December 26, 2010

レースには悪魔が棲んでいる

気がつけば、もう一年半も経ちました。


世界に衝撃を与えたマイケルジャクソンの死が2009年の6月25日でしたから、およそ1年半前ということになります。“King of Pop”と称され、多くの人に愛された世界のスーパースターでした。人類史上最も成功したエンターテイナーとしてギネスにも認定されています。

その死は、今でも世界中の多くの人に悼まれているわけですが、ここにも風変りな自転車に乗ってマイケルジャクソンを追悼すると共に、その偉大な功績を讃えている人がいます。その自転車、タイヤはゴールドのディスク、フレームはマイケルが住んでいたネバーランドの入り口の門という凝りようです。

Didi Senft, www.tourteufel.de

この変わった自転車に乗り、スリラーの衣装のマイケルジャクソンの格好をしている人は、何を隠そうロードレースファンにはお馴染み、ツールドフランスなどの中継に出てくる、あの通称「悪魔おじさん」ことディディ・ゼンフト“Didi Senft(Dieter Senft)”さんなのです。

実は、ゼンフトさんがマイケルに扮してこの自転車に乗っているというのは、今年4月頃に話題になりました。私もその時に取り上げようと思っていたのですが忘れてしまい、前回のクリスマスの話題に、ゼンフトさんのクリスマス仕様の自転車を載せたことで思いだしました。

Didi Senft, www.tourteufel.deDidi Senft, www.tourteufel.de

悪魔おじさんについては、だいぶ前にも記事にしたことがあるのですが、その後もいろいろ変わった自転車を製作するなど話題になっているので、あらためて取り上げてみました。ただし、話題と言っても、日本では有名ではありません。ツールドフランスなどの海外の自転車レースを見ない方は、まずご存じないと思います。

このディディ(ディーター)ゼンフトさん、一言でいえば名物おじさんです。自転車ロードレース、特にツール・ド・フランスの熱狂的なファンで、ツールの悪魔(El Diablo:悪魔)などと呼ばれています。大会期間中、沿道に独特の格好で出現するのがよく目撃されます。

ツール・ド・フランス以外にも、ジロ・デ・イタリアやブエルタ・ア・エスパーニャ、そのほか各地で開かれるメジャーな大会、有名レースの沿道に出てくることもあります。ロードレースファンには広く知られており、大会の時は、彼の登場を期待している人も少なくありません。

Photo by fixedgear,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Kuebi,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

悪魔おじさんというあだ名の通り、悪魔の格好をしています。尻尾のついた赤いタイツに黒いマント、頭には角の生えた帽子、そしてフォークのような三又の槍を手にしています。その派手な姿が各地で目撃されたり、テレビの中継に映るのが名物のようになっているのです。ある意味、選手より有名かも知れません。

日本にもプロ野球やサッカーなど、各地の球場で熱狂的に応援する名物おじさんがいたりします。オリンピックで派手な衣装で日本を応援するおじさんが話題になったりもします。そうした名物おじさんのロードレース版です。ただ、この悪魔おじさん、その知名度は世界レベルです。

日本での自転車ロードレースの人気はまだまだですが、ヨーロッパではサッカーと二分するほどの人気があります。中でも毎年7月に行われるツール・ド・フランスは、世界中180カ国以上でテレビ中継されるほどの大イベントですから、おそらく、ただの観客としては世界一有名な人でしょう。

Photo by Kuebi,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Didi Senft, www.tourteufel.de

ロードレースの応援以外に、ときどき変わった自転車を製作することでも知られています。サッカーのワールドカップの時には、タイヤがサッカーポールで出来た自転車を製作しました。日本でも通信社から画像が配信されたりしていますから、ご覧になった方もあるかも知れません。

そのほかにも、ギターの形をした自転車とか、巨大な自転車、長い自転車など、ユニークな自転車を発表して楽しませてくれます。マイケルのファンだったのかどうかは知りませんが、今回はマイケルをテーマに自転車を製作し、ヨーロッパの13カ国を訪れて披露したそうです。



このディディ・ゼンフトさんはドイツ人で、本業は自転車のフレームビルダーです。道理で、こうした変わり種自転車を作る技術があるわけです。これまで100台ほどのユニークな自転車を製作しており、ドイツには、それを飾った博物館まであると言います。

製作したユニークな自転車の中には、世界一巨大な自転車など、ギネスに認められた自転車も7種類ほどあるそうです。ふだん、フレームビルダーとして仕事で自転車を作っているのに、さらに趣味でこうした自転車を作るところを見ても、かなり熱狂的な自転車好きであるのは間違いないでしょう。

ツールだけでも3週間にわたってフランス全土や周辺国を転戦します。悪魔おじさんは衣装と三又槍だけでなく、変わり種自転車や、時には巨大な自転車をクルマで牽引したりしながら、ヨーロッパを駆け回ります。彼に限らず、ファンにとってはお祭りに参加するようなものでもあるわけです。



