September 21, 2010

折りたたみ自転車の形と価値

消費者庁が折りたたみ自転車について、注意を喚起しています。


共同通信が配信し、各紙が報じていますが、京都新聞から引用します。


折り畳み自転車で重傷事故2件/ハンドル折損、消費者庁

事故が発生した折り畳み自転車消費者庁は17日、中国から輸入した折り畳み自転車のハンドル部分が折れるなどして転倒する重傷事故が2件発生したと発表した。

事故原因ははっきりしておらず、メーカー名や製品名は公表していない。原因を調べている。

消費者庁によると、自転車は車輪が小さな「Aタイプ」といわれる小径車。

千葉県で5月、50代男性が自転車で走行中にハンドルの軸が折れ転倒、あごの骨を折った。神奈川県では8月、60代男性が自転車で走行中にハンドルが下がり転倒、頸椎を損傷した。(2010年09月17日 京都新聞/共同通信)


今回の件に限らず、格安な折りたたみ自転車は多数出回っており、しばしば破損する事故が起きています。中には1万円前後というような格安の製品もあり、値段から言っても粗悪品が含まれている可能性が高いのは容易に想像がつくのですが、購入してしまう人は後を絶たないようです。

ある程度、自転車のことを知っている人なら判断がつくでしょうし、見向きもしないのではないかと思います。ただ、今どきママチャリなども格安で売られていますし、折りたたみ自転車が1万円前後でも、とくに違和感を感じない人も多いのでしょう。

こうした格安で粗悪な折りたたみ自転車の存在は、消費者を危険に陥れるだけでなく、折りたたみ自転車、フォールディングバイクのイメージも悪くしています。真面目に良質な製品を製造しているメーカー、中でもブランド力の弱い中小メーカーにとっては甚だ迷惑な話だろうと思います。

さて、そんな折りたたみ自転車ですが、その多くは小径車だと思います。なんと言ってもスペースをとらず、持ち込びや収納などの点に優れています。ただ、一生懸命こいでもスピードが出ないし、ハンドルの安定感や直進安定性も低く、乗っていても楽しくないと感じている人も多いかも知れません。



残念ながら、あまり性能の高くないものも多いわけですが、小径車は、そんな自転車ばかりではありません。有名なアレックスモールトン(上の動画)など、優れた小径のスポーツバイクもあります。世界中に熱心なファンがいる人気の自転車で、値段は高いですが、下手な普通のサイズの自転車より、よっぽどスピードも出ます。

小径車だからと言って、決して重くて遅いものばかりではないわけですが、理屈的には、小径であることは、スピードを出す上で不利な要素です。高価なスポーツタイプの小径車の場合、通常のタイヤサイズの自転車より速かったりすることもありますが、それは比べる条件が同じではないからです。

タイヤの細さ、自転車本体の重量、パーツの違いなど、さまざまな要素が影響します。ペダルの力の伝わり具合や空気抵抗などもあります。もちろん乗り手の脚力にもよります。こうした条件が全く一緒だったとしたら、小径車は、やはり小径であるぶん不利になります。

タイヤの径が小さいということは、タイヤの周長が短いということです。同じ速さの場合、小径車のほうが、より多くタイヤが回転していることになります。すると、そのぶん軸と軸受との摩擦が、相対的に大きくならざるを得ないわけで、純粋に物理的に考えると不利になるのは自明です。

もちろん、折りたたみの機構のぶん重くなりますし、折りたたみ部の強度を保つためにも重量が増します。そのあたりを、パーツの材質や性能等でカバーしようとして値段が高くなるわけです。タイヤが小さいと、漕ぎ出しは軽いですが、慣性モーメントも相対的に小さくなるので、スピードを維持するのも不利になります。



確かに速い小径車もありますが、速いロードバイクには敵わないのは実感としてわかる部分だと思います。小径車の面白さや可搬性を支持する人がいる一方で、やはりどうしても運動性能が劣るので、持ち運ぶ場合にも折りたたみの小径車ではなく、普通のロードバイクを分解して運ぶ人は少なくありません。

輪行袋に入れて運んだり、クルマのラックなどにロードバイクを取り付けて運んでいる人を見ることもあります。折りたたみの小径車であれば、もっと運びやすいでしょうが、大きな荷物を抱えることになったとしても、運びやすさよりも運動性能を選ぶということでしょう。

