March 29, 2011

貴重な機会をきっかけとして

自転車が見直されています。


東日本大震災では、被災地でのガソリン不足が依然解消しておらず、救援物資として自転車を送る動きが続いています。ガソリン不足だけでなく、道路の寸断や生活道路に残る瓦礫、津波によるマイカーの逸失、鉄道の不通などにより、移動手段が失われる状況になっていることも背景にあります。

道路が寸断されている沿岸部の移動だけでなく、津波の被害がなかった仙台市の内陸部などでも、通勤などのために市民が自転車を使っています。市内の自転車は売り切れ、自転車屋さんなどはパンク修理に追われているとのニュースも伝えられています。


堺からパンクしない自転車、堺から被災地へ

堺市は23日、がれきが残る被災地の道路でも走れるように特殊な加工を施したタイヤを装着した「パンクしない自転車」150台を宮城県仙台市に送った。

堺自転車製造卸協同組合(武田正理事長)が市の要請を受け、300台を用意。第1陣として150台をトラックに積み込み、仙台市に向けて送り出した。

パンクしない自転車は、通常のタイヤチューブに空気の代わりに樹脂を注入、樹脂が内部でゴム状に固化するため、クギなどを踏んでもパンクしない仕組み。

武田理事長は「ガソリン不足で、被災者は移動に苦労されていると聞く。この自転車が役に立つならうれしい」と話している。(2011.3.23 産経新聞)

石巻市に放置自転車提供、福岡市が70台

被災地支援で自転車1000台寄贈 あさひ

被災地へ自転車50台送る 城陽・久御山民商

被災地に自転車支援 浜松から市民提供の834台

被災地に自転車を 市民が50台集め岩手へ さいたま

修理自転車100台送る

「名チャリ」を被災地へ提供 名古屋市、28日発送







釜石市で額に汗 自転車店フル回転 がれきでパンク続出 釜石

ガソリン不足の中、釜石市でも自転車が大活躍している。ただ、街中はがれきがあふれ、タイヤのパンクが続出。まちの自転車屋さんは修理に追われて大忙しだ。

沿岸部から5キロほど離れ、津波被害を免れた同市新町の「猪又自転車商会」には、パンク修理の依頼が1日に約30件も舞い込む。普段の10倍だ。ガラスの破片などがタイヤに刺さっているケースが多いという。

自転車も飛ぶように売れている。在庫50台は2日で完売し、今も問い合わせが続く。経営する猪又正治さん(76)は「昼ご飯も食べられないほど忙しい。でも構わない。生まれ育った釜石に奉仕したい」と話し、黒ずんだ軍手で額の汗を拭った。(2011年03月26日 河北新報)

自転車修理大忙し 宮城・名取、レジャー施設職員奮闘


余談ですが、パンクの多発については、被災地の路面状況の悪さがあると思いますが、それだけではないような気がします。一般的にタイヤの空気圧をあまり気にしない人は多いと思います。空気圧が適性ならば、多少ガラスなどを踏んでも平気なはずですが、そのあたりもパンクに拍車をかけているように思います。

自転車に乗ってはみたものの、長い距離を走行するのが疲れるという人も多いようです。これも一般的に、足がベッタリ地面につくようにと、サドルが低い人が多いからで、そのサドルを上げるだけでも、だいぶラクになるはずです。こうした知識の不足が、自転車利用を辛いものにしているのであれば残念です。


仙台市で自転車通勤が急増=ガソリン不足で切り替え−仙台

東日本大震災で燃料不足とJRの全面運休が続く仙台市で、自転車通勤が急増している。朝の歩道には自転車がひしめき、事故も増加。自転車販売店によると、震災後は通常の3〜5倍のペースで売れており、在庫切れの店舗も続出している。

