August 08, 2011

断固とした態度を示すことで

リトアニアは、ヨーロッパの北東に位置するバルト三国の一つです。


旧ソビエト連邦を構成していた共和国の中では、真っ先に独立宣言をした国としても知られています。中世のころには、リトアニア大公国としてヨーロッパ最大の面積を持つ国だったこともあるのですが、長い苦難の歴史の中で、周辺の国に併合されたり占領されたりしてきました。

最後に編入されていたソビエト連邦から独立を回復して以降は、民主主義国家として欧州への復帰を目指し、アメリカやヨーロッパ諸国との関係を強化、2004年にEU加盟国となり、NATOにも加盟しています。大統領制を採用しており、ちなみに今の大統領は同国初の女性大統領です。

日本では、あまり知られていないリトアニアですが、同国と日本が友好関係にあるのは、なんと言っても日本のシンドラーと呼ばれた外交官、杉原千畝がよく知られているおかげでしょう。第二次大戦当時、隣国ポーランドからナチスドイツの迫害を逃れてきたユダヤ人に対してビザを発行し、6千人の命を救いました。

Vilnius Old Town, This image is in the public domain.Vilnius Historic Centre, Photo by Wojsyl,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

リトアニアは3千もの湖と太古の森が広がる美しい国であり、首都はヴィリニュスです。ヴィリニュスはヨーロッパ文化首都にも選ばれたこともある、歴史ある魅力的な街で、中世の面影を残す旧市街は世界文化遺産にも登録されています。ほかにも国内に3箇所の世界遺産があります。

旅行ガイドなどを見ると、ヨーロッパの他の都市と同じように置き引きやスリなどを除けば治安は悪くはないが、クルマの運転マナーは悪く、歩行者優先という概念がないので注意するよう書いてあります。しかし、これは他国のことを言えた義理ではないでしょう。日本でも交通弱者優先が徹底しているとは言えません。

さて、そのリトアニアのヴィリニュスで最近問題となっているのが、駐車違反です。運転マナーだけでなく、駐車マナーも悪いのです。当局も違法駐車に手を焼いています。 市長の Arturas Zuokas さんも、違法駐車の悪質さには頭にきていると言います。

Skyscrapers in Vilnius, Photo by Arroww<br>
 ,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Saint Ann's church in Vilnius, Photo by M.K.,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

特に市長が腹立たしく思うのは、自転車レーンや横断歩道に平気で駐車するドライバーです。実は、Zuokas 市長は自らも自転車派なのです。自転車レーンへの駐車は、迷惑なだけでなく危険でもあります。取り締まりも強化しているのですが、違法駐車は一向に減りません。

もちろん駐車違反の罰金はあるのですが、一部の高級車を駐車するようなドライバーは、駐車違反の罰金の金額など、何とも思っていないようです。そういう自分のことしか考えていないようなドライバーに、うんざりしていると市長は話していました。

そして、先月の30日、とうとうZuokas 市長はブチギレてしまいました。なんとリトアニア軍の装甲車に飛び乗り、違法駐車している高級車をペシャンコにしてしまったのです。禁止された場所に駐車し、いくら取り締まられても懲りないヤツらに、この装甲車は最適だとコメントしています。



止めていたドライバーも、さすがに呆然としたに違いありません。市長は、公式サイトの動画で「カネを持っているからといって、どこでも止めていいわけではない。駐車違反の罰金さえ払えばいいというわけではないのだ。当局をなめて、違法駐車をやめないとこうなる。」と警告しています。

ひき潰した市長、さぞかし溜飲を下げたことでしょう。ちょっと日本では考えられないような、過激な方法です..。と言うところですが、実はこれ、市当局のパフォーマンスです。つぶされたベンツは、このために購入された中古車なのです。

キャンペーンとしては過激な表現ですが、当局が一向に減らない違法駐車に業を煮やしているのは確かで、その現れなのでしょう。知らずに動画を見た人はビックリすると思いますし、違法駐車撲滅のキャンペーンと聞いても、当局の決意にたじろぐ思いかも知れません。

Screenshot from YouTube.Screenshot from YouTube.