考えてみると、フルサイズの自転車で、かつ折りたたみという自転車がもっとあっても良さそうなものですが、そう多くはありません。やはり折りたたみにするなら、持ち運ぶことを考えて、タイヤの小さな自転車の方がコンパクトになって有利という考え方になるのでしょう。

Fubi, www.fubi.comFubi, www.fubi.com

でも、北欧はフィンランドのUlf Laxstromさんは、普通のサイズの自転車を折りたたみにしたいと考えました。折りたたみ自転車でありながら、サイズは普通の自転車と全く変わらず、走行性能的にも普通の自転車と変わらない折りたたみ自転車を目指しました。

Fubi”と名付けられた自転車です。“Fubi”は、“Future Bike”の略です。動画を見ていただくとわかりますが、折りたたみと言うより、組み立て式といった感じです。自転車のフレームを、それぞれのチューブごとにパーツにすることで、折りたたみ、もしくは組み立て式を実現しています。なるほど巧妙な方法です。



この折りたたみ方は斬新です。ありそうで無かった形と言えるでしょう。言われてみれば、フレーム剛性的にも、よくあるフレームの途中を分断して折り曲げる方式より、よっぽどリーズナブルに思えてきます。なんで今まで無かったのか不思議なくらいです。

実は、Ulfさんがストックホルム留学中に自転車の盗難に遭ったのがきっかけで、最初は盗まれないよう、普通の自転車を屋内に収納するため、コンパクトにすることが目的だったと言います。それで、小径車ではなく普通のサイズだったわけです。この折りたたみ方式は、10以上の特許を申請しているそうです。

Fubi, www.fubi.comFubi, www.fubi.com

これまでにも、分解・組み立て型の自転車はありました。普通のサイズの自転車で組み立て式というのもありました。今では、あまり流通していないと思いますが、大きく二つくらいにフレームが分かれる形で、これほど小さくたたんで運ぶことは出来ませんでした。

この“Fubi”の場合、組み立てには多少時間がかかるものの、そのコンパクトさは大きな魅力でしょう。フラットハンドルを採用していますが、ハンドルまでたためます。コンパクトにたためて、しかも走行時はフルサイズという、折りたたみ自転車敬遠派にも支持を広げられそうな折りたたみ自転車です。

Fubi, www.fubi.comFubi, www.fubi.com

まだ、折りたたみ自転車は発展途上と言うべきなのでしょう。新しい形、新しい価値を模索する挑戦は少なくありません。折りたたみに限らず、自転車は日々進化しています。自転車に、ただ安さを求めるべきではないこと、実際に安さを追求している自転車ばかりではないことを、もっと広く人々に知って欲しいものです。

それが、粗悪な格安品を市場から淘汰し、健全な自転車市場を形成することになります。思わぬ破損で重傷を負うのも防ぐことにもなるでしょう。自転車は、安ければ安いほどいい日用品ではなく、高ければ高いだけのことはある道具であり、精密な機械であり、命を乗せる交通手段であることを忘れないで欲しいものです。


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検事が証拠を改ざんするとは前代未聞の事件です。罪名は証拠隠滅のようですが、検事がやったら、単なる証拠隠滅罪では誰も納得できないでしょう。地に堕ちた検察の信用を、どうやって回復しようと言うのか、今後が注目されます。

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この記事へのコメント
いつも拝見させていただいております。
日本でフォールディングバイクが売れているのは、マンションなどで玄関に収納できることも大きな理由のようですから、大径の折畳みは普及が難しいかもしれません。
輪行するヒトは、折畳みによる携帯性よりも、組み立て時の乗車感を優先するでしょうし。
ウチにも何故か折畳み自転車が1台あります。それ以外に家族全員用のMTB4台と子供用自転車、フレーム2台、さらに本日、私のロードバイクも加わりました。
自作モペットと併用して、ロードバイクで自転車の楽しみを追求していこうと思っています。
Posted by くりぞう at September 22, 2010 20:29
ロードバイク一辺倒から折りたたみに目が向き始めた私としては看過できない話です。
安いのは大歓迎ですが、品質がついていかない製品なんてとんでもない。
そんなものが大量投入されてしまえばメーカーだけでなく自転車を愛する人間全てに大変迷惑な話です。
自転車ってそんなもんでしょ、と思わせて自転車の能力、本来の魅力が軽んじられてしまわないために
微力ながら日々せっせと布教活動に務めようと思います。

