August 05, 2011

何が回り道で何が近道なのか

辞書で“roundabout”という単語をひくと、いろいろ意味が書いてあります。


ラウンドアバウト、形容詞だと、迂回した、回り道の、遠回しの、といった意味です。名詞だと、回り道、遠回り、円、円形物、円陣などとなっています。後ろのほうに、環状交差点というのも出てきます。環状交差点、日本で言うロータリー交差点のことです。

釧路市にあるロータリー交差点日本だと、鉄道の駅前などが円形のロータリーになっていることがありますが、交差点がロータリーになっているところは、あまりありません。でも、欧米などでは、交差点も丸い形になっていたりすることがよくあります。この丸い形をした、信号のない交差点をラウンドアバウトと呼ぶのです。

従来のロータリー型交差点は、信号がないので、交差点に進入してくるクルマが優先となっています。ロータリー内を走っているクルマは、進入してくるクルマに道を譲らなくてはなりません。一方、ラウンドアバウトの場合は、ロータリー内を走行しているクルマが優先となります。

ラウンドアバウトの標識直線部分から交差点に進入しようとしているクルマは、一時停止するか、徐行するかして、やり過ごさなければなりません。優先される交通がロータリー式とは逆になっています。こちらのほうが、ロータリー内のクルマがスムースに流れて、渋滞しにくいとされているのです。

このラウンドアバウト方式は、普通の信号式の十字路の交差点より、さまざまな点で優れているということで、欧米では広く普及し、数も増えています。必ず交差点でスピードを落とすことになるので、安全性が増すというのが第一の利点です。事故発生率が減少し、事故の被害も大幅に小さくなることが確かめられています。

よく、細い道路の信号のない十字路で出会い頭の事故が起こる場合があります。一時停止を見落としたりするのが原因ですが、ラウンドアバウトならば、直進は出来ないのでスピードを落としますし、交差点内を周回する形になりますから、こうした事故も起きにくくなります。

左側通行の場合、Image by Saperaud,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.右側通行の場合、Image by Romanm,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.←左側通行と右側通行の場合

クルマにとっては、いちいち交差点でスピードを落とさなければなりませんが、待ち時間がないというメリットもあります。交差する方向のクルマが来ないのに、赤信号で待たなくてはならないケースはなくなります。郊外で交通量が少ない場合などは、かえってスムースに走れる場合もあります。右折(海外では左折)するのもラクです。

私も、ドイツやイギリスの郊外などでクルマを運転して、ラウンドアバウトの交差点を通ったことが何度もありますが、意外にスムーズに走行出来ます。郊外の場合はそんなに交差点も多くありませんし、交差点の見通しもよく、クルマや歩行者がいなければ止まらなくていいので、信号がないぶん、快適に感じるくらいです。

roundaboutroundabout

ラウンドアバウトならば、右左折とも同じような形で出来ますし、Uターンだって簡単です。信号がないので電力は不要、そのほか管理費用なども、ほとんどかからないのがメリットです。最近日本では、信号機もLEDに変わりつつありますが、それでも24時間稼働ですし、電気代もばかにならないでしょう。

三叉路であろうと、五差路であろうと問題ありません。信号で複雑な制御をする必要はありません。停車時のアイドリングがなくなり、赤信号で完全に停止してから発進、加速するより、燃料が節約になると言われています。排気ガスによる大気汚染や温暖化ガスの排出が少なくなるという調査研究もあります。

海外の右側通行の例左折も右回りで(海外の例)

もちろん欠点もあります。交差点に十字路より広い面積が必要になりますし、あまり交通量が多くなると、渋滞が各方向に伸びてしまう恐れもあります。都市部の交通量の多い道路には向かないので、イギリスでは、ラウンドアバウトの交差点のほうが多いと言われていますが、主に郊外を中心に設置されています。

日本だと、スピートが出せないとか、まっすぐ走れず面倒だとかドライバーの苦情が出そうです。でも、人間優先、事故防止優先といった観点からすれば、それらは優先されるべきではないでしょう。欧米では、日本のように何でもクルマ優先という社会ではなくなってきています。



信号が無いので当然ですが、ラウンドアバウトでは、歩行者や自転車の横断が優先です。通常、交差点内は見通しがよくなっており、スピードも落としているので、横断者に気付いて、十分に止まることが出来ます。交差点内では自転車を追い抜くことを禁止にしているところもあります。

