September 12, 2010

荷物を運ぶ自転車へのニーズ

白物家電という呼び方があります。


ご存じのように、家の中にある電化製品のうち、冷蔵庫や洗濯機、炊飯器といった生活に密着した家電製品を指します。最近は必ずしも白ばかりではありませんが、一般的に白っぽい色の製品が多いため、こう呼ばれます。毎日の生活や家事には欠かせない身近な家電製品のことです。

ダイソンの掃除機エアコンなどもそうですし、必ずしも白のイメージではない掃除機や扇風機、電子レンジといった製品も、白物家電に含まれることになります。製品としては開発競争が終わって成熟し、いわゆるコモディティ化しているので、メーカーによって大きな違いがないのも白物家電の特徴と言えるでしょう。

メーカーが違っても、製品の機能的にはあまり変わらないので、消費電力をアピールするか、付加価値を売りにするか、後は価格で競争するくらいしかありません。大手家電メーカーは既に製造から撤退しているものもあります。差別化しづらく、一般的に利幅の少ない商品ということになります。

映像や音響機器、コンピュータやゲーム機など、生活と言うより趣味や娯楽のための電気製品、白物家電に対して黒物家電と呼ぶこともある製品群と比べると、メーカーとしてのうまみが少ないのは間違いないでしょう。ただ、中には、そうした白物家電の世界でも、新しい価値を見出そうと革新を目指すメーカーもあります。



イギリスの企業、ダイソンもその一つです。紙パックを使わないサイクロン式掃除機を初めて開発した会社として知られています。最近では、羽根のない扇風機を売りだして話題となりました。掃除機の紙パックや扇風機の羽根が無いと言うのは、他の製品とは明らかに一線を画します。

ダイソンの扇風機ただ、革新的とまで言えるかどうかは意見の分かれるところかも知れません。私は使ったことがないので何とも言えませんが、掃除機は従来方式と一長一短との意見もあります。扇風機も、今までにないスタイルには驚きますが、評判はイマイチという話も聞きます。機能的な不満や日本人の感性に合わない部分もあるようです。

斬新な製品を出せば売れるという単純なものではないのが難しいところですが、技術的にも成熟した白物家電の世界での革新を目指していることは確かでしょう。価格競争に終始するだけでは、新しい進化が起きる可能性すら生まれてきません。新たな価値を生み出そうとする挑戦には、大きな意義があります。




さて、そのダイソンが新しいデザインを発想する次世代のエンジニアを育てるために設けているのが、ジェームスダイソン賞、“James Dyson Award”です。そのエントリー作品の中に、ちょっとユニークな自転車がありました。“BIQUATTRO”と題された3輪車です。

見ていただければ単純明快ですが、必要な時に荷台を広げる電動アシストの3輪車です。今まで3輪車と言えば、空でも荷台がありました。しかし、この“BIQUATTRO”は、必要のない時にはたたんでおき、必要な時にだけ荷台を広げて使うという、言われてみれば、とても自然なデザインです。

作者は、人々がすぐ近くのショッピングセンターであってもクルマで出かけるのを見て、少なくともその理由の一端は荷物にあると気づきました。しかし、今ある一般的な自転車は、重い荷物を運ぶのに、全く適していません。そのように設計されていないのですから当然です。

BIQUATTRO,www.jamesdysonaward.orgBIQUATTRO,www.jamesdysonaward.org

自転車に連結するトレイラーを使う手もありますが、トレイラーは折りたためたとしても、大きくてかさばるのか難点であり、保管場所にも困ります。その点、重い買い物袋でも手軽に運べる3輪車は便利です。容積は150リットル、重さは40キログラムの荷物でもラクラク運べます。

でも、荷物を載せない時にまで、荷台が広げてある必要はありません。走行しやすさの点でも、駐輪や保管のしやすさの面でも、そのほうが優れています。一方、荷物を載せる時には、後輪を左右に広げることで安定します。シンプルですが、非常にリーズナブルなデザインと言えるでしょう。

ほかに、デザインするにあたって気をつけたのは、男性向きとか女性向きに偏ることなく、男女問わず乗れるデザインにすることです。また高齢者向けなどと対象年齢を絞らない、汎用性の高い、若い人でも年配者でも乗れるデザインを目指したと言います。誰でも乗れて、誰にでも役に立つ自転車です。