我が家では折りたたみが増えGIANT MR4F,ブロンプトンS6Lを所有するまでになりました。
ただコンパクトでおき場所に困らないだけではなく、帰りは電車で(MR4Fはちょっと難しいですが)とか、途中まで車で行って、などと
自由な使い方が出来るので行動範囲がぐっと広がりました。
この魅力を一人でも多くの人が知るきっかけになりますように。
Posted by 大阪のオバチャン at September 23, 2010 05:15
ホント。「命を乗せる交通手段」としての認識に欠け、本来の魅力が軽んじられるのは悔しいですね。
愛情と知識、バランスよい価値観がセットで流布していきますように、私も微力で弱気ながら、ここの記事も読みながら、
まずは家族(特に事業仕分大臣)の説得から・・・

ようやく夏が終わりそうでホッとするけれど、正義はどこへ行ってしまったのやら。
Posted by 七九爺 at September 23, 2010 07:12
こういう部分はしっかり国も規制を入れて国民を守らないといけないんですけどね。最近国の姿勢が国民を守るという意識が低いように思います。規制の締めるべきところと緩めるべきところの判断がおかしいですね。
Posted by moumou at September 23, 2010 08:15
普通車の折りたたみ、気に入りました。
性能面で期待できるのではないかと思います。

車に乗らない私としては、輪行が全てなので、こう言うタイプが、早く量産されることを願っています。
Posted by ヨッシー at September 23, 2010 12:47
こんにちは

今日、この問題の折りたたみ自転車とよく似た自転車に乗ってる人をみました。対向車線ですれ違ったので声をかけようか迷ったのですが、結局何もしませんでした。
雰囲気的に観光で来た人のようでしたが、何事もなければ良いんですけど・・・

まだまだ粗悪品の自転車事故は続きそうですね。
Posted by さすらいのクラ吹き at September 23, 2010 15:02
大変納得しながら読ませて頂きました。私も体調の関係で小継車が必要になり、1月にVenturaStdを購入したのですが、最初の二月ほど乗った後殆ど乗る機会が無く先日手放しました。

と言いますのも、記事内に書かれているように運動性能が劣るという部分が、やはり致命的でした。確かに小径車の中では走るタイプを選び輪行性能も良かったのですが、そう輪行する機会もなく、ロードタイプに乗っていると「漕いでいてしんどい」のです^^;まあ目的が違うので同じものを求めるのは間違っているのはわかっているのですけれど。

