July 30, 2011

人類が他の惑星で乗る乗り物

スペースシャトルが退役しました。


今月21日、アトランティスが最後の飛行を終え、ケネディ宇宙基地に着陸、地球へ無事帰還しました。スペースシャトルは過去30年にわたり、宇宙開発のシンボルのような存在であり、まさに宇宙船の代名詞でした。日本でも広く親しまれてきたスペースシャトルは、その役割を終えました。

スペースシャトル計画に幕

30年前、スペースシャトルが登場した時、宇宙ロケットから宇宙船への時代の転換と感じた人も多かったことでしょう。アメリカ航空宇宙局・NASAが威信をかけて開発したシャトルは、宇宙船を使い捨てでなく継続して使うという考え方の元、打ち上げコストも大幅に低減されることが期待されていました。

しかし、帰還後の修理や再整備に莫大な費用がかかり、アポロ計画時代の使い捨ての宇宙ロケットのほうが、かえってコストパフォーマンスがいいという、費用的には皮肉な結果に終わりました。特に耐熱タイルの損傷や脱落が問題となり、悲しい事故も起きました。

登場時は、飛行機のように翼を持つというスタイルが斬新でした。でも、地球へ帰還する寸前のわずかな時間しか翼は必要ないので、とても合理的とは言えません。大気圏突入の際、摩擦による高温にさらされる、耐熱が非常に重要な部分に開閉口を設け、車輪を出さなければならないという設計の悪さも指摘されました。

Next For NASA?スペースシャトル後に、次世代の宇宙船として構想されているのは、アポロ時代とそっくりの円錐形の小さなもので、打ち上げロケットの先端に設置される方式です。結局、その形が一番効率的ということらしく、スペースシャトルのスタイルは、壮大な実験の結果、間違いだったということになるのでしょう。

ただ一方で、宇宙空間へ荷物を運ぶという点では、その高い積載能力から、国際宇宙ステーションの完成のために貢献しました。いろいろ問題はあったものの、アメリカの宇宙開発の一時代を築いたロケットとして、大きな足跡を残したのは間違いありません。

オバマ大統領は、今後の方針として、火星への有人飛行に言及していますが、宇宙ステーションや月面再着陸とはくらべものにならないほど多額の費用が必要になるのは明らかです。大統領は昨年、宇宙開発の予算を増額する方針も示しましたが、財政赤字の問題もあって、その道のりは不透明と言わざるを得ません。

しかし、短期的な予算や計画がどうなるかは別として、アメリカが今後も宇宙開発を続けていくという方向性が変わることはないでしょう。アメリカの宇宙への有人飛行能力が、数年の間ブランクとなるのは仕方ないとしても、NASAには、新たな目標の設定とビジョンを示すことが求められています。

NASA Great Moonbuggy Race, bryancloyd.comNASA Great Moonbuggy Race, bryancloyd.com

ところでNASAは、ロケットの運用や開発など宇宙計画そのものを推進する以外にも、さまざまな事業を行っています。宇宙開発は長期にわたって継続していくプロジェクトですから、スタッフも入れ代わって受け継がれていきます。後任の技術者を育てていくというのも大事な役割です。

新入スタッフの教育ということだけでなく、将来を担うことになる今の学生たちや、その次の世代の子供たちにも、宇宙科学に親しんでもらい、関心を持ってもらい、そして科学者や技術者を目指してもらわなくてはなりません。そうした目的のためのプログラムもいろいろと実施しています。



その中の一つに月面探査車開発コンテスト“NASA Great Moonbuggy Race”があります。高校生や大学生に、ムーンバギーを設計・製作させ、その機能やデザインを競うというコンテストです。そして、その動力は「人力」です。つまり、月面や火星の地面を走行するための人力の乗り物、言わば『宇宙自転車』をつくるコンテストなのです。

その優劣を競うためのコースは実際の月面探査車を開発したテストコースを模して作られており、不整地を含む難コースとなっています。そのコースを走破するため、決められたレギュレーションに沿って、独自のデザインや仕組み、部品を考案するなどして車体を組みあげなければなりません。

NASA Great Moonbuggy Race, bryancloyd.comNASA Great Moonbuggy Race, bryancloyd.com

写真は今年度優勝した作品ですが、パワーの伝達効率や、サスペンションなどの構造上の利点なのでしょう、リカンペントスタイルをベースにしたものが多くなっています。出来あがった作品を実際に走行させる審査の場面では、各グループ、悲喜こもごものシーンが繰り広げられたようです。