日本であれば、横断歩道の脇に歩行者が立っていても、最近はなかなか止まらないドライバーが多いと思いますが、欧米では、きちんと止まります。刑事責任や社会的制裁が厳しいなどの理由もあると思いますが、ルールとして、習慣として、それが当たり前になっているのです。



下の動画を見てください。オランダのラウンドアバウトの交差点を映したものですが、どのクルマもきちんと止まっています。逆に、併設された自転車レーンを走行してくる自転車は、ほとんど減速する必要もないほど、優先的に走行しています。当たり前ながら、交通弱者優先の原則が守られています。

日本では自転車の信号無視が問題になります。信号無視を擁護するつもりはありませんが、自転車の場合、なるべく停止したくない、スピードをころしたくないというのがあるのでしょう。なかなか無視する人はなくなりません。一方、オランダのラウンドアバウトでは、自転車は、ほとんど交差点で止まる必要がないのです。



自転車にとって、自転車レーンとラウンドアバウトはノンストップで快適なばかりか、安全でもあります。右左折の場合にも死角になりにくいため、右折巻き込み(日本では左折巻き込み)も起こりにくくなっています。事故が減り、死者や重傷者が大きく減るというのも頷けます。

街路樹やガードレールなどで、車道から死角になった歩道を走行するより、車道から見える部分、この場合は車道上の自転車レーンを走行したほうが、交差点での事故が起きにくいというのも、よく理解出来ると思います。自転車レーンをつくる上での参考にもなるのではないでしょうか。



日本でも、昔はロータリー型の交差点が数多くあったのですが、高度経済成長期に一気に無くしてしまったそうです。道路事情やクルマの通行量など、いろいろな要素が絡んできますし、十字路化を進めてきた経緯に逆行して、今さら日本でラウンドアバウトを導入するのは、簡単ではないと思います。

しかし、ラウンドアバウトに限らず、信号や標識がないと、かえってドライバーは慎重になり、事故が減るという実験結果も出ています。都市によっては信号や標識を減らそうという動きもあります。少なくとも、こうした考え方を検討してみる価値はあります。

ラウンドアバウト設置前ラウンドアバウト設置後←設置前と設置後

ラウンドアバウトにすれば、維持経費も減り、節電にもなります。排ガスも減り、燃費も向上、待ち時間や渋滞が減る可能性もあります。何より安全になるのです。ラウンドアバウトを導入し、信号によらず、交通弱者優先を定着させていくという考え方もあると思います。

交差点の形状を変え、安全のためにクルマがスピードを落とすのを当たり前にし、日本でも真の意味での交通弱者優先を根付かせていくというのは、長い時間がかかることかも知れません。それこそ、回り道のような気もしますが、本当は一番必要なことなのかも知れません。





火星表面に水の流れの痕跡を発見とNASAが発表しました。「コース」によさそうですね(笑)。

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この記事へのコメント
なるほど、ロータリーのメリットは大きいですね。

長く途上国で暮らした経験から、渋滞するほどの車の多さでも、信号がなくても日本よりは事故は少なかったようです。

交差点での事故が多いのはそのせいでは・・・?

日本では、信号が原因で渋滞が起きることもあるのでは?

電気代も無視できませんしね。
Posted by 二浪独河 at August 06, 2011 16:19
こんにちは。

旭川には全国的にも珍しい、大型のロータリー交差点があります。ただ、ここは一般的なラウンドアバウト方式ではなく、入り口には信号機が設けられ国道40号線からの出入りが最優先される少し変わったロータリーです。僕はこのロータリーのルールが良くわからないので、いつも歩道を通るようにしています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%AD%E5%B7%9D%E5%B8%B8%E7%9B%A4%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%BC