最後に紹介されている折畳式の自転車、発売して欲しいですね。
Posted by nori at September 23, 2010 20:38
くりぞうさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、フォールディングバイクを買っても、結局は全くたたまない人が多いとも言いますから、小径車のホイールベースの短さが収納に便利ということで、小径車を使う人も多いのでしょう。
タイヤまでたたむわけではないので、普通のロードバイクの車輪を外して運ぶのと比べ、どれだけ便利かと考えれば、乗車感も含め微妙でしょう。
それは、にぎやかですね(笑)。収納面を考えて小径車を購入する人も多いと思いますが、なんだかんだと言って台数が増えてしまう人も多いかも知れませんね。
Posted by cycleroad at September 23, 2010 22:58
大阪のオバチャンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おっしゃる通りです。ただ、格安のママチャリしか乗らない大多数の人にとってには、自転車なんて所詮こんなものという固定観念があるのは否めないでしょうね。そういう人がスポーツバイクの値段を見れば、ナンセンスと考えるでしょう。
当然、自転車本来の能力とか、楽しさを知らないわけですが、そうした人が自転車に興味を持つようになるには、やはり周囲の人の誘いとか、口コミの力が大きいと思います。
私も、そうした知り合いに、ことあるごとに勧めたりしますが、そんな小さな布教活動が、世間の自転車への理解を深め、世論のコンセンサスを形成し、自転車に乗りやすい社会の実現につながっていくのではないかと考えています。
折りたたみ自転車も、単に可愛らしいからというだけで買って、折りたたんだことがない人も多いようですが、せっかくの折りたたみなんですから、電車やクルマに持ち込んで、自宅の近くでないところで乗って欲しいですね。おっしゃるように、そういう経験が、また一つ自転車の魅力に気づかせることになると思います。
Posted by cycleroad at September 23, 2010 23:01
七九爺さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
たいしたスピードが出ていなくても、突然フレームが破損したりすれば、転倒は免れないでしょう。多少なりともスピードに乗っていたとすれば大怪我になり、打ちどころや転倒して場所によっては、という話ですね。
確かに、こうした事例を知らない人は多いですから、財務を掌握している人に対する、予算増額交渉には有効な材料かも知れません(笑)。
Posted by cycleroad at September 23, 2010 23:06
moumouさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
国内企業ならPL法などもありますが、格安の輸入車が野放し状態なのが実態でしょうね。
ただ、今まで野放しだったのに突然制限するのは、たとえ安全上の規制であっても、輸入自転車に対する非関税障壁と捉えられかねません。相手国との関係で、微妙な部分はあるでしょう。
それでもEUなどは格安輸入自転車に反ダンピング関税をかけたりしていますから、毅然と対応する手もあると思いますが、政府が緩慢なのは、やはり一般消費者、あるいは世論がこうしたリスクに、あまりに鈍感というのが反映しているのでしょうね。
Posted by cycleroad at September 23, 2010 23:11
ヨッシーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
設計的なことはわくわかりませんが、ジョイント部分の構造がしっかりしていれば、チューブごとに分かれていても、問題ないのかも知れませんね。
動画だけではわかりませんが、フレーム剛性的にも問題にならないとしたら、折りたたみ自転車の有力な選択肢の一つして、広く普及しても不思議ではありません。
広く世界的に普及するための障害は、むしろパテントなどの問題かも知れません。
Posted by cycleroad at September 23, 2010 23:15
さすらいのクラ吹きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
この問題の自転車は、本来の開発元の製品以外に、多数の模倣品が氾濫しているようです。パーツが手に入れば、誰でも組み立てられますので、模造品メーカーも1つや2つではないと思います。
実際に模造品と見られる格安の製品が多数売られています。
その全ての模造品に問題があるわけではないと思われますし、消費者庁の調査でも、原因が判明したわけではありません。使い方や、その他固有の問題があった可能性もあります。
遠目には正規品かどうかも判別不可能ですし、注意出来なくても仕方が無いでしょう。
粗悪品、特に折りたたみ自転車の粗悪品には他の製品も含めて、破損事故が起きていることは、多くの人に知っておいてほしいですね。
Posted by cycleroad at September 23, 2010 23:19
noriさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうでしたか。折りたたみ自転車は、いろいろと便利そうに思えて購入しますが、結局は折りたたまなかったり、持ち運ばなかったりという例は多いようですね。
ロードバイクと並行して乗っていると、やはり運動性能的に不満が出て来ることも当然あるだろうと思います。
まあ、それでなくても、いろいろなタイプの自転車が欲しくなってしまうというのはありますし(私もそうですが)、折りたたみ自転車の特性について理解していても、しばらく乗ってみないとわからないこともあるでしょう。その時の自転車生活のパターンによっても変わってくると思います。
その点から言えば、発売されたら買ってしまう人は、案外多いかも知れませんね(笑)。
Posted by cycleroad at September 23, 2010 23:49
近所の教習所で卒業祝に折りたたみをプレゼントしていたんですが、フレームのつなぎ目が子どもが絵の具を塗りたくったように溶接されてました・・・
事故防止を教える場所で粗悪自転車をプレゼントしたらダメだと思いました
Posted by 職人気取 at September 24, 2010 08:26
職人気取さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
商店街の福引の景品とかにも多いですね。今どきですから、ほかの商品と同じように、破損の可能性なんて考えないのが普通なのかも知れません。もし問題が起きても、責任を問われるのはメーカーだということもあるのでしょう。
確かに教習所は、ちょっとまずいですね。そうでなくても格安品のプレゼントというのは、どうかと思いますが..。
Posted by cycleroad at September 24, 2010 22:28
 
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