考えてみると、シティサイクルや三輪車など、生活のアシや運搬手段として使う自転車は、白物家電に似ているかも知れません。生活に欠かせない自転車ですが、機能的には成熟して差別化しにくく、メーカーによる違いが少ない点、あとは価格競争くらいになっているという点もそっくりです。

一方のスポーツバイクのほうは、性能やデザイン、素材などにこだわった、高価でマニアックな部分もある趣味の自転車です。映像や音響機器など、趣味や娯楽のための電気製品と通じる部分があります。シティサイクルが白物自転車なら、スポーツバイクは黒物自転車と言えるでしょう。

黒物自転車のほうは、毎年新しいモデルが発表されます。性能が争われ、素材が工夫され、デザインが練られ、新基軸が提案されています。対して白モノ自転車、ママチャリをはじめとするシティサイクルには、あまり大きな変化は見られません。3輪車にしても、ほとんどデザインは変わっていません。

BIQUATTRO,www.jamesdysonaward.orgBIQUATTRO,www.jamesdysonaward.org


価格競争に巻き込まれた白物自転車には、メーカーとしても旨味がないのは確かでしょうが、“BIQUATTRO”のような工夫の余地は、まだまだ眠っているような気がします。中でも、荷物の運搬を考慮した自転車というのは、特に日本では未開拓の部分が大きいと思います。

その意味で、白物自転車の世界でも、新進気鋭のメーカーの革新への挑戦を期待したいものです。生活に密着した自転車に革新が起きれば、多くの人に影響を及ぼします。新しいコンセプトの登場によって、自転車の活かし方が変わり、人々の暮らし方が変わる可能性が、まだまだ埋もれているような気がします。


FOREVER 21 Japan


白物家電も、最近は猛暑やエコポイントのおかげもあって好調のようです。自転車の買い替えにもエコポイントを付けて欲しいものですね。

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この記事へのコメント
ダイソンの掃除機の方は犬、とくに和犬のように定期的に毛が抜け替わる犬種を室内飼いしている家庭では強く支持されているようです。
たぶん吸引力の強力さのためと、毛をため込んでも吸引力が落ちないためだろうと思います。(URL参照)

それらの犬では年二回、抜け毛を集めるともう一・二匹の犬が出来そうなくらい抜けます。外飼いでは年二回ですが、室内で飼うと空調の影響で一年中だらだらと抜け替わりが続くそうです。
Posted by 横着サイクリスト at September 13, 2010 11:54
こんにちは、初めまして。私は鹿児島で最近健康のために自転車に乗り始めた初心者です。なかなか面白い自転車ですね。社員にこういう自由な発想を奨励しているのはトヨタやホンダに近いものがありますね。市場に出したら売れそうな気がします。これからもちょくちょくお邪魔しますね。
Posted by moumou at September 13, 2010 12:02
この風船の動画は面白いし、こんなことをするなんてびっくりです。確かに今までの扇風機ではこんなことできませんね。
先日初めてこの扇風機を見ましたが「なぜ風が来るのかな?」と興味をひかれました。
今までにないものを作るというチャレンジ精神、素晴らしいなと思います。
この電動自転車もどこにバッテリーが?、モーターが? 後輪の車軸はどうなっているのかなど、興味シンシンです。
Posted by トンサン at September 13, 2010 17:42
掃除機の好みについては ダイソンに代表されるサイクロン派と 紙パック派に別れるようです。
細かくて軽い埃の多い状況では サイクロン方式はダストカップのゴミを捨てる際に埃が舞い上がってしまい、
それを吸い込むと大変なことになるようです。
紙パックの方はゴミがたまったパックをそのまま捨てればいいので 埃の舞い上がり派少ないでしょうね。
サイクロン方式は吸引力が落ちない、と宣伝していますが 細かい埃のある場所ではむしろ紙パックより
早く吸引力が落ちるように思います。(排気フィルターが目詰まりしやすい)またパワーを落とした静穏
運転がサイクロン方式は出来ないですね(パワーを落とすと ゴミを分離する遠心力が十分に得られなくなる)。
常にフルパワー運転ですので 別室で家族が寝ている時や深夜などは使うのが躊躇われます。
欧米の場合靴のまま室内に上がり込むので 泥や砂のゴミを掃除する、飼っている動物の毛を掃除する、など
比較的重たい(比重の大きい)=遠心分離しやすいゴミが多いのでサイクロン方式が歓迎されるのでは
ないでしょうか。

