August 20, 2011

納得を届ける自転車の売り方

移動販売する商売にはさまざまな種類があります。


豆腐や野菜といった昔からあるものから、アイスクリームやジェラートを売る今風のものまで、中には、たこ焼きとか焼き鳥なんていうのもあります。場所によってはハンバーガーやパスタ、クレープや鯛焼きなどのスイーツ、鮮魚、惣菜など、いろいろなものが移動式の店で売られています。

暑くて、涼みたいなと思ったところにアイスクリームやカキ氷屋が出ていて、うまい場所に陣取るものだと感心することもありますが、食べたいと思っていない時には、目に入らないだけなのかも知れません。今どきはどこでもコンビニがあるような気がしますが、探しても近くにない場所もたくさんあります。

行楽地とか、公園、イベント会場など、人が多い時と少ない時が極端に違う場所、常設で店舗を出すのは難しい場所には、当然ながら移動式の店舗がリーズナブルです。アイスクリームや焼き芋など、季節が限定される商品を扱うのにも向いているということでしょう。

移動販売オフィス街の昼どきには、弁当などを売る販売車が回ってきます。地代や家賃を払って営業している普通の店舗からすれば、頭にくる存在のようですが、食事をする店が少ない場所では、需要と供給のギャップを埋める貴重な存在であり、オフィスワーカーにとってありがたい存在です。

小資本で始められるので、脱サラや起業する人にも向く方法でしょうし、開業しても、土地や建物などの大きな固定費を抱えることなく、場合によって気軽に場所を変えられるのは大きな利点でしょう。飽和状態に見える小売市場でも、探せば、商圏の隙間はたくさんあるに違いありません。

移動販売で繁盛して、固定店舗へと昇格する店がある一方で、最近の出店競争で、スーパーマーケットなどが撤退するケースも増えています。いきなり食料の調達先が無くなって、いわゆる買い物難民が発生することも少なくありません。特にクルマを運転しないお年寄りなどには死活問題です。

そうした地区が、また商圏の隙間となって、最近はトラックやバスを改造した移動式のスーパーマーケットも増えていると言います。穴を埋めるのが必ずしも移動販売とは限りませんが、やはり需要があるのに供給が無いのであれば、誰かが変わって現れるものなのでしょう。

日本では近年、量販店が格安の自転車を扱い、大量に販売するようになりました。結果として、街の自転車屋さんは大幅に減ったと言います。最近のブームで、大手スーパーが自転車専門店を併設する動きが加速しているとも報じられていますが、おそらく商圏の隙間も存在しているはずです。

実際、近くに自転車屋さんが無くなって困っている人も多いと思われるのですが、自転車を移動販売で売ろうという話は、あまり聞いたことがありません。さすがに、自転車を道端で売ろうという人はいないのでしょう。買う人もいないと考えるのが自然です。

Bicycle Library

ところが、イギリスには自転車の移動販売を始めた人がいます。その名も“Bicycle Library”、つまり自転車図書館です。移動式の図書館というのは日本も含め各国にあります。移動式図書館も、商売ではないものの、移動式のサービスと言えます。ロンドン名物の2階建てバスの中古を利用しています。

しかし、この“Bicycle Library”、単なる移動式の自転車の図書館ではありません。最大の特徴は、自転車を試乗できることです。ピストやフォールディング、カーゴバイクやミニベロ、電動アシストなど、いろいろな種類の自転車を借りて試してみることが出来ます。十分に試して納得して買う、賢い買い方を提供します。

普通の自転車店では、なかなか試乗してから買うことは出来ません。試すとしても、買うと決めた自転車を10分ほど試すくらいがせいぜいでしょう。便利だと思って買った自転車が、実際に乗る場所には向いていなかったり、不都合があったり、思ったような働きが出来なかったりといったことも起きます。

Bicycle LibraryBicycle Library

その点、試乗して十分に試してみることで、今までとは違う車種でも納得して買うことが出来ます。この自転車図書館では、販売用の自転車をストックしているわけではありませんが、試乗後に適切なディーラーに取り次いでくれます。購入者とディーラーのマッチングサービスというわけです。