通勤ラッシュの25日午前8時。仙台市中心部の道路では自転車が競い合うように走っていた。

自転車に乗るのは高校生以来という男性(37)は40分かけ通勤。「朝から一仕事しているようでつらいです」と話した。会社から自転車を支給されたという女性(25)は「通勤時間は2倍以上だが、適度な運動になっている」と白い息を吐いた。

仙台市立病院によると、震災後の週明け14日ごろから自転車事故によるけが人が増え、地震で生じた道路の亀裂にタイヤを取られる事故などが目立つという。(2011/03/25 時事通信)

少しでもガソリン節約 “休眠自転車”が大活躍

自治体 節約広がる 「照明消し、暖房ストップ」「徒歩や自転車通勤奨励」




首都圏でも地震で広がる「通勤に自転車」

東日本では計画停電の影響で鉄道のダイヤが乱れ、通勤の足が心もとない。

ガソリンも品薄気味で車の利用も難しい。そんなわけで今、通勤や通学用に自転車を購入する人が増えている。(中略)

東日本巨大地震のあった11日、都内のある家電量販店では自転車がその日に売り切れた。その後の計画停電などで今、自転車が、電車や車に代わる足としてにわかに注目を集めている。(後略 2011年3月23日 読売新聞)


首都圏でも自転車は売れています。地震当日に帰宅難民が大量発生し、自転車が売り切れた店もありましたが、その後も計画停電の影響で電車の運行が安定せず、会社まで自転車通勤を始める人が急増していることが背景にあります。ガソリン不足でクルマの代わりに利用している人もあるのでしょう。

さいたま市から中には、不足するガソリンを少しでも被災地に送れるようにと、自転車通勤で協力しようという人もあると言います。被災者の苦労に比べればと、節電や買い物を控える行動と共に、燃料の節約を心がける上でも、自転車が見直されているようです。

以前ロンドンでも、地下鉄やバスが爆破されて多くの人が死傷した同時多発テロの直後、自転車で通勤する人が急増したことがありました。ほかにも、インフルエンザなどの感染症や、戦争などをきっかけにした原油の高騰の影響で自転車通勤が急増したケースもあります。

今回は地震や津波という自然災害でも自転車が活躍することが、はからずも証明された形です。鉄道もすぐには復旧しませんし、道路の寸断や燃料の供給の途絶でバスやクルマも機能しません。そんな中でも、徒歩よりは格段に大きな機動力を発揮する自転車が、貴重な移動手段となっているわけです。

建物などに大きな被害のなかった東京でも、地震で電車が止まると、道路は大渋滞で全く動かなくなり、歩くか自転車くらいしか移動手段がなくなることが浮き彫りになりました。その後、電力不足で鉄道の運行が不安定になったことで、自転車通勤が有力な手段として人々に選択されています。

鹿児島市から今回、環境や健康面などからではなく、被災によって自転車や自転車通勤がクローズアップされるのは、まことに残念なことと言わざるを得ません。しかし、災害時に自転車が当面の生活を支えるための移動に貴重な手段になるという事実は、今後の災害への備えとしても活かすべきでしょう。

あまりに巨大な地震だったこともありますが、ガソリンなどの燃料供給は、物流の効率化が進み製油所や油槽所が集約されていたのも、結果として仇となったと言います。効率的な物流網は、裏を返すと地震や津波などの災害に対して脆弱になっていたのが、今回極端なガソリン不足に陥った一因とされています。

長周期振動などにより、遠く離れた首都圏の製油所のタンクにも火災が発生するなどして、全体の製油能力が大きく失われたのも要因です。タンカーによる海運のための港湾施設が被害を受け、多くのタンクローリーが津波で流されたことも影響しました。私たちの生活を支えるインフラが、必ずしも強固でないのは事実です。

大災難だったわけですが、一方で、こんなことでもなければ、当たり前のようにクルマを使い、自転車に乗る機会など無かった人も多いに違いありません。こんな形で自転車を使わざるを得なくなったのは残念ですが、自転車を使ってみて、案外近いとか、意外に使えるなどと実感出来た人もあったのではないでしょうか。