さて話変わって荷物運搬自転車、むしろ子供を乗せる自転車についてですが、なぜ日本の自転車メーカーは
「二輪車」にこだわるのでしょうか? 「三輪車」の方が転倒の危険はずっと少なくて 子供を乗せる場合は
安全度が高いように思えるのですが。三輪車と言っても 車輪幅を狭く作れば 角を曲がる際もそれほど
運転しにくくはならないと思います。子供を乗せたり降ろしたりする際の安定度も三輪の方がずっと良いと
思われるのですが。速度は出しにくいですが、子供を乗せた状態で「高速スポーツ走行」をするお母さんは
滅多にいないでしょうし。(でも一度だけ 歩道を爆走する危険なお母さんを見ました。歩行者にとっても
乗せられている子供にとっても とても危ない光景でした)
Posted by 隠居@川崎 at September 13, 2010 19:51
ダイソンは画期的な商品を出しているとは思いますが、サイクロン式掃除機は音がうるさかったですね。

三輪車とはまた変わった話しです。
荷物運搬に三輪車を使うのは、安定性もとれていいかもしれません。
しかし、三輪車で街中など走るのは気が乗りません。
こういった自転車を好む人がいるから作りだされたのかもしれませんね。
Posted by ウルティニア at September 13, 2010 21:31
横着サイクリストさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、そんな理由もあるんですね。少なくとも、紙パックでないことがメリットという人もいるということですか。
ペットブームとは言え、室内でそうした犬種を買っている人がどれだけいるのか知りませんが、新しい製品によって、新たな需要が喚起されたり、今までと違う市場が広がったり、今まで有力な顧客層でない人から支持を集めたりすることもあるのでしょう。
愛犬家には、有り難い掃除機の登場だったのかも知れませんね。
Posted by cycleroad at September 13, 2010 22:59
moumouさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
自社の社員によるコンテストではなく、社外の一般の学生などに広く応募を呼び掛けている賞のようです。あくまで、会社の社会的な貢献活動の一環という位置づけなのでしょう。
確かに一定のニーズは見込める自転車だろうと思います。
ぜひ、またお越しください。
Posted by cycleroad at September 13, 2010 23:03
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おっしゃるように、この動画はインパクトがありますね。発売当初、世界的にも話題を集めた動画のようです。
なんでも周囲の空気の流れを作りだし、モーターによる風の15倍の風を起こすという話です。
私も詳しい機構はよく知りませんが、扇風機なんて、風が起きればいいと考えがちですが、新しい革新を目指そうという心意気は評価されてもいいのかも知れません。
“BIQUATTRO”の細かい仕組みは、よくわからないのですが、確かに興味深い自転車ですね。
Posted by cycleroad at September 13, 2010 23:13
隠居@川崎さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私は使ったことがないのですが、革新的で画期的な掃除機かと思えば、必ずしもそういう面ばかりではないようですね。
紙パックが無い分、手入れが大変だとか、実はパワーが小さく、従来製品よりもワット数が高いとか、音が大きいとか、いろいろな話も聞きます。
「吸引力の落ちないただ一つの掃除機」などと宣伝していますが、厳密にはそんなことはなく、本国では、そのフレーズは差し止めだそうです。
日本の生活ににあっていないとか、日本人には重くて使いにくい、あるいは日本人の感性に合わないという話も聞きます。
しかし、このダイソンの製品により、他社もサイクロン式の新製品を出すなど、停滞した掃除機市場を活性化させたのは間違いないのだろうと思います。