自転車を買おうにも、使い勝手や乗り心地、その他もろもろの不明な点があって、躊躇している人の背中を押してくれるサービスと言えると思います。乗りにくい、思ったものと違ったなど、せっかく買ったのに乗らなくなってしまう人もいます。そうしたミスマッチを防げる点で有効なサービスです。

ある意味、自転車はクルマより試乗が大切な乗り物と言うことも出来るわけですが、十分試乗して買えるケースはなかなかないでしょう。これは貴重なサービスです。しかも、場合によっては巡回して、家の近くに来る可能性もあります。どこで営業しているかは、ネットでリアルタイムに追跡できるようになっています。

Bicycle LibraryBicycle Library

自転車図書館という看板にも偽りはありません。中古の2階建てバスを改造した店舗の2階部分には自転車関係の書籍や雑誌、カタログ、自転車関連の映画やフィルムから自転車アートまで、さまざまなライブラリー、ギャラリーとなっています。ここで資料を閲覧して、購入の参考にすることも出来ます。

この自転車図書館の司書、すなわち自転車店の店員は、いろいろと相談にも乗ってくれます。そのアドバイスが判断する上でとても役立つであろうことは、固定店舗と変わりありません。まさに自転車を買いたいと思っている人には持って来いです。移動式なので、自転車店の少ない地区には、特にありがたい存在でしょう。

この図書館の「貸し出しカード」を作っておけば、ネットやメールで出張をリクエストすることも出来ます。店にとっても、お客のリクエストの多い地区から巡回することが出来て効率的です。自転車屋さんは、毎日必要な業種ではないので、かえってリーズナブルな業態と言えるのかも知れません。

TWOnFRO

この“Bicycle Library”、始めたのはサイクルウェアのデザイナーです。どこにでもあるありふれたウェアではなく、洗練された都市のサイクリスト向けのオリジナルな商品だそうです。もちろんバスの1階にはそれらのウェアやアクセサリーなどが陳列されています。自転車ショップでもあるわけです。

さらに「自転車救急サービス」まで併設されています。修理やメンテナンスだけでなく、盗難防止の相談からカスタマイズまで引き受けてくれます。サイクリストにとっては強い味方です。故障した自転車を遠くまで押していくのは大変なので、近くに来たら修理を頼もうと、待ち構えている市民もいるかも知れません。

国会議事堂の付近に行くこともあります。もの珍しさからか、下院議員(日本の衆議院議員にあたる)が立ち寄ることもあると言います。議員に対して、この移動自転車図書館の「司書」が、自転車関係の法律の改正に対する提案をしたりすることもあるそうです。

Bicycle LibraryBicycle Library

移動式という利点を生かし、さまざまな場所へ出張します。2階のギャラリーでは、自転車関連の映画やフィルムを鑑賞したりも出来ます。特に用のない人でも、気軽に立ち寄ってもらうことで、市民にサイクリングの楽しさを広める役割も自認しているのです。

日本では、街の自転車屋さんが、どんどん少なくなっています。格安な輸入自転車を買い捨てのように使う人は困らないかも知れません。でも、本来の自転車を購入し、格安自転車とは断然違う乗り心地や使い勝手を求める人の中には、修理やメンテナンスを頼むところがなくなり、困っている人も多いのではないでしょうか。

自転車屋さんは、知識も豊富で、組み立てや修理、整備などの専門技術を持つプロです。廃業することで、こうした技術を活かす場がなくなってしまうのは、提供する方もされる方も、ともに不幸な事態です。日本で移動販売が上手くいくかどうか保証の限りではありませんが、一つの選択肢にならないものでしょうか。





急に涼しくなって出かけやすくなりましたが、今度は雨模様です。暑さも、きっとまた、ぶり返すのでしょう。秋晴れのいい陽気が待ち遠しいですね。

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この記事へのコメント
私の住む地域で軽自動車による移動自転車屋さんがいて助かっています。週1回同じ所に来るので、パンクはその時に持ち込みます。
Posted by ジャムおばさん at August 24, 2011 04:35
ジャムおばさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
それはラッキーですね、最近自転車屋さんがなくなって、修理に困っている人は多いですが、移動の修理屋さんが来るところは滅多に無いと思いますから。
修理だけでは、なかなか採算がとれないみたいですね。
Posted by cycleroad at August 24, 2011 23:30
 
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