学生たちはグループで構想・設計・製作し、出来あがった作品を走行させることになります。このプログラムに参加する中で、技術力や発想力、問題解決能力だけでなく、仲間と協同して遂行する能力やコミュニケーション能力など、得られるものは少なくないに違いありません。

NASA Great Moonbuggy Race, bryancloyd.comNASA Great Moonbuggy Race, bryancloyd.com

なんと言ってもNASAの主催するコンテストですから、学生たちもモチベーションが上がるでしょう。そして、こうして同じ目標に向かい、みんなで努力した経験は、単に楽しい思い出というだけではなく、宇宙開発に対する興味や関心を高めることになるはずです。

NASA Great Moonbuggy Raceもちろん、学生相手のコンテストですから、これがそのままムーンバギー、月面探査車となるわけではありません。しかし、月面探査車はともかく、火星への有人飛行計画となると、これまでの宇宙計画と比べても格段に困難なものとなるのは確実です。なんと言っても、その距離の遠さが比較になりません。

ロケットの燃料の問題もありますから、持っていける荷物の量も相当限られることになるでしょう。限られた物資や使えるエネルギーなどから、火星探査車の動力に人力が採用される可能性もないとは限りません。もしかすると、火星の地面を、人類が最初に走行するのは自転車ということになるかも知れません。

スペースシャトルのような巨大な乗り物、それを実現する巨大プロジェクトと比較すると、笑ってしまうほど小さく、身近な技術ではありますが、案外、『宇宙自転車』が本当にならないとも限りません。宇宙飛行士がペダルをこぎながら火星の地面を走行する姿、見てみたい気もします。





ようやくセミの声を聞くようになって来ました。まだまだ例年に比べて少ないような気はしますが..。

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この記事へのコメント
こんばんは。

将来、輪行で宇宙へ行ける日がくるのだろう。楽しみだ。
Posted by passerby Ω at August 01, 2011 19:43
passerby Ωさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
宇宙へ輪行ですか(笑)。惑星はともかくとして、民間人が宇宙へという時代ですから、夢は広がりますね。
Posted by cycleroad at August 01, 2011 23:56
地球を走るのも飽きたから火星ツーリングにでも行こうかな(笑)
Posted by 職人気取り at August 02, 2011 15:53
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いいですね、火星ツーリング(笑)。しかし、昔の人は、まさか天ではなく地球が動いているなんて思いもよらなかったわけですから、それを思えば、いつのことになるかわかりませんが、ホントに火星をツーリングするような時代が来てもおかしくはないのかも知れませんね。
Posted by cycleroad at August 02, 2011 23:49
こん○○は、出遅れました。

自転車コンペ、NASAはマジだと思います。
どこまで走れるかは地形と脚力と諸装備の重さ次第でしょうが、打ち上げてからでは修復が厄介な電気的トラブルを未然に排せますのでバカにできたものではありません。本記事でも御指摘のとおり現役エンジニア達が定年退職する前にアメリカは次の一手を打たねばならないでしょう、スペースシャトルの苦い経験を無駄にしないために。

松浦晋也「スペースシャトルの落日」はホリエモンの解説が追加収録された増補版がオススメ。同書については賛否両論あるようですが、それは著者を含め多くの人があの翼に未来を夢見てしまった証左ではないでしょうか。また氏は自転車・道路交通の今後について数々の提言をされています。概ね貴Blogと軌を一にしておりますが、ソレまでには無いものを新規に作る、更なる近代化が全てを解決すると取れるものが目立ちます。私は全てのケースには当てはまらないものの街の古さをわざとそのままにしてクルマの往来を緩やかに制限、氏の言う「自転車2.0」が動きやすい隙間をより多く残しておく消極的積極策のほうがトータルコストを減らせると思うのですが。
Posted by alaris540 at August 08, 2011 16:40
alaris540さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いえいえ、後からでも一向に構いませんよ。
実際に採用されるかはともかく、十分に視野に入れているというか、可能性は踏まえているかも知れませんね。
火星にまで行くには、やはり荷物もエネルギーもシビアでしょうから、現地での移動のエネルギーを削るのはリーズナブルに思えます。
確かに、精密機械と違って、修復やメンテナンスなどが容易ということも大きな理由になりそうです。最先端技術を集めたプロジェクトですが、人力で足りるものを人力にするのは、いろいろな面で賢明かも知れませんね。
増補版が出ているのですか。こんど手にとってみたいと思います。科学の粋と、あまりにノー天気にスペースシャトルや宇宙ステーションなどを見ている人が多いのは確かでしょう。
自転車や道路交通のことまで書いてあるのですか。いろいろ教えていただき、ありがとうございます。
Posted by cycleroad at August 09, 2011 23:35
 
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