September 09, 2010

渋滞と関係なく渋滞を減らす

通勤通学にバスを使っている方も多いと思います。


公共交通機関がバスしかない地域はもちろんですが、鉄道網の発達した都市部でもバスは重要な公共交通です。鉄道と連携して、または補完する形でバスの路線網が広っているおかげで便利に移動出来ます。最寄駅へ出るために、毎日利用しているという方も多いはずです。

運賃も比較的安いですし、バス停は短い間隔で設置できるので、歩く距離が少なくて助かるということもあります。ただ、路線によっては本数が少なくて待ち時間が長く、使い勝手が悪いとか、目的地に直行するとは限らないので時間がかかるなど、欠点もあります。

中でも大きな弱点は、時間通りに来ないことがあるという点でしょうか。都市部では、どうしても渋滞などで時間通りの運行が難しくなります。急いでいる通勤時間帯に限って道路の渋滞も激しいですから、イライラすることも多いに違いありません。

電気バス鉄道のように専用の軌道があるわけではないので、道路渋滞の影響を受けるのは致し方のないところでしょう。中には、朝の通勤時間帯に限って、レーンを一つバス専用にしている場所もありますが、どこでも出来るわけではないので、多くは一般のクルマと混ざって渋滞に並ぶことになります。

渋滞で到着時間が読めないところを嫌って、路線バスを敬遠する人もあります。その結果、利用者が減って採算が悪化すれば、本数が減らされたりすることになります。すると、使い勝手が悪化し、また利用者が減るという悪循環に陥ります。

他に手段がなくてバスを必要としている人もいるわけですから、公共交通を維持するため利便性を高め、利用客を増やし、採算性を向上させなければなりません。そのためにも、定時運行の確保が不可欠になってくるわけです。運営主体の自治体やバス会社にとっても悩ましい問題です。

この悩みは、急激な経済発展を続ける中国でも同じです。近年、自家用車の数が急激に増えた都市部では、深刻な渋滞が発生するようになっています。北京などでは、ひどい大気汚染の原因にもなっています。そこで、路線バスの定時運行を確保するために考え出され方法は大胆です。

Straddling bus

なんと、バスをトンネルのような形にして、一般のクルマの上空を通そうというのです。画像を見ただけでは、何かのターミナルか車庫のようにしか見えませんが、これがそのまま動くわけです。他のクルマが走っている車線の上を、他の車両を跨ぐ形で走らせようというアイディアです。

よく映画やアニメの中に、渋滞に遭遇すると、そのタイヤを支える部分だけが伸びて車体を持ち上げ、他車をまたいで走行するという未来のクルマが出てきたりします。上の写真とそっくりの未来の乗り物が走る光景も見たことがあるような気もします。突拍子もないアイディアですが、それを本当に実現しようと言うのです。

大きな2階建てバスの2階の部分にだけ座席があり、1階部分はトンネル状になっていて他車を跨ぐ構造です。1車両に300人、連結すれば一度に1200から1400人乗れるという大きさです。高さはバス自体が陸橋や街灯などをくぐれる高さ、4メートルから4.5メートル程度になっています。



トンネル部分、1階の開口部の高さは2メートル程度となりますので、トラックなどの背の高い車両は、バスが接近した時に、他のレーンに車線変更しなければなりません。動力は電気なので排気ガスも出さず、平均時速は40キロ、最高速は60キロです。

これによって、「下の」道路が渋滞していようと関係なく、時間通りに走行することが出来ます。考えようによっては、バスの車体構造を見直すことで、道路に専用軌道を設けたのと同じ効果が得られることになるわけで、定時運行には効果的なやり方です。

確かに中国は、都市によっては道路が広いですし、あるいは実現可能かも知れません。広い幹線道路であれば、理屈の上では十分に実現可能でしょう。新しい道路も建設ラッシュですが、あらかじめこのシステムを加味することも考えられます。

Straddling bus

奇抜な構想に見えますが、中国ではインフラ整備が追い付かないくらいにクルマの台数が急増しています。急激に深刻化する渋滞に対処する、手っ取り早い公共交通であるのも間違いないでしょう。渋滞を回避する一方で、このバスの採用によって渋滞を2〜3割減らすことが出来ると見込まれています。