そうですね、3輪や補助輪付きの子供乗せ自転車も販売されているのですが、あまりシェアは高くないのは確かでしょう。
私もよくわかりませんが、3輪とか補助輪付きなんて..という偏見、固定観念もあるのかも知れません。
ママチャリをベースに、いろいろアレンジした自転車はありますが、逆に言うと、あまり見慣れない自転車は人気が出ないということもあるのでしょう。
あまりにもママチャリスタイルが大多数を占めるため、その他の自転車は、何かまがい物のように見えてしまうのかも知れません。
そのあたりの許容範囲を広げ、偏見や固定観念を打ち破る必要もあるのかも知れませんね。
Posted by cycleroad at September 13, 2010 23:43
ウルティニアさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
やはり、うるさいですか。むしろ、サイクロン方式を取り入れて、後から製品を出した日本メーカーのほうが、静音性だとか、軽さだとか、日本人の好むツボを抑えていて、上手く製品化している部分があるのかも知れませんね。
確かに、走行性能的には、当然劣る部分もあるでしょう。普通に乗るぶんには、乗りたいと思える自転車でないのは仕方がない部分だと思います。
自転車の用途、あるいは乗り方のうち、何をメインにするかによっても、自転車の性格は変わって来ると思います。
人によって、あるいはニーズによっても、何を魅力的と感じるかも変わってくるに違いありません。
こういった自転車を好む人は、やはり少数派だとは思いますが、発売されてみれば案外便利と人気が高まるかも知れませんね。
Posted by cycleroad at September 14, 2010 00:03
こんにちは。
この3輪自転車、わずかに後輪がハの字に傾いてるんですね。面白いです。琵琶湖に浮かぶ、とある島では道が狭く、いたるところで3輪自転車が活躍していると聞いたことがあります。
私事ですが、電動アシスト付き3人乗り自転車を半年ほど使わせてもらっていました。子供2人を運ぶのに助かったのはもちろんですが、合間に買い物で荷物を運ぶのにも大変重宝しました。特に、後座席に2リッターペットボトル×6本のケースを載せてシートベルトを締めると、非常に収まりが良かったです。
Posted by fu_r at September 14, 2010 00:13
fu_rさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
沖島ですね。クルマが1台もない小さな島なので、必然的に自転車が島内の交通手段という島、私も知っています。
当然距離があるわけでもなく、道も細いので、スピードを出せる自転車より、荷物を運べる自転車として3輪車が選択されるのも、自然なのでしょう。
そうですか。電動アシスト付きなら、特に重宝でしょうね。専用に開発された子供乗せ用の3輪車も、当初は出足も鈍かったものの、徐々に売れ始めているようですね。やはり、試してみたら、専用車は快適、いろいろと便利ということなのでしょう。
荷物を運ぶ3輪車にしても、試してみないと、その便利さが実感できない部分があるのかも知れません。
Posted by cycleroad at September 14, 2010 20:46
 中村輪業社様の三輪自転車を除いて、大手市販の三輪自転車は荷物乗せられる量が二輪に比べて多い感じがしません。二輪自転車に後ろカゴつけたのと変わりません。
 宮田工業社様の幼児2人同乗自転車の試作品では後輪二輪の三輪自転車でしたが、市販されたのは2輪自転車でした。
 三輪自転車なら6歳に達しても違法で無い可能性もあり三輪自転車探しました。後輪二輪自転車には、椅子取り付けられる荷台が有りません。何処のメーカーも同じでした。ハブダイナモもついていませんでした。
 仕方なく前二輪の三輪自転車買いました。馴れないと二輪自転車よりも乗りづらいです。6歳でも乗れる合法的二人乗り自転車、職業柄厳密に法律守りたい警察官のお父様やお母様に売れそうな気がします。
Posted by ジャムおばさん at September 15, 2010 04:32
ジャムおばさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、あまり積載量を増やすことに主眼は置いていないように見えます。ただ、大して変わらないようにも見えますが、安定しますし、重心が低くなる分、多く載せられるのではないでしょうか。
大手メーカーの思惑は、私にはわかりませんが、やはりマーケティングの面から発売するか決めていると考えるのが常識的なのではないかと思います。
いわゆる白チャリの走行ですら怪しいものですし、警察官と言っても、そこまで厳密に法律を守ることを考えているか疑問です。
警察官の私用だけをターゲットに商品を開発するとも思えません。そうした商品が無いことの是非は別として、製品が出ないのは、やはりニーズが少ないということなのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at September 15, 2010 23:56
 
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