鶴岡市で城陽市から

被災地の交通は、復旧が進むにつれ、多くは自転車からクルマへ戻っていくでしょう。しかし、化石燃料へ依存している危うさは、災害によるリスクだけではありません。クルマがないと生活が成り立たない地域では、何らかの理由で、化石燃料の供給が不足するリスクも考えておく必要があると思います。

首都圏では、夏に向けて電力不足が懸念されています。計画停電などで鉄道の運行が不安定になれば、今後も自転車通勤をする人は増えたままになる可能性があります。しかし、仕方なく自転車通勤する人も、健康面のメリットなど、乗らなければわからなかったことがあるのではないでしょうか。

浜松市からきっかけが災害だったのは悲しいことですが、自転車の利用や自転車通勤の拡大を通して、省エネについて考えたり、化石燃料への依存や環境への負荷、都市インフラの脆弱性について考える人が増えることも期待されます。自転車のポテンシャルに気付く人も多いに違いありません。

自転車の交通ルールや事故等が問題となることも増えていく可能性がありますが、一方で自転車の走行空間の整備にも目が向けられていくことになるでしょう。今回のことで、自転車を活用しやすい、環境への負荷が少ない都市への進化が促されることを期待したいものです。

クルマの利用を否定するつもりはありません。しかし、そのリスクや脆弱性についても考えてみる必要があります。一連の被災の経験を貴重な教訓とするとともに、エネルギーを使い過ぎている日本人の生活を見直してみるきっかけにしてみてもいいのではないでしょうか。





一向に終息に向かう気配が見えない原発が気になります。経済への影響も、ジワジワ広がっていくでしょう。なんとかおさまってほしいものです。

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この記事へのコメント
自転車が頑張ってる(拍手)。

「必要は発明の母」といいます。
パンクしない自転車はその成果でしょうか?

ガソリンの不足から僕も自転車通勤に移行。
でも、花粉が酷くて喘息が悪化しそうで、一時断念。

ガソリンンも灯油も電気も電話も水も食料も薬も、「あってあたりまえ」、
ではなかった!!!

60年も生きてきた僕でも、やっと気づかされました。
この教訓をいつまでも忘れないでいたいと思います。
Posted by 二浪独河 at March 30, 2011 20:54
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
テレビの被災地の様子にも、自転車が映っていたりします。活躍しているようですね。
パンクしない自転車は、私も展示会などで見たり乗ったりしたことがあります。
ふだん、適正な空気圧で乗っていれば、そんなにパンクするものではないですし、乗り心地や重さが弱冠気になります。
平時に使う人はあまり多くないと思いますが、まさにこういう状況でこそ活躍する自転車だと思います。
電気でも電話でも、いったん経験してしまうと、無いとかなり不便なものはあると思いますが、自転車でも充分な移動だったら、自転車でいいと思います。
おっしゃるように、ふだん当たり前のようにあることのありがたみを感じますね。
Posted by cycleroad at March 30, 2011 23:49
お久しぶりです。青梅在住の自称ツーキニストです。

都心でも多くの"にわかサイクラー"が増えて、歩道もすごいことになっています。
うまく歩行者とクルマとの関係を保たれる環境ならよいのですが、このブログにも以前から歩道と車道の問題を抱えたまま発展が進んでいない状況です。それに加えてこの"にわかサイクラー"の増加によるマナー違反と事故の多発で、こちらも安心して走っていられません。