地下鉄などを建設するには、長い期間と大きなコストがかかります。しかし、このシステムであれば、地下鉄の1割ほどの費用で同等の輸送力を確保できます。停留所などの必要な施設の建設期間もずっと短くてすみます。むしろ現実的と言えるのかも知れません。

休止時間帯は停留所に停めておいても他車の通過を妨げないので、別に巨大な駐車場も必要ありません。電力は停留所などに設置された接点から供給されます。周囲の車両の高さを検知して警告するシステムなども備え、道路脇に設置されたレールやラインによって自動運転することも構想されています。

Straddling bus交差点を曲がる場合には、信号によって周囲のクルマを止め、右左折することになります。ちょうど路面電車だけ別の信号に従って運行されるような感じでしょうか。連結されたバスが曲がる様子は、むしろ路面電車に近い動きと言えるかも知れません。

停留所も、道路脇に設けられるタイプだけでなく、道路の上の陸橋のような停留所へ、このバスの天井の開口部から乗り降りするアイディアもあります。万一の事故の際に非常用脱出口も考えられています。動画を見ると、バスと言うよりもはやモノレールか何か、新交通システムといった雰囲気です。

“Shenzhen Hashi Future Parking Equipment Co., Ltd”という中国の会社が今年の5月、北京の技術展で披露した構想ですが、早ければ年内にも建設を始め、来年中にも北京の門頭溝区でパイロット運行の形で具体化しようとしていると言います。高度成長する国ならではのダイナミックさです。

考えようによっては、普通のクルマより上、陸橋の高さとの間の部分は、利用度の低い空間と言えます。高さのあるトラックやバスは利用しますが、その割合は限られます。そうした高さのある車両は、別の車線を通らせることで、この利用度の低い空間を使おうという考え方です。

このシステム、日本でも導入出来ないものでしょうか。中国の「またぐバス」は、幅は6メートルと道路の2車線分ほどあります。この大きさのものを日本で導入出来るのは、道路の広さから言って、かなり限定されるでしょう。でも、半分の1車線分くらいなら、導入出来る場所も広がります。

日本でも東京都心などでは2階建てバスが走っています。千葉の幕張メッセ付近などでは、連結バスも走っています。普通のバスを2台連結したくらい長いパスです。途中で折れ曲がるようになっていて、実際に右左折時には折れ曲がります。



それを考えれば、ある程度、場所は限られるにしても、2階建ての連結バスだって走れるでしょう。その1階部分は空洞にしたって、いけるはずです。少し、車幅を広げて、車線一杯くらいにすれば、中国の「またぐバス」の半分、1車線版が出来るでしょう。ただ、1車線分だと、またがれるほうにも圧迫感がありそうです。

そこで、下を通るのは自転車にするというのはどうでしょうか。つまり、2車線以上の道路の1車線分を自転車レーンとし、その上に「またぐバス」を通すわけです。レーンを立体的に有効活用出来ます。妄想と言われそうですが、案外面白いかも知れないと思うのは私だけでしょうか。

バスも定時運行出来て、自転車レーンも確保できます。歩道を通らないことで、歩行者との事故も減り、クルマと自転車の事故も減るに違いありません。雨の日は、常にバスの下を走ろうとする自転車で賑わうかも知れません(笑)。またぐバスと自転車、どちらも渋滞と関係なく移動出来る一方で、渋滞を減らす効果が見込めます。

IT技術は発達しても、相変わらず「都市」が国家の経済をけん引しています。世界でも、日本でも、依然として都市は人口を引き寄せ、膨張しています。都市はどんどん高層化し、集積度を増し、効率を高めていく一方で、渋滞は世界共通の悩みです。ビルが高層化しているのに、道路は低層のままです。

せいぜい高架道路が部分的にかかる程度です。都市が高層化する中で、道路については、その立体的な活用は相対的に低いのが現状です。「またぐバス」だけが回答ではありませんが、今後は、道路の上空空間の利用も考えるべきなのかも知れません。


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ちなみに、今月20日はバスの日だそうです。たまには、のんびりバスの旅に出かけるのもいいかも知れませんね。

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この記事へのコメント
またぐバスでは土建屋があまり儲からないので日本では高架か地下路線になるんじゃないでしょうか。

連接バスなら20年あまり前、サンパウロの路線を走っていて幾度も乗りましたよ。案外日本製だったかもしれませんけど。ほかに普通のバスやトロリーバスも見ました。二階建てはサンパウロで走っていたかどうか記憶にないですが。