実はゼンフトさん、元はアマチュアのロードの選手でした。ドイツのクラブに所属して練習に励んでいましたが、残念ながらナショナルチームに入るような成績は上げられませんでした。今58歳ですが、選手時代から40年以上もロードレースに関わってきた筋金入りのファンなのです。

自転車ロードレースに、クリテリウムという街中のコースを周回する形式のレース、もしくはステージがあります。そのレースの最終ラップを、“Red devil's lap”という古典的な表現をすることがあるのだそうです。日本語で言うならば、「魔の最終周」といった感じでしょうか。

日本で人気のあるマラソンや駅伝などの中継でも、レース中に信じられないようなアクシデントや番狂わせなどが起きることがあります。理屈では説明できないようなレース展開に、「魔物が棲む」という表現が使われたりしますが、おそらくそれと同じような感覚なのでしょう。

Didi Senft, www.tourteufel.deDidi Senft, www.tourteufel.de

選手としてだけでなく、ファンとしてもロードレースをナマで感じたくて、ゼンフトさんは他の多くのファンと同じように沿道で観戦していました。1993年頃、ファンとしての応援に物足りなさを感じていた彼は、中継のアナウンサーが使ったこの表現にインスピレーションを得て、赤いデビルになりました。

赤い悪魔は、選手が通ると雄たけびを上げて追いかけます。でも、もちろん走路を妨害するようなことはありません。彼はこのパフォーマンスをするため、観客の多いポイントは避けるなどの工夫をしています。出現予定ポイントより前の道路に、予告のための三又槍のマークをペイントするなど、細かい演出もあります。

他の観客も悪魔おじさんが大のレースファンであることを知っており、ファンはレースを盛り上げる悪魔が出てくるのを楽しみにしています。ゼンフトさんは行く先々で一緒に記念撮影を求められる人気者です。彼も今では、この悪魔が自分の個性の一部になっていると語っています。



一日に何時間も選手を追いかけて走ったり、とび跳ねたり突進したりしています。数時間前に到着して道路にペイントしたりするのも全部自分でやります。大変そうですが、好きでやっていることですし、筋肉痛などになることもないと言います。ただ、さすがに最近は多少息が上がるようになってきたのだそうです。

山岳ステージで天気が悪かったりすれば、寒いこともあるはずですが、その場合は衣装の下に目立たぬよう厚着するなどして、お馴染みのコスチュームを隠すようなことはありません。三又の槍はレースによって変わり、20種類ほどのバリエーションがあるのだそうです。



シンボルともなっているこの三又槍、基本的にアルミ製です。彼がフレームビルダーであることを思えば、こんな細工は朝飯前でしょう。さらに空港のセキュリティチェック対策などのため、金属ではないプラスチック製のものも持っているのだそうです。

彼の人気、知名度に目をつけたドイツのテレビ局によって、レースのリポーターなどとして起用されたり、スポンサーがつくこともあります。ただ、地続きのヨーロッパ以外で開催される大会やオリンピックなどに、必ずしも行けるわけではないのは仕方がないところでしょう。

Didi Senft, www.tourteufel.deDidi Senft, www.tourteufel.de

変わり種自転車を製作して披露するところを見ても、かなりの目立ちたがり屋のようにも見えますが、話してみると、実は静かでシャイな人だという評判です。にもかかわらず、こうした派手なパフォーマンスが出来るのは、やはり熱狂的なロードレースファンであることがなせる業なのでしょう。

毎年沿道で会うロードレースファンたちをファミリーのように感じており、レースを盛り上げたいという気持ちも強いようです。もちろん、マイケルジャクソンと比べるつもりはありませんが、世界中のファンの前に、お約束のように現れて期待に応えるところなど、彼もまたエンターテイナーと言えるのかも知れません。


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胃腸に厳しい日々が続いています(笑)。ちょっと休ませないといけないですね。

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この記事へのコメント
お久しぶりです。こういう名物オジサンが陰で支えてくれてるんですね。もはやツールドフランスのスターですね。グッズなんかも作れば売れそうですが。フレームビルダーが本職と聞いてなるほどとうなづけました。いつまでも元気で盛り上げて欲しいですね。
Posted by moumou at December 27, 2010 17:24
moumouさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かにレースを盛り上げてくれる存在として、影の立役者と言ってもいいかも知れません。グッズも変わり種自転車を展示しているドイツの自転車博物館あたりでなら売っていそうです。
本職のほうは、あまり有名じゃないですからね(笑)。きっとこれからも盛り上げてくれるでしょう。
Posted by cycleroad at December 28, 2010 23:58
はじめて拝見させていただきました。
お気に入りに登録させていただきました。
今後ともよろしくお願いします。
Posted by サムライ店長 at December 30, 2010 01:13
サムライ店長さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ご覧いただき、ありかどうごさいます。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
Posted by cycleroad at December 30, 2010 23:02
 
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