東北の復興を祈っている立場から見て、復興整備された後は、都心よりもいち早く、自転車が走りやすい環境に生まれ変わっているのかもしれません。
Posted by ざっくばらん at March 31, 2011 17:40
ざっくばらんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、急遽自転車通勤を始めた人の中には、マナーが悪かったり、ルールを知らない人もいるようですし、自転車の交通量が増えたことによる混乱も起きているようですね。
ただでさえ、歩行者との事故の増加などが問題になっているところへですから、今後の動向次第では、その対策も問題になってくるかも知れません。
まだまだ大変な時期だと思いますが、復興して、東北の方々がレジャーとしてサイクリングが楽しめるような状況が、はやく来ることを祈りたいものです。
Posted by cycleroad at March 31, 2011 23:44
こんにちは。

僕も自動車を否定はしませんが、自転車で可能な範囲は、自転車を使うべきだと思います。例えば、欲しい物の下見程度の(荷物が殆ど無い)場合は多少遠くても自転車で充分だと思います(もちろん天気の悪いときは別です)。

ただ、多くの人はママチャリ(シティサイクル)しか乗ったことがありません。ママチャリの走りのポテンシャルは最低ランクなのにそれを知らずしてとても便利な電車やバス、自動車を経験してしまうので、「ママチャリだけが自転車」などの固定概念を持ってしまいます。
それゆえに、「自転車で行こう」とは考えづらくなります。また、いざスポーツタイプに乗ろうとしてもある程度のスピードが安全に出せる道路(自転車専用道路)がきちんと整備されていない点もあるかもしれません。

あと、自転車通勤者が増えればその分自転車の交通ルール・マナーや走行空間について考える人や問題意識を持つ人も増えると思います。地震が元になるのは残念で悲しいことですが、今後自転車の環境が良くなるかもしれません。
Posted by さすらいのクラ吹き at April 02, 2011 19:35
さすらいのクラ吹きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、ママチャリの存在が、自転車のイメージに大きく影響しているのは間違いないでしょうね。ママチャリしか乗ったことがない人が、初めてスポーツバイクに乗ると驚くことも多いと思います。ママチャリと歩道走行が自転車利用の有効性を狭めてしまっているのはあると思います。
荷物があまり運べないというのはありますが、渋滞する都心ではクルマより速かったりしますし、乗り替えや待ち時間を考えると、電車より速い場合もあります。
おっしゃるように、歩道走行していたのでは自転車のポテンシャルを生かせませんし、車道が自転車で通りやすくなっていない場所も多いのが問題でしょうね。
無理に自転車にしろと言うつもりはありませんが、自転車でもいいかなと感じる人は増えているように思いますね。
Posted by cycleroad at April 03, 2011 23:24
こんにちは。どういった形であろうと、自転車のポテンシャル?が見直された形になりましたね。震災の被害者の方、大きく破壊された街に心を痛めていない人は居ないかと思います。今後、復興を前向きに考えた時、都市計画の一環として本格的に自転車専用道を組み込むチャンスという気も致します。東北の復興が、未来都市のスタートであるよう願っております。
Posted by nori at April 09, 2011 15:35
noriさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
まず燃料が不要で、徒歩より大幅な機動力を発揮する、瓦礫の間をすり抜けたり、かついで乗り越えられるなど、災害への強さが見直された感じですね。
インフラも大きく破壊されたわけですし、防災の観点から新たな都市計画が進む際には、生活のアシとして自転車を見直すという視点も取り込んでほしいものだと思います。
Posted by cycleroad at April 10, 2011 22:14
本当に、日本はもっともっと自転車で安全快適に走れる環境整備、道路整備が必要だと感じます。
ご多忙と存じますので、この私への返信は控えてくださってもよろしいです。
サイクルロードさん、あなたは本当に良質な記事を書き続けてくださってます。
これからも無理なくご自分のペースで、よろしくお願いします。
Posted by 佐藤 at May 09, 2011 11:18
佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、圧倒的に足りないので、もっと自転車環境が充実していくといいなと思います。
お気づかいいただき恐縮です。よろしければ、今後もご遠慮なくコメントして下さい。
こちらこそ、よろしくお願いします。
Posted by cycleroad at May 09, 2011 23:52
 
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