ブラジルのバス路線で変わっているのは、ある路線が廃止されるとそれは永久欠番になって二度と使われず、新しい路線には新しい番号が振られるのでサンパウロなどでは4桁か5桁になっていました。

あと交通関係で変わったところではとてもトラフィックハンプ、つまり住宅街や交差点に進入する車両に減速させるための低いカマボコ形に盛り上げた舗装が普及していたことです。
Posted by 読者 at September 10, 2010 22:08
読者さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、そうかも知れませんね。最近は財政的な問題もあるので、低予算でいいと思いますが、安全性うんぬんということで、ボツにされそうです。
ええ、海外では結構普通に走っていたりしますね。日本では規制が厳しいので、数えるほどしか走っていないようですが..。
それは面白いですね。同じ番号が使われないのは、紛らわしくなくていいですが、4ケタ、5ケタになるとは、相当に廃止や改変が多いのでしょうか。
ハンプも国によっては、結構採用されているようですね。やはり、クルマの速度を制限する、クルマ優先ではないという姿勢の現れということなのでしょう。
Posted by cycleroad at September 10, 2010 23:22
跨ぐバス、下の車両と事故った時に怖そうです。2階建てバスのオープンカーも、車外に放り出されそうで怖いです。2階建てバスには乗った事は有りませんが、首都高を走っているのを見るとかなり最高速度位の慎重な運転です。

路面電車専用の信号があるのなら、自転車専用の信号も欲しいです。一方通行の所には有りますが、左折車が多い所で、左折車を一時止めて自転車だけ直進出来る様にして欲しいです。
Posted by ジャムおばさん at September 11, 2010 06:05
幕張の連結バスをよく利用しています。

09年からだったか、新しいメルセデス製のちょっとオシャレな連結バスが投入されています。

シートの配置や形がなかなか不思議で楽しいバスです。

自転車で走っているとバスに抜かれる時って凄く怖いですが、道に迷った時は逆に良い目印になってくれます。

仰られているようなバスが出来たとして、その下を走るのは怖い気がしますし、バスの速さで走るのって大変かも。

でも皆がこうやって交通システムを考える場がいっぱいあると、きっといつか現実になる良いシステムが出てきそうですね。
Posted by エルナン at September 12, 2010 12:42
ジャムおばさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、それを想像すると怖い感じがします。ただ、本当に設置する気になれば、いろいろな安全装置を設けることは可能だと思います。
2階建てのオープンは、シートベルトの着用を言われるのかも知れませんね。私は何度か2階建てバスに乗りましたが、目線が高いだけで、普通のバスと、そうは乗車感覚は変わらないと思います。
国によっては、自転車専用の信号があります。中にはスクランブル交差点で、自転車専用に信号で、縦横無尽に横断できる信号まであります。日本では、まだ交通体系が、そこまでいっていませんね。
Posted by cycleroad at September 12, 2010 23:47
エルナンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私も何度か利用したことがありますが、たまになので、そのたびに面白い動きが楽しめます。
確かにバスは、停留所に止まるぶん、どうしても自転車と抜きつ抜かれつになったり、交錯したりして怖い場合がありますね。
おっしゃるように、想像すると怖い部分がありますが、なんと言っても、あの形なので、それほど速いスピードにはしない気がします。
実際に中国で運用が始まれば、渋滞で悩む都市は多いですから、導入するところも出てくるかも知れません。またぐバスも進化していくかも知れませんね。
Posted by cycleroad at September 13, 2010 00:04
面白い発想ですね。
皆があれこれ考える事でいつか良いシステムが出てくる。
エルナンさんのご意見に私も賛成です。
そして記事によっていつも考える機会を与えて下さるcycleroadさんに感謝感謝です。
Posted by 大阪のオバチャン at September 13, 2010 09:18
大阪のオバチャンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、全くそんなことに頓着しない人が多い中、今の交通システムの現状に疑問を持ち、いろいろ考えることには価値があると思います。
少しでも多くの市民の関心が集まることで、問題がクローズアップされ、それに疑問が集まり、議論が起きることで、交通システムが、よりよいものへ改善されていくことを期待したいものです。
いえいえ、私など大したことは出来ませが、そう言っていただけるのは光栄です。ありがとうございます。
Posted by cycleroad at September 13, 2010 22:19
 
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