ふだん、自転車レーンへの駐車に憤っているリトアニアのサイクリストは、よくぞやってくれたと快哉を叫ぶ出来事でしょう。ぜひ、日本でもこれくらいのキャンペーンを展開してほしいと感じる人も多いかも知れません。日本から見れば、自転車レーンがあるだけでなく、尊重する市長がいて、うらやましい限りです。

最近日本では、車道で増えた自転車乗りが危険だという論調はあっても、違法駐車がけしんらんという話には、あまりなりません。違法駐車は、今始まったことではなく、今さら改めて言及するまでもないということもあるのでしょうが、やはり全体としては、無意識にクルマ優先になっている気がしないでもありません。

自転車レーンがなかったとしても、違法駐車は、車道を走行するサイクリストの脅威になります。街中を走れば、どこへ行っても迷惑駐車のクルマがあり、もう慣れっこになっている部分はありますが、やはり避けて走行するぶん、リスクが高くなるのは否めません。不意にドアが開く危険もあります。

Town Hall Square, Photo by Sfu, licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

一人のドライバーが、駐車場を使わずに違法に駐車することで、自転車だけでなく、歩行者やオートバイ、他のクルマや公共交通も含めて、どれだけ迷惑をかけるのか想像力の働かない人は、残念ながら少なくありません。渋滞が発生するだけでなく、そのことが事故を誘発することもあります。

もちろん、駐車違反の取り締まりは今日も各地で行われているでしょう。それでも無くならないのが違反なのかも知れません。ただ一方で、表通りの迷惑な違法駐車はそのままで、あまり影響の大きくない裏道の、取締りやすい違反車両ばかり取り締まっているのではないかという疑問の声を聞いたりもします。

日本の自治体の首長も、装甲車を使えとは言いませんが、もっと強いメッセージを出してもいいのではないでしょうか。自転車のマナーも問題ですが、安全の観点から違法駐車も、もっと問題にしていいはずです。断固とした態度で取り締まることで、きちんと駐車場を使う習慣も根付くのではないかと思います。





電車が立ち往生したり、あっという間に床上浸水したりなど、局地的に大きな被害が出たようです。ゲリラ豪雨に注意が必要ですね。

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この記事へのコメント
自転車にとって住みにくいのは日本も同じですね。

車があれば便利ですが、なくてもいいかなとも思います。
あれば便利だけど、なくてもいい・・・。

車検、税金、保険、ガソリン、修理等々・・・。
月割りにすると結構な出費。

自転車ならタダ・・・。

年に数回の長距離はレンタカーでもいいし。

自転車に完全シフトしたいのですが、雨降りだけが気がかり。
Posted by 二浪独河 at August 09, 2011 10:42
こん○○は。

「自転車は車道へ」となればクルマの路上駐車が今後更なる脅威になること必至でしょう。自転車レーンは格好の駐車場所となりましょうし、「ならば」と車道とを縁石・ガードレールで仕切ろうものならかえって話がヤヤコシくなりはしまいか?憂えずにおれません。
処によって路上駐車、或いはその取締りの解釈には幅があるようで、イギリスは昼間非常に厳しい一方、夜は概ねどこでも停めていいことになっているようです(中嶋悟インタビューより・要旨)。