事故というのは、相手が確認できない(見えない)場合におこりやすいと思います。そういう点では、信号機がないとより注意しやすくなり、事故防止につながるんでしょうね。
Posted by さすらいのクラ吹き at August 07, 2011 13:48
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
信号があると、頼ってしまうというか、安心してしまい、人の注意力を低下させてしまう部分があるのでしょうね。
信号のタイミングを有機的に調整するようなシステムもあるようですが、交通量にあっていない信号もあるように思います。
交差点の形状を工夫すれば、信号はなくてもいい可能性があるのは確かでしょうね。
Posted by cycleroad at August 07, 2011 23:54
さすらいのクラ吹きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
駅前のロータリーでなくて、これだけ大きいロータリーの交差点は珍しいですね。
進入路が同等でなく、最優先される道路があったりすると、余計にわかりにくくて危ない感じがしてしまいます。地元の人は慣れていて関係ないのでしょうけど..。
そうですね、信号機がなくて注意する利点もありますが、道路を直角に曲がるよりは、いったんロータリー部に入ることで、やや鈍角に曲がるようになるので、歩行者や自転車を確認しやすくなることもあるのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at August 07, 2011 23:59
こんにちは。はじめてコメントさせていただきました。
ツールドフランスの中継などを観戦していると、このラウンドアバウト式の交差点がしょっちゅう出てきますよね。
信号機が不要になるということで、停電などによる交通マヒなどにも有効な気がします。
また、個人的にはロードレース観戦が好きなので、交通規制などの際にも、信号機を止めたりする必要がなく、開催しやすいなどのメリットがあるのかなぁ、と感じていました。
日本では、都市部などの交通量が多い所では、ラウンドアバウト式はなかなか難しいものがありますが、郊外の交差点には導入の余地があるのではないでしょうか。
Posted by あまち at August 09, 2011 12:52
あまちさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
出てきますね。中心部にはオベリスクや銅像などが配置されていたりします。
ヨーロッパは電気のない時代から、馬車が走っていて、交通として制御しなければならなかったこともあり、古い街並みも、そのようになっているのかも知れません。
そうですね、この春の計画停電では、事故も起きましたが、ラウンドアバウトだったら、死者も出なかったかもしれません。
折り返し地点も簡単に作れますね。
欧米でも土地の余裕のないダウンタウンなどは信号式で、郊外だけでなく、都市部でも住宅街はラウンドアバウトだったりします。
日本でも十分導入の余地はあると思いますね。
Posted by cycleroad at August 09, 2011 23:51
こんばんは。
サイクルロードさんの情報収集力に感嘆しながら、いつも楽しくブログを拝見させて戴いております。 
千葉の京成みどり台駅近くにラウンドアバウト方式の五差路がありますが、実にスムーズに車が流れています。
多分、これを信号方式にしたら近くの踏切まで渋滞の列が続いてしまうと思います。 車線は区切っていませんが通常の2車線分の幅があるので、誤って飛び出してきた車に対しても十分余裕を持って回避できます。 こんな優れた交差点をこれからの街作りにもどんどん活用して欲しいものですね。
Posted by MTK at August 20, 2011 21:17
MTKさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
地図で見ると、確かにありますね。スムーズに流れていますか。少なくとも、このくらいの大きさの交差点であれば、日本でも十分有効に機能しそうですね。
まあ、欧米でも日本でも、基本的に同じ人間が同じクルマを運転しているのですから、当たり前と言えば当たり前ですが..。
全国には、交差点で無駄な待ち時間を作るがために渋滞する道路もあると思います。まずは、それを解消するために導入していけば、ラウンドアバウト方式の良さが広く理解されていきそうな気がしますね。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
Posted by cycleroad at August 21, 2011 23:19
こんにちは。

交通弱者優先を定着させるのは重要だが、交通ルール違反を平気で犯す歩行者や自転車の意識改革も重要だ。又、信号無視をする歩行者も厳しく罰するべきだ。
Posted by passerby Ω at August 25, 2011 12:18
passerby Ωさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
法律違反という意味から言えば、本来は歩行者も罰せられなければいけないのでしょうが、現実問題として、いちいち検挙するのは不可能に近いのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at August 26, 2011 23:10
ラウンドアバウトは早期普及させるべきシステムです。
警察天下り企業が信号機を造る手前、難しいのかもしれませんが。

信号停止する車が少なくなれば排気ガスも減って周辺環境も改善されます。停電時も大きな混乱が無いのは良いですね。計画停電時の交通はかなり混乱してましたから
Posted by   at March 14, 2012 23:58
  さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
信号機の利権もありますが、その前にラウンドアバウト自体、日本では馴染みがなく、なかなかそのメリットが理解されず、導入の機運が盛り上がらないのが問題でしょうね。
たしかに計画停電時には信号の問題がクローズアップされましたが、一時的でした。今後も停電が頻発でもしない限り、なかなか廃止の検討まではいかないような気がします。
Posted by cycleroad at March 15, 2012 00:08
 
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