったものも大事と教えてくれている気がします。



宮崎駿監督も、手塚治虫などの先人の漫画に大きく影響を受けた一人だと言います。おそらく、アニメ関係に限らず、鉄腕アトムなどを見て育った人たちが、今、さまざまな分野の技術者として、ロボットの開発をしていたり、宇宙開発に携わったり、いろいろな「もの作り」の最先端の現場で働いているのでしょう。

同じようにジブリ映画は、これからも多くの子供たちに夢や情熱を与えていくに違いありません。空を飛ぶ自転車が出来るかどうかはわかりませんが、この夏映画館に足を運んだ大勢の子供たちの中からも、新しい夢の自転車を作り上げるような人が出てくるかも知れません。


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夏休みも終わりで、さびしい気分の子供も多いでしょうね。暑さだけは相変わらずですが..。

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もちろん気球と組み合わせるならば、空飛ぶ自転車も実現可能だ。


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この記事へのコメント
はじめまして。遅レスですみません
いつも楽しく拝見させて頂いております

動画にもある『魔女宅』の自転車のシーンは日本アニメの中でも屈指のシークエンスだと思います
『茄子』よりも焦点を1つに絞っているため「自転車をこぐ」動作がじっくり味わえる(気がする
ちなみにその原画を担当されたのと同じ方が『老人Z』という作品の中で青年がロードで走るシーンも描かれてます(一瞬ですが
書いてて思い出しましたが『東京GF』でも自転車のシーンをやってます

「トンボの自転車」素晴らしいですね!一度乗ってみたいなぁ
Posted by cosak at September 11, 2010 00:02
cosakさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いえいえ、遅レスなんてことはありません。後からでも大歓迎です。検索サイトから来られたのか、ずいぶん前の記事にもコメントして下さる方もたくさんいます。
なるほど、そうですか。ずいぶんアニメや映画にお詳しいようですね。単に自転車が出て来る場面は多々あるのでしょうが、やはり、作り手の思い入れによって、印象は大きく違ってくるのでしょう。
私も乗ってみたいです。同じペダルをこぐという動作なのに、それがダイレクトにタイヤに伝わらないというのが、どんな感覚なのか、試してみたいですね。
Posted by cycleroad at September 12, 2010 23:37
 
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