>結構な出費
仰るとおり、自転車の何がイイかと言えば一般消費税以外は手元に形で残ることです。またその出資額の少なさ故道路行政に対して意見しづらい、ということなのかもしれませんが、よくよく考えればほぼ100%クルマの都合で敷かれた道路。私はこの状況、当分の間続いても構わないと思っていますし、エネルギー問題・受益者負担の原則を勘案すればクルマへの課税強化は不可避です。人それぞれの事情を斟酌しつつカネの動きを少しずつ変えていけば「元気なヤツほど自転車に乗る」方向へ導くのは決して困難ではないと思うのです。
Posted by alaris540 at August 09, 2011 14:59
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
クルマから自転車へ、自転車で済むものは自転車に置き換えていくという動きが、世界の都市で、徐々に起き始めていると思います。
クルマの便利さは否定しませんが、自転車で済むなら自転車でいいんじゃないかという人は、確実に増えていくでしょう。
ただ、おっしゃるように高温多湿に日本の気候では、雨がネックというのはありますね。
Posted by cycleroad at August 09, 2011 23:40
alaris540さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
現在でも、日本の数少ない短い自転車レーンに、これ幸いと駐停車しているクルマは多いようですね。
オランダあたりでは、場所によって縁石で仕切るようなところもあります。物理的にクルマは入って来れないようになっていますが、低い縁石なので、視界を遮ることもなく、クルマから自転車が見えなくなることもありません。
いろいろ工夫の仕方はあると思いますが、まず道路をシェアし、交通弱者を優先するという基本的な考え方が、しっかり定着しなければならないということなのでしょう。
クルマ対自転車という図式だと、不毛な議論になりがちだと思います。両方乗る人もいますし、私もクルマ関係の税金を負担していますが、カネを出しているんだから、道路はクルマのためにあるべきだという主張は、世界的にも通らなくなりつつあると思います。
今の舗装などの費用は負担してきたかも知れませんが、道路自体は、クルマの登場前からあったところも多いわけで、クルマは新参者という見方もあります。
自転車とクルマが、うまく共存できれば、クルマにもメリットがあります。事故を減らすのは社会の願いであり、正義です。
社会の仕組みとして、どうあるべきか、どうしていくのがいいかという観点から考えるならば、いつまでもクルマ優先と言っていられなくなってきているのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at August 10, 2011 00:19
>不毛な議論
二浪独河様のコメントを受け一生活者として「クルマはどうしても高くついてしまう」ところを書きたかっただけで、「自転車は税制面で有利」と「クルマ増税やむなし」を結びつけて「負担しているのだからクルマを優先しろ」に仕立てようとしたのではありません。スミマセン、うまく伝えられませんでした。

自転車故の力不足とクルマ故の非能率を如何にしてすり合わせるか、対立どころか両者が融合とは言わないまでもシステムとして歩み寄っていっていいくらいに思います。私も自転車好きですし、クルマにもクルマの進む道がありましょうが、だからと言っていつまでも別々に突っ走っていていいことにはならないでしょう、もう21世紀なんですから。
Posted by alaris540 at August 10, 2011 02:37
日ごろからヨーロッパの自転車文化を見習ってほしいと思ってましたが装甲車で違法駐車を潰すのはちょっと・・・
日本でもこんな無茶する市長が出る前に解決できるといいのですが・・(笑)


近所の駅前が大規模改修工事をしている影響で駅前駐輪場が一時撤去されたのですが置き場を失った自転車が放置してある場所に撤去の看板が新たに設置されました。
一体どこに置けばいいやら・・・
Posted by 職人気取 at August 10, 2011 16:36
alaris540さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いえ、私も反論したかったわけではなく、一般論として書いただけでして、alaris540さんが現状のクルマ優先が必然とおっしゃっているわけでないことは、理解しているつもりです。
こちらこそ、うまく書けずに失礼しました。わざわざ再コメントさせてしまい、すみません。
そうですね、対立するのではなく、誰もがうまく使い分け、同時に、共存してそれぞれの利点を生かせるような関係になればいいと思いますね。
Posted by cycleroad at August 10, 2011 23:43
職人気取さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いくらソビエトの強権的な政治手法を見慣れていたからと言っても、このやり方は過激ですよね。
しかし、ユーモアとしても、これだけ思い切ったことが出来る、あるいは許すというのも、ある意味、成熟した社会と言えるでしょう。
当局は、自転車を都市交通として見ていない、市民の足として尊重していないということなのでしょう。日本では珍しくないとは言え、ちょっと思慮が足りないですね。
Posted by cycleroad at August 10, 2011 23:52
こんにちは。

迷惑駐車はどこの国でも同じか。
市長の行為に対して、個人的には別にどうとは思わないが。東日本大震災を見て自転車以外の原動機を有する車両(HV車、EV車も含めて)はガソリンや電気が無ければ単なる鉄クズだと言う事が改めてよく分かった。日本でも自転車と言う乗り物を”移動手段”としての位置付けをもっと進めるべきだ。
Posted by passerby Ω at August 25, 2011 12:48
passerby Ωさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに今回、クルマがいったん電気や燃料の供給が断たれれば、動かす手立てを失ってしまうという事実が如実に現れましたね。
その点、自転車は人力で動かせるのに、徒歩の数倍の速度が得られますし、災害時の強さも改めて認識されました。移動手段として位置づけるべきというのは、おっしゃる通りだと思いますね。
Posted by cycleroad at August 26, 2011 23:20
 
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